2012-06-03

近代市場の成立過程(8)〜近代思想の原点となった宗教改革→新たな金貸し勢力の台頭

(2)近代市場の誕生前夜・富豪の台頭
(3)ルネサンスの先駆者ダンテが金貸したちにもたらしたものは…
(4)メディチ家はなぜ栄えたか?
(5)ルネサンス芸術:金貸しによる恋愛観念の布教
(6)マキアヴェリの思想とその影響
(7)大航海時代を実現した金貸したち
 
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宗教改革が吹き荒れた16世紀は近代国家の萌芽の時代。教会権力の衰退を察したヨーロッパ各地の諸侯や金貸したちによって、教会権力を排除する動きが活発化します。
 
これが宗教改革という名目によって正当化され各地で推進された結果、封建社会⇒中央集権近代国家の成立や新たな金貸し勢力の台頭へと繋がっていきます。
 
  

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ルターの宗教改革(1517年)当時、ローマ教皇はフィレンチェのメディチ家出身のレオ10世でした。
 
当時のローマ=カトリック教会は、自らの権威の象徴である教会の改築費用を捻出するため、贖宥状(免罪符)の販売を大々的に行い始めます。(ローマ=カトリック教会はフッガー家に対して莫大な借金を抱えており、贖宥状の販売を仕向けたのもフッガー家だった)
さらにこの、サン・ピエトロ大聖堂の造営という巨大建設プロジェクトの狙いは、近世社会で力を持ちつつあったヨーロッパ中の自営職人をローマ教会の下に再編・組織化することにあったという。
 
しかし免罪符の販売は、その国の資金が教会に吸い取られることを意味するため、フランスなどは免罪符販売部隊が自国に入り込むことを許さなかった。そこでローマ教会は、皇帝はいるものの諸侯の対立が激しく分裂状態に陥っていたドイツに、免罪符販売部隊を送り込みます。(当時のドイツは、「ローマの乳牛」と呼ばれるくらい、ローマ教会の資金源となっていた)
 
このローマ教会による免罪符乱発を見たルターが一五一七年、ドイツで宗教改革(→ローマ教会批判)を始めます。ドイツを食い物にしていたローマ教会への反発もあり、ルターの宗教改革(聖書第一主義)は、ドイツ庶民の間で強力に広がっていきます。
 
その実際の抵抗運動の中心は、ヴィッテンベルクの領主エルンスト=ザクセン大公国の選帝「賢明」大公フリードリッヒ三世、プファルツ宮廷選帝伯ルードヴィッヒ五世、ヘッセン方伯フィリップ、さらには、「免罪符」のドイツでの販売元だったブランデンブルク選帝伯兼マインツ選帝大司教アルプレヒトらでした。彼らは、北方開拓を行った第三の十字軍修道会「ドイツ騎士団」の末裔であり、ローマ教会による自営職人の組織化は、彼らに対する武装解除命令にほかならなかったのです。
 
さらに彼らは、「神に召された時の身分にとどまる」という現状維持の保守的姿勢をとるルターから、より革新的であったカルヴァン(1509〜64)の徹底的な改革に加担する形で、国際的な反教皇のネットワークを構築していきます。
 
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※ カルバン派
魂の救済に関しては神によって予め定められているとするカルバンの「予定説」は、自己の職業を神より与えられた天職として禁欲的に勤労すべしという職業倫理を生み出し、営利や蓄財を容認する立場を取った。
カルバンの教説は当時台頭しつつあった新興市民階級に支持され、急速に広まっていった。
 
 
このカルバン派の改革の波が、その後オランダやイギリスへと伝播していきます。(そして教会権力からの離脱を目指したオランダやイギリスは、スペイン、ポルトガルに次いで大航海に乗り出し、大国としての地位を確立していきます)
 
 
■ 宗教改革を経てどうなったか
ルターの「万人祭司」の思想、そしてカルヴァンの「予定説」によって、教会権力の否定⇒聖書主義を提起し、さらに個人の労働⇒資本蓄積を認める思想が、教会権力に対抗する形で提起されました。また活版印刷の技術をこの思想宣伝に利用する事で、大衆世論の獲得にも成功しました。これが追い風となって、十字軍の流れを汲んだ新たな金貸し勢力が台頭していきました。
 
その結果、旧権力者であった教会や財閥(フッガー家etc)への抵抗勢力=個の立場や資本蓄積を認めるプロテスタントの勢力(とそれを支援する新たな金貸し勢力)が一気に拡大⇒離散し、それらの流れの一派がオランダやイギリス建国へと繋がっていきました。
近代思想としての個人主義や資本主義の原点とも言える思想が、宗教改革という名目によってこの時代の新たな金貸し勢力から登場したということになります。
 

List    投稿者 nishi | 2012-06-03 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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