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【特集:デフォルト研究】(5)’13年総括、デフォルトスキムの整理

おそらく、今年最大の経済ニュースは10月の米国デフォルト危機だったのではないでしょうか?
日頃、目先の経済ニュースに目を奪われがちですが、経済ニュースの裏側には必ずと言っていいほど米国金貸しの対日戦略があります。属米路線を強める安倍自民党の暴走によって、もはや日本の命運は米国に握られてしまっていると言っても過言ではありません。
国際情勢を大局的に見るという観点から、米国がデフォルトするのかどうか?というのは、日本を直撃する大問題です。
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<バーナンキFRB議長>
とりあえず10月のデフォルト危機は回避されましたが、危機が去ったわけではありません。当面来年2月のデフォルト危機再燃がどうなるのか?が、来年の大きな焦点となるでしょう。
そこで、今回は、米国金貸しの対日戦略という観点から今年1年を振り返り、これまで研究してきたデフォルト事例を整理して、来年を展望してみたいと思います。
過去記事は以下をごらんください。
(1)デフォルトの歴史 [1]
(2)日本の終戦直後 [2]
(3)デフォルト事例(ロシア財政危機) [3]
(4)デフォルト事例(アルゼンチン財政危機) [4]
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■’13年を振り返る
アベノミクス、参院選、消費税値上げ、東京オリンピック決定、原発汚染水問題、TPP、秘密保護法案、日中対立、徳州会事件等など、今年も政治経済を巡るニュースはいろいろありましたが、それらは全て安倍自民党の暴走によるものであり、その背後にはことごとく米国金貸しの対日戦略があります。
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<特定秘密保護法案の強行採決>
デフォルト事例で詳しく見て行きますが、異次元の金融緩和と財政支出(アベノミクス)によって、財政破綻に追い込み、その一方で国民が知らない間に法制支配する下地を整えておき(TPP、秘密保護法案)、国債暴落(デフォルト)を仕掛けたうえで、産業支配・企業支配(原発、医療等)に入るという手口は、金貸しの常套手段です。(ここでは、全てのニュースを分析するいとまはありませんが、一見バラバラの点に見えるニュースは、線でつないで構造的に見ておく必要があります。)
米国覇権の衰退に伴って、米国金貸し(ロックフェラー)は追い詰められており、追い詰められた悪あがきが、なりふり構わぬ対日支配戦略の強化と見るべきです。今、日本は大衆の充足基調とは裏腹に、属米路線を強める特権階級の暴走によって、危険な状況になりつつあります。金貸しによって国債暴落(デフォルト)、或いは国際緊張激化が仕掛けられる可能性は十分あり得る状況です。
日本が金貸しの言いなり(or一蓮托生)になって破局への道を進むのか、それとも金貸し支配から脱却して、日本人の新たな可能性を模索するのか、その大きな分岐点が米国がデフォルトするのどうか?→日本もデフォルトに追い込まれるのか?という問題なのです。

■デフォルトスキムの整理
果たして、米国はデフォルトするのかどうか?→日本もデフォルトに追い込まれるのか?を占うための題材として、これまで調べた事例から、デフォルトのスキムを整理してみます。
ここでは、経済を破局状態に追い込んでから産業支配・企業支配をするという金貸しの手口を念頭に置き、いったん話の枠を広げて考えてみます。デフォルト以外にも様々なスキムがあり、概ね以下のように整理できると思われます。
1.デフォルト(債務不履行宣言)
2.ハイパーインフレ
3.帳簿操作による借金帳消し
それでは、一つ一つ、そのスキムを見て行きましょう。

1.デフォルト(債務不履行宣言)
様々な分類方法が考えられますが、ここでは「誰を守るためのものだったか?結局、誰が得をしたのか?」という観点で整理してみます。
①国家権力を守るためのデフォルト(古典的デフォルト、国家>金貸し)
・武力権力によって、貸し手(商人等)が強制的に債権放棄をさせられ、借り手(お上)の借金がチャラになるケース。
・例えば、日本では室町時代〜江戸時代に「徳政令」がよく出されているが、これは武力権力を背景にしたお上による借金の踏み倒しである。
日本における徳政令の歴史 [5]>参照
・結局、得をしたのは幕府や藩、損をしたのは商人等であったことを考えると、このスキムは国家権力を守るためのもの(国家>金貸し)であったと考えられる。

②国家が銀行(金貸し)を守るためのデフォルト(日本の終戦直後、国家≦金貸し)
・近代国家では、国家が武力権力を背景に一方的に借金を踏み倒すことはできない。国民の「財産権」を侵害することは法律と国民世論が許さない。そこで、露骨な踏み倒しに見えないようにカモフラージュされたスキムが日本の終戦直後の新円切り替えである。
・しかし、日本の終戦直後の新円切り替えは、事実上のデフォルトである。形式上は、「財産税」という名目で国家が「徴税権」を行使したという形が取られているが、実質上は預金者(銀行を通じた国債購入資金の貸し手)の財産を没収したものである。「財産税」で償還しきれない国の債務残高は結局デフォルトされ、国の借金は踏み倒されている。
※手順的には、一番初めに「預金封鎖」と「新円切り替え」が強行されているが、これは、預金封鎖により、一定金額以上の引き出しを制限して国民の預金を差し押さえると同時に、新円切り替えにより、国民が隠し持っているタンス預金等のお金まで全て出さざるを得なくさせる没収のテクニックである。
【特集:デフォルト研究】(2)デフォルト事例(日本の終戦直後) [6]>参照
・結局、国民から没収した預金を充当させることによって、国の借金をチャラにする=国債を引受けていた日銀を存続させると同時に、民間金融機関等の経営再建・再編が図られているところからみて、銀行(金貸し)を守るためのもの(国家≦金貸し)であったと考えられる。

③金貸しの仕掛けによるデフォルト(ロシア、アルゼンチン等、国家<金貸し)
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<ロシア・ルーブル紙幣>
・金貸しの仕掛け⇒経済支配によってデフォルトに追い込まれるケース。ロシア、中南米諸国等の後進国に多い。現代(戦後)のデフォルトの典型。
・社会主義経済の自由化、後進国の経済発展など、きっかけはいろいろあるが、いずれも金貸しが入り込んで政権を裏で操り、IMFの指導を受け入れさせたりして、経済が金貸しの支配下に置かれるのが共通。
・新自由主義に基づいて、緊縮財政、規制緩和、金融・貿易の自由化等をさせるのがワンパターンの常套手段で、IMFの指導は殆ど成果が上がらず、財政赤字、貿易赤字が膨らんでデフォルトに追い込まれる。
【特集:デフォルト研究】(3)デフォルト事例(ロシア財政危機) [7]>参照
【特集:デフォルト研究】(4)デフォルト事例(アルゼンチン財政危機) [4]>参照
・デフォルトに追むことによって、為替や株等を暴落させ、IMF管理の強化等を通じて、その国の支配力を強めて収奪するのが狙いだと考えると、金貸しの仕掛け(国家<金貸し)によるものと考えて間違いないだろう。
★但し、金貸しの思惑に反して、ロシアではプーチンが台頭して金貸し排除に動いたり、アルゼンチンではフェルナンデス大統領が脱金貸し路線で経済を復活させたりと、金貸しの仕掛けは上手く行っていない。従来型の金貸しの仕掛けは通用しなくなってきている。

2.ハイパーインフレ(ドイツの第一次世界大戦後)
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<ドイツのハイパーインフレ、紙幣は紙屑へ>
実は、ドイツのハイパーインフレ(1922年〜1923年、1兆倍)は金貸しによってワザと引き起こされたものだったと見て間違いない。
ドイツのハイパーインフレの構造、金貸しの狙い? [8]>参照
歴史の教科書では第一次世界大戦敗戦による莫大な賠償金を支払うために紙幣を増刷したなどと説明されることが多いが、真っ赤な嘘であることがわかる。ヴェルサイユ条約(1919年)では金、ポンドまたは米ドルで戦争賠償金を支払うことが明記されていた。マルクをいくら印刷しても賠償にあてることはできなかったのだ。
引用投稿 [9]は長文なので、あらためてドイツのハイパーインフレの構造を整理し、金貸しの狙いを考察してみる。
●ハイパーインフレの構造(金貸しの手口)
・インフレ基調(ドイツは敗戦で生産力低下、物資窮乏)にあるところに大量の紙幣を印刷すれば、インフレに火がつきハイパーインフレになる。(金貸しは当然わかっていたはず。)
・⇒中央銀行を支配し、国家から通貨発行権を奪う。(1922年、ドイツ帝国銀行の「独立性」を確保する法律が制定され、通貨発行権はドイツ皇帝から金貸しに移譲。)
・⇒天文学的な通貨発行。(①中央銀行が自ら大量の通貨を発行、②プライベートバンク (金貸しの私的な銀行)による自社通貨の創出、③投機筋による大量の空売りの3つの手口を同時に実施。)
※歴史の教科書では①の中央銀行が悪者にされているが、全くの目くらまし。実は、中央銀行を操っていたのは金貸しであり、さらに②③という金貸しにしか仕掛けられない(国民にとっては何の必要もない)合わせ技を使っているところからみて、金貸しが真犯人であると見て間違いない。
●金貸しの狙い?
・通貨価値を暴落させることによるドイツ産業の支配。
⇒1兆倍のインフレになれば、通貨価値は1兆分の1に暴落。
→1兆分の1の投資コストでドイツ企業を買収できる。
→為替レート(対米ドル)も1兆分の1へ暴落⇒外資(金貸し)はタダ同然でドイツ企業を買収できる。
※これは、資金量に勝る金貸しならではの芸当。物価上昇に追いつけない中小企業、庶民は資金繰りがつかなくなって倒産し、担保物件は銀行(金貸し)のものとなる。ドイツ国民の生活が悲惨なことになったのは、歴史が教えるとおり。
★現代の先進国では、生産力過剰(>消費力)でデフレ基調の構造にあるので、国家が紙幣を大量に印刷してもハイパーインフレにはならない。
国債が暴落しても、ハイパーインフレにはならない [10]>参照

3.帳簿操作による借金帳消し
①新紙幣への切り替えによる借金踏み倒し
・懸念されている米国デフォルトは基本的にはこのパターンではないかと見られている。新米ドル札発行とセットになると思われるが、海外にある旧米ドル(中・日などが大量保有)は、新米ドルとは交換できなくなる措置が取られる可能性があり、その場合は文字通り借金踏み倒しとなる。
新ドル発行の裏に隠された国家的陰謀(2)〜驚愕の発表をすることになるかオバマ大統領 [11]>参照
②中央銀行の帳簿操作(+新紙幣発行)による軟着陸
米国債デフォルト後の世界経済はどうなる?1〜国債を暴落させて国の借金を減らす軟着陸説 [12]>参照
★しかし、事例を調べる限り、このような手口で借金が踏み倒された例は見当たらない?この軟着陸説は、今までにはなかった、新たなスキムかも知れない。

■来年を展望する
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<次期FRB議長:イエレン氏、画像はこちら [13]からお借りしました>
以上、ざっとデフォルト(金貸しの経済支配の手口)スキムを見てきましたが、果たして、来年2月の米国デフォルトはどうなるのでしょうか?
ロシアやアルゼンチンをデフォルトに追い込んだのは金貸しですが、これは後進国に対する手口です。結果的には反金貸しの民族派政権が台頭し、金貸しの思惑どおりには上手く行っていません。
第一次世界大戦後のドイツに見るようなハイパーインフレは、現代の先進国のデフレ経済状況では起こり得ないと考えられます。
米国自身は基軸通貨発行国であり、近代市場では、基軸通貨発行国がデフォルトした例はないことから、これまでにはなかったスキムで仕掛けられる可能性が高いのではないか?と考えられます。
その点では、「3.帳簿操作による借金帳消し」が注目されます。
当シリーズでは、年明けから、この新たなスキムを追求して行きたいと思います。
お楽しみに!

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