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シリーズ「活力再生需要を事業化する」17〜企業による自給自足の挑戦 −船井総研の農業研修−〜

ロングランシリーズでお送りする「活力再生需要を事業化する」 本日のエントリーは第17弾となりました。前回(14〜16)までは農業事業そのものを本業とする集団(企業)の成功・取組事例を紹介しました。
今回お送りするのは、本業ビジネスを持ちながらも、農業に可能性を見出す企業の取組みをご紹介します。
なぜ、営利体である企業が“農”に取組むのか?その革新に迫っていきます。
[1]
画像は、[ 船井総合研究所 ] 農業ベンチャークラブ活動報告 [2]さんからお借りしました。
では、恒例の過去のエントリーです。
新シリーズ「活力再生需要を事業化する」〜活力源は、脱集団の『みんな期待』に応えること〜 [3]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」2〜ワクワク活力再生!〜 [4]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」3〜老人ホームと保育園が同居する施設『江東園』〜 [5]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」4〜企業活力再生コンサル〜 [6]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」5〜企業活力再生需要の核心は「次代を読む」〜 [7]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」6〜金融、ITビジネスはもはや古い?!新しいビジネス“社会的企業”〜 [8]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」7〜社会起業家の歴史・各国の状況 [9]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」8 〜社会的企業を支える「アショカ財団」〜 [10]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」9〜『生産の場として、儲かる農業』が、みんな期待に応えるのでは?〜 [11]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」10〜就農定住の成功事例 山形県高畠町〜 [12]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」11〜農業参入が企業の社会的使命となる〜 [13]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」12〜農業は医療や教育と同じく人類(集団)にとって不可欠の事業であり、脱市場原理の最先端可能性といえるのでは?〜 [14]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」13〜コンセプトは、『私、気付いたら就農してたみたいです♪』かな? [15]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」14〜【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(1/3)〜 [16]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」15〜【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(2/3)〜 [17]
シリーズ「活力再生需要を事業化する」16〜【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(3/3)〜 [18]
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◆1.企業が“農”に取組む理由(ワケ)
冒頭にも述べたようになぜ企業が、“農”に取組むのでしょうか?そこにはどういった理由or目的があるのでしょうか?
るいネットからの引用投稿を紹介します。

企業による自給自足の挑戦 〜船井総研の農業研修〜
経営コンサルティング会社・船井総合研究所の環境ビジネスコンサルティンググループでは、企業の自給自足に向けて、今年から社員の農業研修を行っているそうです。
 最近では公共事業の削減を受けての建設業者の農業参入や、新たな流通システム構築による農業再生といった流れは珍しくなくなりましたが、企業の自給自足という視点で農業に取り組むケースはまだ少ないのではないでしょうか。
 同グループの部長である菊池功氏がブログの中で、同社の農業研修の目的・主旨・狙いを語っているので、紹介させて頂きます。「企業としての自給自足〜エコライフを実践する〜」 [19]からの引用です。
********************************
究極的には、
「最低限の食料の自給自足を達成する」
ことが出来れば素晴らしいと思っている。
企業農園を作って、社員持ち回り制で農作物を栽培管理して、
それを社員、及び、家族に分配して、
必要最低限の食料を自給自足的に確保したいと思っている。
また、都会生活をしながらでも、農作業に携わることで、
自然の恵みやありがたさ、逆に、難しさを体で覚えることも目的の1つである。
さらに、社員が一丸となり農作業に従事することで、
「農」や「食」を通じて、一体感・連帯感も感じることが出来る。
一方、視点を変えて、経営者発想で言うと、
経済状況がもっと悪くなって、
仮に、給料を下げざるを得ない状況になっても、
必要最低限の食料を支給することで、社員の暮らしを安定させる、
いわゆる、“現物支給の体制を作る”ことでもある。
地方の企業で、社員が兼業農家ならば、
食べていくことだけ考えれば、何とかやっていけるかもしれない。
しかし、土地も物価も高い都心部で、
賃貸マンションに住んでいるような若手社員の場合、
あるいは、小さな子供を持つニューファミリー的な社員の場合、
必要最低限の食料が確保されているというのは、
一にも二にも生活の安定につながる。
輸入に依存した食生活から脱皮しなければ、
本当の安定生活は作れない。
そして、農薬・化学肥料に染まった農作物に依存し過ぎては、
本当の健康的な生活は得られない。
  “自給自足”
  “地産地消”
  “身土不二”
  “LOHAS”
  “持続可能”
そういうライフスタイルを目指したい。
そして、そういうライフスタイルを目指しながら、
環境ビジネスを追求していきたい!
日常のライフスタイルがエコと全く縁遠い人が
本当の環境ビジネスを追求できるとは思えない!
今、出来ていたとしても、
それこそ持続可能なビジネスモデルではないと思う。
今回、約3か月間、農業研修を行って分かったことだが、
20〜30名程度で、上手に社員持ち回り制で栽培出来れば、
1人が月1〜2回、農地に行くことにより、
最低限の農地管理は出来るようだ。
(毎週末、担当の誰かが農地管理をする)
普段はビジネスとしてのコンサルティング活動、
月に1〜2回は、持ち回り制で農場に赴き、エコライフを目指した農作業、
そして、
収穫時には、全メンバーが一同に会しての収穫祭、
とりあえずは、このようなスタイルを確立したい。
今年は、あくまでも、研修、
来年は、米作りにもチャレンジして、野菜類は少しずつ自給自足、
3年後には、野菜に関しては本格的な自給自足、
そして、5年後には、胸を張って“自給自足”と言えるようにしていきたい。
以上のような活動を通じて、
船井総研自らがモデル(実験台)となり、
未来型企業のあり方を新しく作っていきたい。
そして、他の多くの企業にこの取り組みを提案していきたい。
これが、この農業研修を行う目的である。
るいネット [20]


引用元の【環境ビジネスコンサルタントのパイオニア!】 [21] の運営者である菊池功氏は、(株)船井総合研究所の執行役員で「環境ビジネス」を専門にコンサルタント業務を担っている方のようです。
名立たるシンクタンクである船井総研。彼らが“農”に取組む理由をまとめると以下のようになります。
  1.「最低限の食料の自給自足を達成する」
  2.「農を通して自然のありがたさを知る」
  3.「農を通して自然や農作業の難しさを知る」
  4.「社員の一体感」
  5.「来る不況のための現物支給体制の構築」
  6.「輸入依存の食生活からの脱却〜安定生活」

これをるいネットの大きな概念区分に倣って置き換えると、
日本経済の市場縮小を見据え、企業集団(生産集団)とそこから分離された家族(消費するだけの集団)とが生き残るための自給自足。またそのプロセス上にある生産集団と消費集団との融合=共同体の礎づくり、そのために“農”を通して自然外圧に触れ、協働作業を通した共認充足を築く試み
と言えます。以下の菊池氏の言葉からもそれが読み取れます。
これまでは、「仕事の追及=家族の離散」になりがちな構図だったが、
これからは、「仕事の追求=家族の集結」を目指した方が時代に合っているだろう。
【環境ビジネスコンサルタントのパイオニア!菊池功ブログ】  [22]
◆2.企業が取組む“農”のビジョン
船井総研が“農”に取組むに至った背景と、更にその背後にある時代の読み方を紹介します。

多少の浮き沈みはあるが、大きな世の中の流れは、
低エネルギー化であり、“省”消費型であり、
リユース・リサイクル・循環型に移らざるを得ない。
すると、企業の売上・利益は落ちていく。
その中では、現実的に社員の給料は落とさざるを得なくなる。
少なくとも、これから、日本国民全員の給料が青天井でドンドン上昇していく世の中になるとは考えにくい。
給料を下げざるを得ない状況の中、企業はどういう経営をすべきか?
究極は、社員の最低限の食料を確保してあげることだと思う。
つまりは、食材の現物支給である。
自給自足用の企業農園を作り、農産物(もちろん、有機無農薬)を栽培して、
社員に提供していくことだ。
社員には、週4〜5日は仕事をしてもらい、
週の1〜2日は田畑に出て農作業してもらう。
時には、社員の家族にも手伝ってもらう。
敢えて、家族の触れ合いを持たせるわけだ。
(中略)
バブル時などは、福利厚生ということで、
リゾートマンションだとか、リゾートホテルだとかを、
企業が競って購入していったことがある。
しかし、そんなことをするよりは、
企業農園でも作った方が福利厚生的にもより先進的であると思う。
土に触れる・・・、自然に触れる・・・、食に触れる・・・ことで、
自然界の偉大さ、凄さ、ありがたさ、難しさも体感できる。
感謝の念、畏敬の念も感じることが出来る。
我々、現代人はあまりにもそれを忘れてしまっている。
競争、マネー、売上、借金、数字、しがらみ・・・・・、
そういったものに振り回され過ぎている。


 リンク [22]
バブル時の事例など私権華やかりし時代の終焉と、共認時代の到来、そのためのカギとなる共認充足(協働、人間関係=同類圧力、生産+消費の場の融合、感謝等の本源規範)の重要性についても言及しています。
そして、市場縮小を迎えた社会における“省”消費型という脱市場社会への示唆。
昨今注目の集まっている“農”に、企業が取組む意義を見事に提示してくれています。同時に“農”という新たな事業への取組みの背後には、確かな時代の読みがあったということを上記引用文は示しています。
この企業による先端的な取組みを受けて、次回は企業に求められる心構えは何か?をお送りします

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