2018-12-14

反グローバリズムの潮流(イタリアが来年度予算案を巡りEUと激闘、ベーシックインカムは実現するか!?)

origin_1前回の反グローバリズムの潮流(イタリア新政権は来年ベーシックインカム導入!?)で、イタリアの新政権がベーシックインカム導入を含む来年度予算案を作成し、EUがこれを認めれば来年度からべーシックインカムが実現する事をお知らせしました。対立するイタリア新政権とEUの攻防はどうなったのか、その後の動きを調べてみました。

にほんブログ村 経済ブログへ

9月27日に発表されたイタリアの予算案はそれまでにEUと合意していた財政赤字が国内総生産(GDP)比2.0%以内を大きく超える2.4%でした。これに対して、EUは強く反発します。10月23日EUはイタリアの予算を差し戻し、見直さなければ最大で国内総生産(GDP)比0.5%相当の制裁金を科すと通達、11月14日イタリアは一旦見直しを拒否します。

しかし、ユーロ圏財務相が11月22日に制裁手続き開始が妥当と発表すると、さすがにイタリアも見直しに応じざるを得なくなり、12月12日に財政赤字が国内総生産(GDP)比2.04%の修正案を提出、EUもこれを認める方向です。

そして、肝心のベーシックインカムですが、この修正予算の中に残されており、このまま予算がEUでも承認されれば、イタリアでは来年度からベーシックインカムが導入されます。

 

■イタリア、ベーシックインカム(初期段階)導入へ 3 2018年10月2日

イタリア全体の失業率は危機前の水準まで下がったが、24歳未満の失業率は8月に31%に上昇した。20歳から34歳の約30%は、学業に携わっているわけでもなければ、就労もせず、職業訓練も受けていない。欧州連合(EU)統計局によると、これは域内で最悪の比率だ。

連立政権は生活保護によってこの問題にある程度まで対処しようとしている。政権を構成する「五つ星運動」が打ち出した「市民所得」は、選挙戦中の最も重要な公約だった。これは年金生活者を含む、貧困ラインを下回る人々に月間最大780ユーロ相当の小切手を支給する構想で、年間100億ユーロの経費がかかる。イタリアは拡張的な財政政策を選ぶことにより、EUの規則に公然と反旗を翻した。

ユーロ圏では相当イタリアの予算に対して不満があるようですね。奴隷が働かずに暮らしていけるような社会にされては支配層が困るので、これまでもありとあらゆるネガティヴキャンペーンを張ってきました。

五つ星の目玉構想である「市民所得」。これは年金生活者を含む、貧困ラインを下回る人々に月間最大780ユーロ相当の小切手を支給するという構想なのだそうです。本日は1ユーロ、約131円。780ユーロで約10万円。毎月最大10万円ほどの小切手支給ということのようです。受給者はおよそ650万人。

■イタリア予算案、財政規律への「前例ない」違反 EUが通達2018年10月19日

欧州委はイタリアのトリア経済・財務相宛ての書簡をウエブサイトに掲載。それによると、欧州委は予算案について、政府支出の規模が大き過ぎ、一時要因などを除く構造的な赤字が増加するほか、公的債務水準はEUの財政規律に沿って減少しないとの見解を表明。「これらの3つの要素は、(EUの財政協定である)安定・成長協定に盛り込まれている予算政策の義務の深刻な違反につながる可能性があることを示している」とした。また、19年予算案では純歳出の名目の増加率は2.7%となることが示されているが、EU財政規律の下でイタリアに許容されている伸びは0.1%にとどまると指摘。

予算案は目標からの逸脱が「前例のない」大きさであり、「特に深刻な違反」のようだと指摘。10月22日までに回答するよう求めた。

イタリアが内容を修正しなければ、欧州委は10月29日までに予算案を却下する可能性がある。そうなれば前例のない事態となり、金融市場に一段の混乱が広がる恐れがある。

■欧州委、イタリア予算案差し戻し 「財政規律に違反」2018年10月23日

欧州委員会は23日、イタリアの2019年予算案を差し戻し、3週間以内に再提出を求めると決めた。EUの財政規律ルールへの深刻な違反があると判断した。欧州委は13年にユーロ加盟国の予算を事前審査する制度を導入したが、実際に差し戻したのは初めて。イタリアとEUの対立が深刻化すれば、債券市場の動揺を招く懸念もある。イタリアが修正を拒めば、欧州委は制裁措置の発動に向けた手続きに入る見通し。最大で国内総生産(GDP)比0.5%相当の制裁金を科す可能性がある。

■イタリア、予算案見直しに「応じない」 欧州委に回答2018年11月14日

イタリアのトリア経済財務相は13日、欧州連合(EU)欧州委員会に書簡を送り、2019年予算案で財政赤字や成長率見込みの修正要求には応じないと回答した。一方で公共資産の売却による歳入拡大など、小ぶりの譲歩策を盛り込んだ。欧州委は政府の回答を受け、今月21日に対応を示す予定。イタリアに対する制裁発動手続きを開始するかどうかが焦点になる。

■イタリア予算案めぐり・EU“制裁手続き開始が妥当”2018年 11月22日

巨額の債務を抱えるイタリア政府の来年の予算案について、EUは財政赤字の削減を求めた勧告を守っていないとして、制裁手続きをはじめるのが妥当だと言う判断をした。EUは近く制裁に向けた手続きの開始を加盟国各国に正式に勧告し、各国も支持するものとみられるがイタリアのサルビーニ副首相は方針は変えないと強気の姿勢を示している。

■イタリアがブレグジット以上の試練に? 予算案巡りEUと対立2018年11月29日

伊政府は、総労働人口の10%に迫る失業率や、30%を超える若者の失業率、そして資本投資の不足や、それが国内産業の生産性向上や競争力に与える脅威について、元凶は過去の緊縮政策にあると非難している。新政権はそれ以上に、歴代政権とは違いEUの要求にはただ従わないことを示したがっている。サルビーニは過去の政権をEUの「操り人形」と批判。

適切に選出された現伊政府の国家予算案を拒否する根拠としては、赤字がGDPの3%を超えることだけでは不十分だ。おそらく、現政府の反抗的な態度と関係があるのではないだろうか。欧州委員会は予算案を拒否しただけではなく、イタリアに対する制裁手続きを推進するというほぼ前代未聞の措置を講じている。

イタリアの国民感情はブレグジットをめぐる英国民投票の背後にあった感情と似ているようだ。どちらの国でも、反EU感情の根源となったのは、経済や貿易の問題よりかは、EUからの押しつけや、自国の政策を自分たちで選べないことだった。

イタリアは、EUがギリシャに対して行ってきたようないじめの対象としては大き過ぎる存在だ。イタリアとの決裂が現実になれば、大きな経済国がまたもEUを去ってしまうこととなる。それがたとえ部分的なものであっても、EUにとっては非常に危険な展開となる。

■イタリア予算案はEUルールに違反、修正すべき=ユーロ圏財務相2018年12月4日

ユーロ圏財務相は4日、イタリアの2019年予算案が欧州連合(EU)のルールに違反しているとし、イタリア政府が予算案を修正すべきとする欧州委員会の見解に同意すると発表した。EUの執行機関である欧州委は先月、イタリアがEUのルールに違反しており、予算案を修正しなければ制裁の手続きに入ると明らかにした。

■イタリア首相、修正予算案を来週11日に提出へ2018年12月6日

イタリアのコンテ首相は来週11日に欧州委員会のユンケル委員長と会談し、新たな2019年予算案を提出する予定だ。

連立政権を構成する「同盟」の幹部は「(EUの)制裁措置はイタリアに望ましくない。イタリアとEUは制裁回避に向けあらゆる手段を尽くす必要がある」と述べた。その上で、選挙公約に掲げた定年年齢の引き下げと所得支援プログラム順守するとしながらも、この2つの案件に割り当てられている160億ユーロの全額は必要ないかもしれないとし、「それぞれ20億ユーロ程度削減できる可能性がある」との見方を示した。

■伊、予算案修正を表明=EUの制裁回避へ姿勢転換2018年12月13日

イタリアのコンテ首相は12日、2019年予算案の財政赤字を現行の国内総生産(GDP)比2.4%から2.04%に圧縮する方針を表明した。赤字圧縮の財源に関し、政府保有資産を当初計画以上に売却すると説明。一方、目玉施策として盛り込んだ低所得層への最低所得保障導入や、年金の受給開始年齢引き下げは変更しないと強調した。

■欧州委がイタリア評価、モスコビシ氏「かなり努力した」2018年12月14日

イタリアが来年度の財政赤字目標を下方修正したことについて、欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は、イタリアが譲歩に向け「かなり」努力したとして評価する考えを示した。委員はこの日、トリア経済・財務相と会談。記者団に対し極めて建設的な会談だったと振り返り、「共通の立場が得られるよう作業を進めている。迅速に仕上げたい」と語った。トリア経財相の報道官は、双方とも妥結を目指しているとコメントした。

List    投稿者 dairinin | 2018-12-14 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2018/12/5990.html/trackback


Comment



Comment