2010-04-23

日本の税システムを考える3〜戦後の税制の基礎を定めたシャウプ勧告とは〜

日本の税システムを考えるシリーズの3回目です。
現在の日本の税制の基礎は戦後間もない1950年に行われた税制改革によって確立されました。その改革を行ったのがカール・シャウプというアメリカの財政学者です。
戦後GHQの要請によって組織された彼を団長とする日本税制使節団は、当事インフレだった日本経済の安定化を目的とし日本財政の状況を4ヶ月弱にわたり調査、その後、彼がGHQに提出した報告書はそのまま日本政府に対する勧告という形式をとって税制に反映されたため、通称「シャウプ勧告」と呼ばれます。
そのシャウプ勧告とはどのような税制だったのか、を紹介していきたいと思います。
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■終戦直後の世界情勢
第二次大戦後、戦勝国(連合国)は、ソ連・中国をはじめとする共産諸国の台頭を許すことになり、特に資本主義大国アメリカにとっては反共の防波堤を構築する必要があった。その対象が東アジア諸国であり、日本もその例外ではなかった。そのためにアメリカは、敗戦によってガタガタになった日本の財政を立て直す必要があった。
戦時下の日本は戦費調達のための増税に加え、国債や軍票を乱発。それが戦後のハイパーインフレを引き起こしていたのだった。
この状況改善として行われたのがGHQの「経済安定九原則」と呼ばれる政策である。通称「ドッジ・ライン」といわれている。この中に「収税の強化」が課題として挙げられていた。ドッジ・ラインについてはこちらを参照。
この「収税の強化」の具体化を担ったのがカール・シャウプである。
■カール・シャウプ(1902〜2000)
dr.gif
こちらよりお借りしました
このような情勢下、財政学者であるカール・シャウプが来日。「世界で最も優れた税制を日本に構築する」ことを目的に税制改革に取組んでいく。彼は今回以外にも1950年代にキューバ、ベネズエラ、リベリアの税制構築にも貢献、またヨーロッパ諸国の付加価値税(日本で言う消費税)の導入にも重大な役割を果たした人物。戦後の日本税制の生みの親と言われている。
■それまでの日本の税制の問題
①間接税の割合が高い
当時の貧窮した国家財政下における税収は、タバコ税や酒造税といった間接税の占める割合が高かった。タバコ税は税収の約20%を占めており、酒造税は日露戦争以降から増税を重ね、1935年に所得税に抜かれるまで国税収入の1位を占めていたほどだった。
②所得税の税収方法
当時の所得税は家単位(同居親族単位)での合算申告制であった。このため、給与所得者が不当に有利になっているとされ、シャウプはこの不公平さを取り除こうとした。
③地方自治体の財政力の脆弱さ
シャウプは、国税の比率が高く、地方自治体の歳出は国からの補助金に頼っている点を問題としていた。
④税務行政上の問題
当事、所得税においては高額所得者が合法的に税金が安くなるような「抜け道」が用意されていた。間接税や法人税においては脱税が多かった。帳簿の不備による脱税も多かった。
■シャウプ勧告の趣旨
そのシャウプ勧告の趣旨は以下のようなものであった
①負担の公平性と資本価値の保全
②直接税中心の税収への転換
③間接税の整理
④地方自治体の独立性の強化
⑤税務行政の改善
詳細は以下のとおり。
①は彼の信条である「公平かつ簡素」から読み取れる税制改革の幹。その上で如何に税収を上げていくか、が②以降の内容。
②は所得税、法人税、贈与税、相続税について改革。
・所得税はこのときから累進課税であったが、最高税率が高すぎたためそれを引き下げ、全体として減税とした。また単位を家所得から個人所得へと切り替えた。一方で富裕層には資産に対して別途富裕税を課した。さらに有価証券譲渡益にも税を課した。
・法人税は一律35%に引き下げた。
・贈与税や相続税は財閥等への富の集中を防ぐ為、最高税率を高くした。公益団体への寄付については免税。
③間接税は酒税、関税等を除き、生活必需品への課税を廃止することで庶民レベルの税負担の軽減を図った。
④では国からの交付金の一方的な決定を排除、固定資産税を地方税に導入するなど地方自治体の税源の拡充と独立性の強化を図った。
⑤では予定申告制度や青色申告制度を導入。これまで国民に記帳慣行がなかったため、記帳と自主計算の慣行を定着させるために納税者による申告制を導入することで納税の意識付けを行った。
■シャウプ税制導入後の財政
・所得税:基本的に勧告どおり行われるが、富裕税は1953年に廃止された。(かわりに所得税の最高税率を上げることで対応)
・法人税:基本的に勧告どおり行われたが、その後、租税特別措置が採られ多くの減税が行われた。その結果、シャウプが目論んでいたような公平な徴税にはなっていない。
・間接税:1989年の消費税導入まで、ほぼ勧告どおりの政策を実現。
・地方税:地方財政の基盤を整備したことによって今日の地方自治財源の確立へつながった。
また戦前、巨大な財力を誇っていた三井、住友、三菱等の財閥は、GHQの財閥解体によって解散していくが、それと歩を合せて富裕税による多額の徴税がこれら財閥の経済基盤を弱体化させ、勢力の回復を阻止する役割を果たした。富裕税は1953年に廃止されるが、これは財閥解体が完了した翌年であった。
これらの新たな税制を導入し、所得差によって生じる税収負担を可能な限り軽減していくことに成功する。つまり貧富の差を可能な限り出さない社会づくりに大きく貢献したと言える。
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このように当事の日本政府は勧告をもとに税制改革を行い、そこには政治家の介入などがあり一部では勧告と異なる税制となりつつも、このとき作られた基本体系は大きく変わることなく、現在の直接税主体に受け継がれています。
カール・シャウプの仕事は、GHQの占領政策の一環でしたが、「公平かつ簡素」が信条のシャウプ自身は、財政学者として、彼なりのあるべき税収政策を敗戦下の日本で行おうとしていたのだと思われます。その政策もあって今日のように、貧富の差が極めて少ない日本国家を作り上げたとも言えます。

List    投稿者 heineken | 2010-04-23 | Posted in 未分類 | 6 Comments » 

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