2013-03-08

『世界経済の現状分析』【14】ロシア経済の現状〜プーチンの焦り

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前回は、ロシアの経済ファンダメンタルズについて見てきました。
注目点は、豊富な資源(天然ガスや石油等)をもとにしたGDPのV字回復、失業率の低下、貿易力の増等。
プーチンは、豊富な資源を国有化し、金貸し達から防衛し、自国の経済の安定化を実現してきました。
一方で資源を主軸とした国家運営は、輸出先の経済状況や各国のエネルギー事情に大きく左右されます。現在プーチン・ロシアは、焦り始めています。今回はその「焦り」の中身について調べてみました。
『世界経済の現状分析』シリーズ過去記事は以下を参照してください。
『世界経済の現状分析』【1】プロローグ
『世界経済の現状分析』【2】米国経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【3】米大統領選の分析その1(両候補の政策の違い)
『世界経済の現状分析』【4】米大統領選の分析その2(両候補の支持層の違い)
『世界経済の現状分析』【5】米大統領選の分析その3(米大統領選の行方?)
『世界経済の現状分析』【6】中国経済の基礎知識
『世界経済の現状分析』【7】中国経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【8】中国、新体制・習近平でどうなる?
『世界経済の現状分析』【9】中国経済のまとめ
『世界経済の現状分析』【10】欧州経済の現状①(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【11】欧州経済の現状②(独・仏 VS PIIGS 格差問題の分析)
『世界経済の現状分析』【12】EU経済の現状③(EUの政治状況、右翼化?)
『世界経済の現状分析』【13】ロシア経済の現状(ファンダメンタルズ)
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■ロシアと日本が急接近??
●森元首相訪ロで対ロシア外交は?
先月、森元総理大臣は、安倍総理大臣の特使としてロシアのモスクワを訪れ、プーチン大統領と会談しました。この会談の中で、プーチンの言葉「引き分け」について「北方4島の内、2島を日本に返還か?」と話題になりました。また、会談では、今後の経済、エネルギー、北朝鮮問題、スポーツなど幅広い分野に及びました。311地震・原発事故後にロシア・プーチンから提示された「日本への天然ガス輸出」についてもより推進されると思われます。
プーチンがこのような動きに出る背景には、何があるのでしょうか?
■プーチンの「焦り」〜ロシアをめぐる外圧の変化〜
この間、ロシア国家を支える天然ガス事情の外圧は大きく変化しています。
その状況を整理します。
●天然ガス最大輸出国(ロシア)とエネルギー最大消費国(中国)の対立
まず、中国とロシアの天然ガスをめぐる関係について、

プーチン氏は大統領時代の2006年、2本のパイプラインを敷き、年間680億立方メートルのガスを売却することで中国の基本合意を取り付けた。ところが、最後の価格決めでつまずいた。巨額商談である分、双方とも簡単に譲れず、首脳が延々と価格交渉する異常な展開となった。
(中略)
上海の華東師範大学ロシア研究センターの楊成・副主任は中国紙などで「中国が買わなければ、ロシアは巨費を投じたガス田開発はできない」「中国は、エネルギー輸入先を(ロシア)一国に頼る戦略を変更し、交渉で有利な立場にある」と強気の背景を解説した。
(中略)
ロシアはますます行き詰まって、本来なら日本に頭を下げて購入や開発支援をお願いに来なくてはならないところに追い込まれているのです。
参照:変動 2012 東アジアと日本 露資源外交極東に軸足(1/20 読売)

本来、最大エネルギー消費国である中国とのパイプラインを建設し、天然ガスを輸出したいロシア。したたかな中国と、なかなか交渉が進まない・・・

ロシアにとって中国との関係は「死活的に重要」(外交筋)であり、現時点の「日本」は安定的な中露関係があっての存在だ。ロシアは当面、石油・天然ガス輸出などを通じた実利的な面で日本との関係拡大を図り、その中で領土問題の落としどころを慎重に探っていくとみられる。参照:リンク

●欧州危機による輸出減+ロシア以外からの天然ガス輸入を模索する欧州
この間の欧州危機により、ロシアから欧州への天然ガス輸出は減少しています。
それに加えて欧州は、カタールからの天然ガス輸出への依存度を高めてきており、結果、ロシアの天然ガスの欧州向け輸出量が低下するという流れになっています。
一方でロシアは最大のお客さん「欧州」のシェアを維持するためにパイプライン建設を進めています。

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●米国のシェールガス革命がロシアのシェアを奪い価格競争激化へ
ロシア・プーチンの「最大の焦り」は、米国「ショールガス革命」です。
まずシェールガスの埋蔵量の世界的分布を見てみます。画像:リンク
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米国の他、中国や欧州でもシェールガス埋蔵量は多いですが、中国は水の問題、欧州は地下水汚染の問題等でまだ開発は進んでいないようです。
では天然ガスシュアの変化はどうなっているのでしょうか?(画像:リンク
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以下「シェールガス革命へのロシア・プーチン大統領の苛立ち」国際エネルギー機関(IEA)の発表より。

アメリカの天然ガス生産量は、2010年の604bcm(10億立方メートル)から2015年までには679bcmにまで増加すると予測されている。ロシアでも同様に増加すると見られるが、同時期までには675bcmが限界とされ、生産量トップの地位を奪取するには十分だ。2020年には、アメリカが747bcm、ロシアは704bcmと、両国の差は一層顕著になると見られる。この時点でアメリカは天然ガスの純輸出国になるだろうと報告書には記されている。 【11月15日 NATIONAL GEOGRAPHIC】

また、米国シェールガスにより、ロシアを支える天然ガスの価格が急激に低下してきています。

天然ガス価格の推移 - 世界経済のネタ帳

アメリカの天然ガス価格が急激に低下しています。
この影響が、今後一気に、世界的な価格に影響すると思われます。
■まとめ
ロシアは、豊富な天然ガス輸出を中心として安定した国家を運営を進めてきましたが、
・米国「シェールガス革命」による天然ガスシェアの低下・価格低下の圧力増加
・最大エネルギー消費国である中国との天然ガス交渉が進まない。
・最大取引先である欧州がロシア一国からの輸入から、カタール等からの輸入を進めて
 いる。

ロシアを追い詰めるシェールガス革命、この裏で金貸し達はどう動いているのか?
この状況の中で、極東からアジア圏へのシェア拡大をロシアは急いでいます。
また、ロシア自信も英国と共同でシェールガス開発に動き出しています。
参照:「米国のシェールガス革命に対抗するロシア
次回は、コラムとして「シャールガス」についてより細かく調べてみます。
お楽しみに・・・

List    投稿者 yooten | 2013-03-08 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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