2012-03-13

2012年、新興国はどう動く?(9)「第二の中国」を謳われるインド、その成長の可能性はいかに

インドには大きな市場拡大の可能性がある。2011年、統計上人口は12億人にも到達。その増加率は過去10年、1.8%近くと、勢いは止まらない。(この人口増加は中国以上のスピード。)近年では中流階級も増え、「次なる中国」として注目されている。

インドの人口動態は「世界で最も美しい」
インドの水準は日本の「高度成長」前夜とほぼ同じ位置
今後10年で中間所得層は米国の総人口数を凌ぐ

インドの経済成長と市場動向 株式会社SBI証券)


(インドの人口動態)
このように著しい成長を見込まれているインドだが、しかし、今のところ、世界の列強の中で、それ程の存在感を増しているような気配はない

多くのインド人が遠くない将来に経済分野でインドが中国を追い越すと信じている。一方、中国人にとっては、インドは経済だけでなくその他の分野でも脅威ではないという。(Record China

今回は、インド第2弾。インドは今後どうなるのか。国の発展は、中国ほどの勢いを見せるのか。今後のインドの成長の可能性に目を向けてみたいと思います。
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■インドの成長を足どめしているものは
インドは中国に対し、名目GDPは2010年で1/4どまり、一人当たりGDPでは、日本の3%に満たない。「第二の中国」としてのインドの発展を、足止めしているものは何なのか?

上記のグラフはGDPのうち軍事支出が占める割合を示している。インドは、この軍事支出対GDP比で、なんと中国を凌いでいる。
インドがこんなにも軍事に力を入れるのはなぜなのか?

■インドを軍備増強に走らせるのは

インド陸軍のある退役中将によれば、インドの国防予算は320億ドル。しかし、中国の国防予算は915億ドルにも上り、「これでどうやって中国に対抗していけばいいというのか」と国防力の格差拡大に懸念を表し、急激な軍拡を続ける中国に対して危機感を抱いている。(Record China

2012年1月4日、インド誌インディア・トゥデイによると、インドの国際情報収集の担当機関である研究・分析局は、中国がパキスタンの連邦直轄地、もしくは北部に軍事基地建設を予定していることを明らかにした。…報告書は「中国は現在、パキスタンに対する戦略の浸透に力を入れており、同時に中国のパイプライン、鉄道、道路、軍事基地設置を含む総合的な計画も注目に値する」と警告している。(Yahooニュース

インドが軍事拡大するのは、中国・パキスタンの脅威があるからだ。

(印パ紛争地図)
インドとパキスタンの対立は長い。この対立構造は、アメリカCIAを含む軍産複合体の格好の武器市場となり、インドに大量の軍事費を消費させている。しかもインドは、兵器の「輸入」が顕著である。

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は7日、2011年版年鑑を発表、06〜10年の5年間の通常兵器輸入量でインドが中国を抜き、世界第1位になったことを明らかにした。…05〜09年の5年間では、世界全体の兵器輸入量のうち、中国が9%を占め1位、インドは7%で2位だった。しかし、06〜10年ではインドが9%、中国が6%と逆転した。(沖縄タイムス

最近でもインドはフランスから、ラファール戦闘機の購入を決定した。「今回の契約が成立すれば、近年の防衛分野において世界最大規模の契約となる。」。(チャイナネット)インドは先進国各国からもマーケットとして狙われている。
そして、この構造に便乗し、パキスタンを後ろ盾しているのが中国。インドは潜在的な成長力を秘める国、中国にとっては強敵なライバルになり得る。中国はそれを歓迎することはなく、できればインドの成長を足止めしておきたいはずだろう。インドに軍事的圧力をかけて、経済成長へ一直線に向かうのを抑えている。
こうした周辺の火種に晒され、インドは軍事を強化せざるを得ない状況に追い込まれている

■軍備備拡大ゆえに、手の回らないインフラ整備
軍事を拡大する一方で、手が十分にまわせていない重要な事業がある。それがインフラ整備だ。以下のグラフを見てもわかるように、インドは圧倒的にインフラが弱い

先日インドに9年ぶりに訪れ、がく然とした。見た目には9年前と町の様子がほとんど変わっていないのだ。
経済成長率のデータを見る限り、インドは9%台、中国は10%台でその差は1%あまりだが、経済の発展段階には10年20年の差が感じられる。
よくニュースや新聞、雑誌などで、新興国としてインドと中国をひとくくりにしているけど、百聞は一見に如かず。とてもじゃないけど経済発展段階が違い過ぎる。インドの本当の経済成長はまだまだ遠い未来だと、実際に行ってみて思った。(インド=経済成長はウソ?中国にはほど遠いインド

インフラ整備は、消費と供給の拡大には欠かせない、経済成長の基盤である。インドのこの状況では、経済成長が伸びきらないのも当然である。軍事拡大も、本来は、インフラ整備→市場活性化の中で経済力をつけた中でなされるものであり、インドは、経済的な基盤(インフラ)をつくりあげる前に、軍事拡大に国力を費やしてしまっている。

■今後インドの成長はどうなる
インドは世界の好調期に乗り遅れた。この点で、大きく中国と異なる。中国は、アメリカ(西側諸国)好調の波にのっかっていった。安い人件費を利用して、最大消費国アメリカに輸出を繰り返し、儲け、マネーをたくわえていった。また、西側諸国も中国に投資する余裕があり、中国はその資力を存分に利用することができたのだ。
しかし今はどうか。世界大不況のため、アメリカのような買い手がいない。投資してくれる国もない。経済発展の踏み台になる市場が、もう縮小に向ってしまっている今、インドには、中国にとってのアメリカのような存在がない
さらに、インフラ整備から経済を発展させた先攻優位の中国は、強靭な経済力をもって、軍備をさらに拡大し、「インド封じ」の圧力をかけている。インドは否応なく軍事的脅威にさらされ、インフラが整わないうちに、軍備増強に走らされている
中国とインドは数十年前は似たような後進国だった。それでも、中国が一歩先に踏み出すことができたのは、おそらく中国の中華思想(中国が世界の中心)に基づく覇権意識の強さに拠るところが大きいだろう。一方で、インド人はカースト制度という身分での縛りと共存しており、植民地であった歴史も長く、中国が持つような強い覇権意識とは縁遠い。
先攻をとった中国と、後ろにつくしかなくなってしまったインド、二国の差には、このような背景があると言えるかもしれない。
以上、主に中国との比較の中でインドの展望を概観してみたが、おそらく当面は、西洋の立ち直りも見込めない今、インドはゆっくり成長していかざるを得ない。経済成長国として一括りにされやすいインドと中国だが、出遅れたインドは、中国のような急拡大成長は見込めないだろう。しかし、それはすなわち、この莫大な人口を抱えるこの国が、金貸しに支配されない可能性=脱市場の可能性を残している、ということでもある。今後、インドがどのように成長していくのか、十分に注目する価値があるだろう。
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               (演習を見学するインド海軍高官 −チャイナネット)


次回この「2012年、新興国はどう動く?」は、ロシア大統領選の行方⇒プーチン降ろしを扇動しているのは誰か?に次ぎ、再びロシアを扱います。プーチン圧勝で選挙を終え、今後の動きが非常に気になるロシア。次回の追究にもご期待ください☆

List    投稿者 shimaco | 2012-03-13 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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