2010-06-13

ギリシャ危機4 金貸し達の狙いは何か?

前回の「ギリシャ危機3 ギリシャとヨーロッパの関係」に続きます。
ギリシャ問題が社会的にクローズアップされてから、本シリーズでもギリシャの歴史構造や財政・EUが抱える構造的欠陥等について迫ってきました。
追跡しながら、改めて「何が問題なのか?」捉え直すと、どうも、今騒がれているような欧州統一通貨「ユーロ」の信用不安という問題(ユーロ危機)と捉えると、どうも一面的な感があります。
実は、金貸し勢力による「周到に仕組まれた問題」ではないのか?
その上で、彼らの最終な目的は「欧州中央政府の実現」ではないか?という仮説に至りました。
では、なぜ金貸し支配の仮説に行き着いたのか?
きっかけは、ギリシャは欧州全体のGDPの内、ほんの2%を占めるに過ぎない小国である、という事実からです。
元々、観光産業中心の国で、目立った技術や輸出品も見当たらない。
EU全体から見て明らかに、経済的な影響力が小さいと思われます。
そこで、前半部分では、まず、EUとギリシャの立ち位置について具体的に調べた結果をレポートします。
後半では、金貸し達の「狙い」は何か?について迫るとともに、次なる展開を予測します。
ポチっとご協力お願いします

にほんブログ村 経済ブログへ


◇ユーロ危機は本当か?
まず、過去10年間のユーロ「対:円チャート」「対:米ドルチャート」のデータをご覧下さい。※ポップアップです。
<対:円>
 
<対:米ドル>

2007〜2008年末のサブプライム問題に始まった経済混乱(リーマンショック)、今回のギリシャを発端としたユーロ危機により2つの大幅下落を経験していますが、大きく見ればユーロ導入以降「上昇基調」であることが読み取れます。
では、ユーロが上昇基調を維持できた背景には何があるのでしょうか?
ユーロの歴史を遡ると、1999年のユーロ導入開始以降、2001年ギリシャが加盟・2004年に東欧10ヶ国が加盟と、順調に導入国を増やしています。導入国が増加するに比例して、当然のことながら、通貨取引量も増加します。実際に紙幣の発行量だけを見れば、2006年末に基軸通貨の米ドルを抜いた!というニュースも飛び出しています。
つまり、ユーロ高持続の背景には、通貨取引額の増加=需要の増加傾向が挙げられます。
需要が多ければ多いほど、価値が高くなるという構造です。
※基軸通貨の米ドルと同じ構造
通貨高が持続すれば、その国の経済はどうなるのでしょうか?
例えば、日本を例に出すと、円高基調には敏感です。 :blush:
1円円高に振れると、トヨタの400億の営業利益が飛ぶ とも言われますが、円高が輸出企業に与える影響は甚大なものがあります。
具体的には、輸出企業は、仮に同じ商品・同じ性能の商品を他国の通貨安の企業と争った場合、価格差が生じて敗北します。その結果、国内の生産能力の弱体化を招きます。
欧州で見るとどうでしょうか?
経済規模の大きい代表例な国として「ドイツ」が挙げられます。
ドイツも日本と同じ輸出立国です。
ドイツにとっては、高い技術力と生産力を保持しながら、EU内で一定数の国の政情不安を煽って、ユーロ高から「ユーロ安」へ誘導できれば、長期的に有利になる点は見逃せません。
今起こっているユーロ安の基調は、EU内の輸出立国には歓迎すべきこととして捉える必要があります。
◇EU内の各国のポジション
次にEUにおける、特にギリシャ・ドイツの経済的ポジションを押さえてみます。
EU各国のGDP総計の内、各国が占める割合を示したグラフをご覧下さい。
以下、データは全て2008年時点のものです。

上記はEuropean newsより引用ポップアップです。
1位はドイツ。EU内で約2割を占めるに至ります。
2位にイギリス(16.8%)、3位にフランス(14.2%)、4位にイタリア(12.6%)が続きます。
そして、問題になっているギリシャは11位で2.2%、財政危機が報じられるハンガリーでも18位で1.0%に過ぎません。
ちなみに、GDP世界ランキングではドイツは4位に付けています。
また、2008年のドイツの輸出額を見ると、アメリカを抜き、さらには成長著しい中国をも上回っており、その実力が突出していることが伺えます。リンク
ここまでで一旦、論点を纏めます。
・ユーロが登場して以来、需要の拡大は順調で、「安定的」「ユーロ高基調」で推移している
・長期的なユーロ高は経済圏の大きいドイツ等の輸出国には圧倒的に不利。
むしろユーロ安は好まれる条件である。
・ギリシャ、ハンガリーはEUの中でもGDP構成比が圧倒的に小さく、経済的影響力も小さい。

◇演出された危機!?
さて、上記のような事実をマスコミは報道しているのでしょうか?
ギリシャ危機は6月11日記事にあるように、マネーゲームによって拡大した市場(=虚像)を大きく崩し、EU危機をもたらす可能性は確かにあります。
しかし、リーマンショックで露呈したアメリカが抱える危険性や影響力よりも大きいとは思えません。とすると、今の報道は必要以上に危機感を煽っているのではないか?と考えたくなります。
そして、当然のことながら、マスコミの背後には金貸しの意向が働きます。
そこには金貸し側の意図、つまりは危機感を煽ることで得られるメリットなり、次への構想のヒントが隠されているのではないかと思います。
◇ギリシャ危機、ハンガリー危機演出の狙い。そして、次なる展開は?
前回記事「ギリシャ危機3 ギリシャとヨーロッパの関係」において、投資家達(金貸し達)が、現在のEU体制について、2つの構造的問題指摘を行っていることを取り上げました。

1.財政赤字に対する危機感が強まらない
2.一部の国が貿易赤字を増やしても外貨不足は生じない

彼らは上記の状況が生まれる原因として、現在のEUの金融政策は「欧州中央銀行」に統一されているものの、政治や財政については各国の判断に委ねられていることだと指摘しています。
では、彼らの問題指摘から想定される次なる展開は何か?
GDP・輸出規模で突出した実力を持つドイツが、EU内で財政問題を抱える国々に救済の手を差し伸べつつ、彼らの財政状況に問題指摘(歳出削減が中心)を行ってイニシアチブを取る戦略に出ることは十分予想されます。
そして、EU内で一定の政情不安が燻り続けることでユーロ安が誘導され続け、ドイツは外貨をより稼ぐことが可能になり、税収が増え、力を付けていくことになります。
ドイツの目立たない、しかし着々と有利な状況へと駒を進める辺りに本質を求められるように思います。
そもそも、ギリシャ問題はゴールドマンサックスの財務操作によって火が付けられました。
ゴールドマンの元締めはロスチャイルド一族に代表される金貸しで、今回火消し役としてクローズアップされる欧州中央銀行は、その本部をロスチャイルド発祥の地(ドイツのフランクフルト)に置いています。
ここで改めて、金融だけの中央管理では不十分である、という問題指摘とドイツの動きを合わせて考えると、今回の問題の本質は、ドイツが中心となって、今のように金融だけでなく、政治・財政をも統合する欧州中央政府の実現にあるのではないでしょうか?
なぜなら、金貸し達は金融課題より上位に位置する、政策にまで踏み込んで支配する体制構築が可能になるからです。

無論、金貸し達にとっては、欧州中央政府の実現は波風立てずにスムーズに運びたいところ。
そこで、世界的に世論を形成する必要が出てきます。
そのために、マスコミを中心にして財政危機を煽りながら、政治・財政統合の必要性へと世論誘導が行われているではないか?と思います。
最近は、ハンガリー危機がクローズアップされていますが、ドイツの動きを含めて継続的に動向をウォッチしていきたいと思います。

List    投稿者 wabisawa | 2010-06-13 | Posted in 未分類 | 3 Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2010/06/1293.html/trackback


コメント3件

 ミュウミュウ バッグ | 2013.07.06 22:26

はじめまして。突然のコメント。失礼しました。

 hermes handbags portugal | 2014.02.02 1:51

hermes schleifmittel usa 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 止まらない円高=世界通貨戦争どうなる?10〜固定相場制と通貨危機〜

 hermes handbag outlet | 2014.02.16 5:16

hermes scarf replica-online 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 止まらない円高=世界通貨戦争どうなる?10〜固定相場制と通貨危機〜

Comment



Comment