ＦＲＢに迫る監査圧力

2009-07-12

民間銀行「FRB」はこれまで、アメリカ政府にドルを貸す代わりに利息を受け取り、その利子は彼らの株主である金融機関の利益として流れていった。
この間、ＦＲＢは通貨発行権を握りながら、金融危機の収束を図るために多額のドルを金融機関や海外の中央銀行に供給してきた。一方で、どの金融機関に、どの程度の融資を行い、どういった内容の保証を行なったか？法によって、その中身一切を公表する義務を免れていた。
しかし、監査のメスを入れることでそれらの実体を明らかにしようとする気運が議会を中心に盛り上がってきている。具体的には、議会に提出する準備が進められている法案「H.R.1207」別名：連邦準備制度透明化法案。ロン・ポール下院議員（写真・共和党）が発起人となり、既に下院で過半数となる賛同者（435名中、243名）を集めている模様だ。
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7/9ロイター通信より引用　　

ポール議員は２ページ半の法案で、ＦＲＢの金融政策決定に対し、政府監査院（ＧＡＯ）の監査を免除する条項の明確な撤廃を求めている。ＦＲＢ関係者はこれに対し、最良の長期的な決定を下す能力が損なわれる可能性があるとして、危険な動きと捉えてる。
　ポール議員はロイター・テレビに対し「ＦＲＢはなぜ独立的であるべきなのか。かれらにとっての独立性は秘密を意味し、望むことはなんでもできることになり、数十億ドルを使い、彼らの友人を救済することを意味する」と述べた。
　民主党議員７８人も賛同している同法案はまた、ＦＲＢと他国の中央銀行との取引やＦＲＢの緊急貸出オペレーションのほか、ＦＲＢ当局者間の協議内容もＧＡＯの監査対象にすべきとしている。

この「連邦準備制度透明化法案」はHP上でも公開されている。リンク
和訳を試みました。
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政府会計監査委員長による連邦準備制度理事会の監査方法の改正、およびそれらの監査の報告方法などの改正のために、合衆国法典第31編を修正すること。
米国下院
2009年2月26日
ポール氏（及びカーゲン氏、バッハマン氏、バートレット氏、ジョーンズ氏、レーベルク氏、ポージー氏、ジョージア州のブルーン氏、テキサス州のポー氏、インディアナ州のバートン氏、アバクロンビー氏、ウールジー氏）は、金融サービス委員会に対して以下の法案を提案しました。国会を召集し、アメリカ合衆国上院、下院によって制定させるように。
S１　タイトル
この法令は「2009年度　連邦準備制度透明化法」として挙げられるでしょう。
S２　監査の改正と連邦準備制度理事会の透明化
（a）全般
合衆国法典第31編714条の（b）を、機関の監査を必ず行うこと、一定の期間をおくこと、と修正する
（b）監査について
合衆国法典第31編714条の最後の部分に、以下の項目を付け加える。
（e）連邦準備制度の監査と報告
1.全般
連邦準備制度理事会と、連邦準備銀行の監査を2010年末までに完遂すること。
2.報告
必須事項について
監査報告は、監査終了時から国会が開かれる90日間の終わりまでに会計監査委員長から国会に提出すること。そして、下院議長、下院の与党・野党の党首、理事会の議長や幹部、上院・下院の小委員会、そして報告を求める国会議員が入手可能な状態にしておくこと。
報告内容について
報告には、報告対象についての発見の詳細な説明と、会計監査委員長による結論を必要とする。また会計監査委員長が適切だと判断した法的または行政的行動のための提案も含むこと。

ここで、ロン・ポール氏の言う会計監査委員とは、アメリカ連邦議会行政監査局（ＧＡＯ）を指している。
ＧＡＯとは何か？
「アメリカ・イギリス・ドイツの会計検査院と決算審議」より引用します。

ＧＡＯは1921年予算会計法に基づいて議会に設置された、議会の付属機関。同法は、大統領が持つ予算編成の権限強化に対し、執行面の監視機能強化を図るためにＧＡＯを議会に設置した。ＧＡＯの院長は、上院の助言及び承認に基づき、大統領が任命する。任期は15年と長く、罷免は両院の共同決議がある場合のみ可能である。
これにより、政治的圧力からの自由を保証している。
　また、ＧＡＯは情報入手権限も保証されており、ＣＩＡとＦＲＢを除く行政省庁には資料の提出義務がある。

今回のロン・ポールの狙いは最後の部分にある。つまり、ＦＲＢに対する情報入手権限を解除すること。議会の要請に応じて行動するＧＡＯの監査が入れば、窓口貸出業務、公開市場操作、各国中央銀行との密約など、これまでＦＲＢがひた隠しにしていた事実が明らかにされていくだろう。
当然ながら、ＦＲＢ幹部は、この法案提起に対して警戒感を強めている。リンク
この法案が法律となって施行されるまでには、いくつかのハードルを超える必要がある。法案が提起されたからといって、すぐさま議会で審議されるわけではないようだ。
小委員会での審議→公聴会の実施→委員会での可決→本会議での評決→大統領の署名、がその手順となってくる。
法案が通過するまでの重要人物を挙げる。
金融サービス委員会の議長：バーニー・フランク（民主党）
下院議長：ナンシー・ペロシ（民主党）
議会での多数党は「民主党」。共和党所属のロン・ポールにとっては向かい風となるが、徐々に増える支持者を力に換えつつ、上記の通常審議過程と共に、下院議長（ナンシー・ペロシ）に法案の投票をスケジュールに組み込むように働きかけているようだ。
※ちなみに下院議長は、多数党が支持する法案を、議題に決定する権限を持っている。
今のところ、法案に対する243名の賛同者の内、民主党議員が78名を占める。
下院での民主党議員は257名。仮に同党過半数124名に迫ることができれば、下院議長を動かすことも十分可能ではないか？
しかしながら、ＦＲＢの透明化は、アメリカを飛び越え、世界の中央銀行制度そのものを見直す流れにもなりかねない。
ＦＲＢを牛耳る金貸し勢力の抵抗も、相当のものが予想される。
仮に、法案が施行されることになれば、ＦＲＢを取り巻く法制度の改革が一気に進み、中央銀行の国有化が急速に進むのではないか？
ＦＲＢは草の根から追い詰められつつある。
法案の行方が非常に注目される。
参考サイト：豆長者