2007-11-15

世界金融不安、J−REIT・不動産開発への波及が始まる

世界的な金融不安が、既に日本の不動産に波及しているとの記事がブログに散見されます。そこで、その点を検証してみます。

先ずは、2003年〜2005年にかけて急上昇したサブプライムローンとその証券化の仕組、この間起こっている金融不安の流れを見ます。

①ローン会社が、住宅を担保にして、限界層にサブプライムローンを供給

ローンの原資は、銀行から借り入れ、住宅ローンを提供します。
ローンの元利返済は長期ですから、借り入れ資金も長期資金です。しかし、長期資金の借り入れには限界があり、事業を急拡大できない。そこで、ローン残高を減少させる仕組が必要になりました。

②ローンをまとめて、証券に組成し市場に販売

1件当たり数千万円の住宅ローンを数十、数百とまとめて、10億円、100億円の債権とし、それを一口1億円とかの証券に分割し、販売する。ローン残高を減らすことで、より事故率の高いサブプライムローンの販売をしてきました。

③返済リスクの混在した仕組証券を組成し、販売

サブプライムローンは、元利返済での事故率が高いので、サブプライムローンのみの証券化では、市場で売却できない。そのため、より優良なプライムローンやさまざまなクレジット債権を合わせて、債権担保証券(CDO)に仕立てた。債権担保証券(CDO)は、最上級格付け部分(シニア債)、中・低位格付け部分(メザニン債)、投資不適格部分(劣後債)という3階建ての証券に分割した。
そして、安定運用を旨とする投資家には、シニア債を販売し、荒い運用を志向する投資家には、メザニン債や劣後債を販売してきました。(これらの3階建ての債権には、流動性をもたせるために、証券発行会社による「相対売買の仲介」や「買い戻し特約」等が設定される。)
この仕組証券を発行、販売しているのが、モルガン・スタンレー、ゴードマン・サックスとかのインベストメント・バンク—投資銀行、日本風にいえば証券会社。3階建ての債権を格付けしたのが、3つの格付け機関です。

④ローン返済の停滞、事故により、劣後債、メザニン債部分が破綻

サブプライムローンの返済停滞、事故発生により、サブプライムローンが組み込まれていたCDOの劣後債、メザニン債の下落が始まる。保有者は、証券発行会社に買い戻し請求を行ない、損失の確定を行なおうとした。
しかし、元の債権構成が複雑怪奇な上に、3階建て分割をしている為に、買い戻しの価格評価ができなくなってしまった。そして、発行証券会社が、一方的に「買い戻し」の凍結を発表した。

⑤シニア債への不安拡大

買い戻しの凍結ということは、3階建てのCDO全体の価格評価ができなくなったことを意味する。
高格付けのシニア債を保有していても、誰も買い手が現れず、発行会社も買い戻ししないので、現金への転換ができない。額面価格はあるが、流動性の観点からは価値ゼロという事態になった。
(決算しようとすれば、シニア債部分を含めて、全額損失とする以外に方法がない事態である。この方法をとったのが、野村證券グループである。)

⑥現在は、恣意的に損失を計上し、資産の縮小を図っている

保有CDO全額を損失計上できないので、シニア債は20%損失、劣後債は100%損失とか、恣意的な基準の下に、保有CDOの資産評価をしている。資産額縮小に対応するのが、利益の減少、あるいは赤字です。

⑦ファンド、投資銀行他が、資産圧縮に動く

サブプライムローン発の損失拡大が、どこまで拡がるかわからないので、ファンドや投資銀行は、とり合えず上記の様に、保有資産の圧縮を図っている。
保有資産の圧縮を図るということは、既存の投資資金をできるだけ回収する、新規案件への投資を見送るという事です。

⑧企業買収資金や不動産開発資金が集まらない

ファンド、投資銀行、証券会社、機関投資家が、一斉に保有資産の圧縮に向かっているということは、既存の証券、債権を売却し、利益出しと損失出しを平行して行ない、新規の投資への資金出しはしないということです。企業買収や不動産開発への資金が縮小しているのです。

やっと、日本のREITと不動産開発に繋がってきそうですね。

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  投稿者 leonrosa | 2007-11-15 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?7 Comments »