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『世界経済の現状分析』【19】〜ASEAN・アジア分裂を狙う米国TPP

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前回から今後の経済発展で注目されるASEANについて注目しています。
今回は、ASEANを中心とする経済圏と周辺国の状況を整理し、日本を狙うTPPとの関係はどうなっているのか?について追求していきます。
まず前回のデータから、ASEAN諸国の主要貿易取引先を見てみると
1位:中国 18.1%
2位:日本 14.1%
3位:EU 13.1%
4位:米国 12.0%
5位:韓国  6.3%
米国・日本は、ASEAN貿易でトップを中国に奪われています。
ASEANの工業化を支援してきたのは、日本ではなかったのか?
米国は4位。オバマ大統領2期就任後、まずASEANへ。
今、ASEANをめぐって何がおきているのか?
過去の『世界経済の現状分析』シリーズは以下をご覧ください。
『世界経済の現状分析』【1】プロローグ [1]
『世界経済の現状分析』【2】米国経済の現状(ファンダメンタルズ) [2]
『世界経済の現状分析』【3】米大統領選の分析その1(両候補の政策の違い) [3]
『世界経済の現状分析』【4】米大統領選の分析その2(両候補の支持層の違い) [4]
『世界経済の現状分析』【5】米大統領選の分析その3(米大統領選の行方?) [5]
『世界経済の現状分析』【6】中国経済の基礎知識 [6]
『世界経済の現状分析』【7】中国経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【8】中国、新体制・習近平でどうなる?
『世界経済の現状分析』【9】中国経済のまとめ [7]
『世界経済の現状分析』【10】欧州経済の現状①(ファンダメンタルズ) [8]
『世界経済の現状分析』【11】欧州経済の現状②(独・仏 VS PIIGS 格差問題の分析) [9]
『世界経済の現状分析』【12】EU経済の現状③(EUの政治状況、右翼化?) [10]
『世界経済の現状分析』【13】ロシア経済の現状(ファンダメンタルズ) [11]
『世界経済の現状分析』【14】ロシア経済の現状〜プーチンの焦り [12]
『世界経済の現状分析』【15】コラム:新たな天然ガス資源「シェールガス」 [13]
『世界経済の現状分析』【16】ブラジルの経済の現状(ファンダメンタルズと金貸しの戦略) [14]
『世界経済の現状分析』【17】『世界経済の現状分析』インド経済 [15]
『世界経済の現状分析』【18】ASEAN経済の現状(ファンダメンタルズ) [16]
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まず、ASEANの近年の歴史からASEANと周辺諸国の関係変化を見てみます。
■プラザ合意とその後のASEAN
日本は、1985年のプラザ合意にて米国から極端な円高を強いられます。今までの貿易黒字が赤字へと転落する対策として、製造業の各工場をASEANに移します。
これにより、ASEAN諸国の工業化と発展が始まります。
■ASEAN諸国とアジア通貨危機
アジア諸国には、アジア通貨危機により金貸し・IMFの管理下に入る苦い歴史があります。主要点をまとめると・・・
・ヘッジファンドの通貨の空売り(ソロス)により通貨下落→アジア各国の通貨危機。
・タイ、インドネシア、韓国がIMF管理に入った。
 金貸しIMFの戦略は、「大変ですね。金貸しまよ。その代わり、言うとおりにしなさい。」
・マレーシア首相(マハティール):通貨危機を仕掛けたヘッジファンドは、けしからん。
 日本がお手本になってくれと当時は期待。
・韓国は、米国と米韓FTAへ。国内は一部の財閥系の韓国企業だけ儲かり、
 中小企業はガタガタ。
 →アジア通貨危機の延長線上に、米韓FTA2006開始2007締結。
・日本は年々従米化へ。韓国は、アメリカ管理下でいいなり。
          ↓
*ASEANは、米国(IMF)抜きで経済圏を作ろうとする動きへ。
*ASEANと中国接近へ。

では、より詳細にASEAN・日本・中国の状況を押さえてみます。
■ASEANをめぐる中国と日本の闘い
〇中国主導のASEAN+3日本は2005年12月、ASEANの主導権を中国に奪われる。
以下、リンク [17]より。

 そうした中で12月12日に東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議とASEAN+3(日本、中国、韓国)首脳会議、14日には東アジア首脳会議がクアラルンプールで開かれた。ASEAN+3の議長国マレーシアのアブドラ首相は東アジア共同体を論議する場所はここしかありません」と決意をこめて語った。この言葉によって中国の影響力を少なくするために参加国が16カ国と多い東アジアサミットで東アジアの共同体を論議しようと提案していた日本の外交は敗北した。日本は今や完全に主導権を中国に奪い取られ、ただの参加国の一つになった。
 ASEAN諸国は1997年7月のアジア通貨危機の時のIMFを使ったアメリカ金融資本の略奪的陰謀を忘れてはおらず、したがって東アジア共同体構想と東アジアサミットをアメリカ抜きで進めることに意を用いてきた。
 日本は東アジアサミットへのアメリカの参加を追及したがASEAN諸国に拒絶され失敗した。その後は東アジアサミットにおける中国の影響力をそぐため、オーストラリアやニュージーランドやインドを参加させることに力を入れた。
 しかし今回、東アジア共同体構想を論議する場がASEAN+3に決まり、東アジア首脳会議は将来の地域統合に向け「主要な役割を果たしうる」という文言を共同宣言に盛り込むことで敗北を糊塗した。この結果東アジア共同体構想は中国とマレーシアの主導権が明白となったのである。

〇日本が巻き返しを狙うASEAN+6
以下、経済産業省HP  [18]

ASEANを含む経済統合の動きが急速に進展する中、東アジア地域では、二国間・多国間の経済連携協定を締結する動きが活発化しています。我が国は、これまでシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドと二国間のEPAを締結しているほか、2008年にはASEANともEPAを締結しました。現在は、東アジア地域の更なる自由化を目指し、ASEAN+6の国を対象とする包括的経済連携の実現を推進しています。

〇ASEANを中心とした新たな動きRCEP

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これに対してASEANは、2011年11月の東アジア首脳会合・ASEAN+3首脳会合において、ASEAN+3とASEAN+6とを区別しない、新たな枠組みとして東アジアの包括的経済連携(RCEP)構想を提案しました。あわせて、16カ国の間で貿易・投資自由化に関する三つの作業部会の設置が合意され、RCEPの枠組みの下での広域的な経済連携に関する具体的な検討が本格化しました。

■RCEPの主導権を狙う中国vsアジア圏の分裂に動く米国TPP
以下、リンク [19]より

20日に採択された「(RSEP)交渉立ち上げに関する共同宣言文」では、2013年の早い時期に交渉を開始し、15年末までに交渉を完了させることを目指すとしている。
具体的には、域内の関税を引き下げ、サービス貿易に関する制限を撤廃、投資の促進や自由化に取り組む。また、貿易や投資を円滑化することは、国際的、地域的なサプライチェーン(供給網)を整えることを促すと強調する。
中国の英字新聞チャイナデイリーは、中国の温家宝首相がRCEP支持を表明した、と報道。中国人専門家の「RCEPはASEANが取り組む経済統合を促すが、米国が主導するTPPは、ASEANの一部を取り込むことで分裂させ、統合への歩みを妨げている」との見方を紹介した。
また、すべての関税撤廃を原則とするTPPに比べ、RCEPは「参加国の個別かつ多様な事情を認識し」という表現で、各国の発展段階に沿った歩みが可能だ、と指摘している。
一方、再選を果たした米国のオバマ大統領は、2期目でも「アジア回帰」を外交の基本方針とし、再選後で初めての外遊先にもタイ、カンボジア、ミャンマーを選んだ。国内経済建て直しのために、貿易の拡大策が必要なオバマ政権にとって、人口6億を超える東南アジアは欠くことのできない新興市場だ。

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 TPPには、東南アジアからシンガポールとブルネイが参加しているほか、ベトナム、マレーシアが交渉を開始している。さらにオバマ大統領は、20日にプノンペンで開かれた東アジアサミットへの参加に先立ち訪れたタイで、インラック首相から「TPP交渉参加」の意向を引き出した。東南アジアでの存在感、発言力を強める中国が、さらにRCEPという世界最大級の貿易圏構築を主導することに、強い警戒感を抱いている。

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以上より、ASEAN諸国と各国との現在の状況をまとめると
・ASEAN諸国は、アジア通貨危機以降、反米(反IMF・反金貸し)意識が根強い。
・日本・韓国は米国の言いなりの国に成り下がった。ASEANは頼りにしていない。
・中国は、ASEAN諸国に対して軍事面でも経済面でも圧力を強めている。
 ASEAN+3からRCEPの中心国となろうと必死!!
・ASEANに対して出遅れている米国は、TPPでASEAN諸国の分裂と中国の影響力減を狙う。
■ASEAN諸国の真意はどうか?
アジア通貨危機以降、日本を頼ってきたASEAN。しかし、日本は金貸しの戦略により年々従米化に傾き、今では全くあてにされていない様子を以下の元マレーシア首相のインタビューが示しています。
更に日本は、TPPに参加し自国の衰退を加速させるだけでなく、ASEAN諸国の分裂へもカタンしているのです。
そんな日本をASEAN諸国はどう見ているのでしょうか?
●「ルックイーストはいま」マハティール・ビン・モハマド(2013.01.15)

——当時の日本は経済的に日の出の勢いでしたが、いま長い停滞のなかにいます。
 「日本が苦境にあるのは、経済大国への道を切り開いた自らの価値を捨て、欧米に迎合したからだ。例えば終身雇用制などに重きを置かなくなった。政府の指導や民間企業との協力関係はいまや犯罪視される」
 ——系列、行政指導、日本株式会社といった、欧米から批判されたシステムにあなたは肯定的でした。それらを捨てたことが間違いだと。
 「大きな誤りだった」
 「われわれが見習ったのは、現在の日本がやっていることではない。いまはあなたたちの犯した過ちを繰り返さないようにと学んでいる」
 ——しかし90年代以降のグローバリゼーションは、そうした日本のシステムの生き残りを許さなかったようにみえます。
 「確かにグローバリゼーションはやってきた。それは欧米のアイデアであり、彼らの利益のために考え出された。新たなシステムを採用すれば、混乱はつきものだ。日本は国内の状況を斟酌(しんしゃく)せずに受け入れた。それまでのやり方とグローバリゼーションを調和させることに失敗した」
——「現時点では、古い社会システムと労働者倫理が残っている韓国のほうが(日本に比べ)学ぶ点が多い」と著書で指摘されています。
 「東方政策は当初から日本だけでなく韓国や台湾も視野に入れていた。いまなら中国も。もちろんほとんどは日本から学んだ。文化や倫理、日本を発展させた価値観。だがその多くはもう日本にはない

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——米国のいいなりになる日本政府に何度も不満を表明しました。米国の意向をくんで、あなたが唱えた東アジア経済会議(EAEC)構想に反対した時やイラク戦争を支持した時です。そんな日本に学べと号令をかけたことを後悔はしませんか。
 「われわれが見習ったのは、高い職業倫理で戦後の復興を果たした日本だ。米国の影響下にある日本ではない。米国はEAECに中国を含めたから反対した。環太平洋経済連携協定(TPP)でも中国を除外しようとする。われわれは東洋の人間だ。敵をつくるのでなく、自分たちの問題は自分たちで解決すべきだ
——中国はいまやルックイーストの対象であり、脅威ではないと発言されています。日本や他の近隣国の指導者とは見方が違うようです。
 「過去2千年、中国がマレーシアを侵略したことはない。ベトナムに拡張を試みたが、あきらめた。日本に攻め込もうとしたのは、モンゴル高原に発する『元』だ。われわれを植民地にした西欧に比べれば中国が過去、好戦的だったとは言えない。市場経済の時代に、中国が日本をはじめ、周辺国を侵略する意図を持つとは思えない
以上、リンク [21]より。

■まとめ
・ASEANは米国抜きのアジア経済圏・RCEPを構築しようとしている。
 そこで主導権を握りたい中国が圧力を高めている。
・一方でASEAN諸国も一枚岩ではない。米国・オバマ大統領はTPPでASEAN
 諸国の分裂を狙う。2期大統領就任後、まずASEANへ訪問。
・日本・安倍首相も米国を応援するかのようにASEANへ訪問。
 その他、麻生財務相のミャンマー訪問。アウンサン・スーチー政権成立と日本訪問。
 全て、金貸し→米国の指示か?
・金貸しは、TPPで日本からの略奪だけでなく、アジア圏の分裂を狙っている。
次回は、アラブの春以降の中東の状況変化について見ていきます。お楽しみに・・・
画像はこちらからおかりしました。
リンク [22]
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