反グローバリズムの潮流(イギリス国会EU離脱協定案を否決、合意なき離脱に進む?)
昨年末に反グローバリズムの潮流(イギリスのEU離脱、メイ首相は「合意なしブレグジット」に向けた準備を進めることを決定)で、EUとの協定案が国会で否決され、イギリスの合意なきEU離脱の可能性が高まっていることをお伝えしました。そして、1月15日のイギリス国会で、432対202の大差で否決されました。イギリスのEU離脱は今後どうなるのでしょうか。
イギリスの国会は今大混乱の状況で、EU離脱問題を巡って大きく5つつの意見が並立しています。問題を複雑にしているのが、EU離脱に合意している人たちの中で、意見が3つに分かれている事です。政府の協定案を認めてEU離脱。EU離脱は良いが協定案を見直す。合意なき離脱の方が良いという3つです。それに加えて、EU残留を主張するグループ、再度国民投票を実施するというグループもあり、意見がまとまる気配も見えないのが現状です。
今後、どうなるかと言う予測ですが、EUを推進している勢力からすると、イギリスがEUを離脱して上手く行っては困るわけで、これからEU残留に戻る可能性は殆ど無いことから、EUを離脱したらとんでもないことになると言う見せしめにしたいと考えている可能性が高そうです。
一方で、反EU勢力からすると、現在の協定案ではEUを離脱したというのは形式的な話で、実質的にはこれまでと殆ど変わらない状況を維持する案で、EUに搾取される構造は温存されEUを離脱する意味がないという事になります。
となると、どちらの勢力も合意なき離脱を目指していると思われ、メイ首相がいくら努力しても、合意なき離脱に突き進む可能性が高そうです。
■EUも合意なしブレグジットの準備開始 欧州委が対策発表2018年12月20日
欧州委は合意なしブレグジットの影響を緩和するための一時的な対策を発表したものの、予想される全ての問題には対処できないとしている。条例の内容の一部は以下の通り。
・イギリス発EU加盟国着の航空便、あるいはEU領空を通過する航空便は向こう12カ月間、「基本的な接続性」が維持される
・陸運業者は向こう9カ月間、認可なしでEU域内に荷物を輸送できる
・デリバティブ(金融派生商品)の取引など一部のイギリスの金融サービス規制は向こう1~2年間、EUの規制と同等に扱われる
合意なしブレグジットとなった場合のリスクとして以下の問題を示した。
・イギリスから輸出される家畜はすべて検査の対象となり、またイギリス・EU間で関税の申請が始まるため、モノの移動に遅れが生じる
・現在と同じ条件での航空網継続は保証されない
・イギリス国内の金融サービスは、単一パスポート制度によるEU加盟国でのサービス提供権を失う
・イギリス在住のペット飼い主が持つEUのペット・パスポートは無効となる
■ブレグジットに2度目の国民投票案 実施条件は? 選択肢は?2018年12月27日
メイ首相は、再国民投票の予測を否定している。だが、もし下院がブレグジットをめぐる膠着状態を打ち破るために2度目の国民投票を実施すると決定したらどうなるのだろうか?英選挙管理委員会はBBCニュースに対し、「適切な対応策」を有しており、「あらゆる予定外の投票に迅速に対応する」準備ができていると語った。
英議会が2度目の国民投票実施を採択した場合、投票規則や選挙運動規則を定める法律にも上下両院の支持が必要になる。法制化の速度を上げるため、前回の国民投票に関する諸規則を定めた2015年国民投票法をひな型にし、実質的に大部分を写してしまうのが、あり得る選択肢の1つだ。もしこのやり方が採用されても、法案の議会通過はおよそ11週間(3か月弱)かかるとレンウィック氏は推計している。
離脱協定の最終合意に国民投票を求める「人民の投票」運動の見解では、テリーザ・メイ首相の離脱協定とEU残留のどちらかを選ぶのが推奨される選択肢。投票用紙に「残留」の選択肢はあるべきでなく、メイ首相の離脱協定か、合意なしでのEU離脱かの二者択一であるべきとの主張もある。英政府とEUが合意した離脱協定を承認、EU残留、合意なしでのEU離脱の3つの選択肢と言う意見もある。
■ロンドン警視総監、合意なしブレグジットを懸念 「市民を危険にさらす可能性」2018年12月28日
ディック警視総監は、EUとの合意が定まらないままブレグジット(イギリスのEU離脱)となった場合、イギリスがEUの犯罪者データベースにアクセスできなくなったり、外国からの身柄引き渡しも難しくなったりするかもしれない、ロンドン警視庁は欧州の警察機関と協議し、緊急時対応計画を調整していると話した。
■ブレグジット審議再開で与党から造反相次ぐ メイ首相窮地か2019年1月10日
下院では元法務長官のドミニク・グリーヴ議員(保守党)が、下院が離脱協定を否決した場合の代替案の提出期限について、修正案を提出した。政府は反対したが、保守党議員17人が造反し、308対297の賛成多数で可決された。
これが可決されたため、離脱協定否決の際に政府は今月21日までに代替案を提出しなくてはならなくなった。離脱協定否決の場合、2度目の国民投票などの代替案が提示される可能性も出てきた。
議会は昨年12月に採決を行う予定だったものの、与野党の反対が多く出ており承認の公算がないとして、メイ首相は採決を延長した。焦点となっているのは、英・北アイルランドとアイルランドの国境問題。イギリスとEUは離脱協定の中で、この国境に検問や新たな関税を敷かないための「バックストップ(防御策)」を設定した。
しかし、バックストップが発動すると北アイルランドはEU単一市場の規則に従い続けなくてはならないほか、英・EU双方の合意がない限り離脱できない。このため、実質的に北アイルランドとグレートブリテン島の間に関税や規制上の国境が引かれることになるとして、多くの議員が反対している。
■EU離脱協定あす採決 メイ英首相、議員に最後の説得2019年1月14日
メイ首相は14日の演説で、議会は協定を否決して合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)に向かうより、ブレグジットそのものを阻止しようとするだろうと警告する予定。首相はさらに、2016年国民投票で決まったブレグジットが実現しなければ、政治への信頼は「壊滅的な打撃」を受けると述べる。
しかし英紙サンデータイムズは13日、メイ首相の離脱協定が否決された場合に備え、保守党の元閣僚を含む超党派グループが閣外議員が下院の審議日程を変更し、合意なしブレグジットを違法とする法案を提出する方法を模索していると報じた。これが事実ならイギリス議会の数世紀にわたる慣習が覆る可能性もあり、首相官邸はこの報道を「非常に懸念している」と話している。
■英下院、ブレグジット協定を歴史的大差で否決 内閣不信任案の採決へ2019年1月16日
英議会下院(定数650)は15日夜、イギリスの欧州連合(EU)離脱について英政府がEUとまとめた離脱条件の協定の承認採決を行い、432対202の大差でこれを否決した。230票差での政府案否決は、英現代政治史において政府にとって最悪。
これを受けて最大野党・労働党は、政府に対する不信任案を提出した。16日午後7時(日本時間17日午前4時)に投票が行われる予定で、採択されれば総選挙となる可能性がある。
首相は先週から再開した協定審議で支持を訴えてきたが、協定の内容に反対する議員、2度目の国民投票でEU離脱の是非を問うべきだとする議員、合意なしブレグジットを強行したい議員、そしてEU離脱そのものを取りやめるべきだとする議員などが一丸となり、否決に持ち込んだ。採決では、与党・保守党から118人の議員が造反した。一方、労働党議員でメイ首相の協定を支持したのはたった3人だった。
政府提出の法案が大敗した場合、通常は首相が辞任することが多い。しかしメイ首相は、採決後の声明で、現職に留まることを表明した。
■現実味増す“合意なき離脱”日系企業は…2019年1月16日
タザキフーズ・古川周広社長「お客さんもパニックになっていまして、先週あたりから多めに早めに(在庫を)買いたいという注文が殺到しています。ひどいところは半年分(注文したい)と言ってきたので、半年分はちょっと無理ですという話をしています」
大和総研ロンドンリサーチセンター長・菅野泰夫シニアエコノミスト「具体的な対応を今すぐできるメーカーはおそらくほとんどなくて、急きょ2か月間で対応を求められてしまう状態」
ホンダも部品調達が遅れる事態を想定し、イギリス南部にある工場の生産を一時的に止める計画を発表。離脱期限直後の4月に合計6日間、生産を停止する日を設けるとしている。
経済同友会・小林喜光代表幹事「確率としては“合意なき離脱”が相当高くなってきたかと。ということは最悪の状況も想定しながら手を打っていく。最悪にならなければこんなよいことはない」
■メイ英政権、19票差で信任獲得 ブレグジット協定代替案の協議へ2019年1月17日
イギリスの欧州連合(EU)離脱をめぐり、政府の離脱協定を歴史的大差で否決したばかりの英下院は16日夜、テリーザ・メイ首相に対する内閣不信任案を賛成306、反対325の19票差で否決した。EU離脱協定に前日、反対した与党・保守党の造反議員や、メイ政権に閣外協力しながら離脱協定には反対した北アイルランドの民主統一党(DUP)の議員10人は、メイ首相の留任を支持した。DUPがメイ首相続投に反対していたら、内閣不信任案は1票差で可決されていた。首相は、前日に否決された離脱協定に代わる代替案を、21日に下院に提出するとあらためて約束した。
■合意なき離脱なら深刻な雇用喪失や港の混乱へ、企業が警告2019年1月17日
米自動車大手フォード・モーターのボブ・シャンクス最高財務責任者は、「英政府と議会が協力して合意のないハードブレグジットを回避するよう求める。そのような事態は、英自動車業界やフォードの英製造事業にとって破壊的だ」と述べた。
独自動車大手フォルクスワーゲンは、英国事業は輸入センターなどの新車在庫や部品在庫に絡む引当金を積み増したことを明らかにした。
ドイツ銀行のクリスティアン・ゼービング最高経営責任者は、秩序のない離脱となれば、英国は少なくとも2年にわたってリセッション(景気後退)に陥り、EU域内総生産を0.5%ポイント押し下げると警告した。
デンマークのDSVの幹部はイギリス海峡を渡るトラックすべての税関検査は130キロの渋滞につながる可能性があると指摘した。
ドイツ化学工業協会は医薬品の供給確保に向け、暫定的な解決策を要請。「無秩序な離脱は、複雑な状況をもたらし、企業がすべての不測の事態に備えることを不可能にする」と訴えた。
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