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『実現論:序』共同体企業のネットワークをどう構築してゆくか

前回、武力社会は「武装勢力」が、市場社会は「資本勢力」が創ってきたのと同様、これから訪れる共認社会は何らかの「共認勢力」によって創りだされる、そして、その共認勢力とは共同体企業のネットワークになるだろうことを明らかにしました。
『実現論:序』新時代を開くのは、共同体企業のネットワーク [1] 

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では、共同体企業のネットワークとは、どのような方法論、過程で構築されてゆくのでしょう。今回はこれを考えていきます。
 
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【企業を共同体化してゆく社会事業】

今、時代は、私権原理から共認原理への大転換の真っ只中にある。より正確に言えば、すでに’02年頃に、人々の潜在思念は、私権収束から共認収束へと転換している。
従って、いまや大半の経営者が、自覚的にor無意識に、社員の活力上昇⇒共同体化を志向しているが、実際にはなかなか上手くいかない。
上手くいかないのは、古い認識が邪魔をして、大きな認識転換が出来ないからである。大きな認識転換が出来なければ、当然それに付帯する様々な転換も出来ない。
実現論:序6(下) 共同体企業のネットワークをどう構築してゆくか [2]より。以下同じ)

02年以降、共同体志向の企業が目に見えて増えてきていることは前回記事で触れました。具体的にはどのような取り組みが行われているのでしょう。るいネットで紹介された共同体志向の企業群です。
 
社員ブログから活力あふれる姿が良く分かる【天竜精機株式会社】 [3]
社長ブログと経営塾でメッセージを発信【加藤製作所】 [4]
全社員が社内ネットで活性化【類グループ】 [5]
頑張る人に報いる“有給休暇買取方式”【メガネ21】 [6]
社内新聞、各種委員会の活発な自主活動【㈱アイ・タックル】 [7]
「ありがとうノート」で感謝の心を教育【㈱ブックマークス】 [8]
多能工育成で社員の育児・介護を支援【㈱カミテ】 [9]
 
共同体志向の企業と一口にいっても、業態も、規模も、具体的な取り組み内容も様々です。各企業も、自社が「共同体を志向している」とはおそらく考えていないでしょう。ただ、そこには、意識されているかいないかに関わらず共通構造が見て取れます。
 
①「社員の活力=充足を上げる」ことを経営の中心軸に置いている。
②朝礼、社内新聞、ブログなどの共認形成の場をつくっている。
③委員会や誕生日会、勉強会などの社員の自主活動に活発に取り組んでいる。
④「感謝」や「社会貢献」などの理念づくりと社員への浸透を重視している。

そして、
⑤それらの理念や取り組みが、顧客を相手にした各々の現業=外圧に対する適応軸になっている。
 
その結果、社員の活力と会社の成果を共に高めている、というものです。

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共同体志向企業の適応構造

 
ただ、こうした取り組みは、現在は主に経営者の潜在思念発で、各企業が個々に試行錯誤している段階です。そのため、各企業の取り組みがそれぞれ部分的であったり、取り入れてもなかなかうまくいかないという壁も生んでいるようです。

他方、共同体として40年近く先行している類には、様々な充足事例や方法論やそれらを支える構造認識が蓄積されている。それらは、間違いなく有用な情報or認識として求められており、必ず商品化できるはずである。
それは、社会変革を事業化する試みとなる。
しかし、経営コンサルがやっているような、講師1人:社員30人の研修では、ほとんど効果が上がらない。効果を上げるためには、講師1人:社員6人くらいでの研修が必要だが、それでは膨大な講師人工がかかり、社員研修としては高額すぎる商品となってしまう。
それよりもっと問題なのは、企業を共同体化するのに、社員が一方的に聞くだけの研修スタイルは適していないという点である。おそらく、企業を共同体化してゆくためには、その企業が主体的に参加することが必須条件となる。

有名講師を呼んでの講演やスキルトレーニングなど、受身の研修プログラムは今までにもたくさんあります。しかし「共同体化」とは社員自身が主体的に経営の当事者になるということであり、研修も必然的にそのようなスタイルになる筈です。
 

従って、相手企業が週1回3時間の社内研修の時間を設けることを条件に、テキスト=ネットの経営板を読み、議論し、発信する形を取る。この経営板には、様々な共同体企業の成功事例や方法論やそれを支える認識群が掲示される。いわば、社内ネットの社会的な共有版のような形である。(もちろん、各社の社内ネットは夫々に存在するが、経営板の佳作を各社の社内板に自動的に配信するのも、活性化に有効な一手だろう)
そうすれば、かなり安価で、かつ各企業が主体的に参加する共認形成の場が形成できる。

社内板・るいネット経営板は共認時代に適した学びの場(ネットだから実現できる!) [10]

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るいネットの経営板

各企業のこの共同体化を軌道に乗せるためには、経営者の賛同はもちろんだが、それとは別に、若手経営幹部1人を責任者(リーダー)として、選任してもらう必要があるだろう。
また、社員研修の進め方etcで、とりわけ上手くいっていない事例は、なかなか外(経営板)に出せない場合が多い。従って、経営板とは別に、各企業の相談に応じる、指導担当が必要になる。
さらに、各企業のリーダーには、理論研修も必要になるが、それは希望する企業だけでもいいだろう。
以上から、各企業に対する共同体化の商品としては、『経営板と指導料で社員1人当り月1000円。』、希望する企業には、『別にリーダー研修(週1回)月1万円。』という形になると思われる。

 
「共同体化」とは一時的な取り組みではなく、何年にもわたる企業の体制改革です。そして、経営者一人が汗をかき、様々な取り組みが結局トップダウンになってしまっては意味がありません。従って、社員の中に、経営の当事者意識と共同体化への意思を持った「体制改革担当」が不可欠になります。それが、研修の責任者⇒共同体化の推進役として社員を巻き込む核となる若手経営幹部です。
 

また、共同体の方法論やそれを支える構造認識は、実践で活かし、現実の壁を突破してその効用を感じてこそ肉体化され、浸透していくものです。しかし、研修の場で学んだ認識をいきなり現実課題に応用するのは困難です。そのため、インターネットネットには出せないような生々しい実践問題を扱う「現業指導」もやはり必要になるでしょう。

もちろん、この企業ネットワークを構築してゆくためには、この共同体化の商品を各企業に売り込む営業専任や、各社リーダーを教育する研修専任が必要になる。
それは、とりあえず類グループが中心になって展開するしかないが、半専任のネットワークビジネスのようなポイントシステムも検討に値する。

類グループは、この社会事業としての共同体企業ネットワークづくりに着手し、営業専任が有望な企業群に対して既にアプローチを開始しています。いずれ事業が軌道に乗り、有望企業の中から新たな営業専任が誕生してゆけば、共同体企業ネットワークも加速度的に勢力を拡大していくことでしょう。
 
【共同体化の最大の敵は民主主義】
現在、企業の多くが潜在的には共同体を志向していると思われますが、それがなかなか顕在化して来ないのは何故でしょうか?

上で述べたように、共同体化が上手く進まないのは、認識転換が出来ていないからであるが、企業を共同体化してゆく時に、その足をひっぱる最大の妨害者は、何事も批判し要求することしかできない社会派=民主主義者である。
問題なのは社員だけではない。むしろ、多くの経営者が「民主主義」に囚われて、共同体化の方針を誤っている。共同体化が上手くいかない最大の原因は、経営者自身の頭に巣くう「民主主義」にあるといっても過言ではない。
従って、その点での認識転換が最初に必要になる。
序3で既に述べたが、改めてその点を鮮明にしておこう。それは、一言で尽きる。
『民主主義者は金貸しの手先であり、従って、共同体の敵である。』
もちろん、彼らは金貸しに騙されて「民主主義は絶対正しい」と信じ込まされている犠牲者でもあるが、そもそも彼らが「民主主義」に強く収束したのは、彼らが批判と要求しかできない小児体質or観念病だからである。
批判(要求)するだけならガキでも出来るが、これでは何をするにも周りの足を引っ張るばかりで、まったく戦力にならない。
そのことは、経営者なら、言われるまでもなく良く分かっている。ところが、民主主義を全的に否定し切れていないので、組織方針を誤ってしまう。
新理論が不可欠な由縁である。

前回の記事 [12]の後段で紹介したように、例えば’90年代以降見られるようになった“体制のフラット化”は、共認原理風に見えながら、自然の摂理や先人からの学びを捨象し、結局個人の発言権や評価権を優先する体制となってしまい、企業の活力や成果上昇には結びつきませんでした。“フラット化”という体制の名称自体、経営者の観念の混濁を示しています。
 
「社員給与の公開」や「役員交代制」など、一見先進的に見える共同体的体制の導入にも、実は同じ陥穽が潜んでいます。こうした体制をことさら重視するorアピールすることで、逆に給与や役職などの“私権の平等性”が強く意識されてしまうからです。
 
私権の衰弱⇒共認収束が進めば、むしろ個々人の給与の多寡や肩書きは「どうでもよくなる」のであり、そんなことは置いておいて、社員の充足をどう実現するかをストレートに考え実践している企業の方が、共同体企業としての可能性も高いのかも知れません。
 
一方で、こうした充足志向型の企業の中で、時代状況を読み、壁を突破する構造認識への収束度も持ち合わせた企業は、多くありません。ここ5〜10年は社員の充足があれば勝てるかも知れませんが、経済破局を経て、いずれ充足だけでは勝てない時代が訪れるのは確実です。
 

もちろん、それ以外にも転換しなければならない認識群はたくさんある。
だからこそ、共同体企業のネットワークが必要になる筈だが、それは経営者の必要意識がどこまで醸成されているかにかかっている。デフォルト前の段階では、ネットワークの必要意識は小さいかもしれないが、リセット後は間違いなく急上昇する筈である。

[13]

次回は、現実に金融リセットが起こるまでに共同体企業ネットワークの一定の勢力拡大が図れたとして、そこで打ち出すべき政策は何か?を追求します。
 
 
<このブログの『実現論 序』のシリーズ>
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機(上) [14]
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機(下) [15]
私権時代から共認時代への大転換(上) [16]
私権時代から共認時代への大転換(下) [17]
市民運動という騙し、民主主義という騙し(上) [18]
市民運動という騙し、民主主義という騙し(下) [19]
統合階級の暴走で失われた40年(上) [20]
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち [21]
米国債デフォルト:金融勢力の狙いは旧紙幣の廃棄 [22]
国債暴落後の世界経済はどうなる? [23]
経済破局の下で秩序は維持できるのか? [24]
新時代を開くのは、共同体企業のネットワーク [1]

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