2009-02-05
中国の深謀遠慮、『人民元経済圏』が動き出す
中国とアメリカの「丁々発止」
事の発端はオバマ新政権で財務長官となったガイトナー発言
「中国は為替操作国」(2009年1月23日読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090123-OYT1T00549.htm
ガイトナー米次期財務長官は22日、「オバマ大統領は中国が為替を操作していると確信している」との見解を米上院財政委員会への書簡の中で明らかにした。
中国との対話路線を貫いたブッシュ政権と異なり、オバマ政権が人民元への切り上げの圧力を強める可能性が出てきた。
人民元(対ドル)為替変動01年〜08年(サーチナ中国情報局より)
05年から、人民元を切り上げていますが、緩やかな上昇です。
(図は、1ドルに対する人民元です。図中の線の下降は、ドル安・人民元高です。)
中国は、保有する米国債の残高を減らすべきだと反論(J-CASTニュース)
http://www.j-cast.com/2009/01/26034209.html
中国社会科学院は中国政府のシンクタンクであり、政府の政策決定機関と緊密な関係にある余所長は、その発言自体が政府の思惑を感じさせる。「2008年9月に中国は米国債を436億ドルも多く購入し、同時期に日本はむしろ128億ドルの米国債を売却した。中国は5850億ドルの残高で日本の5732億ドルを上回り、世界一の国債所有者になった」(余所長)。08年11月ごろから、これ以上の米国債を持つべきでないと余所長は主張している。
現状では中国も(日本と同様に)国際基軸通貨ドルを認めるしかないとの見方がある。
TS・チャイナ・リサーチ(株)代表取締役 田代尚機の発言がその代表例である。
米国の思惑に関わらず、人民元上昇はありえない
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0126&f=column_0126_002.shtml
ガイトナー氏の言うことは正しいと思うが、誰もがそれを知っている。誰もそれを言わないのは、言ってもどうにもならないからである。
オバマ大統領は本気で人民元を年率10%以上の速度で上昇させようと考えているのかもしれない。しかし、それは中国の国内事情から考えて非常に難しい。輸出依存度(輸出/GDP)が4割程度と生産能力が過剰であり、輸出関連企業が大量の雇用を吸収している中国では、現在、内需拡大、雇用確保が喫緊の課題である。この上、人民元を上昇させ、輸出企業に打撃を与え、輸入を有利にさせるような政策を出せるはずがない。
人民元は市場で決まるわけではない。国務院の意志で決まる。現状では、他国がなんと言おうと、この体制を変えることはできない。ドルが他通貨に対して暴落するような事態にならなければ、人民元は対ドルに対して安定を保つだろう。
それではいつになれば、中国は変動相場制を採用するのであろうか。中国は、香港や東南アジアなどの周辺国・地域との貿易に関して人民元を決済通貨として認めようとしている。しかし、闇雲に人民元を国際化しようなどとは考えていない。まず、自国企業が為替リスクから少しでも解放されればそれでいいと考えている。
中国は管理できないことをもっとも嫌う。自国のペースで着実に人民元の国際化は進むであろう。人民元の自由化は国際化とともに進む。ある程度人民元の国際化が進むまでは変動相場制に移行などしないであろう。
中国としては、機が熟するまでは、ドルに国際通貨としての立場を維持してほしいはずである。この点で、中国とアメリカとの利害は一致する(ただし、アメリカがドル暴落を望むなら別であるが……)。両国とも激しく自己主張しても、喧嘩はしない。結局、為替の問題は、結論がはっきりしている。
注目したい点は、『中国としては、機が熟するまでは、ドルに国際通貨としての立場を維持してほしい』である。機が熟するとは、『人民元経済圏』の基盤が整うということである。
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