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コロナ後の中国経済、GDPが拡大する一方で、有名企業のデフォルトラッシュ

習近平 [1]昨年に投稿した、「過激化する中国、習近平総書記に何が起こっているのか―2 [2]」では、中国の中で国際金融資本と組んで経済発展を推進してきた勢力を、習近平総書記が駆逐しようとして、中国の支配階級の間で対立が激化していることをお伝えしました。自由経済の手法ではなく、国家管理経済で世界一の経済大国になろうとした習近平の経済政策は上手く行っているのか、その後の状況を調べてみました。世界の中でいち早くコロナから脱出したこともあり、2020年中国経済は、通年でGDP2.3%のプラスとなりました。2021年度は10%を超える成長をするという予測もあります。イギリスのシンクタンクは、今から8年後、2030年には中国がアメリカを抜いて世界一位になるという予測を出しており、中国経済は順風満帆のようにも見えます。

しかし、その予測も詳しく見ていくと中国経済に陰りが見えます。中国の経済成長が鈍化していることは間違いなく、中国が世界一になると言う予測も、アメリカや日本の経済成長の鈍化が中国を上回るために逆転すると言う予測になっています。中国も世界市場の中で輸出を拡大する余地は小さくなっており、国内経済の成長が期待されています。しかし、国内の貧富の差は大きく、その構造改革=富裕層から貧困層への富の移転が実現しないと内需の拡大にはつながりません。

それを、推し進めようとしているのが習近平です。既存の特権階級の解体、国有企業優遇の政策を見直そうとしています。昨年から中国国内で有名企業のデフォルトラッシュ、破産ラッシュが起きているのもそのためだと思われます。しかし、残念ながら、構造改革は上手く行っていないようです。この間、中国は成長率が諸外国より遥かに高いにもかかわらず、輸出の伸びが輸入の伸びより高く、純輸出(=輸出-輸入)が増えている。すなわち、中国において、生産が需要より一歩先に回復しており、供給が需要を上回っているのに対して、諸外国では政府が大規模な景気対策を実施しているため、需要の回復が生産に先行しており、需要が供給を上回っている。つまり、中国では消費をけん引する中産階級が育っていないという事です。

これまで中国経済をけん引してきた特権階級の解体は進めているようですが、貧困層への富の移転は進んでいないままこれを推し進めるとどうなるか。これまで中国経済をけん引してきた勢力が弱体化し、新たな消費を生み出す中産階級も育たないと言う状況になり、中国経済は破綻します。習近平の中国経済構造改革は非常に難しい綱渡りのようなもので、バランスを崩せば一気に中国経済崩壊に向かう可能性もあります。

■この先の中国経済はどうなるのだろうか?(20)―さらに増した米中逆転の現実味:CEBR報告書から―2021年1月12日 [3]

昨年12月21日、イギリスのシンクタンク経済学・ビジネス研究センター(CEBR)が「世界経済リーグ・テーブル2021」という有名な年次レポートを公表しました。このレポートの肝心かなめなところは表にまとめたように、現在世界2位のGDP大国の中国が2030年、あと約8年後にはアメリカを抜いて世界一になろうという点にあります。

なぜ中国は世界一の経済大国に就くことができるのでしょうか?GDP成長率は下がりますが、アメリカや日本はそれ以上に下がるか、停滞しますから中国は相対的に有利になるのです。

■中国GDPが100兆元超え。コロナ禍2.3%成長でも、低所得層6億人の「途上国」2021年1月21日 [4]

1月18日、中国国家統計局が2020年の経済統計を発表。2020年第4四半期(10-12月)の実質GDP(国内総生産)は前年同期比6.5%増、通年でも前年比2.3%増となりました。冒頭の「100兆元」は、その2020年GDP(速報値)である101兆5,986億元を指しています。経済成長率の水準は、世界に先駆けて新型コロナ前に戻り、2028年にも中国経済がGDPで米国を追い抜く、なんていう試算や予測まで見られるようになっているのが現状です。

一方で、共産党はいまだ「中国は世界最大の途上国」という自己定義を変えていません。共産党は、国内的には大国化、強国化を宣伝することで、国民を鼓舞、扇動し、党自らの正統性強化につなげつつ、対外的には「途上国」を武器に、能力の限界や責任の回避を追求してきました。「中国には中国の国益、国情がある」の一点張りで、力で香港、南シナ海、尖閣諸島沖などの現状変更を試みる拡張的な中国の言動には、断固として反対していくべきです。

2019年の統計データでは、中国には低所得者層と中間層の間の低所得者層寄りの層が全人口の約40%、すなわち6.1億人いる、これらの層の平均年収は1万1,455元であるとのこと。「我が国は依然として世界最大の途上国なのであり、広大な農村部と中西部地区には、所得水準が低い人々が相当数いるのだ」と主張。同時に、「我が国の経済が持続的に発展するに伴い、これらの層に属する人々が中産階級の層へと入っていくことだろう。我が国の国内市場潜在力は巨大である」とも付け加えました。

新型コロナの経済への影響を最小限にとどめるため、中国政府は、例年に比べて積極的、大規模な金融緩和と財政出動を行いました。新型コロナ禍でさらなる財政難にもがく地方政府からすれば、お上である中央政府からのこれらの政策を後ろ盾に、道路や空港といったインフラ、そして不動産開発への投資を大々的に実行することで、景気の下支え、GDP確保にまい進してきたというのが、「コロナ禍の経済再生」をめぐる実態だったと回顧できます。

コロナ禍の収束と経済の回復がある程度達成される中で、中国経済の持続可能な発展にとって最大の急務である構造改革を実行していかなければならないと言っているのです。そこには、国有企業と民間企業、そして外資企業の間の公平な競争を保障するための制度改革、市場化、規制緩和などが含まれます。中国政府も、経済の持続可能な発展を実現するためには、投資や輸出に依存した成長モデルから、内需、消費を生かしたモデルに転換しなければならないと理解しています。そのために不可欠なのが構造改革であり、改革という方法を通じて、雇用を安定的に創出し、国民の所得を向上させ、医療や年金といった社会保障を充実させていかなければならないということです。

■2021年の中国経済展望― 11年ぶりの二桁成長になるか ―2021年2月8日 [5]

中国は、諸外国に先駆けて、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え、経済が回復に向かっている。世界経済の低迷にもかかわらず、国内需要を上回る供給余力を持っている中国は、ロックダウン(都市封鎖)の影響などにより供給不足に陥っている海外への輸出を伸ばしている。2021年の中国における実質GDP(国内総生産)で見た経済成長率(以下、GDP成長率)は、前期比では、潜在成長率に見合った年率6%程度で推移すると予想されるが、前年比では、2020年の「前低後高」型成長によってもたらされた高い「ゲタ」を反映して、二桁に上る可能性がある。

中国は、成長率が諸外国より遥かに高いにもかかわらず、輸出の伸びが輸入の伸びより高く、純輸出(=輸出-輸入)が増えている。この現象は、内外の需給ギャップの非対称性を反映していると見られる。すなわち、中国において、生産が需要より一歩先に回復しており、供給が需要を上回っているのに対して、諸外国では政府が大規模な景気対策を実施しているため、需要の回復が生産に先行しており、需要が供給を上回っている。中国における純輸出の増加はちょうどこの二つのギャップを補っているのである。

■中国はアメリカを抜く経済大国にはなれない2021年2月22日 [6]

中国の経済は2050年になっても依然としてアメリカを上回ることはできず、世界第2位に留まる可能性がある、という分析を、ロンドンを拠点とする経済調査会社キャピタル・エコノミクスが発表した。同社の予想は、中国の経済力が遠からず世界一の経済大国アメリカを超えるという一般的な見方を覆すものだ。その一因として2030年までに中国の労働人口が年間0.5%以上減少することを指摘した。一方、アメリカの労働人口は中国よりも高い出生率と移民による人口増加に支えられて、今後30年間で拡大すると見られている。

この報告書の筆者によれば、中国の成長が鈍化している最大の要因は、指導者である習近平(シーチンピン)国家主席が経済開放の努力を拒んだことだ。「ほとんどの人が、中国の経済は今後も大きく成長を続け、アメリカを追い抜くのは時間の問題だと考えている。私の見解では、中国の経済成長は過去10年間で大幅に減速しており、今後も減速し続ける可能性が高い。これは主に生産性の伸びが減退しているからだ」

■習近平が“自爆”へ…! 中国経済が“バブル崩壊”で直面する「ヤバすぎる末路」2021年2月23日 [7]

中国四大航空会社のうち唯一の民営企業の海南航空集団(HNA)が1月29日ついに、破産手続きに入った。HNAは、、その野放図な海外資産買収行動の資金源について習近平政権が疑いの目を向け、2017年6月、中国銀行監督管理委員会から管轄銀行に対して海航の債務状況対するリスク調査命令がでた。結果、次々と債務超過、信用デフォルト事件が明るみになった。事実上、国家接収されていた。

2月に入ると中国不動産大手、華夏幸福が53億元近い銀行や信託会社からの融資遅延を発表し、今年上半期にもデフォルトに陥るのではないか、とロイターが報じていた。中国四大保険会社の一つ中国平安集団が華夏幸福のエクスポージャーに540億元を投資していることも第一財経などが報じている。

新浪財経が報じていた不完全な統計では、2006年に企業破産法ができて2021年までに、76社の大手上場企業の破産再建が行われ、特に過去1年で全国で受理された有名上場企業の破産再建案件は15件以上に上った。具体的には、青海塩湖カリ肥料、重慶鉄鋼、舜天船舶、力帆集団などだ。

国有企業や民営の大型企業集団の多くも経営難に陥り、やはり再建プロセス、あるいは経営改善プロセスに入っている。たとえば、渤海鉄鋼、海鑫鉄鋼、東北特鋼、達州鉄鋼、四川煤炭集団、天津物産集団などの大型鉄鋼、エネルギー総合集団企業だ。青海省投資集団、雨潤集団、方正集団もデフォルトに陥り、政府主導の経営改善プロセスに入った。

習近平政権に入って、経済の方向性をいわゆる計画経済に逆行させ、民営企業や外資系に対しても共産党の管理監督を強化する流れの中で、これまで隠蔽されていた大企業の財務上の不正、経営や投資の非合理性が明らかにされはじめた

昨年からの有名企業のデフォルトラッシュ、破産ラッシュは、中国経済の再生の狼煙、なのか。あるいは長き経済低迷時代の始まりなのか。それなりのプロセスによって耐えうる痛みでバブルをつぶすのか、プロセスなきバブル崩壊に突入するのか、あるいはやはりバブル崩壊を延期してさらに膨らませるのか、いずれにしろ今年、中国経済は大きな経済の分岐点に突入する。

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