2012-12-06

『世界経済の現状分析』 【8】中国、新体制・習近平でどうなる?

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中国共産党は11月15日、党総書記に習近平国家副主席を選出しました。
習近平は軍トップの党中央軍事委員会主席への就任も決まり、党と軍の権力を同時に掌握しました。今後、来年3月、国家主席に就任し、これに伴い胡主席は引退します。
当初、胡主席は、今までの鄧小平や江沢民と同様に、軍のトップはしばらくは譲らないだろうとの意見もありましたが、全ての権力を次期・習近平に渡したことになります。
米中関係、尖閣諸島問題、南沙諸島問題と、経済的に力をつけた中国は周辺諸国に対しても今まで以上に強硬姿勢を強めています。
習近平・新体制の中で、今後の中国はどうなるのでしょうか?
今日は、この視点で、調査を進めます。
過去の『世界経済の現状分析』シリーズの記事は以下を参照。
【1】プロローグ
【2】米国経済の現状(ファンダメンタルズ)
【3】米大統領選の分析その1(両候補の政策の違い)
【4】米大統領選の分析その2(両候補の支持層の違い)
【5】米大統領選の分析その3(米大統領選の行方?)
【6】中国経済の基礎知識
【7】中国経済の現状(ファンダメンタルズ)
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■習近平と新メンバー
まず新メンバーを見てみましょう。
(画像は、こちらからお借りしました。)

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この間、上記7人を選出する中で、中国国内では、様々な権力闘争が繰り広げ、裏では、各派を実態として牛耳る共産党長老達の熾烈な争いがありました。
今回、表だって最も影響力を示したのが、前国家主席:江沢民。
習近平を中心とする今回の政治局常務委員7人の内、江沢民の影響を受ける太子党・上海閥がほとんどを占めています。胡錦濤が指導する団派(共産党青年団)出身は、次期首相となる李克強(現・副首相)のみです。
〇太子党(江沢民):習近平(留任:現副主席)、王岐山(新任)
〇団派 (胡錦濤):李克強(留任:現副首相)
〇上海閥(江沢民):張徳江 兪正声、劉雲山、張高麗(以上、新任)
しかし、政治局常務委員7人を含む政治局員25人の内3割を占める8人は、胡錦濤・団派の若手が占めています。
また、中国でもっと影響力を持つ人民解放軍のトップ主要メンバーも、団派が中心です。
党内には、68歳で引退するルールがあるため、習近平・李克強の2名以外は、5年後には全て引退することになり、その後の体制は団派中心に移行するものと思われます。
よって、今後5年間は、江沢民勢力(太子党、上海閥)の影響を強く受ける政治運営となり、その後は、団派を中心とした勢力に入れ替わるか・・・
■太子党・上海閥、団派と尖閣
まず、今回の7人の政治局常務委員の裏にいる、太子党、上海閥、団派とは何か?
また、各派の関係はどうなのか?
●太子党、上海閥、団派

>中国の二大派閥を共青団派と太子党という。一般の日本人には分かりづらい構図だが、共青団派は故鄧小平氏が育てたインテリ階層で、共青団という組織を上り詰めてきた現行の執行部を言う。
胡錦濤氏や温家宝氏がその代表だが、中国古典のイメージでいえば科挙の試験に合格した進士だと思えばよい。
一方太子党は、江沢民氏の周りに集まっている上海閥を中心とした実力者の子弟で、親の七光りで党の要職を占めている階層で、習近平氏がその代表である。
太子党は地位も名誉も財産も持っており、この立場を今後とも維持することが最大の眼目になっており、中国版貴族だと思えばよい。
政策的には共青団派が中国の遅れた貧しい人々の地位の向上に熱心で日本的なイメージでは革新的であり、また対外的には温家宝氏がそうであるように協調的だ。
一方、太子党は自分たちの利益を最大限に維持することに熱心で保守的な体質を持ち、江沢民氏がそうであるように対外的には常に強圧的な対応をする。
中国は軍事国家で人民解放軍のトップが党の総書記や国家主席を兼ねる。
戦前の日本と同じで陸軍大臣が首相になるのと同じだと思えばいい。
こうしてポスト胡錦濤は太子党の手中に落ちたわけだが、太子党は習近平氏を中央軍事委副主席にするために日本をダシに使ってこのレースに勝利した。

●各派の闘争と尖閣
尖閣問題の裏には、これら各派の闘争があり、日本はそのとばっちりを受けている。

>太子党は前年度の4中総会で手痛い失敗をし、習近平氏を中央軍事委副主席にすることに失敗している。
胡錦濤氏が腹心の李克強氏を後継者にしようと、習近平氏の昇格を阻んだからだ。
「昨年の失敗は許されない。今回は何としても胡錦濤を揺さぶり、わが太子党の習近平氏を次期後継者に指名させよう。
胡錦濤のアキレス腱は日本だ。日本を甘えさせている胡錦濤と温家宝を徹底的にたたけ」
日本に甘いと言うことはかつて胡耀邦氏が失脚したように、中国では最大の失脚理由になる。
 今回逮捕された船長が太子党だったか否かは不明だが、太子党の一派から「意図的に漁船を巡視船にぶつけて逮捕されるように」示唆されていた可能性が高い。
船長が逮捕されるとすかさず太子党は現執行部をつるし上げ、尖閣諸島の領有権で「もし日本に譲歩するようなことがあれば、中国の根源的な利益が脅かされる」として強硬姿勢をとるように脅迫した。
これで胡錦濤政権は日本と妥協することができなくなった。日本に対する妥協は政権の基盤が揺らぐ。

以上、リンク参照
●ねじれた新体制
新体制では、トップの国家主席が太子党:習近平、首相が団派:李克強。
この2人を含む共産党政治局常務委員は太子党・上海閥中心。
その外側の政治局員には、若い団派勢力がいる。
この体制で今後どうなるのか?

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【共産中国いま何が起こっているか 権力闘争の裏と真相】これから激しさを増す習近平のライバル潰し「リンク」より。
なぜかといえば、2人は政敵同士で、これまでもすさまじい権力闘争を繰り広げてきたからだ。ふつう、国家主席と首相は一心同体、二人三脚となる。首相と官房長官のようなものだ。ところが、その2人がいがみ合っている。ここに新体制のひずみがある
2人の争いは、それぞれのバックの争いです。習氏は革命第1世代の元副首相を父に持ち、エリート子弟集団、太子党の代表格。李氏は苦学して、共産主義青年団(共青団)に入り、頭角を現した。習氏のバックには江沢民前国家主席(86)がいて、李氏には胡錦濤国家主席がいる。習氏と李氏の争いは太子党VS.共青団の代理戦争なのです。ふつう、こうした権力闘争は決着をつけたうえで、新体制に移行する。ところが、今回は今なお、壮絶な権力闘争が繰り広げられている。それだけに、李氏は本当に首相になれるのか、その前に潰されるんじゃないか。こんな見方もあるほどです」(中国在住ジャーナリスト)

■習近平と中国人民解放軍
中国では、軍産複合体である人民解放軍を、いかに掌握するかが、国家統合の要となる。

人民解放軍人事、胡派が巻き返し 習派期待外れ、江派後退 2012.10.26
5年に1度の中国共産党大会を2週間後に控え、党中央軍事委員会は25日、人民解放軍4大機関のトップ人事を発表した。胡錦濤国家主席に近い勢力が躍進し、習近平国家副主席の腹心も2つの重要ポストを得たが、今春に失脚した薄煕来・前重慶市党委員会書記に近いとされる太子党(高級幹部子弟)の主要メンバーは外された。同時に江沢民前国家主席勢力の後退が際立った。この夏、対日政策の主導権などを保守派に奪われた胡錦濤派の巻き返しをうかがわせる人事となった。
(中略)
「国際協調を主張する胡派が最重要ポストを押さえたことで、南シナ海と尖閣諸島周辺で軍事衝突が起きる確率は下がった」と分析する共産党筋もいる。
(中略)
香港メディアなどの事前予想で、これらのポストに就くと目されていた、習氏の親友の劉源・総後勤部政治委員(劉少奇元国家主席の子息)ら数人の太子党の軍高官は現職にとどまり、昇進はならなかった。
(1)薄氏とも親密な関係があり問題視された
(2)軍の太子党関係者らは最近、メディアで日本などとの戦争をあおる強硬発言を繰り返し、軍内外の穏健派から危険視された−
などが原因との見方も浮上している。
(中略)
また、江前主席派の凋落(ちょうらく)も今回の人事の特徴だ。陳炳徳・前総参謀長ら江派の軍高官はほとんど引退。総政治部主任に昇格するとみられた、江氏の元秘書で総政治部副主任の賈廷安氏も現職にとどまった。
共産党筋は「権力闘争の攻防は常に一進一退。今回の軍人事における胡錦濤派の躍進は、共産党最高指導部人事で胡派が大きく譲歩した結果だった」と意味深長なコメントをしている。以上「リンク」参照

■習近平って何者?
太子党・上海閥、団派の闘争が今後も続く中で、習近平はどう動くのか?
次期・国家主席:習近平について調べてました。
●習 近平(しゅう きんぺい、シー・ジンピン、1953年6月1日 – ) 
中国の新しいリーダー習近平氏は何者なのか?謎に満ちたその人物像に迫る
以下「リンク」より。

 習近平氏の父親は、元国家副主席の習仲勲氏。習仲勲(しゅう ちゅうくん)氏は中国共産党創設メンバーの中では比較的リベラルな思想の持ち主であった。共産党のリーダーであった毛沢東氏は徹底した革命主義者であったが、革命が成功し中国政府が軌道に乗り始めると、現実主義的、リベラル的な立場の政治家が力を持つようになってきた。
 これに対して毛沢東氏を中心とする保守派がしかけた権力闘争が「文化大革命」である。
(中略)
 リベラル派であった習仲勲氏も保守派から攻撃され文化大革命前後に合計16年間も身柄を拘束された。息子の習近平氏はそのとばっちりをうけて、しばらく「下放」(地方の農村に懲罰的に追いやること)されている。
 文化大革命時代に下放されていた高級幹部の子弟の多くは、政治をあきらめて経済活動に将来を見出し、国営企業などに入ったものも多かった。彼らはのちに改革開放路線を強く主張するようになる。だが習近平氏はじっと耐え、地方党組織の書記としてキャリアをスタートさせている。
 もちろん高級幹部の子弟である習氏のこと、下放が解けた後は国務院副総理の秘書にいきなり抜擢され、その後は順調に党内で出世している。
 習氏は特に確固たる主義主張はなく、人の話をよく聞き、状況に応じて適切な政治スタンスを取るといわれる。確かに、時折強硬な政治姿勢をハッキリと見せる胡錦濤氏や、穏健派といわれる温家宝氏と異なり、一貫した態度はあまり見出せない。
 おそらく、習氏は周囲の状況をうまく汲み取った形でリーダーシップを発揮していくと思われる。その意味で現在、中国における主要な政治課題となっている、貧富の差の縮小、経済成長の維持、日本敵視、チベット弾圧という方向性は当面そのまま維持される可能性が高い。

%E7%BF%92%E8%BF%91%E5%B9%B3%E5%A6%BB.jpg画像はこちらより。

 習氏は私生活も地味といわれているが、離婚後、中国No1の歌姫と呼ばれた歌手の彭麗媛と再婚しており、必ずしもそうとはいえない部分がある。また習氏の子弟は皆米国など海外に留学し外国籍を保有している。これは権力闘争による失脚を危惧しているか、習氏自身が中国を信用していないことの表れであり、習氏の現実主義的な一面をのぞかせている。

■まとめ
●中国の内部体制は、今後も熾烈な権力闘争が続き不安定。トップ2は、敵同士。
・国外に敵を作ることが、国内をまとめる唯一の手段
 →海洋強国:尖閣、南沙への強硬姿勢強化へ。
・国内人民の暴動への対策
 →内需拡大・所得倍増、汚職撲滅・・・
●習近平は、共産主義者と言うより現実主義派であり市場派。実は中国を信用していない。
・しかし、バックの太子党・江沢民上海閥の既得権益維持の強力な圧力を受け、動く。
●5年後には体制が大きく変わるか?
・次期首脳陣は、団派が中心となる。協調路線に転換か?
内部に多くの問題を抱え、今後も不安定な状況が続くと予測される中国。
海洋強国、内需拡大・所得倍増、汚職撲滅・はたして可能なのか?今後どうなるのか?
次回は、今後の中国について、分析してみます。お楽しみに・・・・

List    投稿者 yooten | 2012-12-06 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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