2012-01-28

『なぜ今、TPPなのか?』【9】ロシアはどう見ているか?〜資源大国ロシアの世界戦略〜

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前回は、中国はTPPをどう見ているのか?を追求してきましたが、今回は、中国と同じように独自路線を取っているロシアに視点を移してみます。
ロシアは、この間、プーチンの返り咲き選挙を前に様々なマスコミ報道がされています。その辺の真相は、こちらのシリーズもご覧ください。→「ロシア大統領選の行方⇒プーチン降ろしを扇動しているのは誰か?」
資源大国プーチン・ロシアは、どのような世界戦略をもっているのでしょうか?そしてTPPについては、どう見ているのでしょうか?追求していきます。
『なぜ今、TPPなのか?』シリーズの今までの記事は以下をご覧ください。
【1】プロローグ
【2】基礎知識の整理
【3】貿易自由化交渉の歴史
【4】世界に広がるブロック経済圏の現状(1):欧州
【5】世界に広がるブロック経済圏の現状(2):北中米、南米
【6】世界に広がるブロック経済圏の現状(3):アジア
【7】中国はどう見ているか?
【8】中国はどう見ているか?(なぜ中国はTPPに参加しない?分析編)
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●ロシアってどんな国?
ロシアはどんな国なのでしょうか?まず簡単に整理してみます。
○天然資源大国
ロシアは、豊富な天然資源を武器に、急激な金融危機からの復活を果たしました。
まず天然資源の内訳を見てみます。
生産量:天然ガス1位・21.6%、原油2位・11.8%、
埋蔵量:天然ガス1位・26.6%、石炭・鉄鉱石・アンチモン鉱2位、タングステン3位、原油7位
天然ガスについては圧倒的な強さ。この豊富な天然資源をもとに1998年のロシア金融危機後、8年連続でプラス成長(2006情報) を達成し、BRICsと呼ばれるようになります。その背後には、資源価格高騰も成長を牽引してきました。そして、GDPの1/5が資源産業となり、資源産業に依存した産業構造が出来上がります。この波及効果で関連するサービス業も繁栄してきました。
○プーチンによる民間企業の国有化→多様性を欠く大企業⇒WTOにより外国資本投入
プーチンは、金貸し勢力(エリツィン系)に対向し、資源を中心に企業を国有化し国力をつけます。
しかし、産業構造が資源中心(資源頼み)に偏り、製造業が成長しない歪な産業構造の国になります。それを打開するために、WTOに加盟し、外国資本を利用した産業構造の転換を目ざしています。
エリツィン時代のオリガルヒ(新興財団・金融産業グループ)→プーチンによる排除
        ↓
プーチン肝いりの政府系企業へ転換
政府系・燃料系・関連サービス企業等が伸び
製造業が育たない、技術も貧弱
       ↓↓
更なる資源開発と製造業を伸ばすために
外国資本の投入が必要
 
       ↓↓
    WTO加盟へ
●プーチンの世界戦略
このような戦略は、実はプーチンが若い頃から考えていたようです。
以下、「エネルギー市場はどうなっている?(10)〜破局後の覇権獲得を狙うエネルギー大国ロシア〜」より。

その傍らで、「国家鉱業研究所」の研究員を兼務し、「ロシアの豊かな資源を活用すれば、世界的な大国の座を取り戻すことができる」と考え、「ロシア経済発展のための鉱物資源戦略」と題した論文を発表。その中で、石油やガスといった資源産業を再国有化し、その国有企業群の経営を欧米並みに効率化するとともに、金融機関の機能を併設して「金融産業企業群」となることで、世界からロシアの資源開発への投資資金を集めるメカニズムを作ることを提唱しました。

プーチン・ロシアは、豊富な資源を武器に世界戦略を考えている。
「ロシアの資源需要を、いかに上げていくか」という視点で動くのではないでしょうか。
●ロシアのエネルギーカルテル→ユーラシア版WTO戦略
以下、本ブログ「ロシアが主導するエネルギーカルテルと世界構想」より。

石油こそ、中東に7割弱占められているものの、天然ガス、石炭については、前述した上海協力機構に関係するロシア・中国・イラン・インドによって世界の半分以上が占められています。さらに、さきほど紹介したロシアとサウジアラビアの協力関係が築かれた場合、それは石油の3割を占めることになります(ちなみに現在、ロシアは石油生産国でサウジアラビアに次いで世界2位)
ロシアは、一国でも非常に潤沢なエネルギー大国ですが、他のエネルギー大国と協調することで強大なカルテルを成立し得ることが可能で、その中核にいると言っていいでしょう。

自国の豊富な資源だけでなく、資源をもつ新興国とカルテルを結ぶことにより、世界のエネルギー支配を、欧米から奪うことが可能となります。
今回のロシアのWTO加盟は、この動きをさらに加速すると思われます。
●今後のロシアの貿易はどうなるか?
○ロシアの輸出相手国と輸出品目
ロシアの輸出相手国(2009年〜2010年)
 オランダ、イタリア、ドイツ、ウクライナ、トルコ、中国、ベラルーシ、ポーランド、日本、フランス
・ロシアの輸出品目(2009年〜2010年)
 鉱物製品、金属及び同製品、化学品・ゴム、機械・設備・輸送用機器
○ロシアの輸入相手国と輸入品目
ロシアの輸入相手国(2009年〜2010年)
 中国、ドイツ、ウクライナ、米国、日本、フランス、イタリア、ベラルーシ、韓国、ポーランド
ロシアの輸入品目(2009年〜2010年)
・機械・設備・輸送用機器、化成品・ゴム、食料品・農産品、金属及び同製品、繊維・同製品・靴
大きな傾向として、欧州・中国を中心に、資源系を中心に輸出し、基礎的な生産設備・生活用品・食料品を輸入している。今後もWTO加盟により豊富な資源系の輸出は加速すると思われる。一方で豊富な資金で生産・生活に必要な物まで輸入に頼っており、前述したように産業構造の立て直しが急がれる。
○ロシアと日本との貿易

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日本とロシアとの関係をみれば、2006年以降、日ロの貿易は拡大し、日本からの輸出が伸びています。
ロシアの対日輸出は資源偏重型であり、日本からの対ロ輸出は機械やハイテク製品を中心とした技術偏重型、自動車・輸送インフラ整備等が中心となっています。
また最近では、ロシアから日本に向けてのLNGの輸出が注目されています。

大震災発生の翌3月12日、露プーチン首相が、次のような2つの対日メッセージを発した。

(1)過去から引き継いだ問題(北方領土問題)はあるが、日本は友好国であり、長期的に信頼のおけるパートナーである。積極的に支援するべきである。
(2)特に、福島原発の停止を受けて、日本で新たに需要が発生するであろう石油、天然ガス、石炭をロシアは供給する用意がある。リンク

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           東方ガス化プログラム(画像はこちら参照→リンク
今後、日本に対して資源系の輸出を急速に伸ばしたいプーチンの意図が見て取れます。
●金貸しとロシアとの関係
金貸しとの関係はどうなのか?以下、本ブログの記事より。エネルギー市場はどうなっている?(10)〜破局後の覇権獲得を狙うエネルギー大国ロシア〜
■ 米国(ロックフェラー)への利権流出を徹底阻止

エクソンモービルやシェブロンテキサコが全体の3分の2を取得していたサハリン3の開発権(1993年に入札)は、プーチンが強権発動で2004年にそれを白紙撤回

■ ロスチャイルドの接触には容認か

ナサニエル・ロスチャイルドとデリパスカ(オリガルヒの一人)が、アドバイザリー契約を結んでいること、そして資源商社グレンコア(ロスチャイルド系)が、デリパスカの所有するアルミ精錬会社「ルサル」の株式の14%を取得
石油大手「ユコス」が破綻した際には、その株の一部がロスチャイルドにも流れていたよう

■プーチンは、着々と破局後の覇権獲得の準備を進めている。

欧州に対してはドイツへの直結ガスパイプラインが開通予定で、中国へは年間680億立米、1兆ドルに上る天然ガス供給を始める計画を発表しています。他にもイランからパキスタン、インドにつながるパイプラインの建設も計画中。さらには米国や日本へも天然ガス供給を目論んでいるようです。

プーチンは、米国(ロックフェラー)とは対立し、欧州(ロスチャイルド)とは協調しながら、資源大国としての力の拡大を狙っていると思われます。
これは、ここ最近の欧州危機や中東をめぐる動きにも合致します。

欧州・中国・ロシア・中東 VS 米国・米国に引き込まれるアジア圏
その中でロシアは、アジアへの資源供給の拡大を狙っている。
●ロシアは、TPPをどう見ているのか?
では、最後のまとめとして「TPPをどう見ているのか?」
今までの追求の中でロシアの特徴として以下が上げられます。
・自国の豊富な資源を武器に多極的に影響力を拡げている。
・実利が優先、欧米(金貸し)が作った枠組みなど関係ない。
・資金はあるが、自国の生産・ハイテク・製造業・生活用品・食料が輸入頼み。
・WTO加盟により更なる資源の拡大と自国の産業構造の転換を考えている。

プーチンは、これらの条件を満足するために動く。
その中でTPPは、米国に条件を握られ、資源でも対立する。
プーチン・ロシアはTPP等の枠組みには関係なく、資源輸出の関係を構築し、海外資本の投資を利用して自国の産業構造の枠組みの転換を押し進めるのではないでしょうか。
次回は、欧州はTPPをどう見ているのか?について追求していきます。お楽しみに・・・・

List    投稿者 yooten | 2012-01-28 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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