2012-12-07

世界経済の現状分析(9) 中国経済のまとめ

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前回の記事では、中国の新しい指導者である習近平体制の分析について整理してみました。
いよいよ今回中国の最終回。習近平政権の船出に当たり、(経済的な)課題の分析を行い、中国の将来を考えてみたいと思います。
これまでの内容を頭に入れて読むと更にすっきりしますので『世界経済の現状分析』シリーズ過去記事は以下をご覧ください。
『世界経済の現状分析』【1】プロローグ
『世界経済の現状分析』【2】米国経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【3】米大統領選の分析その1(両候補の政策の違い)
『世界経済の現状分析』【4】米大統領選の分析その2(両候補の支持層の違い)
『世界経済の現状分析』【5】米大統領選の分析その3(米大統領選の行方?)
『世界経済の現状分析』【6】中国経済の基礎知識
『世界経済の現状分析』【7】中国経済の現状(ファンダメンタルズ)
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●胡錦濤政権からの引継ぎ事項
中国共産党第18回党大会で胡錦濤によって行われた中央委員会報告では、以下の課題が中国の今後の課題として発表されました。これは習近平体制への引継ぎ事項といえます。
まずはこの発表を振り返ってみましょう。

□18回党全国大会の開幕と「海洋強国」の道
 【北京時事】中国共産党の第18回大会が8日午前、北京の人民大会堂で開幕し、胡錦濤党総書記(国家主席)が中央委員会報告(政治報告)を読み上げた。この中で胡氏は、持続可能な協調発展を目指す自身の指導理念「科学的発展観」について「毛沢東思想、鄧小平理論などと共に長期的に堅持すべき指導思想」と強調した。党大会では党規約改正が焦点だが、これで科学的発展観は歴代最高指導者の指導理念と並ぶ「行動指南(指針)」に格上げされるのは確実。胡氏の理論は歴史に名を残すことになった。

⇒この発表のポイントは以下の通り。(リンク
第1に国家戦略として「海洋強国」の建設を目指すこと、
第2に既に2003年7月胡自身が提起した「科学的発展観」、「持続可能な発展観」を今後も「党の行動指針」として継承すること(=市場拡大路線の基本的継承)、
第3にいかなる高位にある幹部であれ腐敗汚職があればこれを一掃すること、
第4に社会の貧富格差を縮小国民所得(GDP)の倍増を目指すこと、
である。
●中国外交方針の転換:資源確保の為に海へ

中央委員会総会での、胡氏の報告の中で、所得倍増、汚職追放、格差是正などは、現在中国で言われている国内問題と、それを解決する為の目標になります。これについては後ほど述べることとしますが、これら国内問題とその解決方針とは別の位相で、「海洋強国の建設」というキーワードが打ち出されました。これは中国の歴史上重要な方針転換を意味しているようです。そしてこのテーマは国内の中国共産党に対する批判をかわすための対外外交方針を意味しています。
「海洋強国建設」については以下の投稿が参考になります。

□中国の軍事情勢について:拓殖大学教授 茅原郁生
・中国の海洋進出と海軍力強化の動向  
ここで中国の軍事力が関わる懸念すべき動向について見てみましょう。
紹介してきたように中国は周辺国から見れば、冒頭申しましたように、大変厄介な隣人です、誇り高く、強引で自己中心的なのです。
そしてこの国が過去の歴史の栄光を、まだ忘れてはいないのです。
例えば中国は、ユーラシアの東半分を占める大陸国であると理解していましたが、中国は「海洋大国である」と、言い出しております。
明の時代に鄭和(ていわ)という優れた提督がいて、これがあのジャンク船隊を引き連れてアフリカ海岸まで遊弋し、貿易したということを持ち出して、「かつて海洋大国であった」記憶をもとに、今日海洋権益を主張するようになってきました。
そこで中国の海洋進出の問題をわが国の安全保障に関係させて考えてみたいと思います。
なぜ中国が海洋に出るか、私は、三つの理由があると見ています。
一つは、中国が海洋資源を求めるという理由、二つが安全保障上の必要性、三つめがエネルギー輸送にかかわるシーレーンへの関心の高まりの問題です。
***以上転載***


中国は大陸国家というイメージが強かったですが、世界最大の13億人(戸籍が無い人を加えると何人になるのか・・・)を抱え、彼らがここ数十年で一気に豊かさを実現する上では、資源不足は明らかです。この資源不足を見越し、中国は文字通り外へ打って出るつもりなのです。
また特に尖閣問題=日本との外交問題を意識した、政策は共産党政権への批判をかわすという意味でも重要な発信といえます。
●汚職追放を掲げる背景:国外へ流出する富

「海洋強国の建設」と並んで、共産党政権への批判をかわす重要な政策が「汚職追放」です。日本でも公共団体の職員が2億円を横領し、外国人女性につぎ込み日本国民を驚かせましたが、中国はスケールが違います。

○信じられない中国官僚の汚職ランキング2011年05月15日
中国「財新ネット」が中国10大汚職官僚ランキングを発表し、話題を集めている。中国政府は汚職の取締りを強めているものの、いまだに現状は深刻だ。
***途中省略***
汚職ランキングという何とも不名誉なランキングのトップになったのは、元中国銀行広東開平支店・支店長の余振東(じょ しんとう)氏で、着服金額は40億元(約500億円)にのぼる。
2位は、元広東省国際投資公司香港支店・副社長の黄清洲(こう せいしゅう)氏で、着服金額は14億円(170億円)。
第10位の元人民解放軍・海運副司令官の王守業氏でも1億6000万元(19億9000万円)で、李華森氏よりも200万元多かった。
***途中省略***
中国政府は総額89億7000万元相当の経済損失を取り戻したというが、深刻な汚職腐敗の実態を表しているともいえる。中には、汚職の発覚をおそれて海外逃亡する人も。彼らの為に当地の華僑が逃亡計画を助けるサービスまで存在するというのだからさらに驚きだ。
○中共汚職官僚66万 実刑はわずか2万人【新唐人2012年10月22日付ニュース】
***途中省略***
10月15日、新華社は中国共産党紀律検査委員会監察部からの統計データをとり上げました。それによると、2007年11月から今年6月までに、中国全土の紀律検査委員会監察機関が受け取った告発事件は66万6千件。このうち立件されたのは64万3千件、判決が下されたのは63万9千件、66万8千人以上が党紀、政紀により処罰を与えられたそうです。
***途中省略***
中国人民銀行ウェブサイトは昨年6月、中国社会科学院の調査研究資料を引用し、90年代中期以来、国外逃亡した官僚は1万6千人〜1万8千人、持ち出した金額は8千億元(約10兆円)に達しており、一人当たり5千万元近い額を持ち出している計算になると発表しています。


●中国共産党の不安要素:格差問題の共産党政権批判への飛び火を警戒

胡錦濤は和諧社会というキーワードでこれまで社会資本主義における格差是正を目指してきました。これは改革開放を唱えた鄧小平時代に「先豊論」により、拡大し続けてきた格差の是正を目指すものです。この格差問題は、いまや中国共産党の一党独裁体制への批判にも繋がるほど、大きな問題となっており、貧困層による反共産党への動きへと繋がっています。
まずは格差がどれほど深刻なのか?各国の労働分配率や貧富の差を見て見ましょう。

○中国の低い労働分配率
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>労働分配率、つまり雇用者所得が名目GDPに占める割合を見ると、中国の労働分配率の水準は1990年代から大幅な低下傾向を辿って現在は4割程度の水準にとどまっている。(2010年記事)



○所得水準と貧富の格差の相関図
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※貧富の差(上位10%の所得/下位10%の所得)
・中国:約18倍
・米国:約16倍
・日本:約8倍
***以上転載***


労働分配率を見ると、市場開放を進めてきたここ20年の間に中国の所得分配率は一気に低下しています。所得水準と貧富の格差の相関図でも、格差が拡大している日本はもちろん、貧富の差が激しい米国を抜く水準です。
また、所得倍増や汚職追放などのキーワードは、都市間格差や地域間格差、そして高齢化問題などを含んでいます。都市間格差や地域間格差については、前々回でも述べられているので割愛しますが、中国では日本と同じスピードで、「高齢化問題」による問題がおきつつあります。
●高齢化問題:日本と同じスピードで中国に迫る超高齢化社会

1980年代から続く一人っ子政策で、人口の急激な上昇を抑制した中国ですが、これが今になって大きな仇となっています。将来を担う若者人口の抑制は、急速な高齢化社会の担い手不足を生んでいます。

○主要国の将来推計比較
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上記グラフで見ると、中国の65歳以上の高齢化率は、2010年で8〜9%、2040年で24%ぐらい。日本の方が高齢化率は高いが、中国も同じぐらいのスピードで高齢化すると推計されている。


中国の急速な高齢化は超高齢化社会に突入する、日本の高齢化のスピードとほぼ同じ(グラフの勾配が高齢かスピードです)。「世界の工場」として発展してきた中国経済が失速はもちろん、高齢者の年金生活を支える担い手不足による年金問題、世代間格差問題をはらんでいます。
一億層中流を実現した日本と比べ、現状でも都市間・世代間の所得格差が大きい中国の将来において、大きなリスクといえます。
●中国の内需拡大の可能性:高度成長を実現した日本と中国の違い

都市間・地域間の経済格差、高齢化問題などの克服のため、内需拡大により、安定した経済成長を目指していくようです。

○中国国務院 内需拡大政策を発表 15年までに個人消費規模を32兆元に
中国国務院は11日までに、国内の小売業や流通業の発展を促進する2015年までの中期計画「国内貿易発展“十二五”規画」を発表した。
個人消費の動向を示す社会消費品小売総額を15年までに32兆元(約394兆5,600億円)に拡大する目標を掲げた。政府が同様の計画を発表するのは初めて。外需不足で景気が低迷する中、内需を促進し、経済の安定成長を促すのが狙い。
10年の社会消費品小売総額は前年比18.4%増の15兆4,554億元だった。11〜15年までに年平均16%前後の伸び幅を維持し、15年には10年の2倍以上に拡大する計算となる。
そのほか計画では、卸売・ホテル業・飲食業の生産増加額の年平均成長率11%前後◇国内貿易に携わる就業人口1億3,000万人などの目標を定めた。
このうち、流通市場から隔離されている農村部へのインフラの整備などで、スーパーマーケットチェーンの農村部への進出を推進することなども盛り込んだ。関連企業への優遇税制や助成、民間企業の参入基準の緩和などで後押しする方針を示したものの、具体的な政策には触れなかった。
11日付京華時報によると、アナリストは「世界経済の低迷で外需が不足しているため、国内の産業構造改革などにより内需を促進する必要に迫られていることが背景にある」と分析した。
○中国経済における内需拡大問題について:大連民族学院経済管理学院 師 穎新
以上の議論から、内需拡大に向けて、短期的には、1)労働所得を今の40%から50%台
に上げること、2)家計消費率を35%から50%以上に上げることが必要である。さらに、
より長期的には、3)今後の20 年から30 年の間に都市化率を47.5%から75%〜80%にす
る、4)第三次産業の雇用者数を32%から70%〜80%にする必要がある。
これらの目標は先進国ではすでに達成したレベルで、中国でも決して無理な数字ではな
い。これらの目標が実現されれば、中国の内需が確実に拡大し、世界の工場だけではなく、
世界の市場になるのは夢ではないだろう。


しかし現実的には、内需拡大はおろか、低賃金による「世界の工場」としてのメリットも薄れ、中国経済は将来失速していく可能性すらあります。

○中国の内需の拡大はこれ以上あり得ない
***途中省略***(副島氏と石平氏との対談の内容です)
だとすれば、これからは国内投資も縮小していく一方でしょう。
これらの二つの牽引力がこれからむしろ落ちていくという傾向にあります。さらに一般庶民の国内消費能力にもかなり大きな問題があります。
一つは、貧富の格差です。ほんとうに消費能力を持っている金持ちが、最近の傾向として、資金を持ち出して海外に離脱しているのです。彼らの消費は海外で行なわれています。
また、庶民たちの消費も今は大きく伸びることはできない。
一般庶民の消費を大きく伸ばすには給料を上げることがいちばんよい方法ですが、給料を上げると、さらにインフレが拡大します。インフレになると労働力が高くなり、対外輸出の力がますます落ちてしまいます。
こうしたジレンマの中で、これから中国の消費や内需は拡大できるのでしょうか。
中国の中央銀行である中国人民銀行のかなりボス的存在である周(しゅう)小(しょう)川(せん)・総裁(中国の政治家。現在は、中国人民銀行総裁。二〇一〇年八月末、米国債の取引で四三〇〇億ドルの損失が生じた責任で、
解任されると一部で報じられた)は最近、こんなことを言いました。
「みんなは中国の内需の拡大を期待するけれど、それは容易ではない。日本はバブルが崩壊して二〇年経っても、
まだ、内需の拡大はできていないのだから、われわれも容易に内需の拡大はできない」と。
かなり真実を言っています。


日本は勤勉な国民性もあり、自身の技術力と生産性により輸出を伸ばし、儲けたお金は広く分配することで高度成長時代を向かえ、1970年には「一億層中流」という豊かさの実現(=生存圧力を克服)してきました。これは、共同体的気質が残る日本だからこそ実現できたことです。
一方、中国は安い労働力と国策による外資の生産拠点誘致により輸出は伸ばした物の、組み立て技術のみで国民の大多数であるブルーカラーの所得アップには繋がっていません。
これは中国4000年の歴史は掠奪闘争→私権闘争の歴史であり、先豊論で豊かになった企業家や官僚は、更なる富の獲得へと走り、格差は拡大、貧困層は貧しいままです。
習近平政権の船出は前途多難といえます。

List    投稿者 imayou | 2012-12-07 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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