- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

アメリカ・デフォルトは起きるのか!?-9 ~ヴェネツィア金融勢力の奥の院:イタリア王家~

 前回、デル・バンコが、12世紀から現在まで実に900年近くに亘って現在の金融システムを創りあげてきたこと、そして、それ故に、世界経済、政治の世界にまでその力が及んでいるということを扱ってきました。

 

しかし、彼ら金融勢力も所謂「金貸し」、元は商人の出で、当時、貴族や王族にお金を貸すための原資があったのか?甚だ疑問が沸き起こります。

 

  ◆◆ヴェネツィア勢力の奥の院:イタリア王家

 サヴォア宮殿 [1]

そこで、改めて、銀行設立当初の背景を探ってみると、彼らの背後にイタリア王家の存在が見えてきます。

 

元々、銀行設立の許可権を持っていたのが、イタリア元老院で、今もイタリア議会(上院)にその名称が受け継がれています。

イタリア元老院とは、イタリア国王の諮問機関で、銀行設立の許可もイタリア国王の意向が大きく反映されます。

 

デル・バンコに銀行設立の特許を与えた頃のイタリア国王は、サヴォイ家から排出されています。

サヴォイ家は11世紀から、カルタゴ、ヴェネチアに展開する、とても裕福な一族です。

1003年イタリア国王即位から現在まで、1000年以上続き、現在でも王位継承権を巡って裁判中であるとのことです。(リンク [2]) 

 

このサヴォイ家が、デル・バンコ等を使い、現在に至るまで、ヨーロッパ全土はおろか全世界に跨るような勢力を拡大してきたその経緯を辿っていきます。

◆◆ローマ教皇と神聖ローマ皇帝との権力争い

 ハプスブルグ [3] バチカン [4]

 

 

 

 

サヴォイ家やデル・バンコが登場する11世紀頃のヨーロッパでは、ローマ教皇と神聖ローマ皇帝との権力争いが行われていました。

そのようすは、当ブログの別シリーズ『金貸しによる洗脳教育史③ 〜特権化された大学が壮大な騙しの社会を創っていった〜』  [5] に詳しいのでご参照ください。

 

(ローマ)教皇派(:バチカン)は、各地に教会を設立し、カトリック信者を増やし、教皇の息の掛る地域を増やしていくという、いわば草の根的な拡大戦略をとっていました。

それに対し、(神聖ローマ)皇帝派は、武力や戦略結婚による領土拡大戦略ですが、国家統合という意味で、ローマ法を基にその法に庶民を従わせるという支配体制をとっていました。

 

それ故に、それぞれ、カトリック教義とローマ法の正当性を主張しあうことによる共認域拡大上の対立という意味合いが強く、どちらもカトリック教を支持していることから、時には近づき、時には離れるという微妙な関係でいました。

 

因みに、神聖ローマ皇帝はローマ教皇の任命となっており、任命が得られない場合は「ドイツ帝国」と名乗るなど、その近しい関係も伺えます。

 

◆◆サヴォイ家の拡大戦略

 

それに対して、ヴェネツィア勢力、その金主であるサヴォイ家は、カトリックでは禁じている「金貸し→利息」による私権拡大を目的としていたことから、その両陣営と真っ向から対立していました。

彼らの戦いは実に巧妙でした。

 

●神聖ローマ帝国に対抗する小国切り崩し策

 

領土拡大を生業とする神聖ローマ帝国に対しては、皇帝が支配している地域に、自分達の言うことを聞く人間を送り込んで独立させるという「小国分裂策」をとり、帝国の拡大を阻止するという戦略をとりました。

イタリア、フランス、ドイツ、ベルギー、ブルガリア、ポルトガル等、サヴォイ家の息のかかった小国が出来上がったわけです。

 

●借金まみれでハプスブルグ家を潰した30年戦争

 OLYMPUS DIGITAL CAMERA [6]

神聖ローマ皇帝といえば、ハプスブルグ家といわれるほど、政略結婚により長きに亘り、皇帝の座に君臨していました。

このハプスブルクの支配に不満を持つ者が出てきます。それが、サヴォイやヘッセンやタクシス等、元々ハプスブルグ皇帝に仕える諸侯でした。

 

彼らは、水車による原動力で他には無い産業を確立し、且つ銀行業の拠点としていたスイスに結集しました。こうして、スイスに金と武器産業が集まりました。

そこで彼らは、30年戦争(1618年~1648年)を引き起こし、裏で借金をさせ、ハプスブルグ家を潰したのです。

 

因みに、スイスは1648年 – ヴェストファーレン条約によって正式に神聖ローマ帝国からの独立を達成します。スイスは神聖ローマ帝国に対立して出来上がった国といっても過言ではありません。これが嫌われていたユダヤ人が中立国であるスイスに集まった理由なのです。

 

●バチカンを外部から切り崩す宗教改革

 ルター [7] calvin [8]

 

 

 

 

金貸しによる洗脳教育史⑤ ~16世紀の宗教改革の黒幕はベネツィアの金融勢力だった [9]

で展開しているように、

共認域拡大の共認闘争に対しては、宗教改革を画策し、「聖書主義」や「天職理論」による「教会不要論」「蓄財(私権)意識」を正当化し、教会に流れるお布施や免罪符購入等のお金を、自身が創った銀行へと集積することを実現し、ヨーロッパ全土に広げました。

この共認域拡大には、当時発明された印刷技術を駆使し、ビラを撒いて流布したことも特筆すべきです。

 

また、これによって、個人(の金儲け)に目を向けさせたという意味では、個人主義思想の魁であったといってもいいでしょう。

その証拠に、その後、プロテスタントが主導して植民地支配の時代を作っていったことからも、見て取れると思います。

 

●バチカンを内部からコントロールするイエズス会

 イエズス会 [10]

 

 

 

 

 

 

さらに、もっと巧妙なのが、サヴォイは、カトリック切り崩し策として、宗教改革という外からの攻撃に飽き足らず、内部から切り崩す戦略として、イエズス会をバチカン内部に組織したことです。

 

***************************************

イグナティウス・ロヨラのイエズス会創設とマルティン・ルターによる宗教改革運動の両方とも、そのスポンサーはヴェネツィアだった。ゲルフとギベリンの抗争では味方同士だったローマ教会の強大化を牽制するためである。宗教改革は外から仕掛けられた揺さぶりであり、イエズス会は内奥深く打ちこまれた楔に喩えることができよう。

***************************************

『悪の遺産ヴェネツィア 黒い貴族の系譜』 天童竺丸著より~世界権力の正体を明かす②  [11]

 

● 国家に金を貸す中央銀行制度の確立

 

前項:金本位による中央銀行制度を構築したヴェネツィア金融勢力~ [12]

でも紹介したように、デル・バンコを使い、金本位制そして中央銀行制度を確立し、国家に金を貸す現在の経済システムをいち早く構築していったのです。

 

● まとめ

 

このように、イタリア王族:サヴォイ家の支配戦略を見てくると、人々の意識を読み解き、実に巧妙に立案された戦略であることが分ります。

①      人々が不全を抱く直接的な支配体制を敷く神聖ローマ皇帝に対しては、小国分裂策と借金苦により潰して行く戦略

②      人々が広く共認しているカトリック勢力に対しては、対抗勢力を立て、人々の意識の収束先を自分達の都合の良い方向(蓄財)に洗脳していく戦略

③      同様に、人々に気付かれない方法で、カトリック教会の中身を自分達の都合の良い方向に作り変えていく戦略

④      自分達の生業を絶対化し、それが無ければ生きていけない仕組みを創っていく戦略

⑤      それらを独占し、かつ、その強みを相手の弱みとしていく戦略

 

これは、この12世紀から17世紀に掛けて作られたシステムで、これが現代まで全く同じやり方で続けられてきているのです。

そういう意味で、18世紀や19世紀に登場するロスチャイルドやロックフェラー等の金貸し連中は、彼ら金主が創ったシステムの継承者に過ぎないということも分ります。

 

次回は、現代まで力をもっているのは、イタリア王家だけなのか?という視点から、独自の動きをしているイギリス王室について扱っていきます。

[13] [14] [15]