2007-07-19

グローパリズムとは、伝統知識の簒奪(バイオパイラシー)

前回に続き、『世界に格差をバラ撤いたグローパリズムを正す』(ジョセフ・E・スティグリッツ氏)を手がかりにしながら、グローバリズムの欺瞞を扱います。
今回は、バイオパイラシー(生物資源の海賊行為)。
まずは、スティグリッツ氏のバイオパイラシーへの批判を紹介しているブログから。
遺伝子・バイオ特許の衝撃

■バイオパイラシーを食い止める
『世界に格差をバラ撒いた‥‥』ジョセフ・E・スティグリッツ著P.200
‥‥著者はP188で、「悪名高きTRIPS(貿易関連知的所有権協定)」と批判した上で、次のように述べている。
‥‥途上国には外国企業が入りこみ、何の代償も払わずに伝統的な知識を掠め取ったり、土着の植物を奪い取ったりしている。これはまさに海賊行為でありバイオパイラシーの語源ともなった。アメリカは中国がTRIPSの条項を遵守せず、知的財産権を侵害していると非難する。いっぽう、途上国の人々はTRIPSが自分たちの知的財産権を守ってくれなかったと、むしろ欧米の利益集団に盗みのライセンスを与えてしまったことを指摘する。実際、途上国の知的財産を奪った連中は今、盗んだ知的財産の使用料を途上国に請求しているのだ。‥‥‥
母国の豊かな生物学的多様性がしぼりとられ、製薬会社が肥え太っていくのを目の当たりにした途上国の人々は、少なくとも先進国から補償——例えば熱帯雨林を維持するための費用の補償——が与えられるべきだと感じている。しかし、先進国の製薬会社は、みずからのインセンティブの重要性を強調しておきながら、他者のインセンティブの必要性は一顧だにしない。1992年6月リオデジャネイロで国連環境開発会議が開かれた際、生物多様性条約が採択され、補償を受ける権利が確認された。しかし、製薬業界の影響が少なくないアメリカ議会は条約の批准をこばんだ。近年、途上国の伝統的知識をもとに、植物にかんする4000件の特許が申請され、そのうちほぼ半数が認められたことは、アメリカ国内の状況を考えれば驚くに値しない。
バイオパイラシーの最もひどい実例は、ターメリックの治療目的使用を特許化しようとしたことだろう。ウコンの名でも知られるターメリックは、南アジア諸国でよく使われる香辛料だが、はるか昔からその薬効が知られていた。しかし、1993年12月、アメリカはターメリックの治療目的使用に特許を与えてしまった。結局、裁判で特許は無効となったものの、原告は巨額の訴訟費用を負担しなければならなかった。
影響を受けたのは薬だけではない。インドでは‥‥数千年のあいだ食されてきたバスマティという米があるが、1997年、アメリカは自国の〈ライステック〉社にたいし、このバスマティ米の特許を与えてしまったのだ。
当然インドは怒った。幸いにもインドには闘えるだけの資源があったから、どうにか勝利することができた。しかし、圧倒的大多数の貧しい小国はインドのような資源を持っておらず、アメリカに反撃できる可能性はないと言っていい。

欧米諸国は、WTOの場で、農業補助金の削減というカラ手形を発行しながら、一方で、知的所有権(特許や著作権)を、自分勝手な基準により、TRIPS(貿易関連知的所有権協定)として、開発途上国に押し付けている。日本は、当然ながら、欧米諸国に追随している。
TRIPSとは、伝統社会が数千年に渡って共有してきた知識を、製薬会社・種子会社とその研究者が身勝手に行なう権利囲い込みを、正当化する国際協定である。
次は、伝統知識が豊富にあり、欧米諸国とも知的に戦える力をもった、唯一の国家・インド。
そのインドからのメッセージ。

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  投稿者 leonrosa | 2007-07-19 | Posted in 08.金融資本家の戦略1 Comment »