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反グローバリズムの潮流(イギリス総選挙、保守党大勝利の要因とグローバリズム勢力の状況)

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イギリスのEU離脱の是非を国民に問う総選挙の結果は、EU離脱を公約に掲げたジョンソン首相率いる保守党が、過半数を大きく上回る365議席を獲得して圧倒的な勝利を納めました。1月31日のEU離脱はほぼ確実な状況です。保守党の大勝利をもたらした背景には労働党の歴史的敗北があり、その原因は本来大衆の代表である労働党が、大衆の支持を失った結果であるようです。なぜ、そこまで大衆の支持を失ったのでしょうか。

労働党を敗北に導いたのは、世田谷自然左翼であると分析している面白い記事がありましたので紹介します [2]。世田谷自然左翼とは「大企業とか役所に勤めていて、激安移民が増えれば安い派遣社員とか子守が雇い放題になりますからね。儲かるんですよ。ストやられても関係ないのよ。自家用車で移動だし、巨大な家に住んで何でも使用人がやるんで。」という人たちです。従来の貧しい労働者が団結したイメージとは大きく異なります。

こういう人たちが、イギリスの大衆の現実を無視して、「貧民の意思に反して公務員の給料を増やしてやるとか仕事はつくんねーよ、激安移民はバンバン入れるとかいったらそりゃね、投票しないですよ。」となった結果、労働党が自滅的に大敗を喫したようです。

 

ここからは、私の推測ですが、世田谷自然左翼と言われる人々の多くは、マスコミ、金融、IT、上級公務員と言った人たちが、中心勢力ではないかと思われます。彼らに共通しているのは、社会的エリートと言われる人々であり、ものづくりの現場から離れて、情報を操作することで安易に利益を生み出していること、そして、国家や企業と言った集団への帰属性が薄く、自らが経営者であったとしても社員を道具としてしか見ない人間観も持っていると思われます。

アメリカのトランプ大統領+共和党と、マスコミ+上級官僚+民主党の対立構造も、この保守党と労働党の対立と非常に似通った構造にあります。アメリカの共和党は従来経営者層を中心とし、民主党は労働者層を中心としていたにもかかわらず、貧困にあえぐ労働者が共和党=トランプ大統領を熱烈に支持しているのです。

前回の記事では、イギリスのEU離脱を巡る対立は、産業界の中でグローバリズムを推進する金融勢力と、国内生産を重視する生産業界の戦いであり、イギリスでEU離脱勢力が強くなっているのは、金融支配=グローバリズムが終焉を迎えている [3]と分析しました。しかし、グローバリズム勢力にIT企業が加わっており、その中心勢力が金融からITに変わってきているとなると、簡単に決着はつかないのかもしれません。

 

■【英総選挙2019】 与党・保守党が大勝 ブレグジットに「新たな信任」と首相2019年12月14日 [4]

13日中に650議席が全て確定した。保守党は365議席(47増)を獲得。労働党は203議席(59減)となった。 スコットランド国民党(SNP)は48議席(13増)、自由民主党は11議席(1減)、北アイルランドの民主統一党(DUP)は8議席(2減)、北アイルランドのシン・フェインは7議席(増減なし)、ウェールズのプライド・カムリは4議席(同)、緑の党は1議席(同)、北アイルランド同盟党が1議席(1増)、北アイルランドの社会民主労働党(SDLP)が2議席(2増)になった。

全国の投票率は67.3%。前回の2017年選挙から1.5ポイント下がった。保守党の得票率は43.6%(1.2ポイント増)、労働党の得票率は32.1%(7.9ポイント減)、自由民主党は11%(4.2ポイント増)、SNPは3.9%(0.8ポイント増)だった。

ジョンソン氏自身は、ロンドン西郊の選挙区で苦戦が予想され、落選の可能性さえ取りざたされていたが、実際には労働党候補に7210票差をつけて再選を果たした。

■ジョンソン英首相を「ポピュリスト」認定したがる勘違い日本人2019年12月16日 [2]

今回の選挙の論点は「EU離脱」の一本です。国立病院をどうするとか、移民をどうするかという話もありましたが、有権者的には「とりあえずどうにかしやがれこの野郎、俺らもう飽きたんだよ」です。ところで日本のメディアは視点がずれまくっていて、論点が「ポピュリストであるジョンソンの人柄」みたいになってますけどね、これ大間違い。

イギリスの田舎の方というのは食品工場のパック詰めとかキャベツ収穫といった仕事しかないんですよ。DQN(無教養で非常識な行動をする人)だらけでストばっかりやって仕事しないやつらにしびれを切らしたサッチャー元首相がダメな会社をボコボコにつぶしてイギリスは金融とかIT(情報技術)主体な国になりましたから。こういう貧困地帯は仕事といえばその他は病院や役所くらいしかない。で、工場や農場はブルガリアとかラトビアの若い人を最低賃金で雇う。怠惰な地元民は雇われないですよ。クリスマスに休みたいとか言うから。EUに加盟していると、この勤勉な激安労働力が自由に来ちゃうわけです。分かりますか、地元民の恐怖が。

労働党の支援者というのはその多くが貧民ですからね。そういう貧民の意思に反して公務員の給料を増やしてやるとか仕事はつくんねーよ、激安移民はバンバン入れるとかいったらそりゃね、投票しないですよ。労働党の真っ赤かな政策に賛成するのは、世田谷自然左翼ですよ。なぜかって言うとこの人たちは大企業とか役所に勤めていて、激安移民が増えれば安い派遣社員とか子守が雇い放題になりますからね。儲かるんですよ。ストやられても関係ないのよ。自家用車で移動だし、巨大な家に住んで何でも使用人がやるんで。

 

■ブレグジット確定で英国が改めて抱えた「ナショナリズムの“暴走”」問題2019年12月19日 [5]

保守党の勝利は、5月のEU議会選挙で第1党になったブレグジット党が、離脱強硬派のジョンソン氏が新たに党首になった保守党に事実上の選挙協力をしたことが直接の要因だ。 だがもう少し長期的に見れば、2016年5月の国民投票で離脱が選択されて以降、離脱の条件に関するEU側との交渉とそれに関する国内の政党間の合意形成が難航し、何度も離脱延期になり、「決められない政治」が続き、先行きの見えない停滞感がさらに強まっていたことに、国民全体がいら立っていたということがあるだろう。

ただ、離脱が明確になると、「グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国」のアイデンティティーをめぐる深刻な問題が急浮上することになる。まず、もともと英国からの独立志向が強かったスコットランドの問題がある。ナショナリズムをあおる政治を行えば、近隣の、あるいは、自国内の他者のナショナリズムを誘発することになる。北アイルランド住民の中で自らのアイデンティティーが意識され、独立運動が再燃する可能性もある。

「保守党」という党名は、そうした英国固有の伝統を守っていこうという意思を意味していたのだろうが、その基本政策は大きく変化してきた。サッチャー時代には、規制緩和と金融市場改革で、新自由主義的経済政策の旗振り役になっていた。欧州統合プロセスに関しては、経済的グローバル化の流れの一環として基本的に歓迎しながらも、英国の政策の独自性を保つため、一定の距離を取り、共通通貨制には参加しないという微妙なスタンスを取っていた。そして今回の選挙で保守党は、グローバル化を拒否して、自国の利益を優先する経済ナショナリズムの政党になり、勝利した。

グローバリズムにあらがって経済的ナショナリズムを打ち出すことが繁栄につながるのか、二大政党制は議会民主主義の理想なのか、ポピュリズム的手法が暴走しないよう適度に制御することは可能なのか、「保守」とは何なのか、「左派」は誰の権利を守るべきなのか。

■英政府のEU離脱関連法案、来年1月9日までの下院通過目指す2019年12月20日 [6]

英政府は、欧州連合(EU)離脱協定の批准に必要な関連法案を来年1月9日までに下院で可決させる方針だ。下院は20日に法案審議を開始し、その後1月7日からさらに3日間、審議を行う。この日程なら、上院での可決手続きに約3週間を確保できる。

■英議会、20日にEU離脱協定案採決 ジョンソン「国民への約束果たす」2019年12月20日 [7]

英議会は20日、欧州連合(EU)離脱協定案の採決を実施する。ジョンソン首相は採決を前に「私たちはクリスマス前に採決を終わらせるという国民への約束をきょう果たす」と強調した。EU離脱協定批准の最終手続きはクリスマス後になる見通しだが、ジョンソン氏は自身の決意を示すため、クリスマス前の採決にこだわってきた。

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