反グローバリズムの潮流(フランスのマクロン政権は今…)
年の初めに、反グローバリズムの潮流(フランス暴動を巡り、反EU勢力が国を超えて共闘を開始)では、マクロン政権が国内からの反発だけではなく、EUでも反グローバリズム勢力が共闘しマクロン包囲網が出来ていることをお伝えしましたが、その後、マクロン政権はどうなっているか調べてみました。
まず、フランス国内の状況ですが、「黄色いベスト」運動は勢力が衰えたと言いながらもデモは続いているようです。また、マクロン大統領の支持率も32%と低迷したままです。
5月に行われたEU議会選挙では、ルペン氏率いる極右の国民連合(RN)が第1党となり、敗北を喫しました。国内での評価がガタ落ちであることは間違いないようです。
その分、人気取りのためかと思われますが、EUや外交ではその存在感をアピールしようと必死になっています。
EUの首脳人事では、ドイツのメルケル首相が提案した委員長候補を排除し、マクロン氏が推薦した別のドイツ人が委員長に選ばれます。ドイツ人を推薦した事でドイツに恩を売り、欧州中央銀行総裁にはフランス人が就任する等、EUではマクロン大統領が中心人物になって来ています。
さらに、デジタル・サービス税の導入で、アメリカにも喧嘩を売るなど、対外的には強硬な姿勢を示しています。
今後の予想ですが、EUでマクロン大統領の影響力が高まれば高まるほど、イタリアをはじめとする反EU勢力が黙っていないと思われます。マクロンが強硬になればなるほど、EU内の分裂は強まると思われます。これに、アメリカとの貿易戦争が開始されれば、EUの崩壊は加速される。
結果として、EU政策、外交も上手く行かず、フランス国内の批判もさらに高まると言う悪循環に陥っていく可能性が高そうです。
■フランス「黄色いベスト」運動が総会 「資本主義からの脱却が必要」2019年5月2日
新自由主義のマクロン改革と対決するフランス人民の「黄色いベスト」運動は昨年11月以来、5カ月にわたってたたかわれている。このなかで各地での「黄色いべスト」の運動の代表が一堂に会する第2回総会が開かれた。
この論議のなかで「黄色いベスト」が「人民による、人民のための力」であり、「自由、平等、友愛」(フランス革命のスローガン)を実現するためには、「資本主義からの脱却」が必要であり、資本主義にかわる新しい時代の入口に立っているとの意見がかわされた。
■仏「黄色いベスト」運動が26週目に、参加者減少の一方で衝突も2019年5月13日
フランスで11日、マクロン政権に抗議する「黄色いベスト運動」のデモが行われ、リオンとナントで警官がデモ参加者に催涙ガスを発射するなどの衝突が発生した。デモは26週間連続。運動は勢いが弱まりつつあり、政府の統計ではピーク時の昨年11月に30万人を超えていた参加者は、ここ数週間には3万人を下回っている。
■期待は失望に マクロン氏試練 大統領就任2年 支持率32%2019年5月15日
フランスのマクロン大統領は十四日、就任二年を迎えた。当選直後の期待はしぼみ、全国で毎週末に反政権デモ「黄色いベスト運動」が続く。一年目に断行した労働法改正などの改革で海外の対仏投資が伸びるなど一定の成果は出つつあるが、国民の実感は乏しい。
調査会社BVAが九日に公表した世論調査によると、支持率は32%で当選直後の62%から半減、一年前から13ポイント下げた。デモ参加者は発表された支援策が「生活レベル向上にはつながらない」と批判。仏メディアも「国民に失望感」と手厳しい。
■欧州議会選、仏は極右が第1党へ マクロン氏は僅差で第2党2019年5月27日
フランスでの欧州議会選が26日に実施され、ルペン党首率いる極右の国民連合(RN)が第1党となる見通しだ。ただ、マクロン大統領率いる共和国前進(REM)との差は僅差にとどまるもようだ。
エラブの世論調査によると、国民連合は23.6%の票を獲得し、共和国前進の22.4%を1%強上回る見通し。国民連合のルペン氏やジョルダン・バルデラ候補は今回の選挙を過去2年のマクロン政権への信任投票と位置付け、選挙戦では有権者に大統領の経済改革や親欧州連合(EU)政策への反発を示すよう呼びかけた。
■マクロン仏大統領:10月末が英EU離脱の最終期限-欧州委新体制前に2019年6月4日
マクロン大統領は「ぐずぐずと先延ばしすることは大きな誤りであり、今度こそ本当の最終期限だと私は思う」とパリで発言。EUの行政執行機関である欧州委員会の新体制が、英EU離脱に対応せざるを得なくなることは望まないと述べた。
■「3つの危機、G7で協議」マクロン仏大統領講演2019年6月27日
来日中のフランスのマクロン大統領は27日の講演で「世界はグローバル化、デジタル化、気候変動という3つの危機に直面している」と警鐘を鳴らした。「社会の不均衡、国ごとの不均衡、大陸間の不均衡が耐えがたくなっている」。マクロン氏はまず、グローバル化による人々の格差を問題視した。
第二に、あらゆるモノがネットにつながるIoTや人工知能(AI)など、デジタル技術の発展が「社会を不安定にする」と強調した。
第三の危機として気候変動を挙げた。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの米国の離脱表明など、足並みはそろわない。「多国間主義は危機にある。反対する一部の人を長々と待たず、参加したい人を募るべきだ」と強調した。
■ラガルドECB総裁、これまでの実績とこれからの限界2019年8月2日
注目を集めたEU首脳人事ではドラギ総裁の後任の欧州中央銀行(ECB)総裁としてフランス出身のクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事(63歳)がEU臨時首脳会議で選出された。
次期欧州委員長としては、ユンケル委員長が欧州議会の最大会派である欧州人民党(EPP)出身であり、今回もそれにならってEPPに属するドイツ出身のウェーバー氏が最有力候補とされた。しかし、フランスのマクロン大統領がウェーバー氏の経験不足を理由に頑として受け入れなかった。紆余曲折を経て欧州委員長には、メルケル首相の盟友であり、かつラガルド氏と同様に女性初となるウルズラ・フォンデアライエン国防相(60才)が指名された。
それとのバランスでフランス人のラガルド氏をECB総裁に、EU大統領にマクロン大統領と肝胆相照らす仲であるベルギー首相のシャルル・ミッシェル氏(43才)が指名された。いずれもマクロン氏が妥協案として考え出した人事構想であった。マクロン大統領の全面勝利、政治力の衰えが隠せないメルケル首相の完敗ではあった。
■仏のデジタル課税から米EU貿易戦争への可能性も2019年8月7日
フランスでは、議会で、デジタル・サービス課税法が成立した。デジタルサービス課税法は、フランスにおけるグローバル・ハイテク企業の売り上げに3%の課税を行うというものである。これに対して、米国のトランプ大統領は、7月26日、「マクロン(仏大統領)の愚行に対する甚大な報復措置を速やかに発表する」と、フランスのデジタル・サービス税の導入を非難した。トランプ大統領の発言は、米国の超党派の議員たちからも支持され、通商法301条の発動も言われている。
マクロン大統領は、2018年、燃料税の値上げを計画したところ、「黄色いベスト運動」の激しい抗議デモに合い、結局、譲歩した際に大判振る舞いを したために、他の改革に取り組むことができず、埋め合わせの財源を必要としているのであろう。
今後、フランスのデジタル課税をきっかけに、自動車への25%の関税やワイン等への報復関税が課されるようになれば、米中貿易戦争のみならず、米EU貿易戦争にもなりかねず、世界貿易の行方が懸念される。
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