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イギリスのEU離脱、貿易交渉の期限まであと2週間、決裂させず交渉期限切れを目指している?

20201210at12S_p [1]先週は「イギリスのEU離脱、協定期限まで残り3週間、このまま合意できず年末は大混乱に? [2]」で、合意なき離脱に突き進むことはほぼ確実な状況です、とお伝えしました。先週の時点ではEU首脳会議が開催させる12月10日がリミットと言われていましたが、いまだに合意に至らず、かといって決裂もせずに協議は続いています。一体どうなるのでしょうか。9日にジョンソン英首相はEUのフォンデアライエン欧州委員長とブリュッセルで会談し、お互いに「大きな溝が残ったままだ」と認めましたが、その場では決裂せず13日に決断するとしました。その後、ジョンソン首相は企業や国民が「合意なき離脱」に備える時だと述べ、EUは英との「合意なし」に備え緊急対応策提示するなど、脅しあいが続き13日を迎えました。

そして13日、協議を継続することが決まり、決裂には至りませんでしたが、相変わらず合意には至りませんでした。そして、次の交渉期限は明示されていません。その間にもイギリスでは貿易協定の合意に至らなかった場合、海軍が海域警備を行うと言う過激な案も浮上しています。

ジョンソン首相にとって、EUから離脱したことで、イギリスが独立国家として自分で判断する権限を持てなければ、そもそも離脱した意味がなくなります。交渉してEUが折れてくれれば儲けものですから、自分から交渉を降りることはないでしょうが、妥協することはなさそうです。

一方のEUにしてみれば、貿易協定を結べなくて経済的に困るのはイギリスであり、EUの被害はさほど大きくないと高をくくっています。さらにはイギリスのような事例を作ってしまえば他の国も真似をしてEUが崩壊しかねないので、こちらも妥協することはない。

お互いに自分から決裂させる必要もないのでずるずる協議は続きますが、12月31日の期限まであと2週間、各国が条約を批准する期間を考えると、すでに手遅れのような気もします。貿易協定の合意に至る可能性は殆どないと思いながら、交渉決裂の責任を取ることを避けるために、イギリスもEUも交渉を続け、期限切れによる幕引きを狙っているのではないでしょうか。

 

■英、合意ないまま対EU交渉離脱する用意=主計長官2020年12月8日 [3]

英国のモーダント主計長官は7日、欧州連合(EU)との通商交渉について、英側に合意のないまま離脱する用意があると述べた。また英政府は、EUとの協議が進展すれば、英国が離脱協定違反を可能にする法律の規定を削除することもあるという見解を示した。

■英首相「EUの要求、受け入れない」 貿易交渉で決裂辞さず2020年12月9日 [4]

ジョンソン英首相は9日の下院で、難航している欧州連合(EU)との貿易交渉をめぐり、現在のEUの要求は「この国の首相が受け入れるべき条件ではない」と訴えた。

■英EU貿易交渉、週末までに決断 依然「大きな溝」 首脳会談2020年12月10日 [5]

欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長とジョンソン英首相は9日、ブリュッセルで会談し、難航する自由貿易協定(FTA)締結交渉をめぐって協議した。フォンデアライエン氏は会談後、声明で「互いの立場は懸け離れたままだ」と指摘。「週末までに決断を下す」と表明した。

英メディアによると、英官邸筋も「大きな溝が残ったままだ」と認め、両首脳が13日までに「交渉の今後に関する確固とした決断」をすることで一致したと説明した。

■EUと通商協定なしとなる「強い可能性」 英ジョンソン首相2020年12月11日 [6]

ジョンソン氏は欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と会談したが、目的は果たせなかった。この日、会談後に初めて会見に臨んだジョンソン氏は、「今はまさに」企業や国民が「合意なき離脱」に備える時だと述べた。イギリスとEUの交渉は続いているが、ジョンソン氏は通商協定で合意する状況には「ほど遠い」と話した。

■EU、英との「合意なし」に備え緊急対応策提示 航空便や車両の行き来の継続を保証2020年12月11日 [7]

EUは10日、こうした事態に備えるため、緊急対応策を提示しました。そのなかにはイギリスも同様の措置を取ることを条件に、来年1月1日から6か月間、イギリスとEUとの間の航空機や車両の行き来を一定の範囲内で保証すること、漁業についての協定が結ばれない限り来年いっぱい、イギリスとEUの漁船が引き続き互いの海域で操業できるようにすることなどが含まれています。

イギリスは、(EUと通商協定のある)カナダよりは(EUと通商協定のない)オーストラリアに似たような関係になる可能性が強い」ジョンソン首相は10日、このように述べた上で「どちらになるにせよ1月1日には変化が訪れる」として、国民も事業者も準備をすべきだと改めて強調しました。

■英EU、貿易交渉を続行 首脳会談で決裂は回避2020年12月13日 [8]

欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長と英国のジョンソン首相は13日、電話会談し、難航する自由貿易協定(FTA)締結交渉を続行することで一致した。ジョンソン氏は会談後、「重要な点でまだ非常にかけ離れている」と発言したが、英メディア各社によると、会談直前まで行われた首席交渉官間の協議では一定の歩み寄りがあったもようだ。

■「どうしてこんなことに」と英経済界が嘆き 通商協定なきブレグジット目前2020年12月13日 [9]

経済記者として私は常日頃、多くの企業幹部と話をする。その多くは、イギリスの欧州連合(EU)離脱に関する国民投票でどう投票したかによらず、EUと通商協定のないブレグジット(イギリスのEU離脱)に突入してしまいそうな現状で、経済への打撃を前に頭を抱えている。ただし、国は企業ではない。友人もそう指摘していた。企業においては株主利益が重要だが、もっと幅広い色々な理念が、国家運営には関係してくる。

まず第一に、国民投票にまつわるあれだけの懊悩(おうのう)と、それ以降4年間ものかけひきを経験したのだから、いまさらEUが結局は決定権をもつ状態に落ち着くなど意味がない。

第二に、ジョンソン首相は関税措置のことを、かつての「2000年問題」のようにとらえている。自動車産業に対する厳しい警告は、大げさだったと後から分かるはずだと。為替変動(ポンド下落)によって、輸出業者への関税は相殺され、輸入業者は今まで以上に材料や部品を国内調達するようになるだろうと。

第三に、振興主義は偽物ではない。イギリスは世界経済で急成長中の地域と連携し、繁栄する方法を見つけられるはずだと、首相は本心から信じているのだ。

「結局そうなるべきことは、直ちにそうなるべきだ」と。ただし、今そうなれば、一部の産業は打撃を受け、雇用が失われると経済界は主張する。そして、ほとんどの企業トップは絶望してそれを見つめることになる。

■通商協定なしなら「海軍が海域警備」方針、英政府案に与党からも反発2020年12月13日 [10]

イギリスと欧州連合(EU)が年末の期限内に通商協定を結べなかった場合、漁業水域を守るために英海軍艦を派遣する可能性が浮上している。これについて、欧州だけでなく英下院国防委員会の委員長(与党・保守党)からも反発が相次いでいる。

■英EU通商交渉、協議継続で浮上した合意へのシナリオ2020年12月14日 [11]

最大の争点である「公正な競争環境」を巡って週末に浮上した英国の新たな提案により、事態は打開する可能性がある。EUはこれまでの立場を軟化させている。従来は、英国がEU基準に従わなかった場合、貿易上の罰則を科すための一方的かつ自動的な措置を取る権利を要求していた。2人の当局者によると、現在は調停や紛争解決の後にのみ、こうした調整を行う案を受け入れているという。公正な競争環境を巡る問題で事態が打開すれば、最後に残る焦点は、英海域でのEU漁船の漁獲割り当てになるとみられる。交渉がその段階まで絞られれば、合意は達成可能だと当局者の1人は語った。

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