2010-09-14

シリーズ「活力再生需要を事業化する」15〜【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(2/3)〜


 
「活力再生需要を事業化する」シリーズの第15回☆
過去のエントリーは以下を参照ください。
 
新シリーズ「活力再生需要を事業化する」〜活力源は、脱集団の『みんな期待』に応えること〜

シリーズ「活力再生需要を事業化する」2〜ワクワク活力再生!
シリーズ「活力再生需要を事業化する」3〜老人ホームと保育園が同居する施設『江東園』〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」4〜企業活力再生コンサル〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」5〜企業活力再生需要の核心は「次代を読む」〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」6〜金融、ITビジネスはもはや古い?!新しいビジネス“社会的企業”〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」7〜社会起業家の歴史・各国の状況
シリーズ「活力再生需要を事業化する」8 〜社会的企業を支える「アショカ財団」〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」9〜『生産の場として、儲かる農業』が、みんな期待に応えるのでは?〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」10〜就農定住の成功事例 山形県高畠町〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」11〜農業参入が企業の社会的使命となる〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」12〜農業は医療や教育と同じく人類(集団)にとって不可欠の事業であり、脱市場原理の最先端可能性といえるのでは?〜
シリーズ「活力再生需要を事業化する」13〜コンセプトは、『私、気付いたら就農してたみたいです♪』かな?
シリーズ「活力再生需要を事業化する」14〜【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(1/3)〜
 
前回のエントリーでは、日本の農業が厳しい状況に置かれる中、モクモクファーム「消費者と生産者が交流する場」として、地元だけではなく広い地域からの信頼を確立し、毎年若者たちが就業や研修で訪れるなど、消費者にとっても生産者にとっても魅力的な場になっていることを紹介しました。
 
モクモクファームで働く人々は活気があり、また彼らは消費者の欠乏をうまく捉え、それに応えるために様々なアイディアや工夫がなされているようです。それが多くの人からの評価を得ている要因だと思われます。
 
そこで今回は、モクモクファームが展開する様々な事業の例を紹介し、様々なアイディアや工夫、そして活力を生み出す運営方法に迫ります。
 
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まずは、【書籍紹介】伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘(モクモクファーム)(2/3)からの引用です。

第3章 活況呼び込む手づくりアイデア群
 
1、新しい職人気質の芽生え—地ビール製造1)モクモクの純国産ビールはモクモクファームでのヒットとなった。
 
2)ここには、世間で言われる俗説がまったくなかった。若い人はマニュアルがないとなにもできないだの、いまは職人気質がなくなっただのといった仕事上の俗説である。
 ここにはマニュアルがなかった。経験と知恵が重視されていた。現場のやりたいという気持ちが生かされていた。職人気質が若い世代に育ち、培われていた。
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2、地元農家にもメリット—ファーマーズマーケット
1)モクモクの売り場では何でも売る事が出来る。
 
2)地元農家の社交場になり、高齢者のちょっとしたコミュニティーになっている。
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3、お客さんに信頼感を−−−加工品販売所
1)店には接客マニュアルがないが、どの店舗をのぞいても、対応はスムーズでなにより「元気の良い声が返ってきてすがすがしい気分にさせられる。
 
2)みんな自分たちでやっていくんだという雰囲気がある。それに、お客さんにマイナスになるという事があれば。すぐに変更する。パッと変える。社長も専務も決断が早いんですよ。
 
4、手づくり結婚式も−−−レストラン
1)アットホームな手づくり結婚式も人気。
 
5、自然と一体となった学習の場
1)テーマは四つ
 ①農業を伝える②動物教室③自然に触れたり工作する自由研究④虫の教室。
 話すだけではあきるので、動物にさわってもらう。危険なところも可愛いところもひっくるめて教えたい。農業を伝える役割。
 
2)モクモクでは、さまざまな遊びを通じて、自然と学習と教育を一体としたイベントを仕掛けている。
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第4章 目に見えない工夫の数々
 
1、消費者の顔が見える通販を
1)モクモクを支えてきた大きな柱が会員制の宅配。
 
2)農産物を加工し、消費者に直接届け、生の声を反映させていく、と言うやり方が重要。モクモクでは、アイテムを250以上も揃えて地元消費者にはその日のうちに届けるというやり方をやっている。
 
3)「直接消費者の声を聞きたい、話したい、顔を見たい、それがやりたかった」
 
2、通販でも多彩な企画
1)通販ではネイチャークラブ事務局の存在が大きい。
 消費者とモクモクを繋ぐ役割。
 
2)通販の利用は会員が条件。入会金は二千円のみ。三年に一度無料の更新手続きをし、この時約四分の一が減るが一方で毎月約三百人の会員が増えている。
 会員の特典は入園ファミリー券10枚×2回/年(入会金分の還元)と商品購入時のポイント。
 会員にはギフトカタログとネイチャークラブ通信、モクモク通信送付。
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3、印刷物にもこだわり
1)ギフトカタログとネイチャークラブ通信、モクモク通信は商品の販売や顧客の獲得ばかりではなく、イメージアップやメッセージの伝達、対外的なPR効果などにも非常に役に立っている。
 
2)社長も常務も文章一つでも練りに練る。だからこっちも手が抜けない。
 
4、ファームの理念を具体化
1)通信やギフト案内の制作、ファーム内のイベントの企画などにかかわっている部署に「やさしさ宣言推進企画室」という部署がある。
 ここでは、全体のファームの方向性を決め、入園料のシステムから集客の手法、イベントの企画、情報発信、チラシ、広報募集の発信などをする。ぜんぶで七人がいる。
 「ファームに関する事は全て考える。」
 
2)モクモクにはマニュアルがない。アルバイトが増えるたびに、モクモクの考え方を話す。できるだけお客さんとの間に敷居を作らないよう接客は「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」にしている。お家に迎える感じ。服装は厳しくチェック。
 
3)モクモクは理念を具体的に表現し、それを自ら発信し、丁寧にイメージを伝えていくという事を大切にしている。
 
5、本部自らが活性化の努力
1)創業から14年で組織は大きく膨らんだがここで働く人たちは活気に満ちている。活気を生み出し継続させる為にさまざまな試みが絶えず行われている。
 
2)「たのしいファームづくり運営部」「ほんものづくり事業部」・・・等ネーミングも親しみやすい。
 
3)運営はそれぞれの部門会議によって行われる。
 定例会議に研修、視察は頻繁に行われる。
 
6、信頼感を支える縁の下の力持ち
1)予約インフォメーション、品質管理室、等重要な部署もある。

とても活力を感じるし、何より楽しそうですよね。多くの若者がここで働きたいというのもよく分かります。
 
ではなぜこのような組織を作ることができたのか?まずその原点である、設立者・木村修氏と、地元の人々が置かれていた、外圧状況と欠乏を押さえておきたいと思います。(前回のエントリーでも一部引用していますが、再掲します。)
 
木村修氏の講演より。

▽私の所は、三重県伊賀でも山手の中山間地域。どうしたら零細な農業を再生できるかを思い描き、農協を辞めた”脱藩組”と従業員で資金を出し合い、「モクモク」を設立した。いまは「6次産業化」というが、原料を作る(1次)ことから、それを自ら加工(2次)し、販売(3次)するところまでやれば、飯が食えるのではないかと考えてきた。実際売り上げも地域雇用も、思い描いてきた以上のものになった。
 
 ▽結果的には地域おこしにもなった。しかし自分には、その気負いは全くない。当初から、どうしたら農業で飯が食えるか、若い人に農業が夢やロマンや可能性のある産業であることを伝えられるか、その挑戦の連続だった。20年度の売り上げは47億円。パートのおばちゃんや季節アルバイトを含めると、従業員は400人以上。世の中はデフレ一色だが、当社の事業は伸びている。
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 ▽そして、当社のコメや加工品は決して安くない。むしろ高い。それでも買ってくれている。安くて売れるのは知恵の要らないことだが、どうやって自分たちの価値を知らしめるかには知恵が要る。だからモクモクでは、その伝え方や知恵の出し方に一生懸命取り組んでいる。生活者というのは、”価値”が分からない限り、その価値に見合ったお金を出してくれない。だからその価値を知らしめることがわれわれの仕事だ。
 
 ▽なぜ農協の脱藩組がモクモクをやり始めたか。三重県が発祥の大手スーパーに亮り込みに行ったのが契機だった。私自身、初めて売り込みに出かけて、農協同士が産地間競争で戦っているのが分かった。
 
 ▽当時、豚の販売をしていたが、主産地の鹿児島や宮崎などからも売り込みに来ていて、いつも天秤にかけられる。そこで同じバイヤーに向かって商談すると、「買ってもいいが、産地(九州)と値段を合わせてくれますか」と言われてしまう。値段では、われわれのような零細な県は負けてしまう。同時に、大手商社も輸入豚を売り込んでいる。国内はもとより、海外競争にもさらされていることを感じた。
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リンク
 
▽そこで、消費形態を地域に根差そう、生活圏エリアの中で自分たちのものを買ってもらおうと考えた。いまで言う「地産地消」だ。農協時代、消費者アンケートを行ったことがあった。「地元の物を食べたいですか」と問うと、何回やっても7割以上の人が「はい」と回答してきた。潜在的二ーズはあるのに、流通形態がそれに対応していなかった。だから、地域の中で物を売っていくのが生き残りのカギだと考えた。地域内なら生産方法も見せられるし、交流もできる。つまり「安全・安心」だ。

これらの背景を踏まえて、モクモクファームという活力溢れる組織を作ることができた構造を整理してみます。
 

モクモクファーム設立の原点には、市場競争では太刀打ちできない零細農家をなんとか再生したい という思いがあったようです。そこで、人々の安心・安全志向というニーズをうまく捉えて「地産地消」の促進へと向かい、そのために農業生産だけでなく、加工・販売まで担い、直接消費者と繋がることを目指してきました。またそのような人々の期待が直接感じられる仕事は、若い人たちにとっても魅力的な仕事になり得ます。
 
それらを実現するために、消費者の声(期待、外圧)を直接に捉え、だれもがモクモクの理念を体現する当事者として、実現していくという姿勢と組織体制が、所員の活力を生み、それが様々なアイディアを生み出せている理由だと考えられます。
 
組織の一人一人が当事者として人々の期待(外圧)を捉え、運営していくことは、働き手自身、さらには組織全体の活力再生のためには不可欠な条件です。そしてそれはいまや不可能なことではなく、意識を転換しさえすれば誰もが実現可能な時代になってきているのです。
 
実現論 序文 ホより引用

 可能性は、既に開かれた。まずは生産体(企業)を、『自分たちで動かすことのできる共同体』に変えればいい。企業を権力体から共同体に変えるのは簡単で、企業を全員参加の合議制で運営すれば良いだけである。’70年、貧困が消滅した時点から既にその可能性が開かれていたことは、我々が実証してきた通りであり、(経験に即して云えば)企業を事実の共認によって統合された合議体に変革しさえすれば3年以内に『自分たちの生きる場を、自分たちの手で創ってゆく』ことの大切さを、皆が体感してゆくだろう。それは、長い間権力によって封鎖されてきた、人類本来の豊かな共認充足を再生してゆくに違いない。

次回は、モクモクファームが考える今後の展望に迫ってみたいと思います。ご期待ください。
※画像(リンク先がないもの)は、モクモク手作りファームHPよりお借りしました。

List    投稿者 kknhrs | 2010-09-14 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

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