2007-05-12

イギリスの医療制度と医療の実体を検証してみる

前回アメリカの医療について調べてみたがヨーロッパの先進諸国の医療制度はどうなっているのだろうか?いち早く、皆保険を導入し一時はモデルともされたイギリスの制度を調べてみました。
イギリスは全国民が公共保険に加入しているが、そのうち96%の医療がNHS(国立保健サービス)の運営する287の公共病院で行なわれています。
国民は全て一人の開業医を、かかりつけ医(GP)として登録し、決まった医者のところにしか通えません。いきなり病院に見てもらうということはできず、その開業医の紹介が必要です。
サッチャー政権の時に医療費を削減する為に医療費は包括化されました。開業医は登録された人数分だけの支払いを受けるだけで実際にかかった数と支払いは関係がありません。医者にとって高度な医療を施す事や高価な医療機器を導入する事は出来高払いでは無い為、医者の負担を増やすことになります。
結果、現在イギリスの医療はどのような実情になっているのでしょうか?
誰でも無料で医者にかかれるのですから、ご多分にもれず簡単な病気でも医者に駆けつけます。医療費削減の為ベッド数は削減され、看護師の給与も低く抑えられる事になりました。医療費の包括化もその対策です。
看護師は同学歴の他の職種に比べて2/3の水準と言われています。
医者も看護師も条件のいいアメリカなど海外に出る人も多く、その結果数にして医者は1万人、看護師は2万人不足していると言われています。ベッドも医師も不足していますから、手術待ちの患者は100万いるといわれ、癌で手術が必要な患者が4回も手術を延期されて、そのうち手遅れになって亡くなったなどと言う事例が身近に多いようです。
インフルエンザになって入院が必要になったがベッドがあかず、廊下のベッドで3日待たされたという事例など、今やイギリスでは病気になれないなどといわれています。
医療費はGDP比で先進7カ国中7位で7%台の水準です。ブレア首相は医療水準が下がったのはあまりに医療費を抑えすぎたからとの反省に立って2002年から5カ年計画で1.5倍の水準に引き上げる(ドイツ並のGDP比10%の水準に引き上げる)政策を取りました。
しかしながら、なかなかポテンシャルの下がった医療従事者の士気を高めるまでには到っていないようです。
医者、看護師は海外に出、手術もなかなか直受けられない患者も海外へ出て行き、一方不足した看護師は南アフリカやフイリピンなどから多く受け入れているようです。
日本の医療費は30兆円を超え財政赤字の元凶のように言われて槍玉に上がっていますが、GDP比は先進7カ国中の6番目とイギリスについで低くなっています。上記のようにもっとも医療費水準の低いイギリスが低レベルの医療水準にあえぎ1.5倍まで逆に上げようとしています。
それに比べて、日本は3時間待ちの3分診療などと揶揄されますが、入院待ちや手術待ちのような事はなく、誰しも等しく高度な医療を受けられています。
日本の医療保健制度はWHOでの評価としても世界一との事ですが頷けます。
わが国において、アメリカの患者一人当たりの医師や看護師の数に比べて日本の医療は劣っているとか、かかりつけ医制度を導入するとか、包括診療を導入するとか、他国に真似た制度を取り入れようとする動きが出ていますが、もう少し冷静に日本の制度の優れた点を客観的に評価すべきように思います。
今後も引き続き、ドイツなど他の国の事例も見ていきたいと思います。
(主な引用記事は)リンク
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  投稿者 shigeo | 2007-05-12 | Posted in 10.経済NEWS・その他8 Comments »