2019-08-16

変わらざるを得ない資本主義体制、どうする?>ロシアも模索中

世界で今や、需要<生産力!!  物余りの時代だ。

世界中で資本主義(物不足の適応態)の仕組み限界が顕在化してきた。

必需品は充足されて、以前のように作れば売れる時代が終わってしまったのだ。

その中で、全ての先進国は経済成長(≒維持)を図る為に、金融緩和で国債多発して借金まみれで機能不全に。
そして、世界中で金が余り、世界金融は博打場と化して、金融政策で操作不能に。

結果、物充足の豊かな時代なのに、格差拡大で一部の人たちが資本を独占し大衆は貧乏に。

歪んだしまった資本主義は矛盾点を拡大し、社会全体を統合しながらの運営が不能に成ってきた。(資本の偏りが激しすぎて、いずれ大衆が反乱を起こしかねない)

だから、「ベーシックインカム」など、国家の運営システムの更新を模索中だ。
日本でも(内容は稚拙だが)「働き方改革」などで、適応に向けてもがいている感じだ。

そんな中で、ロシアが「週4勤務制度の導入」を試そうとしている。
食べていく為の労働は60%で足り、残り40%を自由時間(≒社会活動の時間)を増やして社会運営すると云う試みだ。

西側マスコミは、敢えてニュース発表をしていない感じだ。

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■ロシアが週4勤務制度導入へ
TRTより https://www.trt.net.tr/japanese/shi-jie/2019/08/14/rosiagazhou-4qin-wu-zhi-du-dao-ru-he-1252468
ロシアで、勤め人が自分と家族のために十分な時間を割けるようにすること、失業率を下げることなどを理由に、週4勤務への移行に向けた準備が進んでいる。

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この制度が承認されれば、ロシア人は週に4日働くことになる。
与党の統一ロシア党も支持しているこの提案は、週5勤務に代わる週4勤務制度導入を見込んでいる。
その目的は、失業率を下げ、生活の質を向上させ、勤め人が自分と家族のために十分な時間を割けるようにすることである。
6月に発表された世論調査では、ロシア国民の43パーセントが週4勤務制度に反対しており、そうなれば給与額が下がる可能性を懸念していることが明らかになった。

しかし、ロシア国民の懸念とは逆に、新制度において勤め人の現在の給与額が維持されることが目指されている。

新制度の法案に関する活動は9月に始まる予定である。週4勤務制度の適用は段階的に行われる予定であり、そうして雇用者と勤め人は新制度に適応することができる。

(2019年8月14日)

by 猪飼野

  投稿者 dairinin | 2019-08-16 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

反グローバリズムの潮流(フランスのマクロン政権は今…)

PK2019051502100075_size0年の初めに、反グローバリズムの潮流(フランス暴動を巡り、反EU勢力が国を超えて共闘を開始)では、マクロン政権が国内からの反発だけではなく、EUでも反グローバリズム勢力が共闘しマクロン包囲網が出来ていることをお伝えしましたが、その後、マクロン政権はどうなっているか調べてみました。

まず、フランス国内の状況ですが、「黄色いベスト」運動は勢力が衰えたと言いながらもデモは続いているようです。また、マクロン大統領の支持率も32%と低迷したままです。

5月に行われたEU議会選挙では、ルペン氏率いる極右の国民連合(RN)が第1党となり、敗北を喫しました。国内での評価がガタ落ちであることは間違いないようです。

その分、人気取りのためかと思われますが、EUや外交ではその存在感をアピールしようと必死になっています。

EUの首脳人事では、ドイツのメルケル首相が提案した委員長候補を排除し、マクロン氏が推薦した別のドイツ人が委員長に選ばれます。ドイツ人を推薦した事でドイツに恩を売り、欧州中央銀行総裁にはフランス人が就任する等、EUではマクロン大統領が中心人物になって来ています。

さらに、デジタル・サービス税の導入で、アメリカにも喧嘩を売るなど、対外的には強硬な姿勢を示しています。

今後の予想ですが、EUでマクロン大統領の影響力が高まれば高まるほど、イタリアをはじめとする反EU勢力が黙っていないと思われます。マクロンが強硬になればなるほど、EU内の分裂は強まると思われます。これに、アメリカとの貿易戦争が開始されれば、EUの崩壊は加速される。

結果として、EU政策、外交も上手く行かず、フランス国内の批判もさらに高まると言う悪循環に陥っていく可能性が高そうです。

 

■フランス「黄色いベスト」運動が総会 「資本主義からの脱却が必要」2019年5月2日

新自由主義のマクロン改革と対決するフランス人民の「黄色いベスト」運動は昨年11月以来、5カ月にわたってたたかわれている。このなかで各地での「黄色いべスト」の運動の代表が一堂に会する第2回総会が開かれた。

この論議のなかで「黄色いベスト」が「人民による、人民のための力」であり、「自由、平等、友愛」(フランス革命のスローガン)を実現するためには、「資本主義からの脱却」が必要であり、資本主義にかわる新しい時代の入口に立っているとの意見がかわされた。

■仏「黄色いベスト」運動が26週目に、参加者減少の一方で衝突も2019年5月13日

フランスで11日、マクロン政権に抗議する「黄色いベスト運動」のデモが行われ、リオンとナントで警官がデモ参加者に催涙ガスを発射するなどの衝突が発生した。デモは26週間連続。運動は勢いが弱まりつつあり、政府の統計ではピーク時の昨年11月に30万人を超えていた参加者は、ここ数週間には3万人を下回っている。

■期待は失望に マクロン氏試練 大統領就任2年 支持率32%2019年5月15日

フランスのマクロン大統領は十四日、就任二年を迎えた。当選直後の期待はしぼみ、全国で毎週末に反政権デモ「黄色いベスト運動」が続く。一年目に断行した労働法改正などの改革で海外の対仏投資が伸びるなど一定の成果は出つつあるが、国民の実感は乏しい。

調査会社BVAが九日に公表した世論調査によると、支持率は32%で当選直後の62%から半減、一年前から13ポイント下げた。デモ参加者は発表された支援策が「生活レベル向上にはつながらない」と批判。仏メディアも「国民に失望感」と手厳しい。

■欧州議会選、仏は極右が第1党へ マクロン氏は僅差で第2党2019年5月27日

フランスでの欧州議会選が26日に実施され、ルペン党首率いる極右の国民連合(RN)が第1党となる見通しだ。ただ、マクロン大統領率いる共和国前進(REM)との差は僅差にとどまるもようだ。

エラブの世論調査によると、国民連合は23.6%の票を獲得し、共和国前進の22.4%を1%強上回る見通し。国民連合のルペン氏やジョルダン・バルデラ候補は今回の選挙を過去2年のマクロン政権への信任投票と位置付け、選挙戦では有権者に大統領の経済改革や親欧州連合(EU)政策への反発を示すよう呼びかけた。

■マクロン仏大統領:10月末が英EU離脱の最終期限-欧州委新体制前に2019年6月4日

マクロン大統領は「ぐずぐずと先延ばしすることは大きな誤りであり、今度こそ本当の最終期限だと私は思う」とパリで発言。EUの行政執行機関である欧州委員会の新体制が、英EU離脱に対応せざるを得なくなることは望まないと述べた。

■「3つの危機、G7で協議」マクロン仏大統領講演2019年6月27日

来日中のフランスのマクロン大統領は27日の講演で「世界はグローバル化、デジタル化、気候変動という3つの危機に直面している」と警鐘を鳴らした。「社会の不均衡、国ごとの不均衡、大陸間の不均衡が耐えがたくなっている」。マクロン氏はまず、グローバル化による人々の格差を問題視した。

第二に、あらゆるモノがネットにつながるIoTや人工知能(AI)など、デジタル技術の発展が「社会を不安定にする」と強調した。

第三の危機として気候変動を挙げた。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの米国の離脱表明など、足並みはそろわない。「多国間主義は危機にある。反対する一部の人を長々と待たず、参加したい人を募るべきだ」と強調した。

■ラガルドECB総裁、これまでの実績とこれからの限界2019年8月2日

注目を集めたEU首脳人事ではドラギ総裁の後任の欧州中央銀行(ECB)総裁としてフランス出身のクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事(63歳)がEU臨時首脳会議で選出された。

次期欧州委員長としては、ユンケル委員長が欧州議会の最大会派である欧州人民党(EPP)出身であり、今回もそれにならってEPPに属するドイツ出身のウェーバー氏が最有力候補とされた。しかし、フランスのマクロン大統領がウェーバー氏の経験不足を理由に頑として受け入れなかった。紆余曲折を経て欧州委員長には、メルケル首相の盟友であり、かつラガルド氏と同様に女性初となるウルズラ・フォンデアライエン国防相(60才)が指名された。

それとのバランスでフランス人のラガルド氏をECB総裁に、EU大統領にマクロン大統領と肝胆相照らす仲であるベルギー首相のシャルル・ミッシェル氏(43才)が指名された。いずれもマクロン氏が妥協案として考え出した人事構想であった。マクロン大統領の全面勝利、政治力の衰えが隠せないメルケル首相の完敗ではあった。

■仏のデジタル課税から米EU貿易戦争への可能性も2019年8月7日

フランスでは、議会で、デジタル・サービス課税法が成立した。デジタルサービス課税法は、フランスにおけるグローバル・ハイテク企業の売り上げに3%の課税を行うというものである。これに対して、米国のトランプ大統領は、7月26日、「マクロン(仏大統領)の愚行に対する甚大な報復措置を速やかに発表する」と、フランスのデジタル・サービス税の導入を非難した。トランプ大統領の発言は、米国の超党派の議員たちからも支持され、通商法301条の発動も言われている。

マクロン大統領は、2018年、燃料税の値上げを計画したところ、「黄色いベスト運動」の激しい抗議デモに合い、結局、譲歩した際に大判振る舞いを したために、他の改革に取り組むことができず、埋め合わせの財源を必要としているのであろう。

今後、フランスのデジタル課税をきっかけに、自動車への25%の関税やワイン等への報復関税が課されるようになれば、米中貿易戦争のみならず、米EU貿易戦争にもなりかねず、世界貿易の行方が懸念される。

  投稿者 dairinin | 2019-08-15 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

国際情勢の大変動を見抜く!-25~日ロ関係強化の世界史的意義~

 

プーチン・安倍

 

今後、金貸しによるグローバル化→世界統一政府樹立を阻止できるのは、ロシアと日本であるという。

それも日露関係強化により、ロシアへの日本の支援が必要とのこと。

 

ロシアの軍事力は世界一で、しかも群を抜いている。但し国力という意味では、天然資源の輸出に頼った経済では脆弱。生産力を付けなければならない。

 

また、プーチン・ロシアは民族主義だが、国粋主義ではない。国際的な関係性も重視し、その両立を目指している。いわば国際化と自国の伝統・文化の維持の両立を目指している。

 

そのお手本となるのが日本。生産力を高める技術や経営、伝統を守りつつ新しい文化と融合させていくこともお手のもの。筆者は土着力と言っている。当ブログではそれを本源性と言い換えたい。

ロシアの国民性も本源性を有しているという。

この両国が関係性を強化することで、科学技術の世界でも軍事の世界でも、或いは人類本来の本源性を広めていくという意味でも、金貸しによる否定の論理、ユダヤの集団自我による暗黒の世界からの脱却が図れると思われる。

 

現在、金貸しが作った経済システムがガタガタになり、崩壊寸前のいま、金貸し支配終焉の好機を迎えている。そのカギを握るのがロシアと日本。人類の運命はこの両国に掛かっている。

『世界を操る支配者の正体』(馬渕睦夫 著)からの紹介です。

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■日ロ関係強化の世界史的意義

 

ロシアはいま、アメリカによる、なりふり構わぬグローバル市場化圧力にさらされています。しかし、プーチン大統領は決してグローバル市場化そのものを拒否している訳ではありません。プーチンがめざしているのは、グローバル市場化とロシア国民経済との共存なのです。

 

このことは、プーチン自ら執筆した論文「新千年紀を迎えるロシア」に明確に述べられています。プーチンはそこで、「ロシアの新しい理念は、人道主義に基づく世界の普遍的価値と、20世紀の混乱も含めて時の試練に耐えたロシアの伝統的価値とを有機的に統一するときに実現するだろう」と明らかにしています。

 

これは、極めて重要なメッセージです。「人道主義に基づく世界の普遍的価値」とは自由、民主政治、人権尊重、市場経済などを指しますが、これらの普遍的価値を尊重すると述べているのです。この点から見ても、プーチンが独裁的思想の持ち主であるとは考えられません。

 

また、ロシアの伝統的価値の絶対性を主張するのではなく、このような普遍的価値とロシアの伝統的なスラブ主義思想とを「有機的に統一する」ことを強調しています。「有機的に統一する」とは、プーチン大統領はロシア愛国者であっても、ロシア国粋主義者ではないことを証明しています。ここに、プーチンのロシアとグローバリスト・アメリカとの妥協の可能性を見出すことができるのです。

 

 

プーチン大統領のもう一つのメッセージは日本に向けられています。プーチンは2000年に大統領に就任して依頼、わが国に対し日本の文化や哲学に親しんだものとして、日本を愛さずにいられない」と日本に対する強い関心を表明しています。この対日関心とプーチンのいわばライフワークである新しいロシアの理念の構築とは、密接に関連しています。プーチン大統領が日本の文化や哲学に高い関心を示しているのは、世界の普遍的価値とロシアの伝統的価値を有機的に統合する秘訣を日本の経験から学びたいということであると解釈されるからです。

 

つまり、プーチンはアメリカ型のグローバリズムに代わるロシア発展の理念を、明治維新以来、欧米流の近代化と日本の伝統文化の両立に成功して今日にの発展を成し遂げた日本の経験からくみ取りたいという、極めて重要なメッセージを示唆しているのです。この点こそ、いま我が国とロシアとの関係強化が持つ世界史的意義があると言えます。

 

■アメリカ、中国、韓国だけが安倍総理を評価しない理由

 

プーチンが今一番必要としていることは、天然資源輸出型のロシア経済の体質転換です。既に述べたように、ウクライナ危機による経済制裁によって、ロシア経済の脆弱性が改めて浮き彫りになりました。このロシアの弱点は、G7による経済制裁発令後、プーチンが中国との間で長期に渡るロシア天然ガス輸出商談を国際価格より値引きしてでもまとめざるを得なかったことに、如実に表れています。この経済構造を転換しない限り、ロシアは天然資源の輸出価格に左右されなる経済から脱却することができないのです。

 

ここにプーチンが新しいロシアの理念を強調する意味が隠されています。プーチンは新しいロシアの理念に基づくロシア型近代工業国家の建設を至上命題としているのです。このような近代工業国家を建設して初めて、ロシアは安定した大国になることができるため、プーチンはロシアの伝統に合った近代工業国家建設への協力を日本に求めているのです。ロシアが安定した大国になることは、我が国のみならず世界にとってメリットがあるはずです。

 

世界の中で、安倍総理を評価していないのはアメリカ、中国、韓国のたった3ヵ国にすぎません。北朝鮮は安倍総理に期待しています。それが、拉致問題の進展に表れています。北朝鮮との関係についてもアメリカが牽制していることを私たちは忘れてはなりません。ありもしない従軍慰安婦の強制連行を「性奴隷」やおぞましい人権侵害と非難しながら、日本が拉致問題を解決しようとイニシアティブを取ると、それは北朝鮮の核やミサイル問題についての米韓日の結束に影響するので好ましくないと茶々を入れるアメリカの人権ダブルスタンダードに、私たちははっきりとノーを突き付けなければなりません。

 

かつて、拉致問題を抱える我が国の懇請にもかかわらず北朝鮮をテロ指定国家から外して国交正常化を計ろうとしたのは、ほかならぬアメリカではなかったでしょうか。安倍総理には、わが国の国益を踏まえて冷徹な外交を展開していただきたいと思います。イギリスの政治家パーマーストンの名言にあるように、永遠の友好国もなく、永遠の敵国もなく、永遠にあるのは国益のみだからです。

 

現在の国際環境のもとにおける我が国の国益とは、プーチン大統領とともに北方領土問題を解決することです。もしプーチンが後退してグローバリストのロシア大統領が生まれでもしたら、新大統領は日本にグローバル市場化の圧力を掛けることはあっても、北方領土問題を解決して日本との関係を改善しようとする意欲はないでしょうから、2014年中にロシアとの関係が強化されないと、戦後70周年は我が国にとって厳しいものとなる可能性があります。これまでのところ、ロシアは中国との間で戦勝70周年を祝う共同行事を行うとの約束をしていますが、日露関係が改善していればプーチンは共同行事を換骨堕胎することになるでしょう。しかし、日露関係が停滞したままでは、プーチンの好意的態度に期待することは不可能になります。

 

日ロ関係強化は、韓国の対日非難も困難にするでしょう。拉致問題が解決されれば、北朝鮮が韓国よりも親日的になっていくからです。韓国は、駐留アメリカ軍撤退が予定されている2015年には、北朝鮮の軍事的圧力を感じながら孤立している可能性があるのです。しかも、その背後に親日大国ロシアが控えているとなれば、韓国はいわば挟み撃ちにあったも同然です。これまでのように、対日非難を続けるなど不可能になるでしょう。

 

中国の反日も止まざるを得ないでしょう。数千キロも国境を接するロシアは、中国よりもはるかに強力な核兵器国です。1970年代末の日中平和友好条約締結交渉において、中国は当時世界の覇権を求めつつあったソ連に対する日中の共同対処を強く要求しました。これがいわゆる派遣条項で、日中間で最後までもつれた懸案でした。最終的には日中はアジアにおける覇権には反対するが、この条項は特定の国に向けられたものではないことをうたうことによって、我が国はソ連を刺激することを避けた経緯があります。皮肉なことに、現在の東アジアの国際環境は当時と激変し、日露にとって中国の膨張主義が共同対処の対象になっているわけです。

 

■北方領土交渉の切り札

 

プーチン大統領にとって喫緊の国家課題である、天然資源輸出型経済から近代工業型経済への転換に協力できる国は、日本しかありません。プーチンは欧米の外資を導入することによって近代工業化を図ることは考えていません。それは、エリツィン大統領の時代の欧米主導による民営化路線の失敗に凝りているからです。しかも、プーチン大統領の新しいロシアの理念に欧米は応えることはできません。自らの伝統的価値観を人類の普遍的価値として世界に普及してきた彼らには、普遍的価値と伝統的価値の両立という課題がそもそも存在しなかったからです。だから、プーチン大統領がロシアの国益とグローバル市場化の両立に苦労していることが理解できないのです。

 

このプーチンの悩みを理解できるのは、かつて同様の悩みを経験し、克服したわが国だけなのです。近代化と伝統文化との両立を可能にしたのは、外来の文物を日本の伝統に合うようにつくりかえて導入発展させた我が国が持つ土着力でした。ロシアも「母なる大地」に象徴される土着力を有しています。ロシアの土着力を開花させることができれば、わが国の協力がロシアに根付く可能性は十分にあると言えます。

 

そこで、安倍総理の北方領土交渉の切り札は、プーチン大統領に次のことを約束することになります。すなわち、「日本は朝野を挙げてロシア型の近代工業国家建設に協力する。具体的には、日本企業は合併や投資などによって日本的経営方式をロシアに合う形でロシア企業に移転する。また、日本政府は産業政策や各種行政指導のノウハウをロシア政府に提供する。以上の官民による経済技術協力を全面的に行う。」

 

これに対し、プーチン大統領は北方4島の返還を決断する可能性は十分にあると確信します。ロシアの指導者にとって最大の関心事は安全保障の確保であり、日本の官民の協力によってロシアが近代工業国家に発展できれば、何よりの安全保障になるからです。

 

この大筋を首脳同士で合意できれば、後は実際の返還に向けた技術論に過ぎません。例えば、歯舞、色丹の2島は素地く変換し、国後、択捉の2島については住民の移転などの事情もあるので20年後の経過期間を設けることなどが考えられるでしょう。

 

また、日露関係は日米関係でもあります。我が国にとって日露関係強化のカギは従来からアメリカにありましたが、今回のウクライナ危機後アメリカをどう説得するかが一層複雑になりました。プーチンへの圧力を強化しているアメリカにとって、わが国がいわば抜け駆けしてプーチンを支援することは認められないと強く反発してくることは必至でしょう。しかし、アメリカを説得する材料はあります。

 

反グローバリズムの潮流(ドイツのメルケル政権は、年内にも崩壊か)

img_0b168b4ee0f73fd2678f9cb171a5ffb397008ドイツのメルケル政権は、連立政権を組むSPD党首が辞任し、崩壊の危機がうわさされていましたが、まだ何とか持っているようです。どんな状況なのか調べてみました。 (さらに…)

  投稿者 dairinin | 2019-08-08 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

アメリカの世界支配システムが崩壊し始めている。

アメリカ軍はソ連からの軍事圧力に対応する為に,NATOを編成し、日米韓軍事同盟を組んで対応してきた。
しかしソ連が崩壊し、今やロシアは欧州の天然ガス供給国となり、実質に欧米の敵対国でなく成った。(=NATOの存在意義がなくなっている)

また、アメリカがNATOや日米間軍事同盟で、軍隊にお金をかけて置く資金力がなく成った。

つまり、軍事力に資金を投下することで、世界の警察だと云い中東の石油はじめ世界中の紛争に介入して、傀儡政権を作るなどして、今までは金儲け話に仕上げる事が出来た。

世界通貨である事を独占したドル通貨、石油利権を独占、軍事産業で兵器を売りつけるなど、世界支配で大儲けできていたのだ。

これらすべてが、成立しなくなる時代に変わり始めたのだ。

アメリカ軍が、もうけに繋がらなく成ってきたのだ。

NATO事務総長は、「アメリカさん、もうすこしNATOに留まっててね」と祈願しているよ!!(=すでに、NATOは崩壊している!!)
と、実質上、NATOを脱退してる「トルコ」のTRT放送局が発信している。

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ストルテンベルグNATO事務総長、「米はNATOに留まり続けると確信」
北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長が、アメリカがNATOに留まり続けることを確信していると述べた。TRTNETより
https://www.trt.net.tr/japanese/shi-jie/2019/08/06/sutorutenberugunatoshi-wu-zong-chang-mi-hanatoniliu-marisok-kerutoque-xin-1248963

ストルテンベルグ事務総長はニュージーランドで声明を発表し、アメリカがNATOに留まり続けることを確信しており、組織としてそのような可能性はないため、それに向けた準備はしていないと述べた。

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アメリカのNATOへの残留をアメリカもNATOも支持していると強調したストルテンベルグ事務総長は、アメリカはヨーロッパに駐留する軍を拡大してそれを実証したと話した。

ストルテンベルグ事務総長は、アメリカのドナルド・トランプ大統領がNATOの他の加盟国に対し、同盟にさらなる貢献をするよう呼びかけたことは、見返りを受けるだろうと語った。

ニューヨークタイムズ紙は、トランプ大統領は2018年に上級顧問とNATOからの脱退を何度も議論したと報じていた。

(2019年8月6日)

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by猪飼野

  投稿者 dairinin | 2019-08-07 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

国際情勢の大変動を見抜く!-24~日本を封じ込めてきた戦後東アジアレジーム~

韓国 中国

 

今回はロシアと日本が金貸しの策略により窮地に立たされているという2014年頃の話し。

ロシアはウクライナの親露派によるマレーシア機撃墜事件について。この事件の真相究明に向かおうとする動きを阻止するために、イスラエルのガザでの戦闘に世論の目を向けさせ、その間にまた別の事件でウクライナ問題を再燃させるというように、状況に応じてロシア=悪の世論形成を図ってきた動きを紹介している。

 

日本に関しては、韓国と中国の反日政策について。こちらは戦後から続くアメリカ傀儡の政策。面白いのが、元々韓国政府も中国政府も国民経済のことは頭にはなく、一部のエリートの私腹を肥やすことを第一とする言わば自我政権。彼らは政策の中身がないため、反日政策で生き延びるしかない。

これと戦後「日本を東アジアの中心にしてはならない」という金貸しによる戦後東アジアレジームとを融合させた政策。

 

現在、ますます韓国、中国との関係悪化につながっている。日本はどのようなスタンスをとればよいのか?次回その方向性について扱う。

 

『世界を操る支配者の正体』(馬渕睦夫 著)からの紹介です。

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■■歴史認識大戦争に備えよ

■ルーズベルトの参戦と同じ手法

 

本稿を執筆している2014年9月初旬の時点で、ウクライナ情勢は更に緊迫度を加えています。8月26日にベラルーシの首都ミンスクでポロシェンコ大統領とプーチン大統領の直接会談が実現し、東部ウクライナでのウクライナ政府と親露派との停戦実施に向けた協議を再開することなどが合意されました。しかし、最も重要な停戦実施に関しては、即時戦闘停止を主張するロシアと、親露派勢力の武装解除が前提になるとするウクライナの間の相違は大きく、停戦実現へ向けて工程表(ロードマップ)の策定にはまだまだ乗り越えるべき障害があります。(中略)

 

私はウクライナ情勢の将来に悲観的です。この首脳会談の直後からアメリカやNATOはさかんにロシア軍が国境を超えてウクライナ東部に侵攻していると発表し、またもプーチン大統領を非難し始めました。そこにロシアとウクライナ両国が紛争解決に至るのを妨害しようとする底意が感じられるからです。(同じ9月5日に、NATO首脳階段はロシアの動きを睨んで緊急展開部隊創設を決定しました。また、アメリカとEUは停戦合意成立にもかかわらず、対露追加経済制裁を実施しました。これらの措置は、明らかにロシアに対する挑発です。)

 

すでに指摘しましたように、アメリカの狙いはプーチンを挑発して東部ウクライナに軍事侵攻させることにあります。オバマ大統領は、アメリカは経済制裁を強化するが軍事干渉はしないと明言していますが、言葉通りに受け取ることはできません。

 

大東亜戦争直前のルーズベルト大統領の手法を、ここに思い浮かべることができます。ルーズベルトは欧州大戦にアメリカは決して参戦しないことを公約して大統領に三選されました。しかし、ルーズベルトはいかにしてアメリカが参戦できるようにするか、そのための秘策を日本に向けていたのです。日本を挑発して、先にアメリカに対して一撃を打たせるという工作です。

 

まず日米通商条約を破棄し、石油の対日輸出を禁止するなどの経済制裁を強化し、その結果として日本の真珠湾奇襲となりました。アメリカ議会は報復として対日宣戦布告を行い、日米戦争開始に伴うドイツの対米戦争突入のおかげでアメリカは欧州大戦に参入することができたわけです。今こそ、私たちはこの歴史の教訓に学ばなければなりません。アメリカがロシアを追い詰めて東部ウクライナに軍事侵攻せざるを得ないように仕向け、それを機にアメリカ(NATO)が軍事行動を起こす可能性はやはり否定できません。

 

■ウクライナ危機と中東情勢は繋がっている

 

この点に関連して注目しなければならないのは、ロシアとウクライナの首脳会談と同じ8月26日に、ガザでの戦闘を巡りイスラエルとパレスチナのハマスとの間で長期的な停戦合意が発効したことです。これによって、世界の世論の関心はひとまずガザから離れました。そして再び、ウクライナが焦点に浮上してきたのです。

 

これは、はたして単なる偶然でしょうか。とても偶然だとは思えません。なぜなら、世界の世論の関心がウクライナからガザに移ったのは、7月17日のマレーシア機撃墜事件の後しばらくしてからだからです。7月21日にロシア国防相は、衛星写真を公開してマレーシア機の近辺にウクライナ空軍機SU-25が2機認められたとブリーフィングを行いました。その後、アメリカの知識人の中にも親露派による撃墜説に疑問を呈する見方が現れるようになりました。

(さらに…)

トランプ大統領のロシア疑惑(モラー元特別検察官の議会証言で、マスコミはまた偏向報道)

 

1200x-17月25日にモラー元特別検察官の議会証言が行われ、マスコミはこぞって次のように報道しました。

モラー元特別検察官の証言「トランプ大統領の潔白は証明されていない、提訴しなかったのは司法省が現役大統領を起訴しない方針だからだ、大統領退任後に訴追される可能性がある」

これだけを聞くと、モラー氏は暗にトランプ大統領の有罪を示唆したように聞こえます。実態はどうだったのでしょうか。

(さらに…)

  投稿者 dairinin | 2019-08-01 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

国際情勢の大変動を見抜く!-23~グローバリズムとナショナリズムの最終戦争~

ユダヤ人の歴史

前回、ユダヤ思想の中心をなす二つの思想:民族主義と普遍主義は一体不可分ということを扱った。民族主義は自民族のための思想で、普遍主義はグローバル化によってバラバラに解体されたその他の民衆を統合するための思想。

 

言ってみれば、ユダヤ民族が神から選ばれた民族で、その他大勢は羊の群れ。群れを従わせるために、ディアスポラ・ユダヤ人が牧師としてボスを去勢し従わせる。そのための思想が普遍主義。その他大勢の羊たちは去勢された傀儡ボスに従うだけ。これらの羊の群れは、餌を求めて世界を遊牧する。つまり地球規模の遊牧がグローバリズム。これらの群れから利益を収奪するのが世界統一政府:イスラエル王国。これがユダヤ民族の目指すべき姿。

 

そうみると、5000年前の遊牧部族とまったく変わらぬ方法。2000年前と変わらぬ思想。

こんなことに騙されてはいけない!こんな古い方法論や思想が今後も続いていくわけはない。もうみんなうすうす気づいている。

 

その表れが民族派の台頭と広がり。その中心がロシアのプーチン大統領。まさに現在グローバリズムとナショナリズムのハルマゲドン。

そして、民族主義の一つの実現態が我が国日本、日本は2600年以上にわたって存続している世界で唯一の国であり、ディアスポラ・ユダヤの進出は明治期から。まだ150年余りしかたっていない。しかも間接的な傀儡政治。普遍思想も1970年代には力を失い、現在は見捨てられ新たな思想への欠乏が高まっている。

その意味で今後の日本の精神性とロシアの科学技術がタッグを組めば、グローバリズム派の息の根を止めることができるはず。

 

『世界を操る支配者の正体』(馬渕睦夫 著)からの紹介です。

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■普遍主義と民族主義の一体化

 

以上でおわかりのように、ユダヤ思想にとって普遍主義と民族主義は一体不可分です。ユダヤ民族の生存を確保するためには、この二つの思想がともに必要なのです。ユダヤ民族主義だけではユダヤ国家は興亡を繰り返し、やがてユダヤ民族自身が滅亡する危険があるのです。他方、ユダヤ国家がなく普遍主義だけでは、ユダヤ人は多民族と同化してしまう危険性があります。したがって、ユダヤ民族が自らのアイデンティティを守って生き残るためには、民族主義思想の象徴であるイスラエル国家が必要であり、イスラエル国家が滅亡しないためには、世界にユダヤ普遍主義思想を広めることが不可欠になるのです。

 

このような文脈から改めて考えますと、現在世界を席巻しつつあるグローバリズムはユダヤ普遍思想であって、その担い手であるディアスポラ・ユダヤ人はグローバリズムを世界に拡大させることによって、ユダヤ民族とイスラエル国家の安泰を計っているのだと言えます。(中略)

(さらに…)

トランプ劇場、そろそろ手法がばれてきた。

トランプが出てきて、
「この男は何をしでかすか分からない」
「何にでも、喧嘩を仕掛けていく?」

価値観不在で、少しおかしいのではとビックリした。
しかし、最近になって手の内が見えてきた。

相手の弱点を、素早く発見して、手加減なしに叩く。
周りにもびっくりさせておきながら、直接交渉で妥協して、落としどころをつくる。

「俺だから、直接交渉で出来たのだ。」と云うのだ。

志は無い。今は選挙の為に人気取りだ。

■大前研一が上手くまとめてくれている。

>自分から相手を挑発してサスペンスを演出、「この先、どうなってしまうのか」と国民をハラハラさせておきながら、チープなエンディングで「オレがこの問題を解決した。オレだから解決できたのだ」とアピールする。まさにトランプ劇場である。

■以下引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

トランプの本音”イラン戦争は回避したい” 自分が主役の物語で選挙に挑みたい
PRESIDENT 2019年8月2日号 (大前研一)より
https://president.jp/articles/-/29275

イラン攻撃をなぜ10分前に中止したか
アメリカとイランの関係が緊迫の度を高めている。

対イラン追加制裁の大統領令署名をするトランプ大統領(2019年6月24日)。(AFP/時事=写真)

仲介役を買って出た安倍晋三首相がイランを訪問したタイミングで、イラン沖のホルムズ海峡を航行中だった日本のタンカーなどが攻撃を受けた。トランプ大統領は証拠映像を示してイランの関与を断定したが、イラン側は断固否定している。

そうして両国の軍事的緊張が高まる中、今度はイランが領空を侵犯した米軍の無人偵察機を撃墜したと発表した。アメリカは「飛行していたのは国際空域」と主張、トランプ大統領は「イランは大きな過ちを犯した」とツイートした。偵察機撃墜の対抗措置としてトランプ大統領は限定的なイラン攻撃を一時承認したものの、イラン側に150人の犠牲者が出るとの報告を受けて、作戦実施の10分前に中止を命じたとも明かしている。

ここまでくると、米軍のイラン攻撃は時間の問題のようにも思えるが、トランプ大統領はそこまで踏み込まないと私は見ている。なぜならトランプ大統領の頭の中は、2020年2月から始まる大統領選挙一色だからである。このままイランとの戦いに突入したら、選挙戦が不利になるのは目に見えている。開戦1週間程度で決着をつけられるならいいが、イランはそれほど簡単な相手ではない。

イランは大産油国であり、人口約8000万人、国土の広さは世界17位の大国だ。ペルシャ帝国の伝統を受け継ぐ中東の先進国で、国民の教育レベルは高い。イラクを支配していたフセイン政権はイスラム教スンニ派の少数派だったが、イランは最高指導者や国家元首以下、国民の9割以上がシーア派というシーア派大国で、宗教的な団結力や忠誠心は強い。経済制裁に慣れている国民は戦時下の窮乏にもそうそうくじけない。

しかも、アメリカがイランと戦端を開いた場合、「反米」で同調しやすいロシアやシリア、イエメン、さらにはトランプ政権との関係が悪化しているトルコや中国などもイラン側に回る可能性がある。直接イランに与しなくても、この機に乗じてフーシー派やイスラム過激派がテロ活動を活発化させることも十二分に予想できる。
一方で湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン派兵のときのようにアメリカに協力して出兵する国があるだろうか。まずヨーロッパ勢は協力しそうにない。トランプ政権がイラン核合意(米英仏独ロ中とイランによる2015年の合意)を勝手に離脱したことが1つの発端だからだ。少なくともイランとの経済的な結びつきが強いフランス、ドイツなどは動かないだろう。

イランを敵視しているイスラエルは間違いなくアメリカに同調する。しかし、やっとのことで総選挙に勝利した右派ネタニヤフ政権は盤石ではなく、汚職スキャンダルに揺れている。イスラエルはハマスなどのパレスチナ武装組織との戦いは得意だが、越境して空爆したなどの例外はあってもイランと直接戦争したことはない。対イランとなるといくつかの国が中間にあるので構えるところがあるのだ。従って、イスラエルがアメリカと組んでイラン相手にドンパチやるシーンは考えにくい。

周辺国でいえば、アメリカから武器を大量に買っているサウジアラビアは一貫して「金持ち喧嘩せず」を貫いてきた。従って、後方支援に回ることはあるだろうが、直接前面に出るとは考えにくい。米軍が駐留するイラクもイランとの開戦を望んでいない。イラク領内にはイランが支援するシーア派民兵が多数入り込んでいて、アメリカとイランが激突すれば、再びイラクが戦火にさらされる危険性が高い。せっかく安定してきたイラクがまた不安定化しかねないということで、米国内ではイラン攻撃を回避させるためのロビー活動も盛んに行われている。

1979年に起きたイラン革命はシーア派の宗教指導者ホメイニ氏による宗教革命だったが、これを嫌って国外脱出した人々が大勢いた。アメリカに逃げてきた人もいる。彼らは比較的インテリが多く、米国内で一定の影響力を持っている。アメリカにもイランにシンパシーを持っている人がそれなりにいるのだ。

再選が最大関心事のトランプ大統領はそうした国内情勢に目を配っているし、自らの大統領選にとって対イラン戦争が長引くのは得策でないこともわかっている。トランプ大統領の腹の内は「戦争回避」なのだ。実際、「イランと戦争しようとは思わない」「前提条件なしで協議する用意がある」と公言している。

■北朝鮮も米中対立もチープなドラマ
トランプ大統領は戦争になった場合、「かつて見たこともないような完全破壊が起きる」「ANNIHILATION(国家の消滅)」という、あまり外交では使わない過激な言葉を用いてイランを牽制する。こうした相反する言動も、トランプ流の劇場(激情)型政治ととらえると理解しやすい。
トランプ大統領といえば実業家時代にテレビのリアリティ番組のホストMC兼プロデューサーをしていたことで知られる。複数の番組参加者が課題に挑戦して、最後の5分で番組ホストのトランプ氏が1人の脱落者を指名する。そのときの決め台詞が「You’re fired(お前はクビだ!)」だ。

サスペンスな展開で視聴者をハラハラさせて、「You’re fired」で落とす――。トランプ大統領の政治ショーもこれに通じている。自分から相手を挑発してサスペンスを演出、「この先、どうなってしまうのか」と国民をハラハラさせておきながら、チープなエンディングで「オレがこの問題を解決した。オレだから解決できたのだ」とアピールする。まさにトランプ劇場である。

北朝鮮の核開発問題でも、当初は金正恩朝鮮労働党委員長を「ちびのロケットマン」と呼び、軍事攻撃を示唆して対立を煽った。初回の米朝首脳会談が決まってからも注文をつけたり、中止をちらつかせて世界をハラハラさせたうえで、歴史的なコンタクトを演出した。手のひらを返して「優秀」「優れた交渉者」と金委員長を褒め称えるチープ・エンディングに世界が呆気にとられた。

■国連安保理決議に違反する
2度目の米朝首脳会談が決裂して北朝鮮がミサイル実験を再開すると、安倍首相やボルトン米大統領補佐官は「国連安保理決議に違反する」と非難した。しかしトランプ大統領は「オレは気にならない。金正恩は信頼できる男だ」と言ってはばからない。「オレと交渉してから、北朝鮮はアメリカに届くミサイルは撃ってない。核実験もやっていない。オレだから北朝鮮を抑えられるのだ」という自分の物語にできれば問題なし。選挙戦の最後まで自分が決着できる形で北朝鮮カードを取っておきたいのだ。
中国との貿易問題でも中国と関税合戦を繰り広げ、ファーウェイをスケープゴート(標的)にしてサスペンスを演出してきた。制裁関税第4弾は過去最大規模で、スマートフォンやおもちゃ、衣料品など約3000億ドル(約33兆円)相当の中国製品に最大25%の関税を上乗せする方針を示している。もはや値上げは避けられないとして、米企業や業界団体は大反対しているし、一般消費者もキーキー騒いでいる。そうやって緊張感を高めておいて、「習近平と直接会って決着をつける」とトランプ大統領は息巻いていた。

トラブルの種を自分で蒔き、相手を罵って緊張感を高め、緊張の極みというときに直接会ってディール(取引)に持ち込む。「出るか、You’re fired」と周囲が固唾を吞んで見守る中、何だかよくわからない合意をしてシェイクハンド(握手)、「素晴らしい会談だった」と矛を収める。G20の米中首脳会談もそんなチープ・ドラマとなった。

イラン問題でもプロデューサーであるトランプ大統領の演出が随所に垣間見える。イラン合意を離脱して、対イラン経済制裁を再開した第1幕は、トランプファミリーと縁の深いユダヤ人国家イスラエルと、武器を大量に買ってくれるお客さん=サウジアラビアへのサービス。もちろん大統領選に向けた国内のトランプ支持派に対する露骨なアピールでもある。

■イランと本格的な戦争に突入する意思はない
しかし屈強なイランと本格的な戦争に突入する意思はないし、大統領選挙も不利に働く。従ってイランに対しては寸止め。それでも「オレは言うことは言った。国連やイラン合意では核開発は止められない。だからオレがイランにタガをはめてやった」と自分が主役の物語にできれば選挙を戦えるのだ。

前回の選挙戦を含めて3年近く見てきたトランプ劇場はあまりにチープだ。アメリカは世界の指導者ではなく単なる脅し屋。しかも、世界の合意した枠組みをいとも簡単に破棄、離脱。損得だけで判断すると「日本は貿易で儲けていて防衛費の負担が少ない。ホルムズ海峡などをアメリカが守ってやる必要はない」と言うに及んで、いよいよ幕引きの引導を渡すときがきたと世界は感じている。アメリカの選挙民もそろそろトランプ劇場を見飽きたと感じているだろう。これがあと1年半後の大統領選挙で形となって現れてくることを祈りたい。

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by 猪飼野

  投稿者 dairinin | 2019-07-30 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

反グローバリズムの潮流(イギリス首相選挙ボリス氏が勝利、安定よりわくわくする未来を選択?)

6bc18210イギリスのメイ首相の後任に、前の外相のボリス・ジョンソン氏が選ばれました。ジェレミー・ハント氏が4万6656票、ボリス・ジョンソン氏が9万2153票で大差の勝利です。離脱の進め方をめぐってはEUとの合意がまとまらなくても10月末の期限には離脱することも辞さない強硬な姿勢を打ち出しています。メイ首相が出来なかった離脱合意をボリス氏はどのように実現しようとしているのでしょうか。 (さらに…)

  投稿者 dairinin | 2019-07-26 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments »