2010-05-06

「まちづくり」と地域内経済の活性化

前回は地域通貨として電子マネーが用いられている事例(LETS・ピーナッツ)を扱いましたが、今回は、日本国内で新しい活動である「ピーナッツ」について、㈱みんなのまちHPの言葉をお借りしながら、詳しく紹介していきたいと思います。
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画像は製作工房 田舎人さんよりお借りしています。

>NPO法人千葉まちづくりサポートセンターが運営する「ピーナッツ」は、1999年からゆりの木商店街周辺を中心に広まり、平成15年時点で参加事業者約60、参加者約580人の規模まで拡大しています。

10年前に生まれ、千葉県の「ゆりの木商店街」という地元の商店街で広がりを見せる活動ですが、少しずつシステム改良を積み重ねながら着実に賛同者を増やし、なんと今では1800人!もの人が参加されているようです。さらに、成功した地域通貨のモデルとしてお隣の韓国から視察に来たりもしています。
こうして、注目を集めるピーナッツですが、システムは㈱みんなのまち代表取締役社長の村山和彦さんが考案されています。
一級建築士でもある村山さんは、旧建設省や通産省の審議委員を歴任され、全国25の再開発事業に携われるなど、精力的にまちづくり活動に取り組まれています。
しかし、まちづくりを考えることと、ピーナッツに代表されるような通貨流通システムを考えることとは、一見別物のようにも見えますが、一体どんな繋がりがあるのでしょうか?
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Q.地域通貨とまちづくりはどのように結びつくのでしょうか?
A.地域通貨を語るとき、私がよく閉鎖都市経済を健全に設計運用した実例として京都祇園の慣わしを引き合いに出します。長岡京、平安京の設計者である桓武天皇がそのシステムの先例をつくったと考えています。都と言う権力の構造の中では、権力者にお金が集まってしまいます。集まりっぱなしでは都市経済になりません。通貨は循環してこそ意味があります。京都の祇園に古くからある「一見の客はとらないという掟」、これは、お金を強引に循環させるシステムです。権力者に集まったお金を貧しい末端に運ぶシステムです。権力者のお金しか受け取らない掟です。時の権力者が出雲阿国のスポンサーをすることで、歌舞伎が興ってきました。歌舞音曲芸術のスポンサーになることは権力者の資格の一つでした。秀吉が利休を重用して、茶道具、焼き物、花活けに法外の値段をつけさせたのも都市経済の運営に寄与しています。旦那衆がスポンサーになる島原の花魁道中にしても西陣の繁栄と無縁ではありません。祇園は明治時代には元勲たち、昭和の時代には糸偏、金偏、建設と景気の良い権力者のみをお客にするシステムを守り、閉鎖的で小さい都市経済を成立させるシステムとして機能していました。
安くて良いものだけしか流通しないマーケット社会、競争社会では都市もまちも作ることはできません。地域の経済システム即ち通貨流通システムの設計は、まちづくり都市計画に不可欠なものです。

都市計画を考える際に、単に道路や建物といったハードの部分ではなく、ソフト(人と人との交流)の面を非常に重視されています。そして、都市活性化の原動力には、その都市で暮らす人同士が、モノ・サービスを通した豊かなやり取りが必要になること。そのためには、市場社会において、一方に偏りがちな通貨システムの問題性を克服し、いかに循環するような通貨システムを実現させるか?が、まちづくりの基礎になることが理解できます。

Q.グローバルマーケットの影響を受けて、国内景気が大きく左右されてきましたね。
A.ジャンボで牛を運ぶ輸送手段の発達、昨年の生秋刀魚を今年食べることが可能な冷凍技術の進歩、インターネットに代表される情報技術の大量高速化はグローバルマーケットの活性化を進めました。この傾向は今後も変わることがないでしょう。この過程でアメリカの一人勝ち状況が現出し、貧富の差が村規模から地球規模になりました。競争の場マーケットでは勝たなければいけません。その為には税金を使っての銀行合併・巨大化は避けることができません。グローバルマーケットを否定して鎖国することはできないからです。
グローバルマーケットの中で、平和で安定した生活を自らも楽しみながら、グローバルマーケットで弱い立場の人たちを、国内、海外を問わず救うセーフティーネットを用意したいと考えます。これが地域通貨です。
先ずは、国内の経済を循環させるための仕組をつくらなければなりません。

グローバル社会においては、資本を持つものが生産効率を上げ、また大量の仕入によって原価コストを下げることができるなど、非常に有利な立場を取ることができます。地域企業や商店がまともに戦って勝てる相手ではありません。事実として地域経済はグローバル化が進むに従って活力の衰弱が顕著になりました。
地域通貨には、使い道を地域内に限定することによって、地域内経済の循環を促しつつ、地域の生活は地域で賄うという基礎となる認識を共有していくという狙いがあるのだと思います。

Q.ピーナッツが目的を達成するには、どのくらいの規模が必要ですか
A.村山:スイスには地域通貨wirを事実上無利子で貸付をするwir bankがあります。たとえば、土地を買うとき、半分はwirです。パンやさんをやりたいとなったとすると、土地代の半分くらいを働いて貯金すれば、あとの半分は無利子のwirで買うことができます。お店の工事は100パーセントwirで引き受ける工事会社があります。粉は輸入したりしているから半分スイスフラン半分wir、パンを半分wir、半分スイスフランで売っていくと、無利子ですからゆっくりお金を返していけます。ある時払いの催促なしのようなものです。そうすると中小企業を興すのに非常に楽です。時間に追われないで生活していくことができます。エンデのモモの世界です。利子がついたお金で事業を興すといい加減なパンでも叩き売ってお金を作って銀行に返さないとつぶれてしまいます。スイスの中小企業7万社がwirのメンバーですから、スイスの中小企業は大変元気です。これが永世中立でユーロからも距離が置ける要因と思っています。ピーナッツは月1%のマイナス金利で預かっていますから、ゼロ金利の貸し出しは容易です。
今千葉県の人口は600万人くらいですが、その1割の60万人くらいの人がピーナッツクラブに加入した段階で、多くの事業の原価側にピーナッツが使われるでしょう。そうしたらスイスのwirなみに機能することができます。ピーナッツの貸付をして、工事屋さんがピーナッツで仕事を請けるよ、というようになれば、千葉県は永世中立の平和な楽園になるでしょう。600人のメンバーが一年で倍になるスピードで増えています。600,000人になるのに何年かかるか計算してみてください。このようになったときピーナッツは成功したと言えます。今は成功途上にあります。
これからの都市計画は人口の減少に伴って「美しき縮小」に向かうチャンスに差し掛かっています。供給側からの設計が需要側からの設計に変わる分岐点です。

地域内での通貨循環システムが、スイスでは一早く実現しているようで興味深いです。
今の社会では、新規で事業を立ち上げようとすると、元手を銀行や株式市場といった「外部」から調達する必要があります。銀行であれば「利子」が発生しますし、株式市場であれば「配当」という形で、同じく外部へ還元する必要が常識になっています。
そして最も大きい問題として、その外部経済の変動によって、私達の日々の生活や雇用が脅かされている実態です。私達とは無縁の世界で、多額のマネーが右から左へ動くだけで金利や為替が変動し、企業がまともに影響を受けることになります。(最近ではアメリカ発の住宅バブルや、それに端を発したリーマンショックが代表例)
村山さんは、これらの変動要因から地域を守る「シェルター」という意味で、地域通貨を捉えられていますが、可能性を感じざるを得ません。

地域通貨をマイナス金利で預かった分を、地域内の貸付に回すことができれば、外部経済に頼らずとも、地域内で通貨を循環させることができる画期的なシステムになるだろうと思います。なにより、地域からの大切なお金を預かって事業を行うということは、地域に対する感謝の念や還元の気持ちが湧いて、地域全体の活力上昇に繋がるのではないでしょうか?

List    投稿者 wabisawa | 2010-05-06 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 hermes poland | 2014.02.01 20:07

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