2019-02-15

反グローバリズムの潮流(イギリスの合意なき離脱は大きな可能性かも)

 

origin_1前回の反グローバリズムの潮流(イギリスのEU離脱、EUの本音はイギリスのEU離脱阻止か?)では、イギリスの国会で離脱協定案が大差で否決され、EUとの再交渉を行う決議が可決されたこと、一方でEUは協定の見直しに応じそうにないことなどをお伝えしました。その後、イギリスのEU離脱まで残り50日余りの2月8日にEUは協定案の見直しを明確に拒否しました。そして15日イギリス議会も政府の離脱方針を指示しない議決を行いました。メイ首相は進退窮まった状況です。このままイギリスは合意なき離脱に突き進むのでしょうか。 (さらに…)

  投稿者 dairinin | 2019-02-15 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

迫りくる大暴落と戦争刺激経済-20~イングランド銀行の理事がマネー・クリエイションを認め始めた~

グリーンスパン

グリーンスパンFRB議長はヴェルナーの理論:「中央銀行がやっていることは、自分勝手な信用創造であり、かつマネー創造だ。ここに最大の欺瞞、インチキがある」ということを知っており、かつては自身も「やってはいけない」と論文で書いたが、彼はそれを無視して、国家の片棒を担いでいた。正確には金貸しの手先と化していたのだ。

 

その後歴代のFRB議長は金貸しの意のままの政策を取り続けた。

その最大の惨事がリーマン・ショック。FRBの“信用創造”は20兆ドル。2000兆円。これでアメリカは危機を2011年に乗り切った。しかし、さらにその毒は、内部に隠されて広がり、今そのしわ寄せが押し寄せている。

 

2015年になって、イングランド銀行の理事のエコノミストで、本当の金融政策のプロたちが、過剰にお札(紙幣)を作って供給:財務省に裏からこそこそと資金を渡してきたこと。それを恥ずべきことだと告白を始めている。これは一体どういうことだろう。

 

イングランド銀行といえば、信用創造マネーの創始者。無から有を作り出す金貸しのご本家だ。考えられるのは、金貸しの奥の院である金主、イギリスであれば、ヴェルフ、ヘッセン一族の金貸しからの絶縁宣言とも受け止められる。ちょうどイギリスのEU離脱とも符合する。

脱金貸し支配、脱グローバル主義に舵を切ったと見て良いとおもわれる。

 

『迫りくる大暴落と戦争“刺激”経済』(副島隆彦 著)からの紹介です。

*************************************

■グリーンスパンFRB議長はヴェルナーを無視した

 

2001年刊の『円の支配者』を出版する6年前。1995年に、ヴェルナーは、英語の論文をどんどん書いて発表している。この論文を読みたい、と各国の中央銀行の幹部や、FRBから要望が殺到した。ヴェルナーは、FRBの一体、誰が自分の論文を読みたいと取り寄せたのかを、機会があって尋ねた、ワシントンDCで、FRBに直接聞きにいった。すると、「論文を請求したのはアラン(グリーンスパン議長その人)だよ」と言われた。グリーンスパンがこの時、FRBの議長だった。彼は、1987年から2005年まで、実に18年間もFRB議長を務めていた。

 

グリーンスパンは、若い頃からリバータリアンであり、リバータリアニズム思想を築いた特異な女性思想家のアイン・ランド女史の若い愛人でもあった人だ。グリーンスパンは、20代で名うての投資家として名を馳せ、優れた論文も書いて「中央銀行による信用創造を国家が悪用してはならない」という論文で有名になった人だったのだ。

 

それから2年後、1997年9月にIMFの総会が香港であったときに、アナリストとして参加したヴェルナーは夕食会の積で、グリーンスパンFRB議長を見つけて近寄って挨拶をした。グリーンスパンは、「君がヴェルナー君か。論文は読んだ。信用創造についての話しだったね」と。そこでヴェルナーが、論文への感想を求めると、グリーンスパンは、「いや、おぼえてないね」と言って立ち去ったという。(中略)

 

グリーンスパンは、自分もまた、歴代FRB議長(中央銀行総裁)と同じく、「やってはいけない」と自分が論文で書いた、政治の道具としての信用創造に手を染めていることに厳しい自覚があった。自分が政府(ビル・クリントン政権)に加担して、本当は政府から中立で独立であるべき中央銀行総裁の役目を放棄して過剰な創造マネーをつくって、アメリカを表面だけの好景気(バブルだ)にしていた。このことをグリーンスパンは、「自分は己に恥ずべきことをやっている」という自覚があった。だがグリーンスパンは、自分もまたこうでもしなければ、国家というものはやっていけないのだ、と居直った。そういう秘密をアメリカの中央銀行であるFRBは抱えている。ヴェルナーの文を載せる。

(さらに…)

アメリカは、未だに三文芝居を平気で行う。

日本ではあまり放映されていませんが、ベネズエラが大変な事に成っている。

国家経済が破綻してハイパワーインフレで、生活が難しく国家大混乱。
そこにアメリカ勢力が支持する大統領(❓)が登場!
何か、水戸黄門みたいに、いつも同じシナリオだな~~

少し解説

■「ベネズエラ」の紹介
南米の国家。東にガイアナ、西にコロンビア、南にブラジルと国境を接し、北はカリブ海、大西洋に面する。自然豊かだが、サウジアラビアに次ぐ埋蔵量の石油や鉱物も豊か。

■概略の近代史歴史
1959年に独裁政権から、民主主義体制が始まった。それ以来、社会主義の国民行動党(AD)とキリスト教社会党(COPEI)の二大政党政治が継続してきた。15年はうまく運営していたが、

◎石油国家 独裁政権が崩壊
◎石油が国有化される
◎私利私欲で利権闘争で経済政策失敗で大混乱
◎石油価格暴落で国家経済破綻
◎現政権が立ち往生、新たな政権が登場(アメリカの支持)

アメリカ、ファーストのトランプが、介入を発言!!

今までと一緒じゃん!! もうばれてるよ!!

ローター発の記事が下記
ˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆˆ
■ベネズエラに「2人の大統領」どういうこと? アメリカが軍事介入を否定せず、緊張高まる
「自国第一主義」のアメリカがなぜ関与を強めているのか Reuters発

https://www.huffingtonpost.jp/2019/02/05/venezuela-gerardo-maduro_a_23661583/より
「2人の大統領」が並び立つベネズエラで緊張が高まっている。独裁色の強い現職のニコラス・マドゥロ大統領(55)に対抗するため、暫定大統領を名乗り始めた野党指導者フアン・グアイド氏(35)をアメリカが強力に支援、トランプ大統領は軍事介入をちらつかせるなど圧力を強めているからだ。
「アメリカの裏庭」と呼ばれる南米でいったい何が起きているのか。

「それが選択肢の1つとなるのは確かだ」。トランプ大統領はアメリカCBSのインタビューにそう答えた。「それ」はベネズエラへの軍事介入を意味していた。
インタビューが放送されたのは2月3日。マドゥロ大統領は直後、「彼は自らの手を血で染める危険を冒そうとしている」と反発した。

それに先立つ1月28日。アメリカのボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)がベネズエラ問題で記者会見した際、持っていたノートに「兵士5000人をコロンビアへ」と走り書きしているのが目撃された。情勢は緊迫感を増している。

トランプ政権がベネズエラの政争に介入する直接のきっかけとなったのは、この国で「もうひとりの大統領」が名乗りを上げたことにある。
1月23日、首都カラカスで開かれた反政府集会で、国会議長のグアイド氏が暫定大統領への就任を一方的に宣言した。

発端は2018年5月の大統領選だった。マドゥロ氏が再選を果たしたが、野党の有力政治家が選挙資格を奪われたり、逮捕されたりするなどして立候補ができず、野党側は「選挙は不正だ」と訴えた。
国会では多数を占める野党はマドゥロ氏の就任を認めず、「憲法の規定で国会議長が大統領職を代行する」との名目でグアイド氏を暫定大統領に担いだ。
トランプ大統領は「ベネズエラ国民は勇敢にも、マドゥロ氏と彼の政治体制に反発の声を上げ、自由と法の支配を要求した」などと述べ、グアイド氏が合法的な大統領だとする声明を発表した。
アメリカに続き、イギリスとオーストラリアがグアイド氏を支持。コロンビアやペルーなど中南米の国々も同調している。
これに対し、マドゥロ大統領を支持するのはロシアや中国、キューバ、シリア、イランなど。独裁色の強い国や反アメリカの国が多く、ベネズエラを舞台に親アメリカと反アメリカの両勢力がにらみ合う構図ができあがっている。

「自国第一主義」がなぜ?
トランプ大統領は就任以来「アメリカ第一主義」を掲げ、これまでの政権が繰り返したような他国への「介入」は控えてきた。
今回、そんな方針を転換せざるを得なかったのは、自国の勢力圏内と位置づけてきた南米の地で、ロシアと中国がプレゼンス(存在感)を増してきたことへの危機感があるとみられる。
ベネズエラでは1999年にウゴ・チャベス大統領が就任し、アメリカへの対決姿勢を鮮明にした。周辺国にも影響し、ブラジルやアルゼンチン、ボリビアなどでも反アメリカの政権が生まれた。

アメリカの影響力が弱まるやいなや、中国とロシアが「進出」。アメリカがベネズエラに経済制裁を科す中、中ロは経済支援や軍事協力を通じて関係を強化した。チャベス路線を引き継いだマドゥロ政権もまた、中ロとの関係を重視している。
経済や軍事、外交などで対立が続く中ロが「裏庭」で影響力を拡大するのはもはや見逃せない──。トランプ政権のそんな思惑が透けてみえる。

経済悪化で事態変化
だが、チャベス、マドゥロ両大統領による政権運営は経済悪化をもたらし、それが野党への「追い風」になっている。
チャベス氏は貧困層を支援するため企業などを国有化、食料品などの物価を低く抑える政策を実施した。その結果、生産活動の低迷と物不足を招いた。
一方、世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラは、石油収入で国家経済を支えてきたが、マドゥロ大統領が就任すると原油価格が低下。経済は一層悪くなり、物価が激しく上昇するハイパーインフレを招いた。生活苦から国外に脱出する人たちが後を絶たない。

かぎは軍の動向
双方の対立が激しさを増す中、かぎを握っているのが軍の動向だ。
グアイド氏側は連日、大規模な反政府集会を開いてはいるものの、行政、軍事の実権を掌握しているマドゥロ氏を退陣させるのは容易ではない。
特に「力」で秩序をコントロールできる軍隊を取り込めなければ、政権奪取は実現しない。そんな中、空軍のフランシスコ・ヤネス将軍が2月2日、グアイド氏支持を表明する動画がインターネットに投稿され、Twitterで拡散している。

ヤネス氏は動画の中でマドゥロ氏を「独裁者」と呼び、「ベネズエラの国民と、90%の空軍関係者は独裁者を支持していない。軍人は国民とともにある」などと述べた。これをきっかけに野党は勢いづき、ボルトン氏も軍関係者にグアイド氏側につくようTwitterで盛んに呼びかけている。

ただ、軍部は政権から国営企業のポストをあてがわれるなどしてきた。政権が変わればこうした「特権」が失われる可能性があり、組織的な政権離反につながるかは不透明だ。

  投稿者 dairinin | 2019-02-12 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

反グローバリズムの潮流(フランス暴動を巡り、反EU勢力が国を超えて共闘を開始)

_105552579_052113794前回の反グローバリズムの潮流(フランス「黄色いベスト」暴動で、揺らぐマクロン政権)では、暴動を受けてマクロン大統領が燃料税の増税を断念したことまでお伝えしました。さらにその後にも、最低賃金の上乗せ、残業代の非課税化など相次いで対策を発表しましたが、暴動はおさまる様子を見せません。それどころか、イタリア政府の要人がデモへの支持を表明し、仏伊の国家間の対立にまで事態は悪化、拡大しています。何故、こんなことになったのでしょうか。 (さらに…)

  投稿者 dairinin | 2019-02-08 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

迫りくる大暴落と戦争刺激経済-19~日銀によるマネー創造の秘密~

プラザ合意

この背景にはアメリカの圧力がある。その象徴とも言えるのが「プラザ合意」だろう。

ロッキード事件で田中角栄がアメリカの罠に嵌まり、民族派に対する見せしめとされた。それにビビッた中曽根首相や竹下大蔵大臣らが、アメリカからの為替調整を押し付けられ半ば無理やり「合意」させられ、60兆円を献上したのだ。これ以降、下降線を辿るアメリカ経済を支えるために、事あるごとに日本に圧力を加えてきた。

 

アメリカの100兆円を献上した小渕敬三内閣は、その心労のためか殺されたかは不明だが、脳出血で死んだ。

米国債を買わざるを得なかった橋本龍太郎は、「日本は米国債を売りたい誘惑にかられる。一部は金で保有したい」と訪米した際のニューヨークでの講演で言ったとたん、そのあとに殺された。

 

アメリカに盾突けば命が危ない。この圧力の元、田中派やそのあとを受けた経政会はどんどん弱体化し、それに業を煮やした小沢一郎が自民党を去って、日本再生を試みるが悉く邪魔が入る。幸い殺させることはなかったが、表舞台には登場できなくなった。

 

今後望みがあるとすれば、単極子ビームで最強の軍事力を持ったロシアのプーチンの民族自決の動きだろう。安倍普三がロシアとの関係を強固に仕様と動いているが、岸信介の子孫であり田布施の系統。まだまだその本心は分かりかねる。

 

 

『迫りくる大暴落と戦争“刺激”経済』(副島隆彦 著)からの紹介です。

*************************************

■リチャード・ヴェルナーが日銀によるマネー創造の秘密を暴いた

 

日銀によるクレジット・クリエイション(信用創造)とマネー・クリエイション(マネー創造)の秘密を暴いたのが、リチャード・ヴェルナー氏だ。彼が、2001年に『円の支配者』を出して、日本の中央銀行である日銀が、マネーを勝手に作り出してきたことを暴いた。それで、日銀のマネー創造が、景気を勝手に作ったり壊したりしているのだ、とズバリ書いた。日銀こそがバブルを起こし、そして破裂させる元凶になっている、と大きな真実を掘り当てた。ヴェルナーは、24歳から日銀と大蔵省の研究所に来て、ずっと日本の金融制度の裏側を調べていた。結果として、それは、その後のアメリカとヨーロッパの金融政策の大きな秘密を暴くことにもなった。

(さらに…)

  投稿者 tasog | 2019-02-06 | Posted in 04.狙われる国の資産, 07.新・世界秩序とは?No Comments » 

日露首脳会談の成果、意味合い。

「3時間も会談した割には内容があまりにも乏しく、いろいろと合意できなかったことの表れではないか。(北方領土の)主権の問題で歩み寄りはなく、進展はなかったようだ」そのような見解が多い。

一方で
この間で世界情勢が大きなうねりとなっている。
特に日本の周辺が激変だ。

◎アメリカ大統領がトランプとなり、アメリカファーストでどこまで日本の友達でいるのかわかったもんじゃない。
◎中国は経済力をかさに掛けて、日本の領土も狙って生きている。
◎韓国は、北朝鮮との統一を目指して、反日スタンスを前面に出してきた。
◎北朝鮮は統一後に日本にお金をもらう金づるだと考えている。

その中でロシアとどう付き合うかは、この緊張を増している周辺各国との関係バランスを組み立て乍ら、外交が必要だ。

そのような視点でロシアとの関係作りを説いている意見がありました。

紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■北方領土を返還する気ゼロ。それでも日露関係を深めるべき理由
2019.01.28
by 北野幸伯『ロシア政治経済ジャーナル』 https://www.mag2.com/p/news/383996
より

1月22日、安倍首相とプーチン大統領の会談が行われましたが、日本国内では「具体的成果が乏しかった」と報じられています。そんな報道に異を唱えるのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で今回、日本との間に領土問題が存在する国々に「日ロ関係の存在」を示した事が大きな成果である根拠を、周辺各国と友好関係維持が重要な「日本の戦略的立場」から解説しています。

■日ロ首脳会談、安倍総理は「大戦略」を理解している
皆さんご存知かと思いますが、安倍総理とプーチンさんが22日、クレムリンで会談しました。結果はどうだったのでしょうか?
平和条約交渉、本格化を確認…日露首脳会談

【モスクワ=梁田真樹子、畑武尊】安倍首相とロシアのプーチン大統領は22日午後(日本時間22日夜)、モスクワのクレムリン(大統領府)で会談し、日露の平和条約交渉の本格化を確認した。条約締結に向けた関係強化の一環として、今後数年で両国の貿易額を現在の1.5倍、少なくとも300億ドルに引き上げることで一致した。
「日露の平和条約交渉の本格化を確認した」そうです。そのためには、関係強化が必要だから、貿易額を増やすと。
「具体的な話」が好きな日本国民の大半は、「なんじゃそりゃ?要するに、何も具体的な成果はないってことだな」と思うでしょう。表面的にはその通りです。しかし、日ロ関係はこれでいいのです。なぜ?

あ

 

■「大戦略」を理解している安倍総理
皆さんご存知のように、中国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!!!」と宣言しています。そして、もはやニュースにならないほど領海侵犯を繰り返している。それどころか、ロシア、韓国に、「反日統一共同戦線をつくり、日本を壊滅させようぜ!」とオファーしている。全国民必読証拠はこちら。

● 反日統一共同戦線を呼びかける中国
そう、日本、第1の脅威は、北朝鮮でもロシアでも韓国でもなく、間違いなく中国なのです。
なぜ、日本は、領土問題で妥協しないロシアと仲良くしなければならないのか?しょっちゅう書いているように、「中国とロシアが組んだら日本に勝ち目はないから」です。安倍総理もこの点、十分理解されているようです。産経新聞1月23日付を見てみましょう。

首相が、平和条約締結を目指すのは、中長期的に見て安全保障と経済の両面でロシアとの関係強化が不可欠だと考えているからだ。

「中露が緊密に手を組む事態だけは避けなければならない」

首相は周囲にこう語った。日本の安全保障は将来も日米同盟が基軸となるが、米国の実力は相対的に低下しており、中露が連携を強めれば太刀打ちできなくなるからだ。
「中露が緊密に手を組む事態だけは避けなければならない」
これは、まさにRPEが100万回書きつづけてきたことです。RPEでは、ロシアが無礼で、日本国民が怒っていた時も、変わらず、同じことをいいつづけてきました。総理の口からこのような言葉を聞けるとは、本当にありがたいことです。

しかも中国はこの30年間で国防費を51倍に増強し、東シナ海や南シナ海で権益膨張を続けている。首相がいかに習近平国家主席ら中国指導部と友好を演出しようと、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をあきらめることはあるまい。
(同上)
「尖閣諸島をあきらめることはあるまい」とあります。「沖縄をあきらめることはあるまい」というのもつけ加えたいところです。
ならばせめて北方の脅威は取り除き、極東地域でロシアと安全保障でも協力すべきではないか。首相のこの判断は筋が通っており、平和条約締結はその大きな推進力となり得る。
(同上)
ここは、微妙なところです。ロシア的にも、「平和条約締結」は望むところ。しかし、戦争で強奪した土地は、返したくない。だから、本音では4島返還の話も、2島返還の話すら、聞きたくない。
ロシアの「領土観」は「戦争のたびに領土は変わる。ロシア(ソ連)は戦争に勝ったのだから、4島がロシア領になるのは当然だ」というもの。だから、ロシア人の耳には、安倍総理の「平和条約を締結せねば」という言葉は、「平和条約」と聞こえず、「島返せ!」とだけ聞こえる。この辺は、難しいところです。

では、プーチンは、なぜ安倍さんと25回も会っているのか?要は、金儲けがしたいのです。クリミア併合で、日米欧は、ロシアに制裁している。それで経済が苦しい。だから、金儲けの話がしたい。それで私は、「金儲け7、平和条約3ぐらいがちょうどいい」と書きました。

安倍総理の記者発表にこんな言葉がありました。
「経済関係をより緊密にし、観光はもとより、地方交流や大学交流などさまざまな交流を増やし、この目標をともに達成していきたいと思います。両国の議員、議会間でも活発な交流が行われています。昨年7月には伊達忠一参院議長が訪露し、史上初めてロシア上院で演説を行いました。12月には両国の友好議員連盟の間でさらなる協力に向けた了解覚書が署名されました。日露関係発展のための重要な柱として本年も議員・議会間交流を後押ししていきます」
「8項目の協力プランを提案してから2年半以上がたち、すでに170以上のプロジェクトが生み出されています。先月には日本企業によるハバロフスク空港への経営参画、ガスプロムによるサムライ債の発行が決まりました。日露の企業がお互いに手を携えるビジネスに前向きであることを歓迎します」

ロシアが望んでいるのは、まさにこれです。だから、日本も、「金儲け中心」でいくべきなのです。こう書くと日本では、「金だけ奪われて」という反応がきます。「金儲け」というのは、ロシアだけに儲けさせろという話ではありません。日本もロシアも儲かる話をしましょうという意味です。
繰り返しますが、日ロ関係が良好であることは、「対中国」で大事なのです。

■日本は中ロに勝てない

日本には領土問題が三つあります。すなわちロシアと北方領土問題。韓国と竹島問題。中国と尖閣、(中国によると)沖縄問題。これ「領土問題」と一言でいいますが、本質はずいぶん違います。

ロシアは、北方4島を実効支配して現状に満足してる。韓国は、竹島を実効支配して現状に満足している。中国は、尖閣を実効支配していないので、不満である。つまり、領土問題でロシア、韓国と日本が戦争する可能性はありません。日本から攻撃すればありえますが、日本はしかけないでしょう?

しかし、中国は現状に不満なので、日中戦争が起こる可能性はある。その時、戦争参加国はどうなるのでしょうか?

1.日本、アメリカ 対 中国
これは、日本の必勝パターンです。ですから、日本は、アメリカ大統領がどんな人であろうと、日米関係を第1に考え、良好な関係を保っておく必要があります

2.日本 対 中国
日本で反米派が力を増し、日米関係が悪化すればこうなります。このパターンで、日本が勝つのは難しいでしょう。おそらく尖閣は、中国に奪われます。「日米関係悪化」、これ、バリバリありえますから要注意。皆さん、「トラストミー」鳩山政権時代に、どれだけ日米関係が悪化したか、決して忘れないでおきましょう

3.日米 対 中ロ
このパターンでは、どちらが勝つかわかりません。しかし、そもそもアメリカが、尖閣を守るために中ロ二大国と戦うでしょうか?私は、難しいだろうと思います

4.日本 対 中ロ
このケースで、日本に勝ち目は1%もありません

こう見ると、日本は、
•日米 対 中国

という必勝パターンを常に維持しておく必要がある。そのために必要なことは、二つです。

1.アメリカと良好な関係を維持しつづける
2.尖閣有事の際、ロシアが中国側にたって参戦しないようロシアと良好な関係を保ちつづけること

もし中国が、「尖閣に侵攻すれば、必ずアメリカがでてくるだろう」「ロシアは、日本と仲がいいから助けてくれないだろう」という予測をたてるなら、尖閣侵攻はないでしょう。逆に、「尖閣に侵攻しても、アメリカは日本を助けないだろう」「ロシアは、中国の味方だろう」と予測すれば、戦争になる可能性が高くなります。

というわけで、領土問題が進展するかどうかに関わらず、対中国で、日本はロシアと友好的関係を維持するべきなのです。これ、決して私が28年モスクワに住んでいたからいうのではありません。あのルトワックさんも、同じことをいっています。彼は、その著書『自滅する中国』の中で、日本がサバイバルできるかどうかは、ロシアとの関係にかかっていると断言しています。

もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になるのだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要であり、むしろそれが決定的なものになる可能性がある。 (『自滅する中国』p188)

というわけで、安倍総理の対ロ外交、うまくいっています。もう少し、「私が領土問題を急いで解決する!」という欲望を減少させた方がいいとは思いますが。

by 猪飼野

  投稿者 dairinin | 2019-02-05 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

反グローバリズムの潮流(イギリスのEU離脱、EUの本音はイギリスのEU離脱阻止か?)

eWorld190124-thumb-720xauto-150842イギリスのEU離脱、イギリスの国会でEUとの合意案が否決され、このままだと合意なき離脱に突き進む可能性が高いことを、前回はお伝えしました。その後、イギリスの国会で、バックストップ案を見直す議決が採択され、問題はバックストップ案の見直し1点に絞られました。何故バックストップ案の見直しをEUは認めようとしないのか、調べてみました。

(さらに…)

  投稿者 dairinin | 2019-01-31 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

迫りくる大暴落と戦争刺激経済-18~ジャブジャブ・マネーで麻痺している日本経済~

 

日銀

今回もお金の話し。

日銀が、財務省が発行する日本国債を、買い取ってその代わりに財務省にお札を渡す。それで、お金が生まれる。これも信用創造である。という。紙幣を大量に刷って財務省に渡す。その代わりに、財務省が発行する国債(国家借金証書)を受け取る(買い取る)。国家財政が足りない分を、こうやって、どんどん日銀が供給するということをやっている。これは日銀法と財政法違反:つまり違法行為とのこと。

 

こうやってお金をジャブジャブ刷っているが、これが市中には回らず、銀行の中に留まっている。このことは、市場が縮小していることを物語っている。

しかし、政府は全くこのことを認識していない。あるいは、認識はしているがアメリカの圧力でそうせざるを得ない状況かどちらか。相変わらず古い政策をやり続けている。

そして、これも相変わらずアメリカ国債を毎年30兆円ずつ買い続けている。しかもアメリカ国債の実物は日本には渡らず、名目上だけ。つまり、日本は単純にアメリカに貢いでいるだけということ。

いつまで、このような状況を続けるつもりなのか?

アメリカ株価暴落によって、アメリカ経済が破綻する日を待つしかないのか?

『迫りくる大暴落と戦争“刺激”経済』(副島隆彦 著)からの紹介です。

*************************************

■ジャブジャブ・マネーで麻痺している日本経済

今の経済は、クレジット・クリエイション(信用創造)理論が、悪用され勝手に暴走している、と私は思っている。

日銀の公開市場操作(マーケット・オペレーション)は、社会科の教科書にも載っていて、日本の中学生にも、このマーケット・オペレーションというのを教える。中学校の社会科で教えている。実際に私も学校で習った。

 

高校でも教える。日銀は、「買いオペ」「売りオペ」というのをやる、と社会科の教科書には載っている。お金が社会にあまりに増えているときは、「売りオペ」をやって、債券を中央銀行(日銀)が銀行たちに安く売って、そのかわり市中にある余分のお金を吸収する。そうやってお金の量を減らす。景気の引き締めである。短期金利(政策金利)も引き上げて、銀行からの融資が出にくくする。

 

それに対して、不景気になると、「買いオペ」をやって銀行から債券(国債など)を買い上げて資金をどんどん市中に出す。それが銀行からの融資の形で、民間に貸し出されて、いろいろなところに使われて、景気が良くなる。そしてそれが加熱して余分の資金が、土地投機(不動産バクチ)と株のバクチなどに流れすぎると、バブル景気を生む。バブル(金満状態)は人間を不真面目にする。健全な生産活動(設備投資)の方に資金が回らないと、お金が生きて使われない。腐ったお金になる。お金も無駄な使い方、浪費をすると腐るのである。

 

お金というのは、一定の割合で堅実に増えていくというのが健全な経済学の知識だ。ところが、シカゴ学派のミルトン・フリードマンを筆頭とする、マネタリストたちが、インフレ率を、例えば3%と決めて、自動的にお金の量を増やせと、言った。その前提となった理論がアーヴィング、フィッシャーの「お金の流通速度理論」である。お金をジャブジャブ刷って、自動的に増やして、一定のインフレ率を維持すれば、不況は避けられる、好景気を持続できるという理屈を作った。このシカゴ学派マネタリストの「お金の量を増やし続けさせすればいい」理論が、今も歯止めが利かずに、ものすごい量のお金をアメリカ、ヨーロッパ、日本は刷っている。新興国(後進国)もこの真似をしている。しかし貧乏後進国は、自分の国の通貨に信用がないので、刷りすぎると国民にさえ嫌われて紙キレになる。

 

過剰流動性という言葉も使われた。1998年頃に、速水優日銀総裁が、「ジャブジャブというお金が流通している」と言った。だから私はこれを採用し、自分の本で「ジャブジャブ・マネー」と言う言葉を使い続けている。今もこの法則で動いている。ものすごいお金を作っちゃたものだから、巨大な信用が生まれたように見えるけれども、お金をジャブジャブ刷っただけで、銀行の中に溜まったままだ。生きて使われていない。

 

「貯蓄イクォール投資」(S=I)というのが、経済学の基本的な恒等式である。貯蓄(セイヴィング)は、そのまま投資(インヴェストメント)に全額、即座に回されることになっているのだ。ところが現実にはそうはなっていない。今は、この法則が崩れてしまった。だから、ジョン・ヒックスが、実体経済と金融経済の関係式を作った「ヒックス・モデル」の、「SI-LM曲線」のSとIは一体のはずだった。S(貯蓄)=I(投資)だった。

 

SI-LM曲線の「LM」のほうは要するに「お金経済」だ。資金の需要と供給だ。それに対して「SI」のほうが「実体経済」で実需である。LMのほうは、実は先進国ではもう消滅しているのではないか。

 

S(貯蓄)が、I(投資)に向かわずに、そのまま銀行内にとどまって、ジャブジャブの形で透明化して銀行内にお化けのように存在する。外に出て行かないものだから、お金の増殖がない。貨幣乗数がなくなっている。それが現在のデフレ経済のご病気だ。有効に使われるべきお金が、どこかに消えてしまっている。マネーが消えている。金利がゼロなのだから無いのと同じだ。質量がない。

 

■マネーサプライが消えてなくなった

今は「マネーサプライ」(通貨供給量)という統計数字を消してしまって発表しなくなった。かわりに、マネーストックという言葉に変えた。実際はこのマネーストックすら言わなくなっている。かつては通貨統計(お金の量)の指標として、M1、M2、M3などと分類して、「M2+CD」を、日本のマネーサプライと決めていたけれど、もう消えてなくなった。

 

今はベースマネーを使う。日銀が、公開市場操作を行って、銀行の当座に入れる形で渡すベースマネー(マネタリー・ベース。ハイパワード・マネーともいう)だけが肥大化している。このベースマネーも使い道がなくて、各銀行の当座預金に溜まったままになっている。貸しても大丈夫だ、という貸付先がなくなっている。銀行の方がおびえてしまって貸す気がなくなっている。「貸して下さい」と企業経営者たちが言っても、実際には貸さない。優良土地の担保(抵当権の設定)の提供が無ければ銀行は貸さない。貸し渋りは当たり前のように起きている。お金の流れが凍りついたようにピタッと止まっている。細々と生活費のような小額のお金だけが使われて、流れている。

 

黒田日銀総裁が、2013年4月に、「異次元緩和」を始めて、これまで5年間、毎年80兆円ずつベースマネーを増やしてきた。2016年9月に日銀は、これまでの量的かつ質的緩和から、金利をゼロ%に誘導する政策に変更した。日銀の国債の買い取り額は半減して、年40兆円くらいしかしなくなっている。それでも2017年の年末でマネタリー・ベースは474兆円まで膨らんだ。日本中の銀行が日銀においているお金で預金と現金(お札と効果)で、これだけある。このマネタリー・ベースで、今は通貨量、お金の量を量ることになっている。が本当はインチキくさい。

 

■日本国債の買い取りでマネー・クリエイションしている

日銀が、財務省が発行する日本国債を、買い取ってその代わりに財務省にお札を渡す。それで、お金が生まれる。これも信用創造である。民間銀行だけでなく中央銀行だって銀行だから信用創造をするのである。だから、お札というか、通貨ならばカレンシー、もっと広く言えばマネーだけれど、これをどこまででも大量に刷って財務省に渡す。その代わりに、財務省が発行する国債(国家借金証書)を受け取る(買い取る)。国家財政が足りない分を、こうやって、どんどん日銀が供給するということをやっている。これは違法だ。やってはいけないことなのだ。日銀法と財政法違反だ。なのにそれをやっている

 

その実態は、マネー・クリエイションだ。お金が日銀という玉手箱というか、打ち出のコヅチから生まれる。湯水の如く溢れ出る感じだ。それで政府は助かっている。累積の赤字財政を日銀が肩代わりして穴埋めしている。これで日銀が汚れたゴミ箱のようになった。財務省が毎年の財政資金が足りない(増税はできない)から、その年の分のお金を日銀に「なんとか作ってくれ」と言っている。これがだいたい毎年40兆円ぐらいだ。満期が来た国債も洗い買えといって次々にロールオーバーする。期限が切れたものを新規再発行して、新規の分とあわせて毎年40兆円ぐらい出している。

 

これ以外にアメリカに行くお金がある。毎年30兆円ずつアメリカに行く。アメリカ国債とかを秘密でかわされている。だから円安(円を売ってドルを買うから)にもなるのだ。この私の説を今も誰も信じてくれない。30兆円掛ける40年間で、1200兆円だ。これだけの資金がアメリカに渡っている。その見返り、ぷれっじ(担保)で、保証でももらっているのは米国債だ。やがて紙切れの米国債だ。今は紙さえない電子データだけだ。

  投稿者 tasog | 2019-01-29 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?, 03.国の借金どうなる?No Comments » 

迫りくる大暴落と戦争刺激経済-17~貨幣乗数という資本主義のマジックが効かなくなった~

 

ケインズ

ケインズ

 

今回の記事は、「お金の経済」のお話。

お金は「信用創造」(クレジット・クリエイション)によって約10倍~20倍の流通量を持ち、さらに国の施策としての「乗数効果」(マルチプライヤー・エフェクト)によってさらに数倍もの流通量になるという。そういうシステムの元に銀行が莫大な利益を得てきた。

単純に元本の10~20倍もの金を人に貸し、3%の利息を取ると考えるだけでも相当儲かる商売で、それを毎年繰り返していくと、どんどん利益が膨らんでいく。

 

こんな“無から有を生む”“濡れ手に粟”のような錬金術:商売を成立させたのが上記「信用創造」と「乗数効果」の二つの考え方で、これは金貸しが作った理論と言っても過言ではない。「乗数効果」は、「信用乗数」を使った経済効果をいい、経済学者ケインズの理論ですが、彼が金貸しの手先であることは有名。

 

この「信用」という言葉が、ないものをあるように見せかける言葉で、人を欺く経済活動の現実を見え難くしている。このような考え方は株や債券市場にまで及んでいるように思う。デリバティブにデリバティブを際限なく塗り重ね、含み借金の総額が天文学的数字にはまで膨れ上がり、誰も把握できない状況だという。人間が把握できないシステムがうまく行く訳がない。

 

金貸しの終焉と共にこの経済理論も終わりを告げようとしているようです。

 

『迫りくる大暴落と戦争“刺激”経済』(副島隆彦 著)からの紹介です。

*************************************

■貨幣乗数という資本主義のマジックが効かなくなった

銀行は、預金者から預かったお金をたくさん集めて、それを資金を必要としている借り手に対して貸し出すことになっている。それが銀行業だ。ところが実は、銀行は預金がちっとも集まっていなくても、銀行業の免許(認可)さえあれば、勝手にどんどん貸し出しができるのだ。これをクレジット・クリエイション(信用創造)という。この信用創造という原理で、信用、すなわちお金(信用貨幣)が作られて社会をぐるぐる回っていく。その途中で「価値が増殖」していく。この信用創造が資本主義が強力である原理だ。

 

簡単に書くと、100万円が世の中でぐるぐる回ると、いつのまにか1000万円になる。銀行が、中央銀行に預けておかなければいけないと決めている法定準備金(預金準備率ともいう)が、10%の場合、100万円の1割ずつ、即ち0.1プラス・・・0.09プラス・・・0.08ぷらす・・・といって、そしてこれを足し上げていくと、元のお金(100万円)が、10倍になってお金が増えていく、という理屈になる。

 

実際には、法定準備金は、国際業務を行っている銀行で預金の8%。国内業務だけしかやっていないのなら4%と、一応決まっている。

 

国内業務なら、小さな銀行でも自分が持っている預金総量の4%だけを日銀に預けておけばいい。それ以外は、全て融資(貸し付け)にまわして良い。例えば小さな銀行(信用金庫)で預金が1000億円あるとしたら、日銀の講座に40億円置いておきさえすればいい。預金を集めていたら、その4%以外の残りのお金は、全部、貸し付けにまわしていいという理屈で動いているのである。

 

だから残りの960億円を、どんどん客(資金を必要とする人たち)に貸して利息(金利)を3%とか取るだけでも、銀行業はものすごく儲かる商売なのだ。そうだったのだ。高度成長経済の時には、銀行業は儲かって大きな立派本店ビルを立てた。銀行員になる人は社会のエリートだと見られて、女子行員でも、堅実で信用があって資産家の家のお嫁さんになれた。

 

「お金はぐるぐる天下を回るもの」という考えは昔からあった。「資本の回転率」と書くと難しくなるが、銀行が貸したお金は、またその銀行に預金の形で、もとってくる。増殖して、太った形で、さらにあちこちから預金となって集まってくる。それをまた貸し出すことができる。だから経済拡大木には、資金が順調に回るから、100万円の融資金は、乗数効果によって、10倍の1000万円になる。

 

そのようなものとして、資本主義社会はできている。日本は、高利貸し(サラ金業者)という問題も片付けてしまって、違法なヤミ金融もヤクザ金融も社会の表面からは消えてしまったきれいな社会になった。ところが、そこへ“ゼロ金利”という異様な事態が出現してしまった。

 

日本の地方の中堅銀行は、4000億~5000億円くらいの預金を持っている。金融庁がどんどんこういう地方銀行を合併させているので、1兆円ぐらいの預金量がある。

 

預金が1兆円あると、預金準備率4%で400億円だけ日銀においておけばいい。残りの9600億円を貸し付けに回せる。そうするとその上限で許容される限界数値は、4%(0.04)の逆数(1÷0.04)である25倍になる。だから25兆円になる。25兆円にまでお金が膨らんで、貸付金となったものの残高(想定元本)で、25兆円にも膨張した金額がヴァリュー(価値)として世の中に流通することになる。本当の預金が1兆円なのに、25兆円にもなる。これで世の中が豊かになる。景気がよくなる、という経済学の理屈で動いてきた。

 

これが貨幣乗数(マネー・マルチプライヤー、信用乗数ともいう)の理論である。これで資本主義というのは成長を続けた。だから資本主義は滅びない、倒れない、永遠だ、と言うことになってきた。資本主義と言うのは自己増殖する力である、と言うので、人類はいくつもの危機を乗り越えてきた。ところが、どうもこの資本主義の大法則が通用しなくなってきた。信用創造(クレジット・クリエイション)と、利子による資本の増殖の法則がうまく動かなくなっている。

 

■投資の経済効果に注目したケインズの乗数効果

ジョン・メイナード・ケインズ卿が言った乗数効果(マルチプライヤー・イフェクト)という言葉は、政府支出や企業の投資が、国民所得(ナショナル・インカム)を果たしてどれくらい増加させているかという時に使われる。ケインズが考案した限界消費性向(マージナル・コンサンプション・プロペンシティ)を、例えば0.8だとすれば、100円の政府支出が、80円の消費となって他の企業の所得となり、それが繰り返されると最後に5倍、即ち、500円の効果を生む、というものだ。

 

但しこれは、銀行は元々独自に信用創造と言う魔法の力を自力で持っていて、預金量を10倍に増やす力(100万円の預金が1000万円になる)を持っているというさっきの話、ハイパワード・マネーの貨幣乗数とは別だ。それに対して政府の公共投資の消費性向によって、100万円が500万円の効果をもつというのは乗数効果だ。

 

国家(政府)が、例えば、1兆円を景気対策用に出すとしたら、乗数効果で5倍になる。つまり、1兆円のお金が5兆円の力を生んで、それが社会で流通して国民生活のためになる、ことになっていた。ところが、それで現在ではもう1兆円公共投資(景気対策)したら、0.9の9000億円分しか成果を生まない、と言って騒がれた。それは小泉政権の2001年からだった。そこであのワルの竹中平蔵が財政大臣になったとき、公共事業を大幅に減らしてしまった。

 

だから、あの時、ケインズ経済学(国家を経営する手法)の乗数効果のセオリーが崩壊した。それでも、やっぱり景気対策として公共事業をやらなければならないとなって、今もやり続けている。景気対策として財政出動(税金が元である国のお金をつぎ込む)をしなければ、失業者たちに最低限度の収入を与えることができないからだ。公共事業(財政出動)を減らした、減らしたといいながら、やっている。東京都心の道路課区副工事屋高速道路の補強修理などだ。それで、外国人観光客がたくさんやってくる銀座の三越デパートの辺りの土地が、坪6億円、8億円になっているという。それはやっぱり公共事業をやっているからだ。

反グローバリズムの潮流(イタリアで予算成立、ついにベーシックインカムが実現)

コンテ首相反グローバリズムの潮流(イタリアが来年度予算案を巡りEUと激闘、ベーシックインカムは実現するか!?)でイタリアのベーシックインカムが実現する可能性が高まって来たことをお伝えしましたが、ついにイタリアでベーシックインカムを含む来年度予算案が承認されました。 (さらに…)

  投稿者 dairinin | 2019-01-24 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨1 Comment »