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シリーズ「活力再生需要を事業化する」21 〜新市場の雛型〜

このシリーズも21回目となりました☆
 
このシリーズでは、活力再生需要を事業化することをテーマに可能性を探ってきました。
 
近年、新たな可能性を目指して農業に取り組む企業が注目を集めている事例(リンク [1]リンク [2])からも、これからの時代は企業が核となって、活力再生事業を担っていくことが期待されます。なぜなら、人々の期待は物的欠乏から類的欠乏に大きく転換しましたが、そういった時代の変化に柔軟に対応し、社会の期待に応えて生産を担ってきた集団こそ、企業だからです。しかし現在、活力再生を事業化している企業の事例はあるものの、まだ大きな流れには至っていません。
 
そこで、企業による活力再生事業をより推進していくために、それら企業をとりまく市場経済の仕組みを、どのように変えていけばよいのでしょうか?
 
今回は、「活力再生需要を事業化する」シリーズのまとめとして、経済活動の重要な手段である「お金」に注目し、今後の経済システムの可能性を探っていきます。
 
応援よろしくお願いします。


■なぜ「お金」なのか?
 
まず、今回「お金」に注目した理由を押さえておきます。
お金が持つ機能として、「評価機能」があります。例えば企業や人や商品が高く評価されるということは、その分お金が集まるということを意味します。
 
事業(生産活動)を行う上で、その事業がどれだけ人々の期待に応えているかを測り、それによって生産者が活力を持って働くには、評価指標=お金が必要になります。反対に、人々に評価されない事業は存続できないし、また頑張っても評価がなければ働く人の活力もなくなってしまいます。
但し、儲からない事業は評価されていないのかというと、そうとは限らず、必要とされる事業であっても(農業や介護や子育てなど)、今の市場では採算が合わず、事業化されにくいという現状があります。
 
従って、「お金」の評価機能をうまく活用し、活力再生事業に取り組む企業を評価するような仕組みを作れば、事業を促進できるはずです。
 
ところが、現在の政策を見ると、公共事業や福祉に大量にお金をばら撒くだけにとどまっています。人々の期待に応えていない不要な事業や、働かない人にお金をばら撒いても、社会の活力上昇には繋がりませんし、政府の借金も膨らむばかりです。
なぜそうなってしまうのでしょうか?それは、もはや私権欠乏が衰弱したにも関わらず、統合階級及び学者達の「人々の私権欠乏は不変であり、そのための市場拡大は絶対である」という固定観念によって社会が支配されているからです。
 
従って、その固定観念から脱却し、お金の意味について認識転換する必要があります。
つまりお金の評価機能を、(贅沢できる金持ちはすごいといった)私権価値を測るモノサシから、人々にとっての必要度や、提供されたサービスに対する評価を測るモノサシに転換できれば、活力再生事業を加速させていくことができるはずです。
これが、「お金」の可能性に注目する理由です。
 
参考:超国家・超市場論22 お金は、現実の必要度を測るモノサシ
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=33179&pgh=4

祭りであれ、集いであれ、認識形成サイトであれ、何であれその場が、社会空間において物的な快美収束と同等以上の収束力を持つとすれば、人々はその場にお金を使う。逆に、社会的ないかなる活動or場であれ、そこまでの収束力を持ち得なければ、人々はそこにはお金を使わない。だから人々がそこにお金を使うか否かが、その場or活動の収束力(≒必要度)を計るモノサシとなる。つまり、お金は(決して認識の質を測るモノサシなのではなく)、現実の必要度を測るモノサシとして機能するのである。

 
■活力再生事業を促進する経済システムとは?
 
では具体的に、お金の持つ評価機能を活用した政策として、どのようなものが考えられるか、見ていきます。 
新市場の雛型 [3] より引用

>みんなが評価した答えに支払ったお金が、みんなの役に立つ答えの製作費に支払われるというのは、実はすごい仕組み!!それは、新しいお金の使い方の実践例、活力再生事業or社会活動事業の雛型でもある。(リンク [4]
 
確かに、これは新しい循環システムなんだ。旧い市場原理の認識が新しい循環のブレーキになっていた。お金は快美幻想の対価(消費)ではなく認識形成の場への支援金として循環活用される。正に、新市場の雛型だ。
 
これを、活力再生事業or社会活動事業に適用すると、新市場はどんな仕組みになるのだろう? 
 
活力再生事業(新事業)に付加価値を持たせるためには、実績に応じて換金比率を変動できる交換券(クーポン券)を介在させた方が良い。みんなの評価によって活力上昇スパイラルを形成できるからだ。
 
例えば、支援金の財源を新たな国家紙幣の発行(リンク [5])に依るとして、お金の循環活用案としては以下のような方法が考えられる。
 
①支援金の半分をクーポン券として流通させ、残り半分は付加価値へ
②消費者はクーポン券を活動の対価(評価)として新事業者へ渡す
③新事業者は実績に応じた交換レート(100〜200%)で換金する
 
この場合、みんなの役に立つ活動をすれば最大で2倍の報酬が得られる。お金の流れを全てオープンにすればクーポン券の数が評価指標として機能する。新たな商品を開発し、評価を獲得し続けるには中身(事実認識)の追求へ向かうしかないので、実質的には「認識形成の場」への参加が駆動源(エンジン)になる。

このようにお金というものを、個的な消費を促進するためではなく、皆にとって必要なサービスの供給を促進するために使うという、認識の転換が重要になります。
 
例えば引用文中の国家紙幣(政府紙幣)による支援金というアイディアも、旧い認識から新しい認識に転換することで、新たな可能性が見えてきました。
近年「政府紙幣」の可能性に注目が集まってきていますが、しかしそれは国の借金どうする、景気回復どうするという市場の枠内での議論にとどまっており、現在の閉塞状況の答えになっていません。(政府紙幣論をめぐって [6]
 
しかし市場拡大絶対という固定観念を捨てて、現在の状況を直視すれば、社会が求めているものは私権活力に替わる新たな活力の再生であることが見えてきます。そこで、お金には「評価指標」としての機能があることを踏まえて、活力再生事業を促進させるにはどうする?という新たな視点で考えると、それらの事業に取り組む企業=供給者を後押しするために、政府が支援金を出せば良いというアイディアが生まれます。
さらにお金そのものをばら撒くよりも、活動実績に応じた換金比率を持つ交換券を使うほうが、企業もより人々の期待に応えた分だけ多くの収入を得ることができて、さらに事業を拡大できる、というアイディアも生まれてくるのです。
 
制度の詳細は今後詰めていく必要がありますが、社会の活力を再生していくための経済政策は、大きくはこのようになると考えられます。
 
次回、シリーズ最終回は、老若男女様々な人々の期待に応える、新事業の先端事例「なんで屋」を紹介します。ご期待ください☆
 
 
※過去のエントリーです。
シリーズ「活力再生需要を事業化する」バックナンバー
  
1〜活力源は、脱集団の『みんな期待』に応えること〜

2〜ワクワク活力再生! [7]
3〜老人ホームと保育園が同居する施設『江東園』〜 [8]
4〜企業活力再生コンサル〜 [9]
5〜企業活力再生需要の核心は「次代を読む」〜 [10]
6〜金融、ITビジネスはもはや古い?!新しいビジネス“社会的企業”〜 [11]
7〜社会起業家の歴史・各国の状況 [12]
8 〜社会的企業を支える「アショカ財団」〜 [13]
9〜『生産の場として、儲かる農業』が、みんな期待に応えるのでは?〜 [14]
10〜就農定住の成功事例 山形県高畠町〜 [15]
11〜農業参入が企業の社会的使命となる〜 [16]
12〜農業は医療や教育と同じく人類(集団)にとって不可欠の事業であり、脱市場原理の最先端可能性といえるのでは?〜 [17]
13〜コンセプトは、『私、気付いたら就農してたみたいです♪』かな? [18]
14〜【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(1/3)〜 [19]
15〜【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(2/3)〜 [20]
16〜【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(3/3)〜 [21]
17〜企業による自給自足の挑戦 −船井総研の農業研修−〜 [2]
18〜認識形成の場を供給していくことが、企業に期待されている〜 [22]
19〜次代は共同体の時代!〜 [23]20〜新認識が可能性を開く!〜 [24]
 

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