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【12】『世界経済の現状分析』EU経済の現状③(EUの政治状況、右翼化?)

前回の【11】EU経済の現状②(独・仏 VS PIIGS 格差問題の分析)では、EU内格差が開いたのは何故か?財政危機が深刻なままなのはなぜか?に焦点を当て追究しました。今回は、 【12】EU経済の現状③(EUの政治状況、右翼化?)と題し、近年のEU各国について、その政治状況や今後どういう動きを見せるのか、といった点について追及していこうと思います。
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<画像はこちら [1]からお借りしました>
『世界経済の現状分析』シリーズ過去記事は以下をご覧ください。
『世界経済の現状分析』【1】プロローグ [2]
『世界経済の現状分析』【2】米国経済の現状(ファンダメンタルズ) [3]
『世界経済の現状分析』【3】米大統領選の分析その1(両候補の政策の違い) [4]
『世界経済の現状分析』【4】米大統領選の分析その2(両候補の支持層の違い) [5]
『世界経済の現状分析』【5】米大統領選の分析その3(米大統領選の行方?) [6]
『世界経済の現状分析』【6】中国経済の基礎知識 [7]
『世界経済の現状分析』【7】中国経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【8】中国、新体制・習近平でどうなる?
『世界経済の現状分析』【9】中国経済のまとめ [8]
『世界経済の現状分析』【10】欧州経済の現状①(ファンダメンタルズ) [9]
『世界経済の現状分析』【11】欧州経済の現状②(独・仏 VS PIIGS 格差問題の分析) [10]
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■各国の政治状況
EUの中で、GDP上位国であるドイツ・フランス、GDP下位国であるスペイン・イタリアの政治状況を見ていくことで、EU全体の経済政策を掴んでいこうと思います。
□ドイツ
○主要政党
ドイツでメルケル首相再任、中道右派連立政権が発足 [11]より
メルケル首相率いる保守派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と経済界寄りの自由民主党(FDP)による新たな中道右派件連立政権が発足した。
独与党CDU支持率が7年ぶり高水準、連立相手のFDPは低下=世論調査 [12]より
>26日に公表されたドイツの調査会社フォルサの世論調査によると、来年9月の総選挙で3期目を目指すメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の支持率が約7年ぶり高水準に上昇した。
>ただ、CDUが連立を組む自由民主党(FDP)の支持率は低下し、連立維持が不透明な情勢となった。
>他の世論調査でもメルケル首相の政党に対する底堅い支持を示す結果となっており、23日のビルト日曜版に掲載されたエムニドの調査では、CDU/CSUの支持率は過去3週間にわたり40%で安定、FDPは4%となった。中道左派の支持率は41%で、内訳はSPD(社会民主党)が28%、緑の党が13%となった。
○右翼化への動き
危険!!極右主義が増加!憂慮すべき調査結果-ドイツ [13]より
>〇フリードリヒ・エーベルト財団による調査
>ドイツにおいて極右主義が高まってきている。社会民主党(SPD)系のフリードリヒ・エーベルト財団が12日、調査結果を発表した。
>特に旧東ドイツにおいて、著しい増加を見せた。旧東ドイツの54%が「外国人は福祉国家としての我が国を悪用するために来ている」と考えていることが明らかになった。旧西ドイツにおいては31.4%だった。
>〇若年層に広がる極右主義
>超極右主義による排外主義思想は、旧東ドイツにおいて39%にも上り、旧西ドイツにおいては25%だった。過去の調査と比較して異なることは、旧東ドイツの14歳〜30歳の若い年齢層において、「右翼独裁」や「ナチズムの平凡化」に関して、60歳以上よりも高く評価していた。
>ドイツ人の9%は「閉ざされた極右の世界観」を持っていると言われている。旧東ドイツの23%、旧西ドイツの16.5%は、ドイツ人は「他の民族よりも優れている」と考えていることも分かった。
外国人に対する偏見は、増加する失業問題からくるといえよう。
ネオナチ支持が急増、対応迫られるドイツ [14]より
>フリードリヒ・エーベルト財団(ドイツ社会民主党の外郭団体)は「極右は社会の辺境ではなく、ど真ん中にある問題だ」と警鐘を鳴らす。
>なかでもNPDは、極右政党としてじりじりと力をつけている。党員数約6000人、ザクセン州とメクレンブルク=フォアポメルン州の議会に議席を持つ。「ドイツ人のためのドイツ」を標榜し、移民やグローバル化に異議を唱える政党だ。従来は小数派で目立たなかったが、州議会に進出して公に国家の助成金を受け始め、政党として急激に勢いをつけた。
□フランス
○主要政党
ウィキペディア [15]より
>主要政党としては、国民運動連合(保守・右派)、フランス民主連合(中道・若干右寄り)、社会党(中道左派・社会民主主義)、フランス共産党(左派)がある。また、以下は議席を持たないが、国民戦線(極右・移民排斥)、反資本主義新党(極左)、労働者の闘争(極左・トロツキスト政党)も存在する。
>2012年5月6日(CEST)に行われた大統領選挙では社会党フランソワ・オランドが現職のニコラ・サルコジを破って当選し、同15日に第7代大統領に就任した。
○右翼化への動き
ふじやまぱぱの御高説 [16]より
>フランスで台頭目覚ましい極右政党「国民戦線」が、大統領選挙で結党以来最高の得票18%を獲得し、3位に食い込んだ。
>22日のフランス大統領選挙の第1回投票で、野党・社会党のフランソワ・オランド候補とニコラ・サルコジ大統領が、それぞれ1位と2位になったが、3位には極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首が食い込み、大統領を左右する様相を呈している。オランド陣営とサルコジ陣営は、5月6日の決戦投票でルペン支持層の獲得で争うかたちになった。「国民戦線」は、フランス国内の失業率や移民政策の不満層を獲得し、現党首の父であるジャンマリ・ルペン氏が結党し台頭してきた。ユーロ圏離脱、移民排斥、富裕層への課税を訴え支持を得ている。
□イタリア
○主要政党
ウィキペディア [17]より
>2008年2月6日ナポリターノ大統領は、上下両院の解散令に署名し、両院は解散した。これはブローディ中道左派政権が1月に崩壊した後に総選挙を求める声がつよかったためである。総選挙の結果、右派自由の人民が勝利し、党首のベルルスコーニが首相に返り咲いた。2011年11月12日ベルスコーニ首相は大統領に辞表を提出、13日にマリオ・モンティが新首相に指名された。
ウィキペディア [18]より
モンティは2005年に設立されたヨーロッパのシンクタンク、ブリューゲルの初代議長である。また1973年にデイヴィッド・ロックフェラーによって設立されたシンクタンク日米欧三極委員会のヨーロッパ委員長を務め[2]、ビルダーバーグ会議の主導的メンバーでもある[3]。またゴールドマン・サックスとザ コカ・コーラ カンパニーの国際的顧問である
イタリアの経済見通し、過去1年余りで大幅に改善=政府文書より
モンティ氏は28日、同氏の改革路線を支持する中道派連合を率いて2月の総選挙を戦うと表明した。
○右翼化への動き
ウィキペディア [19]より
中央集権の強い現状への批判から自治運動が盛んな北イタリアを中心にロンバルディア同盟などの地方議会の権限強化を望む地域政党が成長し、1991年には他の州の地域政党が連合して北部同盟が結成された。彼らは「連邦制か、さもなくば独立か」をスローガンに、移民者排斥などの過激主張や中央政府の南部優遇政策への批判を展開、タンジェントポリにより既存政党が衰退していた事もあって飛躍的に党勢を伸ばした。その後は独立騒動による支持者の離反によって低迷するが、不法移民への反感の高まりを背景にイタリア中部・南部の左派票を獲得して復活を果たした。現在、南部でも「自治という選択」などの地域政党が成長しており、中央政府がこの動きにどう対応するかが注視されている。
□スペイン
○主要政党
ウィキペディア [20]より
国民党:フランコ時代の閣僚らが創設した国民同盟を前身とする中道右派政党。社労党と共に二大政党を構成【186(53.1%)】
スペイン社会労働党:1879年にマルクス主義政党として結成された中道左派政党。【110(31.4%)】
○右翼化への動き
現在の政党一覧を見る限り、右派であるファランへ党は下院に議席はないため、極めて少数派と考えられる。
以上のように、上記4カ国から、どの国においても現在の主要政党は中道派が主流ですが、GDP上位国ほど、近年右翼化し始めている傾向にあると言えます。
■EU・EURO離脱への動き
○イギリス
英首相、EU脱退圧力に困った 米介入も裏目か? [21]より
>英国のキャメロン首相が、国内で高まる欧州連合(EU)からの脱退論と、英国のEU脱退を阻止すべく圧力をかける欧米諸国との間で、ジレンマに立たされている。政府内からも、EUへの権限集中が緩和されない限り脱退も致し方ないとの見方が出始めた。
英国におけるEU脱退論の高まりは、近年のユーロ危機や東欧圏からの移民の増大など、英国の国家主権を揺るがす事態が起きていることが背景にある。英国は銀行同盟の創設など最近の統合深化をめぐる協議でも一線を画し、孤立感を深めている。世論調査ではすでに、EU脱退派が過半数に達している。
イギリスに迫るEU脱退の現実味 [22]より
国民投票が行われれば、EU脱退派が勝つのは明白だ。11月下旬に行われたEU首脳会議で、EU予算の大幅削減やイギリスの拠出金減額といった主張が通らず、右派メディアが反発を強めていることも、脱退論の高まりに拍車を掛けている。
JETRO [23]より
ブレア元首相は11月28日、EU離脱論への警鐘と加盟の利点を訴えるため、王立国際問題研究所(チャタムハウス)で講演を行った。欧州単一市場を支持する経営者団体「ビジネス・フォー・ニュー・ヨーロッパ」が主催した。
ウィキペディア [24]より
王立国際問題研究所は、イギリスのシンクタンク。
>1920年創設。本部はロンドン(元々はピット一族の所有の建築物である)。外交問題評議会の姉妹機関としても知られる。
ウィキペディア [25]より
外交問題評議会は、アメリカ合衆国のシンクタンクを含む超党派組織。略称はCFR。
>1921年に設立され、外交問題・世界情勢を分析・研究する非営利の会員制組織であり、アメリカの対外政策決定に対して著しい影響力を持つと言われている。超党派の組織であり、外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の刊行などで知られる。本部所在地はニューヨーク。会員はアメリカ政府関係者、公的機関、議会、国際金融機関、大企業、大学、コンサルティング・ファーム等に多数存在する。知名度が高く、影響力が大きいことで知られる。
名誉会長はデイヴィッド・ロックフェラー
>イギリスの王立国際問題研究所はイギリスの勢力圏内に秘密結社として多数の円卓会議を結成して謀略活動に当たらせた。欧米各地の円卓会議のネットワークは、ロックフェラー、ロスチャイルド、モルガン商会、カーネギーなど当時の財閥を結びつける役割も果たした。
○ドイツ
【激動する世界と日本】崩壊するユーロ!ドイツ離脱の可能性も [26]より
ドイツのみがユーロ圏を離脱するという可能性も存在する。債務国救済にカネを出したくないドイツの究極の選択である。ドイツ連銀(中央銀行)が9月から日本国債の購入を始める。ユーロ崩壊時の保険として、外貨準備を多様化する方法の一環であろう。
イギリス・ドイツなど、EU脱退へと世論が高まり始めている国があるようです。一方で、イギリスのブレア元首相が見せた動きからわかるように、EU脱退させまいとする金貸しの思惑があるようです。
■まとめ
・現状、各国主要政党は中道派がメインであるが、近年GDP上位国を中心に右派が台頭してきている。
・その理由としては、各国でユーロの導入から移民優遇や失業率での不満が高まり、更に治安悪化や伝統の破壊等からナショナリズムが高まっていることが考えられる。
・また、そのような国民感情・世論の高まりから、EU脱退へと舵を切り始めようとしている国が現れてきている。
・EUを脱退する国が現れると都合が悪い金貸しが、動きを見せ始めている。
・このように、EU統合は最早安泰であるとは言えず、今後分裂する可能性さえあるのではないか。
今後ともEU各国、金貸しの動きを注視していく必要がありそうですね!

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