2010-06-18

『ユーロ発国家財政危機の行方』3.地域共通通貨「ユーロ」の弱点構造

前回6/11「小国ギリシャの危機がなぜユーロ危機につながったか?」に引き続き、「地域共通通貨「ユーロ」の弱点構造」について追求していきたいと思います。
今まで追及してきたテーマです。
『ユーロ発国家財政危機の行方』  プロローグ
『ユーロ発国家財政危機の行方』1.ギリシャ問題・PIIGS問題とは?
『ユーロ発国家財政危機の行方』2.小国ギリシャの危機がなぜユーロ危機につながったか?
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ウィキペディア・欧州中央銀行から借りしました
●ユーロ危機のおさらい。
小国ギリシャの危機が、ユーロ危機に繋がったのは、ギリシャを初めとするPIIGS諸国の国債をドイツ、フランスの金融機関が多額に持っているからである。もしPIIGS諸国がデフォルトをしてしまった場合、ユーロ中枢のドイツ・フランスの金融機関は忽ち苦しくなり、ドイツ・フランスも危機に陥り、最終的にはユーロ危機に繋がる。
今回は地域共通通貨「ユーロ」について、弱点はないのか?を追求してみます。
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■ユーロのメリット・デメリット
EUは1992年末に域内での、人・物・金・サービスの移動を自由化する単一市場を達成した。そして単一市場にふさわしい地域共通通貨「ユーロ」を作り上げた。
地域共通通貨「ユーロ」を作り上げた事で生じるメリット・デメリットは、
●メリット
・両替の手間とコスト、さらに為替リスクから免れる。
・分断されていた金融・資本市場が統合される。
・域内の商品価格が同一基準で表示される事で消費が拡大する。
●デメリット
・各国の政府が、景気調整の経済的手段の一つとしてきた為替政策の権限を失った。
・ユーロ各諸国の金融政策の独立性喪失
これらユーロ特有のメリット・デメリットが今回のギリシャ危機→ユーロ危機とどのように繋がるのか?
■地域共通通貨「ユーロ」に統合して生じた弱点
今回のギリシャ危機とPIIGS問題について構造化してみる。
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今回のギリシャ危機の構造は「基軸通貨の弱点」に非常によく似ている。(参照:るいネットより「【図解】基軸通貨の弱点構造」
ドルは基軸通貨になることにより実力以上の価値を得た。同じ様に、PIIGSにとって地域共通通貨「ユーロ」になることにより、実力以上の価値が創出された。
PIIGSは、地域共通通貨「ユーロ」にすることによって、メリット・デメリットがある。メリットはユーロの通貨価値は高いため、外国から物を安く輸入することができる。一方、自国で生産した物を外国に輸出すると、物価価値が高いため売れない→産業の空洞化。もともとPIIGSは産業に弱い国々の為、産業はさらに低下していってしまう。
生産力の低下に伴い、国力も低下し資金不足になり、国内の運営も厳しくなっていく。
⇒資金を調達する為に国債を発行する。この国債はユーロ建ての為、外資にとってはおいしい話なので食いついてくる。
(利率が高く、ユーロ建てなので安定している)
国債を発行すれば、外資がたくさん買ってくれる為、PIIGSは生産力を高めるより国債を発行し続けてしまう。→その国債を金儲けに利用され、ギリシャ危機に繋がっていく。
(上記の図解参照)
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上記のグラフを見てみると一目瞭然である。
産業に強いドイツは対外債務が50%に対して、産業に弱いギリシャ、ポルトガルでは対外債務が80%以上になってしまっている。
これはユーロという共通通貨化によって高まった価値とユーロ諸国、特に生産力の低い国々とのアンバランスによって生じた現象である。
■金融政策の独立性の喪失
ギリシャ国債が外資によって空売りされ、価値が下がっているのに対して、早急に対応する事ができなかったのは、ユーロ諸国の金融政策が独立性を喪失していたからである。
ユーロ諸国とアメリカ、日本の中央銀行制度について、比較してみる。
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日本とアメリカの中央銀行制度は、国家が国債を発行し、金融機関とのやり取りを行い、紙幣が足りなければ中央銀行が紙幣を発行することができる。
つまり、国家が必要とする紙幣を中央銀行によって無限に発行することができる。(上記の図解参照)
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しかしユーロ諸国では、上記の図解のように違う構造になっている。唯一ユーロ紙幣を発行できるのは欧州中央銀行ECBである。各国に中央銀行が存在するが、ECBの執行機関であり、紙幣発行権は持っていない。
今回のように国家が攻め込まれた時に、それを跳ね返す為の資金調達が迅速に行えずに、対応が後手にまわり取り返しのつかない事になることもある。
これは国家(政府)と金融政策が別々で動いているからこそ生じている。
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ウィキペディア・欧州中央銀行から借りしました
■地域共通通貨「ユーロ」の弱点構造(まとめ)
今回のギリシャ危機によって見えてきた地域共通通貨「ユーロ」の弱点構造は、
・地域共通通貨「ユーロ」の通貨価値と、ユーロ諸国における生産力のアンバランス
・通貨統合によって、ユーロ諸国の金融政策の独立性喪失。
今後もユーロ諸国で経済格差が拡大していく。ユーロの中核ドイツがユーロ諸国を支え、PIIGSを初めとする南欧諸国の財政赤字が進み、産業もままならずにドイツにぶら下がっていくという、国家間のアンバランスがさらに深刻化していくでしょう。
欧州統一通貨「ユーロ」によって金融政策は統合したが、政治面・経済面・財政面では非統合という矛盾を孕んでいるという弱点構造こそが、今回のユーロ危機に繋がり、金貸し達のターゲットになったのではないでしょうか。

List    投稿者 kyohei | 2010-06-18 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

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