2010-09-07

シリーズ「活力再生需要を事業化する」14〜【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(1/3)〜

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「活力再生需要を事業化する」シリーズの第14回!
過去のエントリーは以下を参照ください。
新シリーズ「活力再生需要を事業化する」〜活力源は、脱集団の『みんな期待』に応えること〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」2〜ワクワク活力再生!
シリーズ「活力再生需要を事業化する」3〜老人ホームと保育園が同居する施設『江東園』〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」4〜企業活力再生コンサル〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」5〜企業活力再生需要の核心は「次代を読む」〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」6〜金融、ITビジネスはもはや古い?!新しいビジネス“社会的企業”〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」7〜社会起業家の歴史・各国の状況
シリーズ「活力再生需要を事業化する」8 〜社会的企業を支える「アショカ財団」〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」9〜『生産の場として、儲かる農業』が、みんな期待に応えるのでは?〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」10〜就農定住の成功事例 山形県高畠町〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」11〜農業参入が企業の社会的使命となる〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」12〜農業は医療や教育と同じく人類(集団)にとって不可欠の事業であり、脱市場原理の最先端可能性といえるのでは?〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」13〜コンセプトは、『私、気付いたら就農してたみたいです♪』かな?

 前回は、農業に対する期待感にスポットを当て、その人々の期待にどう応えていくのかという方向性について扱い、就農を思考する若者の意識と農業従事者の意識の違いを見ていきました。その中で、活力再生需要を事業化する可能性の一つとして「農業」を考えた場合、「需要発ではなく供給発」で考える必要性があるということが見えてきました。
つまり、「農」に関心を寄せる人々に対して、農業がどんな充足・可能性を彼らに与えられるのか?供給発で考えていくという意識転換こそ、今の農業従事者に一番求められているわけです。
そこで今回は、需要発から供給発へと転換した新農業ビジネスの成功事例を全3回に分けて紹介していきたいと思います。
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三重県阿山町にあるユニークな観光農場「伊賀の里モクモク手づくりファーム」
人口8500人の小さな町に立地しながら、年間50万人もの観光客が訪れています。
地元産の豚肉を使ったハムやソーセージのほか、パンや地ビール、野菜ジュースなど手作り農産物を製造販売するだけでなく、レストランや温泉施設、結婚式場まで備えた一大テーマパークとして、人気を集めています。

決して恵まれた場所にあるわけではありません。しかしファームへの来場者数増加や、販売する加工品・農産物・ギフトの売上げ向上と共に、地域と農業を活性化してきています。
いったいそれはどのように実現されてきたのでしょうか?さっそく見ていきましょう。
【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(1/3)からの引用です。

●ポイント
まえがき
1、「何もない!」全国どこにいっても聞かされる言葉。しかし、すべてを「ある」に変えたのがモクモク手づくりファーム。
人が集まる、特産品がある、若い人が来る、・・・これは与えられたものではない。創り出したところに意義がある。
第1章 「モクモク手づくりファーム」の原点
1、小さな農場に五〇万人もが来訪
1)パン工房の人気の裏には、やる気を引き出させ、既成にとらわれない展開がある。
 店をよく観察していると、客への対応も細かい。みんな言葉もはきはきとしていて、個々のお客さんに合った対応をしている。
 社員もアルバイトも会社のコンセプトをわかっている。マニュアルはない、お客さんとの会話を大事にしている。
 木村さん(社長)は、終始笑みが絶えない。ただ、こだわりは半端じゃない。パンは素人だが、きちんと貫くところを貫かないと地域のものが本物にならないという事をよく知っている。
2)「地産地消」「身土不二」
 「地産地消」「身土不二」が原点。
 農家自身が生協やスーパーなどの店頭に立って、自らがチラシを配り、宣伝し、直接消費者に試食してもらい、販売を経験させてもらい、消費者と生産者が直接触れ合う機会が原点。
第2章 信頼のブランド確立まで
1、ファームの足取りと現状
1)「伊賀の里モクモク手づくりファーム」は、おしゃれなリゾート施設のように見えて農業を主体とした、生産と加工、販売までを行う農業公園。
2)施設は、地場野菜花市場・農村料理の店・ホットドッグの店・焼肉専門館・コロッケの店・モクモクショップ・ぶたのテーマ館・バーベキュービアハウス・ミニブタハウス・小さなのんびり学習牧場・ウインナー専門館・生ハム専門館・フランクフルトの店・地ビール工房ブルワリー・麦芽工房・ヘルシージュースの店・手づくり体験教室・小麦館・ビアレストラン・野点モクモクの湯など。
3)概要
1988年開業。年間50万人の人が訪れ、売上げは25億円。
2001年に温泉開業。社員80名、パート100名。平均年齢27.5歳。
入場料400円。
ファーム以外の販売網は中部、近畿の百貨店、スーパーの直営店。
生協、農協。
2、地元でブランドを確立
1)自ら作り上げた安全、安心ブランドとしての「伊賀豚」の創出と人気、そして自ら販売する事により確かな手ごたえが基礎。そこから、ハム、ソーセージ作りへと発展。
2)まず、ここに来てもらって、自分たちの工場を見てもらって、試食してもらって、話を聞いてもらって徐々にファンを増やして行く事を考えた。そこで、料理教室を開始、偶然にウインナーを作りたいという人が現れウインナー教室が始まった。この消費者からの提案を原点としてウインナーつくりを開始。
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3)「会員制がよかった。ウインナー作り教室と、自分たちの消費者を組織していくという、この成功が要因でしょうね。でもね、最初は会員と言っても身内ですよ(笑)。特典というのはね、要するに割引。でも割引だけじゃ面白くない。だから、コンサートとか自分達でイベントを始めたんです。リピートしてもらうようにしようと。リピート対策を含めイベントを行い、そこから会員を増やしていったんです。」
「驚くことにはね、ウインナー教室がまたたく間に広がった。口コミなんです。」「人が来るとモノが売れる」
4)足元から商品を見直し、地元の人の信頼を勝ち得、地元からブランドを築く。そして、直接消費者の声を吸い上げ、それを形にしていく。ここは見事なまでのマーケティングがあった。
3、成功の原点はものづくり
1)最初に伊賀豚という信頼のブランドづくりを地元から始めるという戦略の成功。そして体験教室とバーベキューという消費者との交流。
 モクモクの発展要因は出発の時点で揃っていた。
2)農業公園のきっかけは人が集まるということ。
 コンセプトは自分たちで確かめ、生み出すという基本をきっちり守った。観光に重きをいているところは失敗している、成功しているところは、そこにものづくりがあるということ。
3)地元で麦を作り、地元でハムを作り、ここで加工して販売していく。その当初に出発した基点がよかった。だから消費者が指示してくれる。
4、こだわりのビールづくり
1)小麦から麦芽まで地元で作る地ビールが農業公園オープンと同時に誕生。
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5、なんにでもチャレンジ
1)最初はみんな素人でやったから、行列はできるわ、ビールもレストランも待たせるわで、もうお客さんから怒鳴られました。なかには「金返せ」まで言われた。
 しかし、お客さんのクレームにも。毎回。即座に取組んで対処し、改善してきたからトラブルの教訓も生きている。
2)モクモクは全部農業を柱にした。いままでは農業はメーカーやスーパーの下請けだった。そうじゃなくて、脱下請けという考え方。ものづくりに挑戦してきたんです。未熟ではあるけれど、確実に伸ばしてきた。でも生産、販売はある程度限界はある。そこを品目化しながら、枠を広げてきたんです。
 モノとソフトがうまく噛み合って、モノだけでは絶対に生まれない広がりをモクモクは持っている。
3)ここになにかあるから売ろう。売れるものからなにをつくろうか、という発想がないと生き残れません。それには知恵と情報がいる。付加価値のあるもの、オリジナリティーのあるもの、そういうものをつくっていく必要がある。
6、手づくり体験の楽しさ
1)いまも一番の人気はウインナーの体験工房
2)園内に自分の工房があるから、さまざまなバリエーションで食材を新しい商品として生み出す事が出来る。イチゴ摘みから大福づくりまでを一つの商品とするこの試みはまさにモクモクの懐の深さと柔軟性を物語る。
〜続く〜

モクモクファームの地元の信頼のブランド確立までをわかりやすく図解化してみると、まず生産から消費までの「農」のプロセスの中で生産者と消費者が分断されずに相互に関わりあっていることが見て取れます。そしてその中で徐々に信頼関係が築かれ、生産と消費が一体となった活力再生の場につながっているのが分かります。

さらにこのような農業を中心とした新ビジネスの実現によって、「農」がもたらす多面的な活力再生の可能性の実現がより具体的に見えてきています。(地域の活力再生、教育効果etc)
“モクモク”代表:木村修氏講演㊤より引用

なぜ農協の脱藩組がモクモクをやり始めたか。三重県が発祥の大手スーパーに亮り込みに行ったのが契機だった。私自身、初めて売り込みに出かけて、農協同士が産地間競争で戦っているのが分かった。
当時、豚の販売をしていたが、主産地の鹿児島や宮崎などからも売り込みに来ていて、いつも天秤にかけられる。そこで同じバイヤーに向かって商談すると、「買ってもいいが、産地(九州)と値段を合わせてくれますか」と言われてしまう。値段では、われわれのような零細な県は負けてしまう。同時に、大手商社も輸入豚を売り込んでいる。国内はもとより、海外競争にもさらされていることを感じた。
 そこで、消費形態を地域に根差そう、生活圏エリアの中で自分たちのものを買ってもらおうと考えた。いまで言う「地産地消」だ。農協時代、消費者アンケートを行ったことがあった。「地元の物を食べたいですか」と問うと、何回やっても7割以上の人が「はい」と回答してきた。潜在的二ーズはあるのに、流通形態がそれに対応していなかった。だから、地域の中で物を売っていくのが生き残りのカギだと考えた。地域内なら生産方法も見せられるし、交流もできる。つまり「安全・安心」だ。”

 ”モクモク”代表:木村修氏講演㊦より

≪交流できる範囲基本≫〜理解され「共感してもらう時代」〜
当社の直営レストランも好調で、最近は東京からもたくさんのオファーが来る。しかし絶対に進出しない。生活圏エリアで、交流できる範囲で事業するのが基本。イベントがあれば来てもらえる範囲でないといけない。伊賀自体は名古屋と大阪の真ん中にあり、交通は至便。年間50万人に来てもらっている。
「モクモクネイチャークラブ」という会員制度も行っている。大事なのは、作る者と食べる者がどう連携し融合していくか。会員が4万世帯だから、コメなら1世帯1俵でも4万俵要る。20年前からコツコツと会員を増やしてきた。コメは100町歩。コメ、野菜は自分たちだけでなく、地域の人にも作ってもらっている。イチゴやブルーベリー、ブドウなども栽培しており農地は地域の人が離農した跡地を活用ウチがその受け皿になっている。
地元ではすでになくなっていた酪農も復活し、牛乳のほかヨーグルト、アイスクリームを作っている。地ビールについては、麦だけでなく麦芽をつくる工場も持っている。食育は専門のスタッフが4人。イチゴも食べ放題はしない。ウチの場合は、畑に入る前に30分間の勉強がある。豚も1頭解体し、どこの部位を食べているかを教える。豚肉を食べるということは、豚の命をいただいているのだということを教え、食べ物の価値を学ぶ。
子どもたちは、乳を搾って初めて牛乳を知る。母牛が苦労して子を産み、どれだけの草を食べて初めて乳が出るか。みんなが「水より安い牛乳がかわいそう」と言う。これが食育の力だ。
これからは、食べていただく人たちに自分たちの存在をどう知らしめ、理解してもらうか。それを「共感してもらう時代」だろうと思う。人の金儲けは誰も応援してくれない。しかし良い考えや良いことに挑戦しているところは応援してもらえるし、事業が成長していくのではないか。 今後は、農業のカテゴリーを破り、医療・福祉・教育分野へも挑戦していきたい。百聞は一見にしかず。関心のある方はぜひ見に来てほしい。

現在モクモクファームには毎年若者が就業や研修に訪れ、今や地域一帯の農業を担う存在になりつつあります。消費者と生産者の交流の場となったモクモクファームが魅力的な農場に成長したことで、観光農園の運営・加工・料理・農業など、様々な種類の雇用を生み出し、新たに取り込まれた若者は、ファームに新しい企画やアイデアを持ち込み続けています。また内閣府 地域社会雇用創造事業 地域密着型インターンシップ研修も実施されています。新しい働き手は、モクモクの魅力を向上させ、ますます外部からの来場者や、モクモクファームのサポーターとも言うべき人々を増やし続けています。
リンク→内閣府 地域社会雇用創造事業 地域密着型インターンシップ研修(伊賀の里モクモク手づくりファーム(三重県伊賀市))

次回は、この活況を呼び込む運営方法の中身を具体的に見ていきたいと思います!
お楽しみに!!
リンク→伊賀の里モクモク手づくりファームHP
<参考>
 リンク→”モクモク”代表:木村修氏講演㊤ ㊥ ㊦

List    投稿者 d0020627 | 2010-09-07 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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 wholesale bags | 2014.02.10 15:37

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