2009-02-13

G20の可能性を探る G20な国々⑤インドネシア(その2)

 今後の金融危機の行く末に大きな影響を与えると思われるG20諸国のうち、日頃なじみの少ない国から順に経済・政治等の実態を調べていくことで、G20の可能性を探るシリーズ。
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 今回はインドネシアのパート2です。
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 前回に引き続き、日本とインドネシアの関係、インドネシアのこれからの可能性を探っていきます。
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 インドネシアは概ね親日国家とされています。前回触れたように「日本人に近い気質」を持っていること、日本のODA累計供与額が最大の国であることなども一因だと思いますが、それだけでなく、両国の歴史的な繋がりも大きいようです。

るいネット
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 第二次世界大戦での日本敗戦後、オランダ・英国からのインドネシア独立戦争に約2000名の元日本兵の方が帰国せずに参戦しました(そのうち1000名が戦死)。彼らの功績を称え、インドネシアの独立宣言文には「皇紀2605年8月17日」を示す17805という5桁の数字が刻まれ、独立記念日の式典では、男女2人に日本軍の格好をした3 人で国旗を掲揚を行います。
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 「ムルデカ」の撮影にはインドネシア国軍が全面協力。「なんでそこまでするのか?」という若い兵士に、上官は「インドネシアのために戦い、死んでいった日本人のためだ。」と答えたとか。
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 日本に占領された国々にとって、第二次世界大戦とは、ある面では日本の軍事的南進という形をとり、他面では近代化した日本の精神的、技術的面との出会いであった。日本が戦争に負けて日本の軍隊が引き上げた後、アジアに残っていたのは外ならぬ日本の精神的、技術的遺産であった。この遺産が第二次大戦後に新しく起こった東南アジアの民族独立運動にとって、どれだけ多くの貢献をしたかを認めなければならない。日本が敗戦国になったとはいえ、その精神的遺産は、アジア諸国に高く評価されているのである。その一つに、東南アジアの教育に与えた影響があげられる。
                        (中略)
(日本は)目標達成のためにどれほど必死にやらなければならないかということを我々に教えたのであった。この必死の訓練が、後のインドネシア独立戦争の時に役立ったのである。
(るいネット

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 こうした歴史は、マスコミに紹介されることも少なく、教科書にも記されていませんが、両国の関係に大きく寄与しているのではないでしょうか。
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 また、日本、インドネシア共に稲作を基盤とし八百万の神を信仰する民族であるということころにお互い通じ合う精神性があるように思います。(それぞれ仏教、イスラム教が広まっているとはいえ、根底の精霊信仰、共同体社会という風習には根深いものがある。)
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■インドネシア専科「稲作共同社会」より(リンク

水田は次第に谷あいから平野へ拡がるとともに稲作社会の高度化を意味する。日本で言えば弥生時代から古墳時代に入る。潅漑を支える共同作業は川を堰きとめ、農地を貫く水路を掘削する。田植えの時期に合わせて取水し、取水した水は満遍なく関係者の水田に行き渡らねばならない。干害に備えて溜池を掘削するのも共同作業である。
 自分の畑だけを耕しておればよい畑作と異なり、水田稲作は共同作業を前提としている。バリ島ではスバクという灌漑組織が農作業を定めている。ジャワ社会ではゴトン・ロヨンという共同作業に基づく稲作共同社会を形成している。

■るいネット「稲作によって日本人の本源性は引き継がれてきた」(リンク

 稲作は水を必要とすることから、川、水を蓄える森、山、そして田が連関し調和する中で初めて可能となる。勝手に田を広げてもだめであり、常に周辺との関係、水を分け合う村同士の関係、多くの労力を要する農作業を協力し合う人間関係など、自然、人間との協働、調和、全体との関係を優先して考えることが当然となっていく。
 そこでは、自分勝手な判断の挟まる余地はなく、節度が保たれていく関係にある。
 東洋、中でも日本人の特徴として、共同体の色彩を色濃く残し全体や相手との関係を重視し、自分中心的思考に違和感を覚えるのは、稲作という生産様式によるところが大きいと感じる。

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 このように日本との関係も良好なインドネシアですが、ASEANの中でも着実に力をつけているようです。
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『変化する東南アジア勢力図』(リンク
■台頭するインドネシア、沈むタイ

 タイで12月中旬に開催される予定だった東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が政情混乱により延期された。これに伴い12月5日、インドネシア外務省は、首脳会議に次いで重要なASEAN外相会議を15〜18日にインドネシアのジャカルタで開催すると発表した。
          
            (中略)
 背景にはこの10年で政情が安定するとともに経済改革が軌道に乗り、ASEANで発言力を増したインドネシアの自信の表れと、その一方で、地域経済の盟主を誇ってきたタイに対する信用の失墜がうかがえる。


■変わるインドネシア

 台頭するASEANの中で、インドネシアの存在感が増している。かつてはスハルト大統領(1968〜98年)のもとで華人クローニー(取り巻き)や一部官僚による少数支配でケタはずれの汚職がまん延、その高コスト経済が1997年のアジア通貨危機で大きな打撃を受けた。
 98年の実質GDP(国内総生産)はなんと13.1%のマイナスを記録した。しかし、昨年は6.3%と11年ぶりの高成長を記録。IMF(国際通貨基金)の10月時点での予測によると、2008年は6.1%、2009年も世界的なリセッションの懸念が広がる中、5.5%の高い成長が見込まれている。2009年の政府見通しは5.5〜6.0%である。

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 ASEAN諸国の中でも、政治・宗教がらみでもたつくタイに対し、着実に力を伸ばしつつあるようです。対外債務も順調に削減しつつあり、アジア通貨危機で悪化した政府財政も持ち直してきています。
 個人主義が浸透していない彼らの資質も、今の金融危機に対しては有利に働くのではないでしょうか。

List    投稿者 kato | 2009-02-13 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 通行人 | 2009.08.02 18:06

金利って何?ということを、中学生の頃に疑問に思ったことを思い出しました。
理由はわからず。そういうものだから、ということで世の大人たちは多少の違和感を感じつつそのままにしているんだと思います。
でも、改めて考えてみる時期にきたかなという感じですね。

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