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『実現論:序』 経済破局の下で秩序は維持できるのか?

前2回に渡って、世界的な経済破局(国債暴落、既存紙幣の紙くず化)について、金貸し達の狙いとその限界を扱ってきました。

『実現論:序』 米国債デフォルト:金融勢力の狙いは旧紙幣の廃棄 [1]
『実現論:序』 国債暴落後の世界経済はどうなる? [2]

今回は、この経済破局の局面で、世界の国々、地域がどのような対応策をとり、秩序を維持していけるのかを見てみます。

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   写真は、国家存亡の危機にあった日本戦中の食料配給の風景
   出典:昔の道具・配給 [3]

旧国債も旧紙幣も紙クズとなったリセット以降、食糧価格が2倍〜5倍に高騰しているなかで、果たして秩序は維持できるのだろうか?それは、新紙幣と食糧配給制という新秩序が信認されるかどうかにかかっているが、それは各国の国民性or民族性による。

実現論:序5(下)経済破局の下で秩序は維持できるのか? [4]

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【秩序崩壊し、壊滅してゆく個人主義国家】

日本をはじめ、東南アジアや南米やアフリカ、あるいは欧州やロシアの一部etc、共同体質が比較的残存している国々or民族は、政府の食糧供出令と配給制に従うだろう。従って、秩序が維持される可能性が高い。しかし、米・中をはじめ、欧州やロシアの過半etc、骨の髄まで個人主義に染まり共同体質がほとんど残存していない国々or民族の場合、農家の過半が供出に応じず、流通業者の大半が買占めに走る可能性が高い。従って、食糧不足による大暴動は必至となる。

実現論:序5(下)経済破局の下で秩序は維持できるのか? [4]以下同じ

共同体質の国家・民族は秩序を維持できる

経済破局の状況下での人々の行動は、その国家・国民・民族の共同体質が大きく係ってきます。共同体質とは、「個人の事情よりもみんなの事情」、「みんな・社会の安定の中に、個人の安定もある」という意識、体質です。日本、東南アジア、南米、アフリカ、欧州やロシアの一部の共同体質が残存している国々、民族は、みんなの事情を優先して、食糧供出に応じ、配給制を実行し、秩序が維持される可能性が高いのです。

個人主義の中心である欧州に、共同体質を残存した国々があるのでしょうか。共同体質が残存しているかどうかは、人類の本源的な(共同体時代の)精霊信仰をどれほど残しているかで見ることができます。欧州諸国の中にも、キリスト教的な個人主義の洗脳度合いが低く、精霊信仰を色濃く残している国があります。

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   出典:世界中で愛され続けるムーミン谷の仲間が大集合 [5]

フィンランド童話にムーミン童話があります。最初のお話は『小さなトロールと大きな洪水』。そして、ムーミンの本名は、ムーミン・トロール。トロールは妖精の意味がありますので、ムーミントロールとはムーミン谷に住んでいる妖精なのです。(カバとは間違わないで下さい。)

東方からの移動民族であり、インドヨーロッパ語族に属せず、東方系の言語であるフィンランド語を話し、精霊信仰に満ちているフィンランド神話を保持してきたフィンランドは、共同体質を残存させている国家、国民なのです。
また、ケルト神話をしっかり受け継いでいるアイルランドも、共同体質を残存させている国家、国民といえるでしょう。

個人主義の中心地欧州にも共同体質を残存させている国々、民族がいるのです。

個人主義の国々は、暴動・略奪・秩序崩壊

それでは、まずは、個人主義の国々はどうなるのか分析しましょう。

とりわけアメリカは、禁酒法の下で密造業者=マフィアが繁殖したような国である。従って、闇市場が蔓延り、食糧不足に陥った人々が暴動→略奪に走るのは必至であるが、その暴動→略奪の規模は、金貸し勢(とりわけディビット・ロックフェラー)が準備しているようなFEMA程度で鎮圧できるものではなく、軍の出動が不可避となる。しかし軍は、同胞を銃撃するような教育は受けていないので、射殺命令は貫徹されず、なかには大衆側に寝返る部隊も出てくる。他方、暴動・略奪集団も当然武装し、鉄道や送電線etc、もっとも弱い環を破壊してゆく。そうなると、軍の力をもってしても制圧できなくなり、逆に食糧不足に陥った軍が崩壊し、各部隊そのものが略奪集団化してゆく。かくして、至る所で殺し合いが発生し、アメリカは数百万→数万→数百の略奪集団が割拠する無法地帯と化し、リセットから三年後には人口は1/5に激減しているだろう。

米国では、銃乱射事件が起る度に、銃禁止法が焦点になりますが、個人の武装権の主張が上回り、銃禁止法は成立ません。そして、一端暴動が発生すると、銃撃戦まで起ってしまいます。

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   出典:白人の潜在意識では黒人=類人猿、黒人差別 [6]

近年では、1992年に起ったロス暴動があります。暴徒は商店を襲い、商店主は銃で応戦しました。暴動鎮圧は、ロス市警とカリフォルニア州兵だけでは制圧できず、4,000人を超える連邦軍まで出動させました。暴動による被害は死者50〜60人、負傷者約2,000人、放火件数は3,600件、崩壊した建物は1,100件にも達し、被害総額は8億ドルとも10億ドルともいわれています。

また、中国は現在でも暴動が頻発しており、食糧3倍〜5倍で秩序が維持できるわけもなく、アメリカ以上に暴動→殺し合いが激化し、人口が1/10に激減している可能性も充分にある。しかも、秩序崩壊するのは米・中だけではない。おそらく、欧州やロシアの半分、さらにアジアや南米やアフリカの一部でも崩壊する国が、次々と出てくるだろう。

4千年の歴史を誇る中国は、戦乱と群雄割拠の歴史でもあります。中央政権の力が弱まると民衆暴動が常に発生し、戦乱が全国に波及し、人口が激変する歴史を繰り返しています。

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  出典:「中国とは何者か」〜農業大国の背景を探る [7]下の人口も同じ

清朝末期にも、大規模な暴動、戦乱が起りました。太平天国の乱です。この乱により人口はなんと1億6000万人も減少しました。
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太平天国の乱(第二次江南大営撃破)
出典:太平天国革命その21〜第二次江南大営撃破〜

個人主義の米国、中国或いは欧州の主要国では、食糧不足が起り、食料価格が高騰すればするほど、農家・農場は食糧の売り惜しみを行い、流通業者はより値上がりを期待して買占めを行います。
その結果、食糧不足が決定的になり、暴動、略奪、秩序崩壊に至ります。

【崩壊一歩手前での旧勢力と新勢力の闘い】

旧勢力は、食糧配給・食糧価格の安定化に失敗し、秩序崩壊の危機へ

共同体質を残存させている国家、民族はどうなるのでしょうか、或いは、どうすべきでしょうか。日本をはじめ、秩序を維持できそうな国の分析をしてみましょう。

本来は国家紙幣が不可欠だが、官僚やマスコミや政治家=旧勢力が認識転換できるとは考えにくい。従って、中央銀行の体制のまま、リセット後の経済運営にあたることになる。

旧勢力は認識転換できないので、中央銀行を温存させ、市場原理を想定したままで経済運営を試みるでしょう。

リセット後は、農業や介護や新エネルギーに対する大型の助成が必要になり、直ちに財源が問題になる。しかし、中銀体制の場合、現状でも大赤字なわけで、新財源などある訳もなく、大量の赤字国債を発行する以外に手はない。その場合、中央銀行が銀行に新紙幣を供給して新国債を買い支えさせるので、新国債の価格を安定させることは可能である。しかし、旧国債と旧紙幣が紙くずになったばかりであり、新国債の価格など誰も信用しない。新紙幣が信認されるかどうかは、食糧価格を沈静化できるかどうかにかかっている。しかし、またぞろ赤字国債を発行しているようでは、新紙幣も信認されず、従って物価は鎮静化しないだろう。

新紙幣が信認されるかどうかは、食糧価格を沈静化できるかどうか、国民全体に最小限の食糧供給がされるかどうかにかかってきます。

日本では、戦中の国家存亡の危機時に、食糧管理法を定め、食糧の国家統制(お米の強制供出と配給制)を行いました。そして、敗戦後の困難な時期にも、食糧の国家統制を継続させました。このお米の配給制が戦後の秩序安定に大きな力を発揮しました。経済破局の時に、食糧供給を保証し、価格を安定化させるのは、国家統制しかないのです。

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  米穀配給通帳
  出典:昭和初期 米穀配給通帳 [8]
  参考:食糧管理法 [9](ウイキペディア)

旧勢力は、中央銀行を温存させ、食糧供給については市場原理を基本とし、国家介入を補助とした運営を行うでしょう。市場原理を残したままの配給食糧の買い付けは、売り惜しみと流通段階の買占めに遭い、配給制は機能せず、食糧価格は沈静化しません。旧勢力の経済運営、国家運営は行き詰ります。

旧勢力に代わる新勢力の登場が焦点

従って、米・中をはじめ、世界中の国々が次々と秩序崩壊し、国内の物価も高騰したままで、秩序崩壊の一歩手前というギリギリのところで『中央銀行廃止→国家紙幣』を掲げる新勢力が登場し、政権を握れるかどうかがカギとなる。この状況では、迷走を続ける旧勢力に代わって新勢力が一気に勢力を拡大して政権をとる可能性は充分あるが、秩序崩壊の一歩手前での際どい闘いとなるだろう。当然、リセット前に新勢力が登場し、事前にある程度の備えが出来ていた方が、秩序を維持したまま新しい社会に移行できる可能性は高くなる。

図解:経済破局の下で秩序は維持できるのか?
[10]
ポップアップです

中央銀行を廃止し、国家紙幣による経済再建という考え方は、既に登場しています。リーマンショック及び今回のユーロ危機から、中央銀行・金融資本主義の本質を分析する視点は、既に出てきています。しかし、まだまだ、少数勢力です。

中央銀行と民間銀行から「信用創造特権」をはく奪すれば 70%の不幸は解決される! [11]
民間銀行から「信用創造・破壊権」を取り上げ中央銀行を国有化すればすべては 解決する! [12]「アングロサクソン資本主義の正体」(ビルトッテン氏)

果たして、既存の政治家、官僚、学者、マスコミなどの旧勢力にとって代わる新勢力は登場するでしょうか。その新勢力は、どんな集団、組織を基盤として登場できるのでしょうか。

次回は、それを明らかにして行きます。

最後まで読んで頂いてありがとうございます☆

<このブログの『実現論 序』のシリーズ>
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機(上) [13]
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機(下) [14]
私権時代から共認時代への大転換(上) [15]
私権時代から共認時代への大転換(下) [16]
市民運動という騙し、民主主義という騙し(上) [17]
市民運動という騙し、民主主義という騙し(下) [18]
統合階級の暴走で失われた40年(上) [19]
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち [20]
米国債デフォルト:金融勢力の狙いは旧紙幣の廃棄 [1]
国債暴落後の世界経済はどうなる? [2]
経済破局の下で秩序は維持できるのか? [21]

[22] [23] [24]