2013-03-15

【15】『世界経済の現状分析』コラム:新たな天然ガス資源「シェールガス」

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前回は「ロシア経済の現状分析」として、プーチン政権が米国のシェールガス革命に焦り、資源を主軸とした国家運営は輸出先の経済状況や各国のエネルギー事情に大きく左右されている背景があり、その「焦り」の中身について見てきました。

今回は近年、話題となっている新たなエネルギー開発の中でも注目高い、シェールガスについて調べてみたいと思います。

『世界経済の現状分析』シリーズ過去記事は以下をご覧ください。
『世界経済の現状分析』【1】プロローグ
『世界経済の現状分析』【2】米国経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【3】米大統領選の分析その1(両候補の政策の違い)
『世界経済の現状分析』【4】米大統領選の分析その2(両候補の支持層の違い)
『世界経済の現状分析』【5】米大統領選の分析その3(米大統領選の行方?)
『世界経済の現状分析』【6】中国経済の基礎知識
『世界経済の現状分析』【7】中国経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【8】中国、新体制・習近平でどうなる?
『世界経済の現状分析』【9】中国経済のまとめ
『世界経済の現状分析』【10】欧州経済の現状①(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【11】欧州経済の現状②(独・仏 VS PIIGS 格差問題の分析)
『世界経済の現状分析』【12】EU経済の現状③(EUの政治状況、右翼化?)
『世界経済の現状分析』【13】ロシア経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【14】ロシア経済の現状〜プーチンの焦り

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■シェールガスとは(詳しくはリンク参照)

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泥岩に含まれる天然ガス。非在来型天然ガスの一種。在来型との違いは、貯留層が砂岩でなく、泥岩(頁岩)である点にある。泥岩の中で、特に、固く、薄片状に剥がれやすい性質をもつシェール(頁岩)に含まれることから、シェールガスと呼ばれる。

■「シェールガスの環境問題」の具体的な中身 地下水汚染やメタンガスの漏洩だけではない(詳しくはリンク参照)

(1)掘削に用いられる化学物質(潤滑剤、ポリマー、放射性物質など)およびメタンガス(天然ガス)などによる地下水の汚染
(2)採掘現場から空気中に漏洩するメタンガスによる健康・爆発・温暖化リスク
(3)温暖化問題に対する総合的な影響(メタンガス漏洩・開発に伴う森林伐採・再生可能エネルギーの導入抑制効果・安価なガスによる消費拡大)
(4)大量の水を使うことによる地域の水不足リスク
(5)排水の地下圧入による地震発生リスク

シェールガスを採掘する際には大量の水が必要となるため、水を使用する産業や農業など他の分野で水不足の影響が発生する可能性が問題視されています。特にアメリカでは地下水の過剰な汲み上げによる影響が問題となっており、シェールガスの採掘の増加に伴うこうした地下水への影響が問題視されています。
 さらに、非在来型天然ガスの埋蔵量は在来型天然ガスの5倍以上に及ぶとされており、そのうちの50%を占める埋蔵量があるとされているシェールガスは、次々と新たな採掘に向けた開発が進められており、新たな採掘現場や運搬用パイプライン等を整備する際に周辺地域に環境破壊や環境汚染などの影響を及ぼす可能性があることも問題視されています。

■シェールガス埋蔵量ランキング(IEA調べ:詳しくはリンク参照)
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■技術的に生産可能なシェールガス資源量(詳しくはリンク参照)
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主に米国で生産されているが、世界中に埋蔵量がある。世界の天然ガスの埋蔵量 1,274TCFに対し、技術的に生産可能なシェールガス 6,622TCFと5〜6倍の量である。地域的には、中南米29%、オーストラリア27%、南米18%、アフリカ16%、欧州10%である。

■米国が世界最大の資源大国へ
●2017年までに米国が世界1位に=IEA(詳しくはリンク参照)

国際エネルギー機関(IEA)は、2017年に天然ガス生産で米国がロシアを抜き世界第1位なるとの試算を発表した。米国では、今まで採掘困難だった地層のシェールガス採掘が可能となったことで生産が急拡大している。
IEAはリポートで「困難な天然ガス相場価格にもかかわらず、米国は2017年には天然ガス生産で世界第1位のロシアを若干上回ると予想される。原油高が天然ガス生産を促すほか、堅調な国内需要と新たな輸出機会から米国の天然ガス生産は引き続き拡大する」との見解を示した。
米国の天然ガス生産量について2011年の6530億立方メートルから2017年は7690億立方メートルまで増加すると試算している。
国内需要の増加から2017年時点も米国は純輸入国になると予想しており、同年までに、過去100年余り主要な発電エネルギーとなってきた石炭に取って代わる可能性もあるという

■シェールガスと日本企業

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●シェールガス輸入の動きが活発化(詳しくはリンク参照)

アメリカのシェールガスを輸入しようという動きも活発になってきました。アメリカは自由貿易協定を結んでいる国以外に対する天然ガス輸出を禁じているため、日本は現時点では輸入できません。しかし、2012年12月にアメリカエネルギー省は、シェールガスの輸出は国益にかなうという報告書を発表しており、近い将来の輸出を見越して、シェールガス権益を獲得する動きが活発になっています。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、豊田通商の大手、中堅商社が相次いでシェールガス権益を獲得しています。電力会社、ガス会社も獲得に動いています。

■まとめ

新たな天然ガス資源「シェールガス」。生産対象となる地層や採掘技術が在来型天然ガスや石油と大きく異なるシェールガスは、世界のエネルギー安全保障の枠組みを塗り替える可能性を秘めているとされ、既にその変化は国際政治や世界市場のさまざまな局面で顕在化しつつあります。
また、ライフスタイルの変化やエネルギーの勢力争いも変化していくと予想できます。
米国がシェールガス革命によって生産量トップの地位となり、資源大国となったとき日米関係はどうなっていくのか?
日本でもメタンハイドレートの研究開発を進めるなど、各国でエネルギー開発を進めており、新たな資源については今後も留意する必要がありそうです。

次回は、『世界経済の現状分析』として今後、ワールドカップやオリンピックなど経済成長で注目されるブラジルの現状を調べてみたいと思います。

List    投稿者 seya | 2013-03-15 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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