2019-01-28

迫りくる大暴落と戦争刺激経済-17~貨幣乗数という資本主義のマジックが効かなくなった~

 

ケインズ

ケインズ

 

今回の記事は、「お金の経済」のお話。

お金は「信用創造」(クレジット・クリエイション)によって約10倍~20倍の流通量を持ち、さらに国の施策としての「乗数効果」(マルチプライヤー・エフェクト)によってさらに数倍もの流通量になるという。そういうシステムの元に銀行が莫大な利益を得てきた。

単純に元本の10~20倍もの金を人に貸し、3%の利息を取ると考えるだけでも相当儲かる商売で、それを毎年繰り返していくと、どんどん利益が膨らんでいく。

 

こんな“無から有を生む”“濡れ手に粟”のような錬金術:商売を成立させたのが上記「信用創造」と「乗数効果」の二つの考え方で、これは金貸しが作った理論と言っても過言ではない。「乗数効果」は、「信用乗数」を使った経済効果をいい、経済学者ケインズの理論ですが、彼が金貸しの手先であることは有名。

 

この「信用」という言葉が、ないものをあるように見せかける言葉で、人を欺く経済活動の現実を見え難くしている。このような考え方は株や債券市場にまで及んでいるように思う。デリバティブにデリバティブを際限なく塗り重ね、含み借金の総額が天文学的数字にはまで膨れ上がり、誰も把握できない状況だという。人間が把握できないシステムがうまく行く訳がない。

 

金貸しの終焉と共にこの経済理論も終わりを告げようとしているようです。

 

『迫りくる大暴落と戦争“刺激”経済』(副島隆彦 著)からの紹介です。

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■貨幣乗数という資本主義のマジックが効かなくなった

銀行は、預金者から預かったお金をたくさん集めて、それを資金を必要としている借り手に対して貸し出すことになっている。それが銀行業だ。ところが実は、銀行は預金がちっとも集まっていなくても、銀行業の免許(認可)さえあれば、勝手にどんどん貸し出しができるのだ。これをクレジット・クリエイション(信用創造)という。この信用創造という原理で、信用、すなわちお金(信用貨幣)が作られて社会をぐるぐる回っていく。その途中で「価値が増殖」していく。この信用創造が資本主義が強力である原理だ。

 

簡単に書くと、100万円が世の中でぐるぐる回ると、いつのまにか1000万円になる。銀行が、中央銀行に預けておかなければいけないと決めている法定準備金(預金準備率ともいう)が、10%の場合、100万円の1割ずつ、即ち0.1プラス・・・0.09プラス・・・0.08ぷらす・・・といって、そしてこれを足し上げていくと、元のお金(100万円)が、10倍になってお金が増えていく、という理屈になる。

 

実際には、法定準備金は、国際業務を行っている銀行で預金の8%。国内業務だけしかやっていないのなら4%と、一応決まっている。

 

国内業務なら、小さな銀行でも自分が持っている預金総量の4%だけを日銀に預けておけばいい。それ以外は、全て融資(貸し付け)にまわして良い。例えば小さな銀行(信用金庫)で預金が1000億円あるとしたら、日銀の講座に40億円置いておきさえすればいい。預金を集めていたら、その4%以外の残りのお金は、全部、貸し付けにまわしていいという理屈で動いているのである。

 

だから残りの960億円を、どんどん客(資金を必要とする人たち)に貸して利息(金利)を3%とか取るだけでも、銀行業はものすごく儲かる商売なのだ。そうだったのだ。高度成長経済の時には、銀行業は儲かって大きな立派本店ビルを立てた。銀行員になる人は社会のエリートだと見られて、女子行員でも、堅実で信用があって資産家の家のお嫁さんになれた。

 

「お金はぐるぐる天下を回るもの」という考えは昔からあった。「資本の回転率」と書くと難しくなるが、銀行が貸したお金は、またその銀行に預金の形で、もとってくる。増殖して、太った形で、さらにあちこちから預金となって集まってくる。それをまた貸し出すことができる。だから経済拡大木には、資金が順調に回るから、100万円の融資金は、乗数効果によって、10倍の1000万円になる。

 

そのようなものとして、資本主義社会はできている。日本は、高利貸し(サラ金業者)という問題も片付けてしまって、違法なヤミ金融もヤクザ金融も社会の表面からは消えてしまったきれいな社会になった。ところが、そこへ“ゼロ金利”という異様な事態が出現してしまった。

 

日本の地方の中堅銀行は、4000億~5000億円くらいの預金を持っている。金融庁がどんどんこういう地方銀行を合併させているので、1兆円ぐらいの預金量がある。

 

預金が1兆円あると、預金準備率4%で400億円だけ日銀においておけばいい。残りの9600億円を貸し付けに回せる。そうするとその上限で許容される限界数値は、4%(0.04)の逆数(1÷0.04)である25倍になる。だから25兆円になる。25兆円にまでお金が膨らんで、貸付金となったものの残高(想定元本)で、25兆円にも膨張した金額がヴァリュー(価値)として世の中に流通することになる。本当の預金が1兆円なのに、25兆円にもなる。これで世の中が豊かになる。景気がよくなる、という経済学の理屈で動いてきた。

 

これが貨幣乗数(マネー・マルチプライヤー、信用乗数ともいう)の理論である。これで資本主義というのは成長を続けた。だから資本主義は滅びない、倒れない、永遠だ、と言うことになってきた。資本主義と言うのは自己増殖する力である、と言うので、人類はいくつもの危機を乗り越えてきた。ところが、どうもこの資本主義の大法則が通用しなくなってきた。信用創造(クレジット・クリエイション)と、利子による資本の増殖の法則がうまく動かなくなっている。

 

■投資の経済効果に注目したケインズの乗数効果

ジョン・メイナード・ケインズ卿が言った乗数効果(マルチプライヤー・イフェクト)という言葉は、政府支出や企業の投資が、国民所得(ナショナル・インカム)を果たしてどれくらい増加させているかという時に使われる。ケインズが考案した限界消費性向(マージナル・コンサンプション・プロペンシティ)を、例えば0.8だとすれば、100円の政府支出が、80円の消費となって他の企業の所得となり、それが繰り返されると最後に5倍、即ち、500円の効果を生む、というものだ。

 

但しこれは、銀行は元々独自に信用創造と言う魔法の力を自力で持っていて、預金量を10倍に増やす力(100万円の預金が1000万円になる)を持っているというさっきの話、ハイパワード・マネーの貨幣乗数とは別だ。それに対して政府の公共投資の消費性向によって、100万円が500万円の効果をもつというのは乗数効果だ。

 

国家(政府)が、例えば、1兆円を景気対策用に出すとしたら、乗数効果で5倍になる。つまり、1兆円のお金が5兆円の力を生んで、それが社会で流通して国民生活のためになる、ことになっていた。ところが、それで現在ではもう1兆円公共投資(景気対策)したら、0.9の9000億円分しか成果を生まない、と言って騒がれた。それは小泉政権の2001年からだった。そこであのワルの竹中平蔵が財政大臣になったとき、公共事業を大幅に減らしてしまった。

 

だから、あの時、ケインズ経済学(国家を経営する手法)の乗数効果のセオリーが崩壊した。それでも、やっぱり景気対策として公共事業をやらなければならないとなって、今もやり続けている。景気対策として財政出動(税金が元である国のお金をつぎ込む)をしなければ、失業者たちに最低限度の収入を与えることができないからだ。公共事業(財政出動)を減らした、減らしたといいながら、やっている。東京都心の道路課区副工事屋高速道路の補強修理などだ。それで、外国人観光客がたくさんやってくる銀座の三越デパートの辺りの土地が、坪6億円、8億円になっているという。それはやっぱり公共事業をやっているからだ。

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