2008-05-10

ロシアの住宅ローン担保証券が金融世界を救う?

世界金融市場にアメリカ発のサブプライムローン問題の収拾がついていない中、ロシアの投資銀行が海外でRMBS(Retail Mortgage Backed Securities=住宅ローン担保証券)のルーブル建てユーロ債を発行すると報じられた。 
 
上記は井本沙織氏(大和総研産業コンサルティング部主任研究員)からの大変興味深い記事のプロローグです。 
 
井本沙織のロシア見聞録・第13回
リンク 
 
原油価格が100ドルという歴史的なハードルを越える石油高騰の追い風で高成長を続けるロシアにおいて、決して大手とはいえない民間銀行が打ち出した冒険の背景には何があるのか? 
 
①「証券化商品」と聞くだけでも拒絶反応を起こす今日の市況において、この試みの意味は。
②今回のユーロ債はドル建てではなくルーブル建ての初国際市場デビューの背景は。
③高くても不動産を購入する気にさせる「何か」とは。 
 
このような疑問に対して井本氏は次のように述べています。 
 

ロシア第28位の銀行の勇気

3月末にロシアのメディアは、キット・フィナンス<КИТ Финанс>投資銀行は、70億ルーブル規模(350億円相当)のRMBSユーロ債を海外で発行すると報じた(ロシアの有力紙コメルサント電子版、2008.03.26)。ロシアの住宅ローンを元資産にした債券は、2006年に初めて海外で起債されたが、それはドル建ての証券であった。今回のユーロ債はこの類の債券としてはルーブル建てで初めて国際市場にデビューする証券となる。さらに注目すべき点はこの発行体がロシア28位の、決して大手とはいえない民間銀行なのである。 
 
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首都モスクワ(写真上)やサンクトペテルブルグ(同下)では建設ラッシュに沸いている 
 
 予定金額は70億ルーブル、償還期限は1年間で償還は09年4月である。このRMBSの発行部分は、2つの階層(トランシェ)に分けられており、優先部分は全体の金額の90%を占め、S&PからBBB+の格付けを付与されている。もう一方の部分はBBであり、一般的に欧米で発行される証券化商品と比較しては低い格付けでの発行に留まる予定である。その代わり、高いクーポン・レート(表面利率)が魅力的であり、BBB+のトランシェで8.75%、BBの部分は9.0%(それぞれルーブル建の固定利付き)の水準となっている。 
 
 このRMBS起債は一見特別なことではないが、今のサブプライム問題一色の金融市場から見て、住宅ローンの証券化には適切な時期でないことは誰の目から見ても明らかである。だからなぜこの銀行は、しかもこの時期に、ロシアでは初(ユーロ市場での証券化商品)のディールを施そうとしているのかが非常に気掛かりとなるところである。 
 
 その答えとしては、08年に入り、たった2カ月で2桁上昇した不動産価格及び未だに続く2桁の高インフレにある。近年、住宅ローンに関する需要は特に堅調であり、07年には倍増となった。また08年に再び勢いを回復した不動産投資は「インフレ・ヘッジ」の色彩を持っており、不動産投資促進の面においては、住宅ローン制度普及の役割が大きい。

 
 
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  投稿者 unkei | 2008-05-10 | Posted in 07.新・世界秩序とは?12 Comments »