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シリーズ「食糧危機は来るのか」10〜日本の農業に可能性あり!生産効率は飛躍的に向上している〜

前回のエントリー『シリーズ「食糧危機は来るのか?」9 〜兼業農家の必然性——世界に冠たる担い手システム〜』
では、兼業農家の持続的な自給率改善の実現基盤が、多様な担い手を生み出す『兼業化』というシステムにあること、そしてそこに企業が参入していくことで可能性がさらに拡がることをお伝えしました。
[1]
<北海道じゃがいも畑>
    
その意味では日本の農業はまだまだ捨てたものではありません。
しかし、マスコミや農水省は日本の食糧自給率は40%で、先進国の中で最低であると伝えられており、大衆の不安を掻き立てています。
       
果たして本当にそうなのでしょうか?
実はデータをみれば違った側面を垣間見ることができるのです。     
今回のエントリーでは、更なる日本の農業の可能性について、データを基にもう少し掘り下げてみたいと思います。
     
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1.自給率に惑わされてはいけない⇒農畜産物の生産量は増加している!
   
日本の自給率が低下し40%になった報道を受けて、多くの方は「生産量そのものが減っている」と捕らえられているのではないでしょうか?
実はこの食糧自給率という数字は日本だけが使う指標なのだそうです。(本当は強い日本の農業!書評「日本は世界5位の農業大国」) [2]
しかも40%で低いと云われるカロリーベースの数値も、畜産物については、「国産の餌を食べて育った動物だけ」が「国産」として計算されたり、減反政策で米から野菜に変えて生産高・収益を高めても、カロリーベースの自給率では下がることになります。カロリーベースの自給率には、こういったからくりがあることを意識しておく必要がありそうです
そして最も重要な事実として、実は生産量そのものは減っていないのです! 
        
以下るいネット『日本の農業に可能性あり!〜生産効率は飛躍的に向上している〜』 [3]より引用。

日本の農業に可能性あり!〜生産効率は飛躍的に向上している〜
    
マスコミで食糧自給率40%ヤバイ!と過剰に報道されていますが、日本の農業に可能性あり!と思わせてくれる記事がありましたので紹介します。
『食糧自給率の罠(農業経営者2009年1月号)リンク』 [4]より
①農作物生産量の推移 ⇒農畜産物の生産量は増加している!
日本の総農産物生産量は増えている!自給率が79%だった1960年と40%を切る前年の05年を比べてみてほしい。5100万トンから5600万トンへと500万トンの増加だ。多くの人は自給率半減と聞いて、生産量が半減していると勘違いしているはずだ。「ニッポン農家は食糧の増産に成功している」——このシンプルな事実だけで、漠然とした不安感を払拭し、頼もしい産業であると農業への認識が改められるだろう。 
②農業従事者の推移 ⇒農業者一人当たり生産量6倍になっている
農業者一人当たりの生産量は、1960年の4.3トンと比較して、06年には26トン。過去40年で6倍も生産性があがっていることが分かる。
農業者数と生産量の推移に注目すると、分かりやすい。確かに農家数は激減している。しかし、60年に1200万人の農業者が生産していた量を05年、6分の一の200万人で突破した。現実は低い生産性の農民が減り、高い生産性の農業経営者が増えているのだ。

まず生産量の推移を見てみましょう。
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ご覧のように、実は生産量は増加しているのです!
次に農業従事者の推移を見てみましょう。
[6]
以上『食糧自給率の罠(農業経営者2009年1月号)』 [4]より引用
ご覧のとおり、確かに農業従事者は減少しています。しかもご存知のとおり高齢化が進んでいます。
[7]
つまり、農業生産者は減っているにもかかわらず、総生産量は減ることなく維持しているのです!つまり専業農家の生産性が高くなっているのです。この事実を農水省は語りたがりませんが、農業生産者は頑張っているのです!この事実だけでも農業への認識は転換できると思います。
2.農業事業体の実態
    
では次に農業事業を支える事業体の中味をみてみましょう。
るいネット『日本の農業に可能性あり!〜生産効率は飛躍的に向上している〜』 [3]より引用。

③活力ある農業経営者によって日本の農業が支えられている
     
約200万の販売農家のうち、売上1億円以上の農場・農業法人が占めるのは、たしかにわずか0.25%の5000事業体。それが国内生産額8兆円の15%を稼ぎ出している。しかも過去5年で160%成長をとげているのだ。
続いて、3000万以上の農家の事業体数シェアは1.5%の3万件で、30%の国内生産額を占め、過去5年150%成長した。1000万以上の農家は7%で14万件。130%伸張し、生産額の60%を上げている。つまり、われわれの胃袋の半分以上はすでにこうした成長農場に支えられているのだ。
では、残りの180万件強の9割の農家は何をしているのか。売上100万円以下(利益じゃない!)の農家が120万件もあるのに対し、国内生産額にわずか5%しか貢献していない。

事業体の構成で最も多いのが兼業農家であり、全体の90%に至ります。
しかしこの兼業農家、売り上げは少ないが、多様な担い手を生み出す大きな可能性をもったシステムであることは、前回のエントリー [8]で取り上げたとおりです。
このシステムをうまく活用して、他業種との兼業化や企業集団が兼業農企業取り組めれば大きく可能性が開けてきます。
その上で農業従事者が減るなか、売り上げ1億以上の事業体数、3000万以上の事業体数、1000万以上の事業体数の合計が事業体数全体の8.8%でありながら、それぞれ130〜160%の成長率をとげて、国内生産額の95%を占めています。
       
[9]
      
                   
この事業体の成長率の背景には大規模化や効率化など、事業体自体の組織化があったことは容易に推察できます。
       
これらから判断すると、「農業従事者が減り食糧自給率が下がる」というと、生産高が減っているように誤解しがちであるが、実際は効率化・組織化が進んだ結果、大規模事業体による大量な生産が可能になったと考えられます。
     
このようにデータから見てみると日本の農業も可能性を秘めた産業であることが分かるのです。
     
これまでの「食糧危機は来るのか?」シリーズバックナンバーです。
(1)〜食糧危機問題の捉え方〜 [10]
(2)〜食糧危機と市場経済は両刃の剣〜 [11]
(3)〜輸出補助金というカラクリ〜
(4)
〜日本経済は再び国際収支の天井を迎えるのか〜 [12]
(5)〜食糧高騰は脱市場をもたらす契機となりうるか〜 [13]
(6)〜食糧主権を憲法に規定する動き(1)新自由主義からの脱脚 [14]
(7)〜食糧主権を憲法に規定する動き(2)新自由主義からの脱脚:番外編 [15]
(8)〜大規模な農業形態は日本の自給率改善につながるのか?〜 [16]
(9)〜兼業農家の必然性——世界に冠たる担い手システム〜 [17]
    
いよいよこのシリーズも大詰めになりました。次回のエントリーをお楽しみに!

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