前回は、今日私達が慣れ親しんでいる帳簿・バランスシートの起源やその仕組みについて扱いました。
今回は日銀に照準を当て、日銀のバランスシート、会計、そして実はそこに現れていない益に迫ります。
その前に、応援をよろしくお願いします。
過去のエントリーはこちら
(1)デフォルトの歴史 [1]
(2)デフォルト事例(日本の終戦直後) [2]
(3)デフォルト事例(ロシア財政危機) [3]
(4)デフォルト事例(アルゼンチン財政危機) [4]
(5)’13年総括、デフォルトスキムの整理 [5]
(6)バランスシートって何? [6]
●日銀のバランスシートの特徴
下表が、日銀のバランスシートです。
画像はこちら [7]からお借りしました
以下、るいネット「日銀券発行の会計処理はどうなっている?」 [8]より引用します。
経済の教科書では、日銀券が発行されるルートは主に以下の3通りとされている。
①日銀貸し出し
②国債の売買(公開市場操作)
②預金準備率操作
※他には、政府預金の出し入れ(政府支出−政府収入)、外国為替の出し入れ(外国為替の買い−売り)によっても日銀券は発行されるが、話を単純化するためにここでは割愛する。
日銀のバランスシートの主な項目は、資産=国債、貸付金、外国為替、金など、負債=発行日銀券、預金(市中銀行からの当座預金)などとなっている。帳簿上は日銀券は負債となっているのが、日銀のバランスシートの特徴である。
まず、基礎知識として押さえておきましょう。
●通貨発行益はどこに?
ところで、そもそも日銀は通貨や金融システムを管理する中央銀行で、紙幣を発行出来る唯一の発券銀行です。
では、その紙幣は具体的には、どのようにして創られているのでしょうか?
実は、紙幣は国立印刷局というところで印刷されているのです。
国立印刷局HP [9]
この紙幣印刷にかかる経費は20円程度と言われています。この発行額面と発行原価の差額を、通貨発行益と言います。
例えば、1万円札を印刷するとします。印刷に必要な経費20円を差し引くと9,980円になります。これが通貨発行益です。
通貨発行益は、通貨の発行主体に発生するものですが、日銀のバランスシートにはそのような記載がありません。
では通貨発行益は一体、どこに計上されているのでしょうか?
以下、るいネット [10]から引用します。
しかし、日銀が直接通貨発行益を計上することはない。それでは、日銀のバランスシートのどこに、その通貨発行益が計上されているのであろうか?大胆に仮説を立ててみる。
発行日銀券は、日銀のバランスシート上は負債に計上されるが、元は原価が20円しかかかっていない紙幣が、帳簿上は1万円で計上されることになる。通貨発行益の9,980円はどこに計上されるかと言うと、巡り巡って、資産の部の国債又は貸付金等に計上されているのではないか?
国債の場合は、国家が国債を発行して、日銀に引受けさせる※わけだが、日銀が引受けた(市中銀行から買い取った)国債は、日銀のバランスシート上は資産に計上される。会計ルール上、負債に計上された発行日銀券の通貨発行益は、日銀券と国債を交換するという処理を通じて、形を変えて資産に計上されていると考えられる。
冷静に考えて見ましょう。
日銀はゼロから紙幣を印刷し、それが負債に記録される。
一方、ゼロから生み出された通貨発行益が、資産に計上される。
これは、資産と負債が“バランスしている”と言えるのでしょうか?
●日銀の会計処理はどうなっている?
以下、るいネットより引用します。
(同上)
資産に計上された国債も、元はと言えば国家が発行した紙切れ(その原価は印刷屋に支払われる)にしかすぎず、こちらもいくらでも印刷が可能である。負債に計上された日銀券1万円と資産に計上された国債1万円がバランスすることになるが、考えてみれば、帳簿上の処理だけで、日銀の資産は1万円増えており、まさに「打ち出の小槌」と同じように、無から有をつくり出すことができるのである。
日銀が日銀券を発行して市中銀行に対する貸付金を増やす場合も同じで、日銀は負債で1万円(≒通貨発行益)を計上するだけで、資産の貸付金を増やすことができ、「打ち出の小槌」と同じように、無から有をつくり出すことができる。
重要なのは、日銀をはじめ紙幣の発券を司る中央銀行は、無からお金を創り出しているという点です。
この認識をもとに、中央銀行の会計を見てかなければいけません。
常識的には、中央銀行が無制限に紙幣を発行発行したらインフレになるという理由で、中央銀行の通貨発行益は「打ち出の小槌」ではないと言われてきたが、理論的には帳簿上はいくらでも紙幣は発行することができ、バランスシートは無限に膨らませることができるのである。
貧困の消滅以降の経済構造(供給力>消費需要)→デフレギャップを考えると、紙幣を発行してばら撒けばインフレになるというのは固定観念にしかすぎない。固定観念に囚われず、本質を考える必要がある。
原理的には無限に紙幣を増刷できるのが、中央銀行であるという認識に立てば、中央銀行のバランスシートは、実はバランスしていないと言えます。その典型的な事例として、通貨発行益にスポットを当ててみました。
要は、中央銀行のバランスシートは、帳簿上の整合に過ぎない=帳簿上で処理しているだけと言えます。
このように中央銀行でさえ(だからこそ)実態とは異なる帳簿上の処理でどうにでもなるのならば、帳簿上の処理で国の膨大な借金を帳消しすることが出来るのではないか?
次回は、この点について扱っていきたいと思います。