2012-03-23

『なぜ今、TTPなのか?』【14】最終回:日本はどうする?

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前回は、今までのシリーズのまとめと、世界経済及びアメリカの状況について追求しました。
その中での注目点は、
・国外では、各地域での2国間FTA/EPAの進行と、中国・ロシアなどの新興国の台頭があり、世界経済は、「脱アメリカの動き」を加速させている
・金融危機で大きなダメージを受けているアメリカ及び金貸しは、焦っており、TPP及び米韓FTAを強引に推し進めています
このような状況の中で日本はどうだったのでしょうか?
また、今後、日本はどうしたらいいのでしょうか?
今回は最終回として、この間の日本の状況と今後の可能性について追求します。
『なぜ今、TPPなのか?』シリーズの今までの記事は以下をご覧ください。
【1】プロローグ
【2】基礎知識の整理
【3】貿易自由化交渉の歴史
【4】世界に広がるブロック経済圏の現状(1):欧州
【5】世界に広がるブロック経済圏の現状(2):北中米、南米
【6】世界に広がるブロック経済圏の現状(3):アジア
【7】中国はどう見ているか?
【8】中国はどう見ているか?(なぜ中国はTPPに参加しない?分析編)
【9】ロシアはどう見ているか?〜資源大国ロシアの世界戦略〜
【10】EUはどう見ているか?
【11】コラム:日本は貿易立国って本当?
【12】米国経済の現状(貿易面の分析)
【13】米国経済の現状(経済戦略分析編)
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■TPPをめぐる国内状況の整理
野田首相がTPPへの交渉参加表明をするまで、政界の状況はどうだったのでしょうか?
再度調べてみました。
〇JAのTPP反対請願に呼応した議員は430/721人程度。過半数を超える。
実際に署名した人一覧 363人(11/1値)  リンク リンク
〇TPP賛成派の都道府県知事6/47人 リンク
〇TPP賛成の都道府県議会 0/47県(※3県は意見集約なし)。事実上、全県で反対状態。リンク
〇TPP反対・慎重の市区町村議会1425議会(8割) リンク
国家議員でも過半数以上が参加に反対、地方では圧倒的に反対が占めています。
また、11月11日の衆議院予算委員会での田中康夫(国民新党・新党日本)議員のTPP反対の訴えは強烈でした。→リンク 
衆議院議員480人中232人が国会で明確に反対意思を示しています。
このような状況にもかかわらず、野田首相は同日夜、「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と述べ、参加国との事前協議から始まる交渉プロセスに参加する方針を表明しました。
普通の神経であれば、これだけの反対があれば踏みとどまるはずですが、裏からは、強力なアメリカからの圧力が・・・。
以下、「TPP「交渉参加表明」とロックフェラージュニア・キッシンジャーの来日」より。

野田首相が「交渉参加表明」を行った。前後して、ロックフェラージュニア夫妻、キッシンジャーが来日し、キッシンジャーと野田は面談した。キッシンジャーはグローバリストかつ米中による2極体制を目指すG2派であり、米中対立を演出するCSISのグリーンやアーミテージ、ナイといった軍産利権派とは志向性が異なる。しかし、このキッシンジャーが来日したということの意味は、G2路線がうまくいかない場合をアメリカが想定して、アメリカ主導のブロック経済化にグローバリスト・キッシンジャーも舵を切ったことの表れだと、中田安彦氏は分析する。

TPPを推進しているのは、従米政治家と官僚、多国籍大企業とその取り巻き。
その裏には、アメリカ(ロックフェラー系)の圧力、庶民派の政治家は断固反対。
■アメリカからの露骨な要求、その根底には何があるのか?
1月、米政府は、日本の参加表明について意見を公募し、業界団体などから100件以上
の意見を集めました。米議会も、下院歳入委員会が昨年12月、公聴会を開き、ここでも、露骨な対日要求が次々と出されました。その中で代表的ものは。
〇保 険
米生命保険協会が「アメリカの保険会社と競争条件が同じになるまで、かんぽ保険には新商品を出させない」「共済事業に民間保険と同じルールを適用させる」と要求。
〇自動車
米自動車政策会議(AAPC)は参加の条件として「(日本の)軽自動車規格を廃止。(日本は)米国車の複数年の輸入数量枠を設定」と主張。
〇農 業
牛肉や米など農業団体とカーギルなど多国籍企業など63団体は、「重要なのはTPPが包括的な協定でなければならないということを日本が認識し、受け入れるという確証を日本から得ること」と強調。
〇アメリカの財界、米商工会議所
「TPPの原則は関税の撤廃。米国も他国も例外品目を追求すべきでない」と要求。
〇米議会からの要求
コメ生産地の議員は「コメは、(日本で)約700%の関税に直面している」と非難。
牛肉主産地の議員は「不透明な方法で科学に基づかない検疫措置がたびたび適用されている。米国の農産品を締め出さないことを確実とさせるのか」と米政府に日本の検疫緩和を求めた。
米政府は現在、これらの要求を元に日本との事前協議に入っています。しかしこの裏には、更に、したたかなアメリカの狙いがあります。
以下、「TPP問題から見る世界貿易戦争の構造3 アメリカが日本に輸出するのは、農産物ではない」より。

TPPでは
「2015年までに農産物、工業製品、サービスなど、すべての商品について、例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃する」 と定められている。
この「サービスなど、すべての商品」の中には、金融・投資サービスや法律サービス、医療サービスなど全てが含まれる。農産物や工業製品など、その一部に過ぎない。
☆つまり、TPPが締結されれば、一切の貿易障壁が無い、「完全な日米自由貿易圏」が実現することになる。
・この日米自由貿易圏で「アメリカが輸出するもの」は、農産物や工業製品がメインではなく、金融サービス、法律サービス、医療サービスが中心となるだろう。
・これらのサービスを日本へ輸出するにあたって、「貿易障壁となる法律や制度は、撤廃されることになる」
★これは、1993年から続く年次改革要望書に代表される『日本属国化計画』が、一気に推進されることを意味する。

「年次改革要望書」についてはこちらを参照→「拒否できない日本」を読んで
■このような状況の中で、国民の意識はどうなのか?
〇「TPPの意味はよくわからないけど、とにかく交渉には参加しましょう」という日本人
リンク リンク 
フジテレビ新報道2001の10月27日付の調査はなかなか意味深である。
首都圏の成人男女500人を対象にした電話調査とあるが、「TPPの意味はよくわからないけど、とにかく交渉には参加しましょう」という結論になっている。少し調べれば、いかに欧米を利するだけで日本にはメリットがないか、農業だけでなく生活全般に影響が多いか、分かることなにに、ネット上ではその探索も進んでいるのに、それでも国民の大半はいまだに「おかみまかせ」であるという実態が浮かび上がっている
〇TPP:参加反対、賛成上回る 県世論調査協会がアンケート/長野 リンク
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について、回答した県民の32・5%が参加反対と答え、参加賛成の27・5%を上回ったことが県世論調査協会のアンケート調査で分かった。回答で最も多かったのは「何ともいえない・分からない」で4割を占めた
〇TPP賛成38%、反対36% リンク
共同通信が5、6両日に実施した全国電話世論調査で、環太平洋連携協定(TPP)問題をめぐり「参加した方がよい」は38・7%、「参加しない方がよい」は36・1%と拮抗していることが分かった。参加した場合の影響を政府が十分説明していないとの回答が78・2%に上った。説明しているとの答えは17・1%だった。
〇TPPについて若者はどう考える?リンク リンク
「TPP参加に、賛成ですか?反対ですか?」選挙、議会、政治家情報のプラットフォーム「政治山(http://seijiyama.jp/)」がAPEC首脳会議直前の8〜9日に行った調査では、20代と30代で最も多く挙がった回答が「分からない」で37.0%にのぼった。次いで2番目に多い回答も「検討を続けるべき」の24.2%で、両者を合わせると6割以上の若者が立場を明確にしていないことが分かる。
簡単に言えば、「よくわからない」というのが本音ではないでしょうか。
TPPは、背後からのアメリカの圧力より、菅政権→野田政権と、突然現れ、押し進められ、マスコミの従米報道により、本質は完全に煙に巻かれています。そして交渉状況は非公開・・・
■日本はどうする?
この状況の中で、首相は全く危機感は無い。破綻目前の米国と「心中宣言」を行いました。
以下、首相「TPPはビートルズ」=参加の意義、独自解釈で説明(時事通信)より。リンク

「環太平洋連携協定(TPP)はビートルズだ」。野田佳彦首相は24日の都内での講演で、TPP交渉参加を検討している日本の立場を、英人気ロックバンドのメンバーに例えて説明、政府の方針に理解を求めた。
首相は「日本はポール・マッカートニーだ。ポールのいないビートルズはあり得ない」と強調。その上で「米国はジョン・レノンだ。この2人がきちっとハーモニーしなければいけない」と述べ、日本の交渉参加への決意を重ねて示した。 

そして、この間、米国からは高笑いが聞こえる。

米国財務省、FRBと勝財務次官、白川日銀総裁はツーカーの関係だ。ゴールドマン・サックス証券が野田佳彦の、財政再建路線、TPP参加表明を、≪野田総理が過去数カ月間に小泉総理以降のどの前任者をもはるかにしのぐ実績を示してきた≫と手放しで絶賛している。ゴールド・マンサックス=オバマ政権と言われるほどだ。リンク

では、私たち国民は、どうしたらいいのでしょうか?
●まず、「私たち国民はきちんと「事実」を知らなくてはならない」と思います。
みんな、よくわかっていないが本音。やばい状況を、みんなで共有する必要があります。
従米政治家・官僚・マスコミ・学者等の報道や話に騙されてはならない。
●世界の動きがどうなっているか?歴史構造まで遡って勉強する。
世界の金貸しの構造と状況とそれを作ってきた歴史構造をつかまないと、問題は見えてこない。
●そして、新たな可能性をつかむ。
みんなで繋がり集まり、どこに可能性があるか?を考え発信していく。
現状は、金貸しの力は衰弱してきており、彼らが作ってきた市場主義経済とそれを支えてきた近代思想は、行き詰まっています。それがアメリカ覇権の衰弱であり、アメリカは追い詰められ、世界は、この間のロシア・プーチンの動きに代表されるように、金貸し抜き・アメリカ抜きの新たな枠組みを模索しています。
日本は、今までの従米の認識を、完全に転換する時期に来ているのだと思います。

List    投稿者 yooten | 2012-03-23 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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