反グローバリズムの潮流(イタリアで反EU政権樹立、ベーシックインカムも導入されるか?)
5月11日の投稿では、反グローバリズムの潮流(イタリアの反EU政権は連立協議が不調で、再選挙突入か?)とお伝えしましたが、急転直下、「五つ星運動」と「同盟」の連立協議が成立し、大統領が新首相も承認したことで、反EUを掲げる連立政権が成立することになりました。新政権はどんな公約を掲げているのか調べてみました。
まず、両党で共通しているのが、イタリアの経済成長がずっと低迷し貧困が増大しているのはEUの財政ルールがあるからだと批判し、政権の座に就けばEUの意向など無視して歳出を拡大するという公約を掲げたことです。EUは加盟国に対して、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内、債務を60%以内に抑えるとともに、財政均衡を目指すよう求めています。イタリアは債務の対GDP比が132%前後に達し、経済成長も鈍いため、ユーロ圏の政策担当者にとってずっと心配の種となっています。
政策の目玉ですが、「五つ星運動」がベーシックインカムの導入、同盟は所得税と法人税の税率を一律15%にするとしています。その他に、年金支給開始年齢の引き上げを決めた2011年の法律の変更、対ロシア制裁の中止、調停委員会の設置、犯罪や汚職取り締まりに向けた盗聴器や覆面捜査官の利用拡大なども提案しています。
ベーシックインカムを導入するには推定で年間170億ユーロが必要。所得税と法人税の税率を一律15%にすれば1年当たり800億ユーロの税収減。また年金改革を廃止すると150億ユーロ、来年の売上税の自動的な税率引き上げを撤回すれば125億ユーロのコスト増につながります。その為、両党はECB(欧州中央銀行)に2500億ユーロの債務免除を求めるとしています。これは債務総額23億ユーロの11%に相当します。
さらに、草案では「加盟国による通貨同盟(ユーロ)離脱を可能にする経済・司法手続き」の策定も求めています。
財政赤字はEUと合意した水準を大きく上回る恐れがあり、そうなると欧州委員会と新政権が衝突するのは避けられない。ユーロ圏の統合深化を進める上で、イタリアは重要な存在で、フランスのマクロン大統領が提唱する野心的な計画は、今のところ経済規模が域内最大のドイツからの反応がはかばかしくない。そこで域内第3位の経済規模のイタリアにユーロ懐疑派の政権が生まれれば、EU統合深化を目指す計画は事実上凍結されかねない、と当局者やエコノミストは口をそろえているそうです。
■五つ星と同盟が最終交渉=EU懐疑派政権誕生か-イタリア2018年5月11日
イタリアの新興政党「五つ星運動」のディマイオ首相候補と右派政党「同盟」(旧北部同盟)のサルビーニ書記長が、連立政権樹立に向けて最終交渉に入った。伊ANSA通信などが11日報じた。両党とも欧州連合(EU)懐疑派で、連立政権が誕生すれば欧州政治の混乱につながる恐れがある。
■焦点:イタリア連立協議大詰め、経済公約はEUと衝突必至2018年5月14日
「五つ星運動」と「同盟」の新政権樹立に向けた連立協議が大詰めを迎えつつある。ただ両党が打ち出した経済政策の公約は欧州連合(EU)の財政ルールと相容れず、履行するのは不可能ではないにしてもかなり難しいだろう。公約として挙げられたのは、法人税と所得税の減税、福祉予算拡大、売上税の税率引き上げ中止、支給開始年齢の大幅な引き上げを定めた2011年の年金改革の撤回などだ。もっともその内容は、巨額の財政負担を伴う。つまり財政赤字はEUと合意した水準を大きく上回る恐れがあり、そうなると欧州委員会と新政権が衝突するのは避けられない。
同盟のサルビーニ書記長は12日、五つ星運動のディマイオ党首との協議を経て「われわれはイタリアが窒息しないようにEUと合意事項を再交渉する必要が出てくる」と発言した。選挙前に五つ星運動と同盟はいずれも、イタリアの経済成長がずっと低迷し貧困が増大しているのはEUの財政ルールがあるからだと批判し、政権の座に就けばEUの意向など無視して歳出を拡大するという公約を掲げた。足元ではそこまで強硬な姿勢は示しておらず、五つ星運動の幹部は11日、財政赤字を増やす場合はまずEUと協議すると語った。
■コラム:混乱の種まくイタリア連立計画案2018年5月17日
イタリアで連立協議を進める大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」が、ユーロ加盟国の離脱を可能にするなど型破りな内容を盛り込んだ計画の草案をまとめたことが分かった。欧州連合(EU)加盟諸国との対立を招くのは必至で、比較的低水準で推移しているイタリア国債利回りが急上昇する恐れもある。
ハフィントン・ポストが入手した連立計画草案によると、両党はECBに2500億ユーロの債務免除を求める。これは債務総額23億ユーロの11%に相当する。
草案は「加盟国による通貨同盟(ユーロ)離脱を可能にする経済・司法手続き」の策定も求めている。EUの資金を一部利用し、貧困層や失業者への社会保障を拡大することや、減税、年金支給開始年齢の引き上げを決めた2011年の法律の変更なども盛り込んでいる。
このほか、対ロシア制裁の中止、調停委員会の設置、犯罪や汚職取り締まりに向けた盗聴器や覆面捜査官の利用拡大なども提案している。
■焦点:イタリア次期政権、新たなユーロ危機の「火種」か2018年5月18日
17日に連立政権の政策協定で基本合意した大衆迎合主義政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」は、いずれもEUの財政ルールに真っ向から挑む構え。EUは加盟国に対して、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内、債務を60%以内に抑えるとともに、財政均衡を目指すよう求めている。イタリアは債務の対GDP比が132%前後に達し、経済成長も鈍いため、ユーロ圏の政策担当者にとってずっと心配の種となる存在だ。
同盟はイタリアの債務を小さく見せるため、欧州中央銀行(ECB)の保有する同国債2500億ユーロを、財政ルール計算時に同国の債務に含めないようにEUに要請したい考えだ。五つ星運動のディマイオ党首が「公的債務を減らす方法は投資と拡張的な政策だ」と公言していることからすると、次期政権はまず借金を膨らませるだろう。
同党が主要な公約としているベーシックインカムを導入するには推定で年間170億ユーロが必要。所得税と法人税の税率を一律15%にするという同盟の目玉政策が実行されれば、1年当たり800億ユーロの税収減となる。また国民の評判が悪い年金改革を廃止すると150億ユーロ、来年の売上税の自動的な税率引き上げを撤回すれば125億ユーロのコスト増につながる。
ユーロ圏の統合深化を進める上で、イタリアは重要な存在だ。フランスのマクロン大統領が提唱する野心的な計画は、今のところ経済規模が域内最大のドイツからの反応がはかばかしくない。そこで域内第3位の経済規模のイタリアにユーロ懐疑派の政権が生まれれば、計画は事実上凍結されかねない、と当局者やエコノミストは口をそろえる。
■伊、EU懐疑派政権樹立へ=五つ星と同盟、連立見通し2018年5月21日
イタリアの新興政党「五つ星運動」と右派政党「同盟」(旧北部同盟)が、21日にも連立政権を樹立する見通しとなった。両党とも欧州連合(EU)懐疑派で、欧州政治の混乱が懸念される。
総選挙では、政党別で最多票数を獲得した五つ星のディマイオ党首と、ベルルスコーニ元首相率いる「フォルツァ・イタリア」と共に右派連合を形成する同盟のサルビーニ書記長がそれぞれ勝利を宣言。ただ、いずれの政党も過半数の議席を獲得できず、議会の宙づり状態が続いていた。しかし5月に入ってベルルスコーニ氏が身を引くと表明し、事態は急展開した。両党が20日までに行った投票では9割以上が賛成を表明した。
■イタリア2党、次期首相に大学教授のコンテ氏推薦 大統領が検討へ2018年5月22日
大衆迎合主義政党「五つ星運動」と極右の「同盟」は21日、マッタレッラ大統領と会談し、フィレンツェ大学法学教授のジュゼッペ・コンテ氏を次期首相に推薦した。大統領は、政治経験が浅く、ほぼ無名のコンテ氏を直ちに承認することは控え、同氏の指名について関係者の意見を踏まえて判断する考えを示した。
コンテ氏は政治経験はないが、五つ星と近い関係にあり、同党が選挙前に閣僚候補として挙げていた人物の1人だ。コンテ氏はその際、イタリアの複雑な官僚制度を簡素化すると表明していた。
両党の政策合意は、数十億ユーロの減税や貧困層の福祉への追加支出、年金改革の撤回のほか、移民政策や通貨同盟に関する欧州連合(EU)のルールの見直しなどを盛り込んでおり、金融市場では不安が広がっている。
■イタリアで連立政権樹立間近、首相に無名のコンテ氏推薦2018年5月22日
イタリアでポピュリズム連立政権を樹立間近とされる「五つ星運動」ルイジ・ディマイオ代表と「同盟」マッテオ・サルビーニ書記長の両代表は21日、政界でほぼ無名の弁護士ジュゼッペ・コンテ氏(54)を首相候補として推薦した。
コンテ氏はディマイオ氏の個人弁護士を務めている。行政法の専門家で、法曹界と学界でのキャリア十分も政治経験は皆無ということ以外には、ほとんど知られていない。
■「政治空白」3カ月のイタリア…コンテ氏を新首相に指名2018年5月24
イタリアのマッタレッラ大統領は23日、フィレンツェ大教授のジュゼッペ・コンテ氏(53)を新首相に指名し、組閣を命じた。イタリアでは3月の総選挙後、連立協議が難航して新内閣が成立しない「政治空白」が約3カ月間続いていたが、政治家ではないコンテ氏の首相就任で、ようやく解消する見通しとなった。
コンテ氏は法律家で、政治経験はない。連立政権をつくる新興政党「五つ星運動」の選挙公約づくりに関わった。今後、五つ星と連立相手の右派政党「同盟」が作成した閣僚リストをもとに、組閣作業に入る。
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