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大恐慌の足音・企業は生き残れるか? 第7回 〜セブン&アイ・ホールディングス〜

昨年の春以降、パナソニック・シャープ・ソニーの三大家電企業の経営危機、日本通販の民事再生法申請、スズキ米国法人の連邦破産法申請など、日本企業経営 不振や倒産のニュースが再び目立ち始めています。リーマン・ショック以来進んできた急激な市場縮小が、実体経済を遂に崩壊させ始めたと考えられます。
一方、経済政策「アベノミクス」で、一時的に景気回復へと向かうでしょうが、その後は再び悪化することが予想されます。
このような状況下で本当に企業は生き残れるのでしょうか?今回のシリーズではこれまで、
家電製造業(パナソニック [1]シャープ その1 [2]/その2 [3]ソニー [4]
自動車・化学・機械製造業(三菱自動車 [5]トヨタ自動車 その1 [6]/その2 [7]東レ・オムロン・ファナック [8]
を見てきました。
今回からは、小売業を見ていきたいと思います。小売業の第1回目は、街でよく見かけるセブン&アイ・ホールディングスです。

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いつも応援ありがとうございます 😀


◆セブン&アイ・ホールディングスの経営状況分析
                         
・セブン&アイ・ホールディングス企業体力分析

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製造業では、120%以上あるのが望ましいと言われていますが、小売業では、日銭が入るので流動比率が100%をかなり下回っても大丈夫と言われています。セブン&アイ・ホールディングスの場合、‘10年、’11年と落ち込みますが、110%をキープしており非常に良い割合となっています。

・セブン&アイ・ホールディングス利益状況分析
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07‘年から11’年までの5年間で売上は約20%減っているのに対し、経常利益は5%前後を維持しています。従って、経費削減により、経常利益を上げており、小売業界トップの業績となっています。
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画像はこちら [9]を参考

それでは、グループ構成と業績好調の理由を見ていきたいと思います。
◆セブン&アイ・ホールディングスのグループ構成と業績好調の理由
                          
セブン&アイ・ホールディングスは、株式会社セブン-イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社デニーズジャパンの3社が設立し、その後、吸収合併を繰り返し、グループを拡大してきました。
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セブン&アイ・ホールディングスHP [10]より)

セブン-イレブンの母体であるセブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストア事業、総合スーパー事業、百貨店事業、食品スーパー事業、 フードサービス事業、金融サービス事業、IT/サービス事業の7つの主要事業の他、専門店、製造加工、不動産/警備、出版など幅広い分野で生活に密着した 事業を展開しています。
セブン&アイ・ホールディングスHPより [10]

街を歩いているとよく見かける店ばかりですが、どのように拡大していったのでしょうか。

●セブン&アイ・ホールディングスの拡大年表

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画像はこちら [11]を参考

これほどの大グループ会社のセグメント別売上はどのようになっているのでしょうか?

・セグメント別売上高
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画像はこちら [12]


営業収益(売上高)では、波がありますが、営業利益では、コンビニ事業が全利益の7割を占め、群を抜いて良く、スーパー、百貨店の利益減をコンビニ事業でカバーしていると言えます。
現に、これからスーパーストア事業では、経費削減を図るようです。
時代を先取り、正社員を大量首切りしたセブン&アイの功罪 [13]
また、他の事業・業界では、08年リーマンショックの打撃を受けているのに対し、コンビニエンスストア業界では利益を上げていることがわかります。コンビニ業界は、リーマンショックという不況の波をどう乗り切ったのでしょうか?
◆コンビニ業界の市場動向                                    
08年のリーマンショック後、世界的不況下で、百貨店、スーパーが不振を極めていました。
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しかし、同年タスポが導入され、タスポを持たない喫煙者が次々とコンビニへ流れ、タバコのついでに商品を買う「ついで買い」の効果、まとめてタバコを買う「まとめ買い」効果を生み、コンビニ業界は売上を落とさずにすみました。
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画像はこちら [14]

しかし、09年半ば以降、これら効果が一巡し、低調となりますが、例年続く猛暑により、清涼飲料やアイスクリームなどの売上が好調となり、立て直していきます。
また、11年の東日本大震災後、買いだめ需要や計画停電などで売上が減ると思われましたが、売上を伸ばしています。

「震災特需が剥落して実力が露呈。コンビニ・スーパー業績の明と暗」 [15]より

(前略)
スーパー各社が不振な理由は大きく二つある。
一つは震災特需の反動である。昨年度は広告自粛に伴ってチラシなどを減らしたため販売促進費が減少。さらに生活必需品の特需によって、特売を減らしても販売が堅調だった。だが、今年度はこうした特殊要因がなくなった。二つ目は、業種を超えた競争が激しさを増していることである。スーパーは、ディスカウントストアの価格攻勢とコンビニの客層拡大という狭間で苦境に陥っている。
(中略)
一方で、好調なのが大手コンビニ各社だ。
背景には、東日本大震災の被災地での復旧スピードの速さなどにより「社会インフラ」としての認知度が上がったことに加え、プライベートブランド(PB)の総菜などを強化したことで、スーパーの顧客である女性や高齢者などを獲得したことがある。

◆分析結果(まとめ)                                              
最近のコンビニを巡っては、次のような話題があります。

<次代を読んだサービス(意識生産)>
百貨店の経営悪化による高級需要での客層獲得
「女性、高齢者層開拓で業績絶好調。コンビニ大量出店で第2の成長期へ」 [16]
「コンビニ、高齢者を支援 食事宅配、栄養にも配慮」 [17]

<コンビニが抱える問題(食の安全性)>
「あるコンビニの弁当やおにぎりを母豚に毎日3キロずつ与えたところ、奇形や死産が相次いでいたことが分った。」 [18]
「コンビニで売られているカット野菜 野菜不足解消した気になってませんか!?」 [19]
「添加物まみれのコンビニおでん」 [20]

今後、コンビニ業界は、店舗数は減少するかもしれませんが、利便性が高く、地域に密着している故、次代を読んだサービス(意識生産)の提供で拡大していくものと考えられる一方、震災以降高まる健康思考が進めば、いずれ「食の安全性」の壁が顕在化し始めてくると考えられます。

また、小売業を俯瞰すると、時代の流れとともに、よろず屋→商店街・百貨店→スーパー→コンビニと業態を変化させてきましたが、意識生産にシフトし、食の安全性を確保したコンビニは、地域に根付いた街の万屋に回帰していくようにも考えられます。

スーパーマーケット登場後、これまでいくつもの商店街がシャッター通りとなっていきましたが、スーパー・百貨店のシャッターが閉まる日も近いのか!?
次回は、スーパー事業の比率が大きい「イオングループ」を見ていきたいと思います

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