2010-06-06

『ユーロ発国家財政危機の行方』1.ギリシャ問題・PIIGS問題とは?

前回5月30日『ユーロ発国家財政危機の行方』プロローグ に引き続き、本日は「ギリシャ・PIIGS問題とは何か?」この問題の基礎及び骨格を追求していきます。

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ギリシャ破綻は、IMFとEU諸国による200億ユーロの緊急支援と、その後のECB(欧州中央銀行)のユーロ建て国債の買い取り発表により、一旦は回避されました。
しかし、ここで回避されたのは5月19日に期限を迎える85億ユーロ分であり、ギリシャの危機は現在も進行中です。また、スペイン国債の格下げが発表される等、危機状況は拡大の方向に進んでいます。
では、PIIGSの中でギリシャに、あとどのくらいのお金が必要なのでしょうか?それと比較してPIIGS各国の状況はどうでしょうか?
そもそも、この問題の構造はどうなっているのでしょうか?
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●今後ギリシャには、どれだけのお金が必要なのか?
2010年
・5月までに必要な国債返済額  : 85億ユーロ
・10月までに必要な国債返済額 : 68億ユーロ
・財政赤字の穴埋め額       :140億ユーロ
・国債の利払い            : 75億ユーロ
2010年だけで368億ユーロが必要になります。
このうち、現在IMF・EU諸国の緊急支援で200億ユーロが確保されていますが、残りの約168億ユーロは、現在進められているギリシャの緊縮財政(公務員の給料カットや年金の減額等)がうまく行き評価されれば支援されます。しかし実態は、ギリシャ国内は上記写真のように緊縮財政策を巡り、暴動の状況です。
また、この状況は来年以降もまだまだ続きます↓
ギリシャが今後必要な資金。
2011年:約277億ユーロ
2012年:約308億ユーロ
2013年:約246億ユーロ
2014年:約313億ユーロ・・・・・
最近、欧州から郵政民営化凍結は「保護主義」だと意見が出ていますが、このような逼迫したユーロ圏の状況から発せられていると思われます。
●PIIGS各国の状況は?
では次に、ギリシャに比較してPIIGS各国の状況はどうでしょうか?

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ここを押して拡大してご覧ください

2009年末の総負債額で比較すると
・P(ポルトガル)  :2860億ドル
・I(イタリア)    : 1.4兆ドル
・I(アイルランド)  :8670億ドル
・G(ギリシャ)   :2340億ドル
・S(スペイン)   : 1.1兆ドル
PIIGS各国は、ギリシャ以上に負債を抱えていることが分かります。
これが、今回のギリシャ危機のようになったら・・・・・・
●では、なぜこのような状況になったのか?
るいネットサロンの仲間達で、全体状況を図解化してみました。
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ユーロ圏はもともと、基軸通貨であるドルに影響されない貿易圏とすることを目的として作られました。また、南欧等の貧困国にとっては、もう一つのうまみがあります。それは、自国の通貨より貨幣価値が高く変動の少ないユーロ圏に入ることで、多くの外国資本を集めることが出来ることです。投機側にとって、国は貧困だが、通貨は安定していて人気がある。と言う特殊な構造が生まれます。
ギリシャは、5人に1人が国家公務員、年金は現在の給料の90%が支給される等、非常に財政を逼迫させる国家体制になっています。財政赤字は、ユーロ圏に入るための条件(財政赤字がGDPの3%未満)をはるかに超え、13%近くある国でした。
その赤字をレポ取引という方法で、一時的に借金(国債)を証券化して外資に売り、後に買い戻して表面上借金が無いように見せかける手法を取り、ユーロ圏に加入しました。
この時ギリシャは、GSやJPモルガン等の金貸し金融機関と結託します。

リーマンショック時の金融派生商品の手法が、国家を相手に使われたのです。
ギリシャはその後、政権が交代し、実態の財政赤字が明るみに出ます。同時にギリシャの国債は一気に人気を失いデフォルト状況に追い込まれます。金貸し達は、このギリシャ国債に元本保証のCDSを掛け、危機を先送りさせ国債のバブルを作ります。
そして2008年、金貸し達お得意の「空売り」が始まります。空売りにより国債バブルは崩壊し、国債価格が下がり(金利が上がり)、金貸し達は、空売りの儲けを得ます。
また、CDSにより元本が保証されているため、金貸し達に取って、デフォルトも恐くありません。逆にギリシャがデフォルトするとAIG等の保険会社から元本分の金が入り、儲かるのです。空売り+CDS元本保証で約2重の儲けになります。
一方でユーロ圏は、ユーロ建てで発行している国債の信用も失われることとなります。
また、ギリシャがデフォルトすればCDSの保証料が発生し、AIG等の保険会社が危機に追い込まれます。リーマンチョックと同様に、各国は保険会社を潰す訳にも行かず、結局、同じように各国国民の税金が保険会社を通じて、金貸し達に渡って行きます。
更にこの流れで行くと、政府系保険会社としてAIGを持つアメリカへの信用は更に低下し、基軸通貨ドルの暴落リスクも高まります。
参照:るいネット
「2010年経済危機(1) ゴールドマン・サックスの詐欺的手法」
「2010年経済危機(2) ギリシャ発ユーロ危機」
「2010年経済危機(3) 規制されないCDS(債務保証保険)」
●ギリシャ・PIIGS問題とは?(まとめ)
金貸し達は、国家に金を貸し、その利息や政治のコントロールで利益を得る段階から、国家の借金までも金融商品化し利益を得ようとする段階に入っています。
見方を変えれば、金貸し達はそこまでしないと市場を維持できないのです。
一方国家側は、アメリカ・オバマ政権による金融規制改革法案が、下院・上院で可決され施行に向けて進み始めたり、ドイツ・メルケル首相による空売り規制等がドイツ単独で出されたりと、金貸し達への規制が動き始めています。
ギリシャ・PIIGS問題とは、『国家と市場(金貸し達)』の闘いが始まったことを意味しています。
次回は、ユーロ圏に突っ込んで「EU及びユーロ(地域共通通貨)の弱点構造」について追求する予定です。お楽しみに・・・・・
画像はこちらからお借りしました。
ギリシャのストライキ
国家間の負債相互乗り入れ状況

List    投稿者 yooten | 2010-06-06 | Posted in 未分類 | 4 Comments » 

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コメント4件

 ふぇりちゃん | 2011.02.10 21:19

資料の多さにビックリしました!
どうもありがとうございます☆
今回のブログを読んで、世間では「食糧危機」と言いながらも様々な場所で食べきれなかったもの・食べられなかったものなどを容易に廃棄していることに気づきました。
なんか、矛盾していますよね。
最近また一部の野菜などの価格が高くなっていってるというニュースを聞きました。
これからどうなっていくんでしょうね?
今後のブログ展開を期待しています☆

 minezo | 2011.02.13 0:55

ふぇりちゃん、いつも応援ありがとうございます。
食物の大半を輸入に頼りながら、容易に食物を破棄しているというのはやっぱりおかしなことで、食生活の見直しは必要でしょうね。
そのことをみんなが共認できるように、食糧危機問題の根本原因をしっかり追求したいと思います。
これからも応援よろしく。

 norway hermes handbags | 2014.02.01 17:02

travel the world of hermes 金貸しは、国家を相手に金を貸す | シリーズ「食糧危機は来るのか?」1〜食糧危機問題の捉え方〜

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