2010-02-25

環境から経済を考える4〜社会的共通資本はどのように管理されていくべきか。

 シリーズの最後になる今回は、これまで扱ってきた「社会的共通資本」というものはどのように管理されていくべきなのか?という点について迫ってみたいと思います。
 海や森林、川といった自然環境は、もともとはその周辺で生活する住民たちによって管理されていた状況が多くあり、それを維持するための規範やルールもありました。そのような地域社会的な関係を総称して「コモンズ」と呼ばれています。
 このコモンズと呼ばれるものが崩壊していく過程で、社会的共通資本は市場システムの中に飲み込まれていったと考えられています。
 
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 まずはコモンズが崩壊する過程と市場システムの関係から詳しく見ていくことにしましょう。
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 シリーズ初回で紹介した、ガーネット・ハーディン氏の「コモンズの悲劇」で主張されている内容を一言で言うと次のようなことになります。
「完全に所有関係が明確でない共有資源は必然的に枯渇する」
=所有者または管理者を明確にして、その責任化で管理していく。

 この主張をベースにして生み出された、「私有制を徹底し、完全に市場化されていない(遅れた)経済システムは、すべて市場化されるべき」という考え方が、近代経済学の基礎を成しています。
 そして、この近代経済学をベースにして、市場システムや行政システムがコモンズを侵食していきました。

巨人の肩の上より−公共圏論とコモンズ論の接点をめぐって②より抜粋
 コモンズ破壊の過程は、代替物への切り替えと、生産物やサービスの商品化という二つの商品化による市場システムと行政システムの肥大化ととして理解できよう。以下、環境破壊と商品化が連鎖的に進行する様子を描いた多辺田政弘〈環境経済学者)の興味深い記述を引用しておく。
「健全な生態系を持つ海浜やさんご礁の破壊は、住民の天与の恵みとしてのオカズ(魚介類、海藻類)の採取場の破壊でもあり、それら自給食料の代替商品を他地域から買わざるを得なくなる。それは明らかに貨幣部門を拡大する。
・・・海では泳げなくなってプール(代替商品)をつくり、そこで入場料を払って泳がなければならなくなると、これも貨幣部門を拡大する。毎日、朝夕、美しい海を眺めて心和ませてくれた海が埋め立てられ建造物が建てば、もはやその海浜は憩いの場ではなくなる。そのため、憩いの場としての代替サービスを求めて別の観光地に金を払っていかざるを得なくなれば、無償のサービスが有償のサービスとなり、これまた貨幣部門を拡大する。
・・・無償のものが代替商品に取って代わるにつれて、家計における支出も増大し、それを補うために少しでも現金収入を必要とするようになる。そのためには、無償の相互扶助的労働や自給部分を商品化させようという作用が働いてくる。出稼ぎに出たり、自給農作物に代えて自分の必要としない換金作物を作り出すようになる。相互扶助としての田植えの結も、近隣の人たちが出稼ぎに行くようになると、労賃を払って人手を雇うようになる。このような労働力の商品化も貨幣部門の拡大であり、非貨幣部門である社会的共同対抗経済の縮小である。
 一旦地域に貨幣経済の代替物が増えると、人々はそれを補うために現金収入が必要になり、出稼ぎや相互扶助の商品化、あるいは自らが消費する作物でなく換金作物を植えるようになる。そうすると「共」的部門はますます縮小する。この商品化の過程は連鎖的に引き起こされる。

上記の内容を簡単にまとめると、

  〈市場システム・行政システムの介入〉   〈コモンズの生活基盤〉
①       地域資源の搾取     ⇒   自給食料から代替商品へ
②         都市化         ⇒ 憩いの場としての代替サービス
③         有償化         ⇒    労働力の商品化

という流れを通して、次の3つの変化が引き起こされました。
・「相互扶助・共有管理」から「私的管理・公的管理」へ
・社会的共通資本の商品化
・市場システムによる、コモンズの実質植民地化
 この変化によって、それまでのコモンズ(伝統的なコモンズ)が有していた、「地域資源の物質的な循環と持続可能性」「市場に頼らない自立した経済システム」「日常的なコミュニケーションを通して培われてきた文化的再生や社会性の育成」といったものが喪失し、伝統的なコモンズは崩壊していったのです。
 そして、コモンズが悉く崩壊させられたことによって、環境破壊や経済破綻、社会不全が、今日のように社会全体を覆うようになったのです。
 これらの状況認識が、宇沢弘文氏をはじめとする、社会的共通資本の充実と、それを実現するために、市場システムから切り離されたところでそれらを管理する規範やルールの必要性を考える、新しい経済学が生み出されました。
 ここでの最大の課題は、社会的共通資本を管理するための規範やルールをどうやって作っていくかということです。
 伝統的なコモンズが有していた特徴をひとつの理念型としていますが、現代にも適応するような軸となる考え方にまで至っていないのが現状です。
 実は本質的には、市場拡大によるコモンズの崩壊は「グローバルスタンダード」という金貸しが作ったルール〈観念〉の押し付けから始まっています。
 「グローバルスタンダード」の押し付け→「規範」の崩壊→「コモンズ」の崩壊
 つまり現代は、自ら規範やルールを考え、作っていく機会を失っているのです。
 規範やルールを作っていくためには、それらを共通課題として捉え、役割分担の出来る共認充足の場(集団)を形成することがすべての出発点になります。
 そして、この共認充足の場(集団)からの代表者が集まって、その地域での規範やルールを作り管理していく。更にその代表者の代表者が集まって、さらに広い範囲での規範やルールを作り管理していく。そういった重層的なつながりで形成された集団によって社会的共通資本を管理していく必要があるでしょう。
 また、他に頼らずに自立できる集団規模(例えば自給自足、地産地消)を一つの目安として生活圏を設定し、その中では市場システムの介入しない部門(非貨幣部門)と位置づける。言い換えれば、自立した集団同士のやり取りが発生する部分にのみ市場システムが介入する範囲を制限するということも必要でしょう。
 この区分を明確にするためには、地域通貨の導入も考えられます。
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 共認充足の場を基盤とした集団の再構築と、市場システムの介入する範囲を制限するということが、社会的共通資本を管理していくための中心軸になるのではないかと思います。

List    投稿者 minezo | 2010-02-25 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 hermes handbags clearance | 2014.02.02 14:02

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