2011-12-05

「ユーロ統合」どうなる? 第4回〜ユーロ共同債・財政統合は可能か〜

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「ユーロ統合」どうなる?を扱っています。
第一回〜ユーロ統合したのはなんで?
第二回〜ユーロ統合の構造的欠陥
第三回〜第三回ユーロ国の現状〜
今回から数回は、今後のユーロの行方について考えていきたいと思います。

ギリシャ国債の50%ヘアカットは、ユーロ暴落を防ぐために欧州勢力が執った行動と考えられます。
その後、ドイツ国債入札が札割れを起こし、イギリス国債よりも安値となる現象が起きました。

リンクより
ドイツ国債の札割れは、ユーロ崩壊を後押ししようとする米英の攻撃、つまり米英金融筋による国債先物売りではないか、との見方もあります。
そしてドイツ国債がイギリス国債より安値となった同日11月24日に、欧州委員会は「ユーロ圏共同債」の導入を提案しました。
ユーロ共同債とは
欧州諸国に、あわただしい動きが見られます。この動きを探って行こうと思います。
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ユーロ諸国が直面している危機から脱するためには、大きくは3つの対策が急務だろうと言われています。
 
1.ECBが国債危機の国々に無制限の資金供与をするとか、EFSFの後ろ盾になる等の対策
2.ユーロ共通債の発行に向けた確定的な日程を決める必要性
3.財政統合
 
 
ユーロ加盟諸国が財政的に単一となり、その統合機関が財政を管理していくようなシステムが必要なのでしょう。
これには乗り越えていかなければならない、いくつかの課題があります。
 
 
以下、田中宇の国際ニュース解説より引用します。
  
 

ユーロ救済に必要な3つの対策は、相互につながっている。ユーロ圏諸国が財政統合を行って、共通の国債を発行し、それを担保にECBが危機に陥った国々に救済資金を出すという連携だ。ユーロ圏が財政統合に踏み切れるかどうかがカギとなる。
 
 だが、ユーロ圏(もしくはEU)全体で財政統合の条約を結ぶには、ユーロ加盟17カ国(もしくはEU加盟27カ国)のすべての議会が新条約を批准せねばならない。議会の決議で足りず、国民投票で可決しなければならない憲法上の規定を持つ国もある。新条約の締結と批准は、1年以上の長い時間がかかる。もたもたしていると、米英投機筋が国債市場への攻撃を加速し、ユーロが崩壊してしまう。
 
 もうひとつの問題は、ユーロ圏全体で共通国債を発行する場合、その格付けが低いものになることだ。ユーロ圏内でも、ギリシャ、ポルトガルなどはジャンク債の格付けで、スペインやイタリアも相次いで格下げされている。ユーロ圏で最上位のトリプルA格を保持しているのは、独仏とオランダ、オーストリア、フィンランド、ルクセンブルグの6カ国だ。
 
 これらの国々は、ユーロ圏の共通債が、各国の単独の国債よりも低い格付けになる。共通債が新設されれば、各国の単独国債より共通債が重視される。6カ国にとって事実上の格下げになってしまう。ドイツのメルケル首相は、ユーロ圏の全体で共通国債を発行することに反対してきた。これは、共通債がトリプルAでなくなることを嫌がるドイツの財界などの総意を反映したものだ。

 
  
しかしユーロ共同債についてドイツは一貫して反対を唱えており、現在もフランスと協議を重ねていますが、その溝は埋まらないままとなっています。(リンクより
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ドイツは産業国のため、ユーロ統合で製品の輸出によって最も利益を得た国の一つで、現在もそのポジションを維持してます。自国債券よりも格付けが下がっては、メリットがありません。そんな中、ユーロ圏でトリプルA格を保持している6カ国(ドイツ、フランス、オランダ、オーストリア、フィンランド、ルクセンブルク)で共通債を発行する案が浮上しています。
  
  
 

これらの問題への対策として、ユーロ圏の中核をなす独仏が考えたのは、まずトリプルA格の6カ国だけで、統一した財政緊縮を行う財政統合の条約を締結するとともに、6カ国だけで共通国債を発行することだった。こうすれば、共通国債はトリプルA格となり、利回りが2%台と低くなる。財政統合の条約を6カ国だけで締結することは、反対しそうな国が少ないため、ユーロ圏やEUの全体で条約を締結するより障害が少ない。うまくいけば、12月9日のEUサミットで6カ国の財政統合と共通債発行を決定し、来年の元旦に6カ国の財政統合条約を発効できる。

 
 
しかし、フランス・ドイツ両国内でも6カ国共同債についての慎重論が出ています。共同債の発行となると財政決定の国権を自国が手放さねばならず、いずれも、それが危険だという論調です。
 
状況をより俯瞰して見れば、ユーロ崩壊という事態のほうが各国に与える打撃は大きいにも関わらず、各国(主にはドイツとフランス)がこのように躊躇しているのは、外交上のかけひきも多分にあると思われます。たとえ共同債発行という方針に舵を取ったとしても、影響力や主導権を少しでも多く確保したいという思惑が仏独にあるように見れえます。
 

もともと、ユーロ圏各国は金融政策としては利害が一致していたものの、歴史事情もあって、政治面、経済面、財政面では一枚岩ではありませんでした。にもかかわらず、国々を市場次元で統合しようとしたものだから、ほころびはいたるところで出てきます。

 (当シリーズ第2回より)
 
第2回でこのように述べた構造的欠陥、そのほころびが、いよいよ顕わになったと言ってもよいでしょう。
(あわせて超国家・超市場論11 市場は社会を統合する機能を持たないも参照ください)
 
 
そして、こうした仏独の駆け引きによるスキをみて、アメリカ・イギリスの金融勢力の攻撃により、11月24日にドイツ国債の札割れが起こり、また25日にはベルギーの国債の格下げが起こりました。こうした側面からもユーロ崩壊の危機が迫っており、もはや一刻の猶予もないというのが現実です。
  

EUは、経済統合をかなり進めたが、国権を重視する各国の世論に阻止されて、財政統合などの政治統合が進められないでいる。財政統合が進まないことが、米英投機筋に目をつけられ、ユーロ国債危機を引き起こされる元凶となった。しかし今、ユーロ危機が最悪の事態に近づき、極限状態の中で、どさくさ紛れに、これまで進められなかった財政統合が前進しそうになっている。財政統合が進めば、ユーロ圏の国債は強くなり、投機筋に負けない力を持てる。

 
 
今週金曜日に開催されるEUサミットでおそらく方向付けがなされるでしょう。そしてここでの決定が、今後のユーロを良くも悪くも方向付ける決定打となるでしょう。

List    投稿者 heineken | 2011-12-05 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

 ptt | 2013.11.08 14:17

やっと本質に入ってきましたね。
毎号楽しんでます。

 goqu | 2013.11.08 23:23

>pttさん
コメント有難うございます。
今回は、お金でも市場でもなく「資力」「武力」というpowerという捉え方で、歴史を切ってみたいと思います。返り討ちに合うかもしれませんが、助太刀よろしくお願いします。

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