イギリスのEU離脱、協定期限まで残り3週間、このまま合意できず年末は大混乱に?
先週は、「イギリスのEU離脱、協定期限まで1か月、今週中にEUは緊急措置を発動?」で、マスコミは、貿易協定締結の可能性があると言う報道をしていますが、都合の良い情報だけを切り取って報道している可能性が高いとお伝えしました。やはり12月8日になっても合意には至らず、年末の大混乱に向けて秒読みの状態に入りました。いまだに、マスコミの中には最終的には合意に至ると楽観的な報道をしているところもありますが、合意に至るのはほぼ不可能な状況です。
まず、マスコミがつかんだ交渉妥結に向けた動きですが、EUのバルニエ首席交渉官が、漁業を主権の回復のシンボルにしているジョンソン政権に対して、EU側は漁業で妥協を見せる代わりに、他の分野での妥協を英国に迫り、合意に動き出したと思われます。
しかし、EU首脳側にとって、漁業の妥協はすぐにわかりやすく目に見える、漁師たちの失業を意味し、ただでさえコロナ禍でピリピリしている状況で政治生命を失う、深刻なダメージになりかねない。だからフランス、スペイン、ベルギー、オランダ、デンマークの国々は、バニエル主席交渉官に強力な圧力をかけ、結果的に交渉は不調に終わったようです。
イギリスのジョンソン首相も同様で、与党・保守党の離脱強硬派の中にはジョンソン氏が妥協した場合「裏切り」とみなし、ジョンソン氏の不信任を求める動きもあるといいます。
イギリスもEUもコロナで国内情勢が不安定になっており、下手に妥協をすれば政権が崩壊する危機的な状況にあるようです。
イギリスが合意なき離脱に至ることで発生する混乱と、それを防ぐために妥協した際の混乱を比べると、現在権力を握っている政治家にとっては、妥協を避け、合意なき離脱を選んだ方が、政治生命をつなぐことはできると言う判断に傾いているようです。
これまで、伸ばし伸ばしにしてきた合意の期限も、EU首脳会議が行われる12月10日が本当の最後と言われています。イギリスは交渉期間を延長することも、12月31日を超えて交渉を続けることもないと断言しており、合意なき離脱に突き進むことはほぼ確実な状況です。
■英EU通商交渉、漁業など隔たり大きく時間切れの恐れも2020年12月1日
アイルランドのコーブニー外相は「残された時間は少なくなっている」と指摘。ドイツのメルケル首相は、一部EU加盟国の忍耐は限界に近づいているとし、「われわれはいかなる代償を払ってでも合意するつもりはないとこれまでも明確に示してきた」と述べた。こうした中、EU外交官は、12月2日、もしくは3日までに合意が得られない場合、移行期間の期限が切れる31日が約3週間後に迫るため、EUは緊急措置を発動させると明らかにした。
英国のユースティス環境相は、英国とEUの貿易協定を巡る交渉について、今週進展があれば延長される可能性があるとの見解を明らかにした。アイルランドのコーブニー外相は30日、今週中に合意することは可能だが、双方の妥協が必要と指摘した。だが英国側は漁業を巡る問題で譲歩する姿勢は見せていない。
■英とのFTA合意、仏が拒否権行使もあり得ると警告-EU大使級会合2020年12月3日
EU加盟27カ国が2日開いた大使級会合で、フランス大使はバルニエ首席交渉官に対し、合意がまとまってもEU首脳が拒否するようなことになれば、いかにまずい状況になるかと警告を発した。ベルギーとオランダ、デンマークがフランスの立場を支持し、しっかり精査する十分な時間が得られるよう合意草案の提示を複数の大使が迫ったという。
フランスを中心とする加盟国グループは、首席交渉官が英国の漁業水域へのアクセスで過度に譲歩し、英企業が不当な競争上の優位を得ることを妨げる条件を取り下げるのではないかと懸念している。
■移行期間の延長はあるのか? 国境は既に大混乱。EUとイギリス、最後の正念場:ブレグジット2020年12月4日
妥結の日と言われていた木曜日(12月3日)が過ぎてしまった。それなのに、結論は出ていない。3つの主要で根源的な問題ーー公正な競争のルール、漁業権、紛争解決メカニズム(ガバナンス)については、依然として意見の相違が残っているという。
もう時間がない。そこで頭に浮かぶのは「移行期間の延長はあるのだろうか」である。報道を見ている範囲では、この期に及んでも、まったくそのような気配はない。予定どおり、年内で移行期間は終了すると思われる。
ただ、交渉の延長の可能性は、ないわけでもないようだ。つまり、一度WTO(世界貿易機関)のルールになるが、交渉は続けて、妥結したらそのルールが新たに適用されるということである。現段階では、英国は12月31日以降の交渉を常に拒否してきており、心変わりをする気配を見せていないという。
ジョンソン政権は、漁業を主権の回復のシンボルにしているので、ここで妥協をするとは思えない。 ということは、交渉のやり方としては、EU側は漁業で妥協を見せる代わりに、他の分野での妥協を英国に迫る方法がある。EU首脳側にとって、漁業の妥協はすぐにわかりやすく目に見える、漁師たちの失業を意味する。ただでさえコロナ禍でピリピリしているのに、これは政治家の生命にとって、深刻なダメージになりかねない。だからフランス、スペイン、ベルギー、オランダ、デンマークの国々は、妥協するわけにはいかないのだ。
現在、仏英の国境となっているユーロトンネルは、トラックで埋め尽くされているという。合意なしとなれば関税がかかる、混乱によって品物が入らなくなるーーなどの理由で、フランス側から英国側に渡るトラックが激増しているのだ。さらに真のブレグジットが間近に迫り、密輸業者や移民が駆け込んでいる。これは、人々が交通遮断という本当の襲撃にさらされていることを意味するのだと、関係者は警告している。
合意がない場合、おそらくイギリス人は食料の買い占めに走るのではないか。日本と似ていて、食料を輸入しないと豊かに食べていけない国で、島国である。そこに未知の「EU離脱」が現実に襲う。合意があっても混乱するだろうが、なかったら悲惨である。コロナ禍と都市封鎖で、ただでさえ人々の心は病み気味なのに、こんな混乱と不安(というより恐怖)にイギリス人の心は耐えられるのだろうか。
■英国とEUのFTA交渉、我慢比べの末合意の公算大だが企業の負担は増加2020年12月4日
英国とEU(欧州連合)のFTA(自由貿易協定)交渉はいまだ合意に至らないが、最後はまとまるだろうとの予想が大勢だ。当初は、年内発効には10月中旬までの合意が必要とされてきたが、現時点(12月2日)でまだ合意に至っていない。FTAが合意に達しなければ、21年1月1日以降、英国とEU加盟国との貿易には関税が復活する。そうなれば互いに大きなデメリットが生じる。特に、英国の貿易量の約半分は対EUであるし、EU加盟国の多くが対英国で黒字を計上している。
■イギリス EUとの自由貿易協定交渉中断 漁業権などで折り合えず2020年12月5日
イギリスとEUの交渉チームは集中的に協議を行ってきましたが、4日夜、双方の首席交渉官は「漁業権などでの隔たりが大きいため合意に向けた条件で折り合えず、話し合いを一時中断することで合意した」とする共同声明を発表しました。そのうえでイギリスのジョンソン首相とEUのフォンデアライエン委員長が5日午後に会談し、交渉の現状について協議するとしています。
新型コロナウイルスの感染が再び拡大したことでヨーロッパ経済は深刻な状況が続いていて、自由貿易協定が締結できなければ双方にとってさらなる打撃となります。
■英とEU、FTA交渉再開へ こう着状態打破目指す2020年12月6日
ボリス・ジョンソン英首相とウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は、5日午後に1時間ほど電話会談し、今月31日の移行期間終了前の合意を目指して最後の一押しをすることで一致した。交渉で合意に至らなかった場合、英EU間の貿易の大半には世界貿易機関(WTO)の規則に基づいて関税と関税割当が復活することになる。
■英、離脱協定無効にする条項撤回も-アイルランド国境巡る合意が条件2020年12月8日
ジョンソン英首相は、欧州連合(EU)と締結した離脱協定の一部を一方的に無効にする「脅し」を取り下げる用意があると英政府が7日発表した。
英下院は7日、EU離脱協定に違反する部分を削除する修正を上院が先に可決した「国内市場法案」について、削除された条項を元に戻す再修正を賛成357、反対268で可決した。
英政府は7日の声明で、「話し合いは引き続き進展し、数日以内に最終決定が予想される」とした上で、「検討中の解決策で合意すれば」、国内市場法案の問題条項を破棄する用意があると表明した。
■英EU首脳、FTA交渉の行き詰まり打開できず 迫るタイムリミット2020年12月8日
ジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長が7日、電話協議した。5日に続き3日間で2度目の首脳協議となったが、交渉の行き詰まりは打開できなかった。FTAを発効できずに終了すれば、英EU間に関税が突如復活するなど経済混乱が予測される。英EU首脳は、市場における公正な競争条件、英海域での漁業権、紛争解決などの「ガバナンス」の三つの争点で「大きな相違」が残っており、協議で合意には至らなかったことを明かした。
フランスなどEU加盟国は「FTAなし」を想定した準備を本格化すべきだと訴えている。英紙タイムズは、閣僚13人が、ジョンソン氏が交渉を打ち切り、「FTAなし」となった場合、結束してこれを支持することを確認したと伝えている。また、与党・保守党の離脱強硬派の中にはジョンソン氏の妥協を「裏切り」とみなした場合に、ジョンソン氏の不信任を求める動きもあるという。
■英EU首脳、直接協議へ 「大きな違い」残る―貿易交渉2020年12月8日
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長と英国のジョンソン首相は7日、自由貿易協定(FTA)締結交渉をめぐって電話会談した。しかし、主要懸案で「大きな違い」が残り、まだ「合意をまとめられる状況にない」との認識で一致。行き詰まり打開へ、両首脳は数日中にブリュッセルで対面での直接協議を行うことを決めた。
EUは10、11両日にブリュッセルで首脳会議を開く。それまでに交渉に妥結し合意案を首脳会議で承認できるかが今後の焦点だ。FTAを発効できずに年明けを迎え、経済、社会に大きな混乱が生じる懸念は一段と高まっている。
■英国とEUのFTA交渉の行方は!? 9日が交渉期限?2020年12月8日
英ポンドは欧州時間午前に一時、対米ドルで1.32251米ドル、対円で137.881円へと下落。英国とEU(欧州連合)がFTA交渉で合意できずに移行期間を終了するとの懸念が、英ポンドに対する下押し圧力となりました。12月31日まで移行期間となっており、移行期間終了までに英国とEUがFTA(自由貿易協定)交渉で合意して発効できなければ、「(主に貿易面での)合意なき離脱」となります。10日と11日にEU首脳会議が開かれることから、コベニー・アイルランド外相は英国との事実上の交渉期限は9日になるとの見方を示しています。
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