2019-02-15

反グローバリズムの潮流(イギリスの合意なき離脱は大きな可能性かも)

 

origin_1前回の反グローバリズムの潮流(イギリスのEU離脱、EUの本音はイギリスのEU離脱阻止か?)では、イギリスの国会で離脱協定案が大差で否決され、EUとの再交渉を行う決議が可決されたこと、一方でEUは協定の見直しに応じそうにないことなどをお伝えしました。その後、イギリスのEU離脱まで残り50日余りの2月8日にEUは協定案の見直しを明確に拒否しました。そして15日イギリス議会も政府の離脱方針を指示しない議決を行いました。メイ首相は進退窮まった状況です。このままイギリスは合意なき離脱に突き進むのでしょうか。

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EUの姿勢を明確に物語っているのが、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長の発言、イギリスのEU離脱を推進した人たちには「地獄に特等席が用意されている」と言う言葉です。EUにとっては、イギリスがEUを離脱することで混乱に陥ることの方が、今となっては望ましいのかもしれません。

ドイツのメルケル首相は任期満了後の引退を表明し、フランスのマクロン大統領がデモで支持率を大きく落としており、EUはまさに崩壊の危機を迎えています。EUにとってイギリスが合意なき離脱によって混乱すれば、EUの求心力を一気に回復させることが可能です。

当然、イギリス経済の大混乱は、国外にも飛び火し、EUだけでなく世界経済に打撃を与え、多くの人たちが不幸になるでしょう。しかし、グローバリズム推進派からすれば、どれだけ多くの人が不幸になっても、その原因がグローバリズムを破壊しようとした結果であり、グローバリズムは正しいと証明できる方が重要なのです。

もちろん、EUにとってもイギリスが協定案に合意し、実質的にはEU支配の中にとどまる選択をしてくれれば、そのほうが良いのかもしれません。イギリス国内にどんなに強い反対があっても、完全なEU離脱は出来なかった、となればEUの存在意義は回復させることが出来ます。

実はEUにとっての最悪のシナリオは、イギリスが合意なき離脱に突入し、そのまま自立に成功する事でしょう。そうなればEUと言うシステム=グローバリズムが経済システムとして間違っていることを証明してしまいます。イギリスが合意なき離脱に突入した場合、EUは全力でイギリス経済を破壊する動きに出るのかもしれません。しかし、そこをイギリスが乗り越えた時には、グローバリズムは終焉を迎えることになるでしょう。イギリス国民の中には、EUに支配されるより経済的な混乱の方がまし、むしろ経済的にも上手く行く、と思う人も多いようで、今後の動きに目が離せません。

 

■「ブレグジット推進派には地獄の特等席」 EU高官の発言で物議2019年2月7日

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)は6日、「ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)をどのように安全に進めるか、実施方法を何も計画をせずに推進した人たち」には「地獄に特等席が用意されている」と発言し、物議をかもしている。

再交渉はないと強調トゥスク氏はバラッカー首相との共同記者会見で、EU加盟27カ国は昨年12月の時点で、離脱協定には「再交渉の余地がない」ことを確認していると述べた。

■我々はヨーロッパとは違う!…EU離脱支持の奥底に流れるもの2019年2月7日

「もし日本が中国や韓国と同じルールに縛られて、物事を決める時に彼らの意見を聞かないといけなければ、あなたはどう思う?」あるイギリス人女性に私が言われた言葉だ。彼女の言葉は、イギリスのEU離脱=ブレグジットを支持した人々の気持ちをシンプルに表したものとして、強く印象に残っている。

与党=保守党の強硬離脱派の大物であるボリス・ジョンソン前外相は、去年7月、メイ首相はEUに妥協しているとして外相を辞任する際、議会で次のような発言を行った。「世界中の多くの人々が、イギリスがEUから支配を取り戻し、独立した偉大な役割を果たすことを望んでいる」。

強硬離脱派の急先鋒、与党保守党のリース・モグ議員は「欧州の友人が嫌いでEUを離脱するのではない。失敗した経済システムからの脱出だ」と述べている。合意があろうがなかろうが、EUを離脱し、日本などと自由貿易協定を結べば経済が発展するという考え方だ。今年1月の世論調査でも国民のおよそ3割が「合意なき離脱」を支持している。

■EU 英の離脱再交渉拒否 「合意なき離脱」リスク高まる2019年2月8日

イギリスのEU(ヨーロッパ連合)離脱問題をめぐり、メイ首相は7日、ユンケル委員長らEU首脳と会談し、離脱案の再交渉を求めたが、EU側はこれを拒否した。メイ首相は、来週にも離脱案の修正について議会で審議を行いたい意向だが、今回、EU側が明確に再交渉を拒否したことにより、厳しい状況に追い込まれている。

■英金融街の市長“合意なき離脱避けるべき” 2019年2月12日

イギリスのEU離脱が決まって以降、ロンドンの金融街「シティ」では、国外に移転する金融機関が相次いでいる。こうした中、「シティ」のピーター・エストリン市長は、これまでに5000人から1万人の雇用がアイルランドのダブリンやルクセンブルクに流出したとみていることを明らかにした。

金融街シティ/ピーター・エストリン市長「合意なき離脱で得する人は誰もいない。可能な限り早く合意に達する必要がある」。しかし、EUは7日、離脱協定案の修正に応じない姿勢を改めて示していて、離脱まで50日を切る中、イギリスとEUが歩み寄る気配は見えていない。

■英食品業界、ブレグジット「危機」を政府に警告 「壊滅的打撃」対策で忙殺2019年2月12日

食品業界は書簡で、業界が「危機寸前」の状況にあると述べている。この書簡には食品加工業の食品・飲料連合、全英農業者連盟、外食・ホテル・娯楽産業のUKホスピタリティーといった食品関連の業界団体のトップが署名した。業界団体には、スイスの食品大手ネスレ、米製菓大手モンデリーズ傘下のキャドバリーのほか、KPスナックスやバターキストといったイギリスの製菓会社が参加している。書簡では、「業界団体とその参加企業には現在、ブレグジットに関係のない方針協議会や活動に参加し、適切に対応するための物理的な資源も、組織的な余裕もない」と訴えている。

イギリスでは1月末にも、英国小売協会(BRC)が政府に対し、合意なしブレグジットが食料安全保障を脅かし、食品価格の上昇と供給不足を招く可能性があると警告する書簡を提出したばかり。

■英の「合意なきEU離脱」で60万人失職の恐れ、独研究所2019年2月12日

国が欧州連合(EU)と合意なく離脱した場合、世界全体で約60万人が失職する恐れがあるとの調査結果をドイツ研究所が11日、明らかにした。特に、最も影響が深刻なのはドイツだという。EU最大の経済規模を誇るドイツでは約10万3000人、フランスでは約5万人の雇用が影響を受ける恐れがあると予測した。ハレ研究者らは、市場は世界全域でつながっているため、「合意なき離脱」の影響はEU圏外に供給拠点を持つ企業にも及ぶと警告する。

■英のEU離脱まで1か月半、倉庫に相談殺到2019年2月13日

こちらの倉庫はいわゆる保税倉庫です。輸入品をいったん預かり通関手続きをするビジネスですが、今、問い合わせが急増しています。現在、イギリスはEUの単一市場に入っているので、EUからの荷物には通関手続きは必要ありません。しかし、EUと何の協定も結べないまま離脱すれば、来月29日の深夜からいきなり通関手続きが発生します。これまでEUとしか取引していなかった会社はイギリスに14万社あるとされ、この業者のような会社に助けを求めてくるのです。

■英議会、ブレグジットの進展を審議へ 再交渉はなおこう着2019年2月14日

イギリスの連邦議会は14日夜、欧州連合(EU)離脱協定をめぐる審議と採決を行う。今回の審議ではブレグジット(イギリスのEU離脱)の方向性を変える数々の修正案が審議される見通しだが、進展はないとみられている

議員らはさまざまな協定の修正案を提出した。これには労働党が提出した、政府に2月末に離脱協定の実質的な採決を求める案も含まれる。スコットランド国民党(SNP)からは、EU離脱プロセスを一時停止につながる法案を承認するよう求める修正案が出された。また離脱派の英下院保守党議員から成る欧州調査グループ(ERG)からは、首相がなお協定を支持するよう求めていることに怒りの声が挙がっている。

今後の動きは?メイ首相は2月26日までに離脱協定がまとまらなかった場合、この日に議会で声明を発表することになっている。議会ではその後に審議を行い、翌27日に採決を行う。

メイ首相は12日の議会で、バックストップに法的拘束力のある変更を加えられるよう、EUとさまざまな条件を話し合っていると述べた。これにはバックストップを「代替条項」に変える案、バックストップに期限を設ける案、双方の合意がなくてもバックストップを離脱できる案などがあるという。一方EUは、離脱協定に再交渉の余地はないとの立場を貫いている。

■英議会、メイ首相方針 支持せず2019年2月15日

イギリス議会は14日、「政府のEU離脱交渉の方針を支持する」との動議について採決を行い、支持しない(303票)が支持する(258票)を45票上回りました。採決結果に法的拘束力はありませんが、離脱協定の修正を目指してEUと協議中のメイ首相にとっては、交渉の立場を弱めるもので、イギリスの離脱の道筋はさらに不透明になってきました。

List    投稿者 dairinin | 2019-02-15 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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