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『世界経済の現状分析』【7】中国経済の現状(ファンダメンタルズ)

前回の『世界経済の現状分析』【6】中国経済の基礎知識では、中国が市場経済化に至った経緯、その後の国内状況等、中国市場経済化以降についての基礎知識をまとめました。今回は、『世界経済の現状分析』【7】中国経済の現状(ファンダメンタルズ)と題し、中国の経済(主に近年)について追及していこうと思います。
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『世界経済の現状分析』シリーズ過去記事は以下をご覧ください。
『世界経済の現状分析』【1】プロローグ [2]
『世界経済の現状分析』【2】米国経済の現状(ファンダメンタルズ) [3]
『世界経済の現状分析』【3】米大統領選の分析その1(両候補の政策の違い) [4]
『世界経済の現状分析』【4】米大統領選の分析その2(両候補の支持層の違い) [5]
『世界経済の現状分析』【5】米大統領選の分析その3(米大統領選の行方?) [6]
『世界経済の現状分析』【6】中国経済の基礎知識 [7]
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■中国のGDP
□中国の名目GDPの推移
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※名目GDPは、すべての商品・サービスに対しその年の生産数量に市場価格を掛けて算出した金額をすべて合計したもの(物価変動の影響を含む)。
□中国の最近のGDP
『excite:アジア開発銀行、中国GDP成長率を7.7%に下方修正 [9]より

アジア開発銀行(ADB)は3日に発表した経済見通し報告で、中国の 2012年国内総生産(GDP)成長率予想をこれまでの 8.5%から7.7%に下方修正した。8日付中国証券報が伝えた。
また、 2013年GDP成長率予想についても、 8.7%から8.1%に下方修正した。

■中国の失業率
□中国の失業率の推移
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□大卒就職率
レコードチャイナ:2011年の失業者は1000万人超、大卒100万人が就職できず=温首相「雇用対策最優先」表明—中国 [11]より

都市の失業率登録データによると、2011年 4.1%で、失業者は1000万人に上るという。なかでも大学生の就職問題が深刻で、大卒就職率は77.8%程度に留まる。これは、100万人余りの大学生が就職できないことを意味している。また、農村部の約1000万の出稼ぎ労働者と、都市部の数百万人に上る新たに増加する労働力もまた、就職難を深刻化させている。

□中国の不思議な統計(失業率と就職率の読み方)
KINBRICKS NOW:中国の「不思議な統計」=失業率と就職率の読み方—翻訳者のつぶやき [12]より

多くの人たちは国有企業や国家機関で働いて初めて「就職」と言えると考えており、「安定した職についている人」のことを指すと考えています。
しかし政府機関は統計の中で、これらの国有企業職員、国家機関職員のほかに、非国有企業の職員、創業している人たちや芸人、国家プロジェクトにより辺鄙な地域で職業訓練を行っている人たち、出国・留学している人たち、政府の地方プロジェクトに参加している人たちも「就業者」として数えているのです。
これが民間の認識と統計数値がかい離している原因の1つになっていると「現代快報」は分析しています。ほかに「現代快報」は功利のために大学側が統計を水増ししている可能性もあるとし、「これは公の秘密になっている」とまで報じました。

■中国の貿易
□世界の輸出額・輸入額ランキング(2010年)
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□中国の相手国・地域別貿易収支の推移
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□中国の相手国・地域別貿易総額(上位10か国・地域)の推移
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□中国の貿易(最新実態)
中国の対日本貿易1.8%減、日中問題が影 1〜9月 [13]より

中国税関総署が13日発表した9月の貿易統計によると、輸出は前年同月比9.9%増、輸入が2.4%増となり、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は276億7千万ドル(約2兆1700億円)の黒字だった。貿易黒字は7カ月連続。一方、日本との貿易総額は1〜9月に前年同期比1.8%減と低迷。中国経済の減速に加え、日本製品の不買運動が日中の貿易関係に影を落としている。

■為替
□ドル・元
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□円・元
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■地域格差の実態
□中国の都市部と農村部の所得格差の推移
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□中国の地域別一人当たり名目GDP(2009年)
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■国有企業と外資
□国有企業
中国国有企業の民営化と国有資産 管理体制 [16]より
○中国国有企業の民営化と国有資産管理体制
中央政府管理169社
国有企業全体の利益の70%を占める。
>169社と上場会社(2005年)
中央政府の監督のもと、中央政府管理の169社と地方政府は、傘下の企業を上場させる(上場企業1377社のうち72%の約1000社)。中央政府管理の169社が上場させた企業が大半、残りが地方政府管理である。約400社が民営企業と外資企業である。
中国の上場会社が経済に占める比率は欧米・日本ほど大きくない。中国経済を理解するには中央政府管理の169社にこそ注目する必要がある。
>中国の企業(2004年度)
国有企業約13万6千社(169社管理と地方政府管理)
外資企業約27万社(日系企業約2万5千社)
民間企業約1000万社(推定数)
□外資(日本企業)の「脱中国」
日本企業の「脱中国」、その理由と真意は(2)=中国報道 [17]より
>中国の要素費用の増加も日本企業の投資先変更に拍車をかけた。ボストンコンサルティンググループの報告によると、中国の人件費はその他アジアの7カ国を上回っており、ベトナムより15—30%、インドネシアより40%ほど高く、人件費がもっとも安いバングラデシュの5倍に達する。
この影響により、2011年度の日本の東南アジア地域への直接投資額は1兆5000億円に達したが、中国への投資額は1兆円にとどまった。
>日本の12年7—8月の東南アジアへの投資は1800億円、中国への投資は1500億円だった。ホンダは270億円を投資してインドネシアに自動車工場を建設し、14年の稼動を予定している。トヨタは169億円を投じタイに生産施設を建設し、13年上半期に稼動する予定だ。また、百貨店大手の高島屋は、向こう5年で東南アジアに中国の2倍となる金額を投資する計画だ。
■まとめ
・中国のGDPは、2004年頃から10%超の急激な成長率で伸びてきたが、今年に入り8%前後の成長率へとやや落ち着き始めている。
・失業率は4%程度で推移しているが、失業者の定義や統計が怪しく正確な数字は把握できない。大学就職率は77.8%程度であり、大卒生の就職難が深刻な社会問題となっている。
・輸出額は世界一位、輸入額は世界二位(2010年)となっており、米国・香港・EUに対しては貿易黒字、日本・ASEAN・韓国などに対しては貿易赤字となっている。また、今年は日本製品の不買運動により、日中の貿易関係が若干冷え込んできている。
・地域別に所得・GDPを見ると、東部(海岸の都市部)と西部(農村部)では、大きな開きがあることがわかる。東部と西部では、7倍以上の所得格差がある。
・国有企業全体の利益率の70%を中央政府管理169社が占めている。また、中国の上場会社が経済に占める比率は、欧米・日本ほど大きくない。
・近年は中国での人件費が上がってきており、日本の各企業も中国よりも東南アジアへの投資を増やしている。
以上のように、中国の経済成長は近年鈍化してきており、尖閣問題以前から日本企業は、より人件費の安いASEANへと投資先をシフトしてきています。欧州にしても同様に、リーマンショックや欧州危機以降、中国への投資は鈍化してきており、外資主導で発展してきた中国にとって、これらの動きは非常に大きく影響するだろうと考えられます。また今後内需拡大をしていこうにも、沿岸部と農村部での経済格差が大きいことなどもあり、内需主導型になるのは簡単ではないと考えられます。このような国内での問題が、今後の中国の発展に大きく作用すると思われます。
 では、中国の政治は今後どんな舵取りをするのでしょうか。次回をお楽しみに。

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