2022-11-26

世界の木材流通状況とその背景 ―木価格と世界情勢は密接に関係があるー

●ウッドショック ―2021年から始まった木材価格の急騰―

新型コロナ感染拡大に伴い、リモートワークを取り入れる企業が世界中で急増したため、アメリカを中心として住宅需要が高まった。加えて、コンテナ不足+運輸のストップにより、2021年にウッドショック(大規模な木材不足)が深刻化した。まずは輸入材の価格高騰や納期遅延が発生。それに連動して国産材の価格も高騰、建設業界に大きな影響を与えた。とはいえ、国内供給で輸入材の価格高騰に対応することは難しいのが現状。

⇒国は、国産材の利用を強く推し進めるための施策をし、人材育成や安定供給をできる体制を整えているが、まだまだ輸入材への依存は拭いきれない。

にほんブログ村 経済ブログへ

/usr/local/wp/kane/blog/wp content/uploads/2022/11/cf0e3212a16eca3a5a9a93464ebfc23c

/usr/local/wp/kane/blog/wp content/uploads/2022/11/0e31b63b1de225b7a107c7d55ff2b888

2022年に入ると価格の“高止まり”傾向であるものの2021年後半に急騰した木材などの輸入物価指数は日本銀行のデータによると、合板と丸太は2022年以降も上昇を続けている。

/usr/local/wp/kane/blog/wp content/uploads/2022/11/d015b5fc0d4c3b4ba8fda086623d383a

一方、集成材と製材木は2021年12月の数値(集成材135%・製材木132%)を最後に下落傾向になり始めた。集成材・製材木と合板・丸太では異なる価格動向を辿っているが、今後もまだまだ集成材・製材木が以前より高価格であることは変わらず、合板・丸太も価格が上昇し続ける可能性が高い。2022年以降も建設業界に与える影響は決して小さくはなく、新築住宅の取引動向は未だ以前と比べると鈍化が続いている。

●グラフで見る木材価格の推移-実際には木材の価格はどのように変化しているのか?

/usr/local/wp/kane/blog/wp content/uploads/2022/11/7920f00abb21ddd34758e8c968d9ba40

製材・構造用集成材・合板の輸入平均単価2021年に発生したウッドショックの最中、アメリカや中国が木材の抱え込みをした影響で、価格が高騰した。そのため、2022年の日本による木材輸入額推移は、前年2021年比で+68%と急激に増える見込み。ただし、これは輸入量が急増した訳ではなく、あくまでも木材単価が高騰したことによる予想数値。

製材の価格高騰については、2021年にピークアウトし、2022年に入ると下落し始めた。一方、EUの構造用集成材は需要が引き続き高まっていることもあり、2022年に入っても上昇を続けている。同じく建築には欠かせない合板も価格の上昇は高止まりし、2022年に入ると徐々に下落し始めましたが、微減状況であるため、2020年時の価格に戻るまでには時間がかかる見込み。

/usr/local/wp/kane/blog/wp content/uploads/2022/11/d541907e4e2013c20c25c94bd24e6167

●木材価格を左右する世界の動向

【中国の木材輸入量】

米中貿易摩擦により、中国の木材輸入量・輸出量は減少。しかし、相変わらず中国は多くの木材を輸入しており、世界の針葉樹丸太輸入量の44%を占めている。中国の経済成長に伴う建設ラッシュが治らない限り、木材の抱え込みは続き、世界の価格も高水準になることが予想される。

【アメリカでの木材価格高騰】

2020年末から、米国での住宅建設数が急増したことで、北米産木材の抱え込みが始まった。また、北米産以外の木材の輸入量も急増し、コロナ禍に伴う港湾処理能力の低下や世界的なコンテナ不足、海上輸送運賃の上昇も相まって、世界的に木材価格が急騰した。住宅建設数は未だ増加を続けており、2022年4月には172.4万件にまで上り、前年同月の156.9万件を大幅に上回っている。直近では住宅バブルははじけてきているという情報も・・。

/usr/local/wp/kane/blog/wp content/uploads/2022/11/c6608e747fb54503b839911f8c086aa2

【ロシア・ウクライナ情勢】

ロシアはアメリカや日本を含めた非友好国に対して2022年3月より単板・丸太・チップの輸出を禁止した。そのため、需要と供給のバランスが崩れて更なる価格高騰につながることが予想される。

1ドル=135円にまで円安が進んだのは、1998年10月以来、23年8カ月ぶり。現状、まだまだ多くの木材を輸入材に頼っている日本にとって、これはかなりの痛手。日本国内に現存している森の多くは針葉樹ばかりで、実際に家具や床材などの内装材に用いる下地材は、そのほとんどが広葉樹からできている輸入合板。実際に、一年前と現在を比較すると、メーカーに卸されていた下地材の価格は約1.5倍ほどにまで跳ね上がっている。この要因が、新型コロナによる資材不足や中国・欧米の急速に進む経済回復による資材抱え込みに拍車をかけ、深刻な値上げを引き起こしていることは否めない。

 

●今後の追求ポイント

日本の木材の需要供給の動向

建築業界のみならず、国産木材の利用促進は増加しているが、国内だけでは賄いきれないのも現状。日本の木材生産の基盤整備を進めると同時に世界の木材流通は世界経済ともかなり密接に関係していることが分かった。現在進行形のウッドショックの根本要因と各国の動き、(特にアメリカと中国あたり)に注目して追求を進める。

List    投稿者 itou-t | 2022-11-26 | Posted in 06.現物市場の舞台裏No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2022/11/10326.html/trackback


Comment



Comment