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連載!『中国は誰が動かしているのか?』 10 中国軍(人民解放軍)についての分析

中国は誰が動かしているのか?連載記事が増えてきました。いままでの記事一覧です。
連載開始!『中国は誰が動かしているのか?』 1 — プロローグ— [1]
連載!『中国は誰が動かしているのか?』2.中国ってどんな国1 [2]
連載!『中国は誰が動かしているのか?』3.中国ってどんな国2 [3]
連載!『中国は誰が動かしているのか?』4 欧米の闇勢力による対中国シナリオは? [4]
連載!『中国は誰が動かしているのか?』5 欧米の闇勢力と中国内部派閥の関係は? [5]
連載!『中国は誰が動かしているのか?』 6 19C中国に進出する英金融資本、中国の闇勢力が結託して倒清へ [6]
連載!『中国は誰が動かしているのか?』 7 中国に設立された銀行の歴史から英米金融資本家と華僑・客家及び中国政府との関係を見る [7]
連載!『中国は誰が動かしているのか?』 8 力を付けていった中国共産党の背後には誰がいたのか? [8]
連載!『中国は誰が動かしているのか?』 9 鄧小平編 [9]
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★今回は、中国の軍部について分析します。
急増し続ける軍事費、尖閣や南沙諸島などの周辺国との摩擦の拡大、チベット・ウイグルなど内乱の鎮圧。アフリカでの資源確保や農地開発・・・・。背景に軍部の影が見え隠れする例は枚挙に暇がない。
・・・どうも中国の軍部はかなりの独立性と政府に対する圧力を加えていそうだという予測はできる。
中国の軍部は政府とどのような関係・構造になっているのか?どのような力を持っているのか?
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 中国の現行軍区 画像は リンク [10] よりお借りしました


●中国軍は半ば独立した軍閥の集合体
中国は有史以来、統一国家が崩壊すると幾つかの国(軍閥)に分立することがしばしば見られた。近代になってもそれは同様で、半植民地状態の中でも幾つかの軍閥が地方に割拠していた。
現在の中国軍もその軍閥の流れを引いているのではないか?
事実、共産党の中国人民解放軍も、その成り立ちからして、軍閥の寄り合い世帯という性格があるようだ。
  リンク [11] より

中国における共産革命の特徴は、毛沢東、朱徳、葉剣英らが地縁・血縁を利用してかき集めた私兵を束ねて紅軍を結成し、武力で政権を簒奪したことにある。
中国軍は生まれながらにして「軍閥の寄り合い世帯」という性格を持っている。毛沢東は、これら軍閥が連帯しないよう7つの軍管区に分割し、軍管区同士が連携するのを厳しく禁止した。

さらに、中国軍が独自の行動をとらないよう「党が軍を指導する」という原則を決めた。党中央軍事委員会主席を共産党総書記が兼務することで、いわゆる「シビリアンコントロール」を行う原則を打ち立てた。だが、理念が実現されたことはない。
文化大革命、天安門事件は、事実上の最高指導者であった毛沢東や鄧小平が共産党総書記の職権を無視した典型的な事例である。文化大革命は反主流派の毛沢東が、主流派の劉少奇や鄧小平らを追放するクーデターであった。文化大革命で伝統文化がすべて破壊されたほか、虐殺され又は餓死した者が3000万人も出た。
被害を被ることがなかったのは中国軍だけであった。毛沢東の迫害を恐れた鄧小平は、葉剣英元帥が支配する広州軍区に逃げ込み保護された。あの毛沢東でさえも中国軍を統率・支配することができなかった証拠だ。

●中国で騒乱を起し、組織を拡大する
その半ば独立性を持つ軍は、自己組織拡大のためにわざと騒乱を起したりしているし、政府の方針とは別に動くこともしばしばだ。
  リンク [11] より

中国軍は、党中央や政府に無断で、我が国領海内に原潜を不法に侵入させたり、衛星撃墜実験を行ったことがある。さらに、中国政府が承認した「米空母キティホークの香港寄港」に横やりを入れ、直前になって中止させたこともある。
同空母が母港である横須賀米海軍基地に戻る途中の台湾沖で、駆逐艦と潜水艦で進路を妨害し、27時間も立ち往生させたことがあった。
(中略)
チベット・新疆ウイグル自治区の騒乱を起したのは誰か。騒乱が多発することで中国軍の存在価値がストップ高になる。共産党一党独裁政権は中国軍の支援がなければ一日も政権を保持できないという気分が充満する。軍事予算は満額回答、兵士の俸給は最高50%引き上げられた。折からの就職難を奇貨として、本年度は大卒者12万人を軍が雇用することになった。
中国は「共産党が軍を指導する」建前を捨て、軍事がすべてに優先する「先軍国家」に転換しつつあるのではないかという疑問がわく。

チベット騒乱の際、中国軍の兵士が僧侶姿に変装!チベット暴動驚愕の真相http://douga-kan2.seesaa.net/article/91582487.html 中国軍による自作自演か?というニュースが流れたが、上記のような構造と考えるとなるほどと思う。
●急増する国防費、拡大する中国版軍産複合体
このようにして、中国軍はどんどん軍事費を拡大させてきた。そしてその膨大な軍事費から発注される軍需産業も派生させている。
リンク [12] より

中国の軍事力の増強は尋常なものではない。その国防費の毎年の伸び率は平均15%であり、それは21年間にわたり続いてきた。始まりは1989年、天安門事件があった年である。士官と兵士の生活改善という名分だった。民衆に向かって武力を行使させたトウ小平としては、陸軍を慰撫しなければならなかったのであろう。
そして、そのトウ小平の指名により党中央軍事委員会の主席になった江沢民は、革命戦争と無縁、軍とも無縁だったことから、軍の機嫌を取るため国防費を増やし続けなければならなかった。
(中略)
江沢民は04年に中央軍事委主席の椅子から退かざるを得なくなったが、軍事費の15%の伸び率は落ちなかった。

中韓を知りすぎた男 [13]より

何故、中国政府は軍を完全に掌握できないかといいますと、軍隊は各軍管区ごとに独立採算制で運営されており、軍を維持するために物資等の調達に要する費用などを独自に調達しています。
そのために軍は各種の事業を行って資金を調達しなければなりません。だから国有企業の多くが軍と直結しています。人民解放軍の傘下には,軍需産業にほかに情報通信、繊維、ホテル、その他のさまざまな業種があり利益を吸い上げています。まさに経済力を持った大商社のような軍隊なのです。
このような商社軍隊が七地域に分かれて実質的に中国を支配しています。だから経済的に自立している軍隊だから中国政府は軍を100%コントロールできないのです。

中国軍が独立採算ということはない、装備などの莫大な費用は国家予算から出ている。
しかし、驚いたことに中国軍(人民解放軍)は、軍需産業と様々な業種の子会社を抱え自動車なども作っている、軍自体が一大財閥化していることは確かなようだ。軍は一つの組織であり、複合企業であり、財閥である。アメリカの軍産複合体と異なるのは、トップが金貸し・金融資本ではなく軍であるというところ。
当然、軍独自の諜報機関も持っており、政府・国務院の諜報機関とは別にある。(参照:るいネット [14]
●新たな4大軍区案と中国の勢力分析
2009年気になるニュースが発表された。
中共軍部、四大戦略区の設立を急ぐ [15] 
【大紀元日本8月5日】

香港の政治誌『鏡報』によると、8月1日の中共解放軍設立記念日に当たって、中共軍部は重大な軍事改革を積極的に進めているという。改革は、現行の7大軍管区の撤去、戦略方向による4大戦略区の設立、軍部及び各省から選抜されたメンバーで軍事委員会を設立、それぞれの戦略区を管轄していくなどの計画が含まれている。中共政権発足以来、最も大きな軍事改革であり、2012年の中共第十八党大会の人事準備に向け、胡錦濤派、江沢民派および太子党の権力と勢力の再分配であると見られている。

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 四大戦略区案 画像は リンク [10] よりお借りしました
この間、北京でオリンピックが開かれ、昨年上海で万博が開かれ、そして広州でアジア大会が相次いで開かれた。一つの国でほぼ同時期に3つの大きな国際大会が開かれている。これは恐らく各地方勢力から公共投資・経済活性化などを期待した強い引き合いがあったにちがいない。
さらに上記の軍区と重ねて見て欲しい。この大会の開かれた場所はいずれも、各軍区の中心都市である。但し西部戦略区のみこれらの大会は開かれていない。(その代わりのアメとして西部大開発?)そう考えると、中国の証券取引所が深圳、上海に次いで、今度天津(北京の軍区内)に設立されることとなったこととも符号してくる。
これらの動きは中国内部では、大きく4つの勢力(軍閥+地方政府)に分かれて勢力争いが起こっている証とも言える。毛沢東時代に軍閥を牽制するために、7つに分割した軍区が現代の勢力毎に再編成したというのがこの四大戦略区への動きではないだろうか?中国が分裂するとすれば、まずこの4つに分裂することは間違いないだろう。
また中国の首脳もこれら四つの軍区・勢力の代表と見なせるかもしれない。
鄧小平:広州閥(この時代広州の中心都市:深圳の異常な発達、華僑勢力とも重なる)
江沢民:上海閥(上海を含む湾岸部の経済成長)
胡錦涛:北京閥
・・・次期代表の習近平:上海閥でかつ軍との繋がりが強い
※こうみると内陸部の存在が薄いが、それが内陸部の発展を阻害し、多くの暴動を生み出している可能性がある。
・・・とすると、中国を動かしているのは大きく共産党系(鄧小平→エリートの団派の系統)と軍(但し独立傾向を持つ軍閥)。それに次いで有力者の子弟で利権を持つの太子党。
自勢力の拡大を目指す軍をなだめながら、中国をなんとか一つにまとめているのは、共産党エリートの団派(胡錦涛etc)の系統ということだろう。しかし次期総書記の習近平になると、軍部の発言はさらに強まると予測される。

〔補足〕
●中国版軍産複合体はアメリカの戦争屋と利害が一致、アメリカと連携してアジアの紛争を拡大させる恐れあり
最近、米ゲーツ国防長官が訪中したことに関して、
ベンチャー革命 [16]より

今回、中国政府は、中国を仮想敵国視している米国戦争屋の訪中を受け入れています。なぜなら、上記の米戦争屋の基本思想をすべてわかっているからです。
中国にも戦争屋がいて、周知のように軍事力増強に余念がありません。その中国戦争屋もウラ事情は米戦争屋と同じです。自国国民のみならず、極東周辺国向けに、中国の防衛力増強戦略の口実が要ります。そこで、極東米軍に匹敵する防衛力確保が、中国戦争屋の防衛力増強の口実となっています。
その意味において、米戦争屋も中戦争屋も見事に、利害が一致するわけです。

ゲーツが中国の誰と何を話してきたかは、分からない。
中国軍部とアメリカ戦争屋が手を握って、何らかの策略(尖閣etcの紛争)を練れば、日本は非常に危うい。彼らの罠に簡単に嵌らざるを得ないことになるだろう。その意味でも、現在の日本の属米政権では危うい。

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